最近の日本における中国関連のニュースは、”毒入りギョーザ”ばかりが注目され、同じくらい重要なニュースがあるのにもかかわらず、あまり熱心には報道されていません。
現在中国は2つの”憂鬱”を抱えています。ひとつは、サブプライムに揺れる米国経済、もうひとつは50年ぶりに中国を襲った大雪です。
米国は1600億ドル(18兆円)に上る財政出動の政策パッケージやFRBの大幅な利下げにより、深刻な経済危機を打開しようとしています。
米国は世界の消費市場の20%を占める、巨大な消費マーケットですが、特に中国から多くの製品を輸入しています。たとえば世界最大の小売業ウォルマートの商品の70%は中国からの輸入品だと言われています。
実は現在の中国は、日本以上に輸出に頼る経済構造になっています。2006年の日本の輸出依存度(財の輸出金額/名目GDP)は、14.8%ですが、中国は36.9%も占めているからです。
それともうひとつの問題が、この冬に中国中南部を襲った50年ぶりの大雪です。鉄道も飛行機もストップし、港湾では荷役が滞留、道路は大渋滞で、中国の発電の85%を占めるといわれる石炭の輸送ができず、在庫が底をつき、発電所の操業が停止され、大規模な停電が発生しました。
そのため野菜を初めとする食料品の価格が大暴騰しているのにもかかわらず、日本向け冷凍食品は、毒入りギョーザのおかげで完全にストップし、輸出価格は大暴落しています。
2月7日に始まった春節(旧正月)の帰省ラッシュも完全にストップしました。広東駅だけでも18万人が野宿を余儀なくされた、という報道もされています。
また、中国へ進出している日本企業も部品を調達できなくなったため、工場の操業停止を余儀なくされています。
このように中国経済の60%を占めるといわれる揚子江以南の地域が雪のため大混乱に陥り、今年1月中旬から2月上旬の経済活動の停止により、1-3月期の中国経済に大打撃を与える、と考えられています。
今年2月の上海証券取引所の株価は、昨年11月に比べて30%も大暴落しています。「今年8月の北京オリンピックまでは、なんとか持ちこたえる、大丈夫」という声もありますが、「はたして本当にそれまで持つのか?」という声も上がってきています。
現在、日本にとって最大の貿易相手国である中国とアメリカの経済に暗雲が漂い始めたということは、われわれ翻訳業界にとっても見過ごすことのできない”きざし”と言えます。