2007.4.18 NIKKEI NET
米経済誌フォーチュンは16日、2006年の売上高を基準にした米企業の上位500社を公表した。売上高が3511億ドル(約42兆円)の小売業最大手のウォルマート・ストアーズが前年首位のエクソンモービルを抜き、2年ぶりに首位に返り咲いた。
・・・・(記事の転載ここまで)
売上高42兆円を誇る世界最大の小売業、ウォルマートの最大の強みは、ライバルがマネのできない「究極の物流システム」と「究極の情報システム」を確立し、徹底した「ローコストオペレーション」を実現したため、と言われています。
小売業の門外漢である私にとっても「究極の物流システム」がいかなるものか、は興味がありますが、やはり、もう一つの「究極の情報システム」の方がより気になります。
特にかつてウォルマート最大のライバルと言われた、Kマートは情報システムへの投資に消極的だったため、ウォルマートに決定的な差をつけられ、2002年に破産してしまいました(その後、更正法により再建)。
今から1~2年前のことですが、アメリカの小売業を研究している専門家の方に、次のような話を聞いたことがあります。
「ウォルマートは情報投資に巨額を投じている。正式な額は公表されていないが、年間2兆円を投じている、という説もあるくらいだ。
全米店舗の商品の売れ行きと在庫をリアルタイムに把握し、過去のデータの蓄積から、予想される売上を算出し、即座にメーカーへ発注する。オーダーを受けたメーカーは、必要最小限の生産をして、即座に納品するので在庫の無駄がでない。
単価は極限まで買い叩かれるが、莫大な発注量を保障されているので、ウォルマートに従わざるを得ない。しかし、メーカーの意思による生産計画や商品開発などは、もはや存在せず、ただウォルマートの下請け生産工場と化しているだけ」とのことでした。
また、コストダウンの方策の一つが下記です。
「年間10万台の電子レンジを生産しているA社があるとします。1台3万円で卸しているとしたら、そこへウォルマートは話を持ちかけます。
『御社から年間100万台の電子レンジを購入する契約を結びましょう。その代わり単価を今の半分の15,000円にしてください』
A社の経営者はビックリして、『そんな無茶な』と一旦は断ります。そこでウォルマートはこう答えます。『わかりました、それではこの話はB社へもって行きます』。
ライバル会社B社の名前を出されたA社の経営者は、顔色を変えて考え直します。『もし今の半値の電子レンジが100万台、市場に出回ったらウチの会社はつぶされる。これはなにがなんでもやらねばならぬ』と。
こうやってガリバー、ウォルマートがますます巨大化していきます。
わが翻訳業は、このスケールを1万分の1くらいにした小さな世界で、小さなコスト競争をやっています。
しかし、当たり前のことですが、「小売業」と「翻訳業」とでは色々な面で違いがあります。単純にして決定的な違いは、「在庫がない」ということでしょう。
にもかかわらず、翻訳業界にも「ボリュームディスカウント」という習慣があります。
この「翻訳業界におけるボリュームディスカウント」に関しては、近々私が書いているもうひとつのブログ「翻訳業界徒然草」のなかでまた日を改めて、考えていきたと思っております。近いうちにアップしますので、ご興味のある方は是非訪れてみてください。