2007.4.27 NIKKEI NET
総務省が27日発表した3月の全国の消費者物価指数(CPI、2005年=100)は、生鮮食品を除く総合で99.6と、前年同月比0.3%下落となった。下落は2カ月連続。項目別で価格の下落幅が大きかったのは家具・家事用品(1.7%下落)だった。生鮮食品を含む総合では99.8と0.1%下落した。
・・・・(記事の転載ここまで)
上記グラフを見れば、1998年の半ば以降、日本はデフレ基調で来ていることがよくわかります。かねてよりの私の持論、このデフレ基調は、今後長期にわたって続くと信じています。
理由のひとつは、過去にも何回かこの話題に触れましたが、現在日本で一番力をもつグループ、高齢者の方々がそれを望んでいるからです。
土地・家屋を所有し、1,400兆円とも言われる個人金融資産の大半を所有し、かつ年金収入のある高齢者達にとって、デフレはインフレよりも居心地がよいのです。満足している人たちは、決して声高には叫びません。デフレ政策を推し進めた小泉政権があんなに人気が高かった理由も、実はそこにあると私は考えています。
それに加えて、日本がデフレになるもっと根源的な理由は、簡単に言えば、下記の3つだと私は考えています。
1. 米ソ冷戦の終結による軍拡競争の停止
2. 中国や東南アジア諸国からの低価格製品の流入
3. 日本におけるピラミッド構造社会の終焉
ピラミッド構造社会とは、毎年新入社員が入社して、常に後輩社員や部下があふれている、という組織構造のことです。
このピラミッド型組織には、企業内にとどまらず系列、つまり企業の下請け構造も含まれます。
かつて日本では、A社の下請け仕事をしている会社が、A社のライバル会社、B社やC社の仕事を請けるなど「とんでもないこと」でした。
私は1981年、ちょうど第一次日米自動車貿易摩擦が勃発して、米国自動車業界が一触即発状態にある時、サンフランシスコ郊外にあるGM(ゼネラルモータース)の工場を見学に訪れたことがあります。
日本人を見る、米国人工場労働者たちの鋭い視線と、「日本の自動車業界をやっつけろ!」と書かれた巨大な横断幕が今でも忘れられません。
ただその時、違う意味で少し驚いたことがありました。
GMの工場の従業員駐車場です。GM車はもちろんですが、フォード、クライスラーは言うおよばず、ドイツ車や日本車も数多く見られました。
私がそのことを指摘すると、案内してくれたGMの従業員の一人が、「どのメーカーの車を買おうが会社には関係ない。個人の問題だから。私の車は私の車だ」とこともなげに話していました。
それから7年後、私は仕事で愛知県にあるD社の工場を訪ねたことがあります。D社はT社系列の自動車部品メーカーでした。工場の入口で入場手続きをしていると、その時たまたまトラックで納品に来た、ある出入りの業者が立ち往生しています。
なぜならばその業者は、T社のライバル会社、N社製のトラックに乗っていたからでした。結局そのトラックは、守衛さんに門を通してもらえず、裏口へ回されていました。
また、こんな経験もしました。私がT社製の車に乗って、神奈川県内にあるN社の工場へ納品に行った時のことです。工場の入り口で守衛さんに呼び止められ、正門を通してもらえず、はるかかなたの裏門へ回されました。私は裏門の駐車場から目的地まで、延々と歩かねばなりませんでした。
「日本の会社って、なんて了見が狭いのだろう!」――こう思ったのは私だけでしょうか?
しかし、今の日本企業は違います。なぜならば、世界を相手に戦っているからです。購買も販売も広い視野で考えなければなりません。もうお隣どうしでいがみ合っている時代は、とうの昔に終わったのです。今では、D社もほとんど全ての自動車メーカーへ部品を供給しています。
グローバリゼーションの影響が、こんなところにも出てきているのです。