2013年10月21日 日本経済新聞朝刊
カジノ市場がアジアで急拡大している。2008年にはマカオのカジノ収入が、本場・米国ラスベガスを抜き世界最大となった。2010年にはシンガポールにも巨大カジノ施設が誕生、人気となっている。背景にあるのが富裕層の台頭だ。アジア太平洋地域のカジノ収入は2015年に800億ドル近くに達し、米国を抜く。日本も2020年の東京五輪開催を控え、カジノを含むリゾート施設整備を進める動きがある。今後も観光客をひきつける武器として注目を集めそうだ。
(以上で記事終り)
私自身、ギャンブルは一切やらないのですが、「カジノ」という名のギャンブルがもたらす経済効果は想像以上に大きいようです。
ギャンプルが「社会の必要悪」である以上、国の管理のもと、きちんと運営するのであれば、「カジノ」がもたらす社会的影響もプラス面がマイナス面を上回ることでしょう。
特に観光業界においては、観光客の誘致など、間違いなくプラス面が大きいでしょう。
しかし、日本においてはそのプラス面やマイナス面を論じる前に、避けては通ることのできない日本ならではの「ある特殊な事情」があります。
日本には以下のように6つの「公営ギャンプル」があります。
・競馬
・競輪
・競艇
・オートレース
・スポーツ振興くじ(サッカーくじ、通称TOTO)
・宝くじ
しかし、実に不思議なことに日本には上記の「公営ギャンブル」をはるかに上回る巨大な「非公認公営ギャンブル」が存在します。
それが「パチンコ産業」なのです。
このパチンコ産業の問題について語りはじめたらとても長くなり、また大変センシティブな問題なためここでは触れないことにしますが、2点だけ指摘しておきたいと思います。
(1)WHO(世界保健機構)では、パチンコ依存症を「病気」と認定し、その精神疾患により「多重債務、人間関係の崩壊、失職、家庭崩壊」などの害を引き起こすとしている。
2009年の厚生労働省の調査によると、日本の成人男性の9.6%、女性の1.4%、全体で5.5%が「ギャンブル依存症」とされています。
これはアメリカの0.6%、マカオの1.78%などと比較しても極めて高い数値です。
したがって日本には、559万人(男483万人、女76万人)もの「ギャンブル依存症」の人がいるということになります。
この「ギャンブル依存症」の全てが「パチンコ依存症」だとは言いませんが、おそらく大部分はパチンコが原因でしょう。
なぜならば、
(2)世界のあらゆる国に「公営ギャンブル」が存在するが、「ギャンプル依存症」を避けるためにその施設は、必ず隔離された場所にある。
日本では、駅前や人通りの多い場所に必ずと言ってよいほどパチンコ屋があり、多数の子供たちや通勤通学の乗降客たちが毎日その前を通ります。
WHO(世界保健機構)も指摘しているように、ギャンブルは麻薬と同じで「依存症」となる危険性が非常に高いため、世界のどの国においてもギャンブル施設は必ず隔離された場所にあります。
かつて「東京のお台場と沖縄に公営カジノ場を作り、経済特区にして日本中、世界中から観光客を集める」という壮大な計画がありました。
500万人以上もの「ギャンブル依存症」の患者を生み出す「パチンコ屋」を街から一掃し、世界中から観光客を集め、経済を活性化させる一石二鳥の政策だと思うのですが、残念ながら、ことはそう簡単にはいかないようです。