2010.3.10 日経新聞
上場企業の2010年3月期は2期ぶりに最終黒字転換する見通しで、リーマン・ショック後の業績悪化からようやく立ち直ってきた。この20年間でバブル経済の崩壊、IT(情報技術)バブルの崩壊を経て、上場企業の勢力図は大きく変わった。電機など製造業が地盤沈下する一方、通信・商社が浮上した。ただ、新顔は少なく、日本経済の核となる成長業種の不在が浮き彫りになった。
(中略)
バブル崩壊が始まった1991年3月期は松下電器産業(現パナソニック)が首位。3位に日立製作所、5位に東芝など電機大手が6社入った。日本製の家電や半導体が世界市場を席巻していた時代だ。
しかし2010年3月期には上位20社から電機メーカーは姿を消した。韓国のサムスン電子に代表されるアジア勢に押され、低収益が常態化。かつての基幹産業の面影はない。
電機に限らず製造業は退潮ぶりが鮮明だ。上位20社のうち製造業は武田薬品工業、ホンダなど4社にとどまり、1991年3月期(9社)の半分以下。
(中略)
通信は携帯電話の普及、商社は原油など資源価格の高騰が追い風になった。だが、「両業種とも日本経済のけん引役になるのは難しい」(三井住友アセットマネジメントの宅森昭吉氏)。国内の携帯電話市場は飽和状態なうえ、資源ビジネスは自動車など製造業に比べ産業のすそ野の広がりが期待しにくいためだ。
(後略)
・・・・(記事の転載ここまで)
ホンダの利益も新興国向けの二輪車販売が好調なためと聞いていますが、戦後の日本経済をけん引してきた「電機」と「自動車」業界の落ち込みには今更ながらに驚かされます。
日本の携帯電話業界は広く知られているようにガラバゴス化(日本市場でしか生存できない)していて、その出口戦略を描けずにいます。ソニーのトランジスタ・ラジオやウォークマンに代表されるように、小さく軽く高性能は日本のお家芸だったわけですが、その力を存分に発揮できる場がありません。かつてのビデオのベータマックスやパソコンのマッキントッシュの販売戦略の失敗に通じるものがあります。
一方の日本の商社は輸入した天然資源を日本市場に高く売ることにより儲けているわけですから、はたして本当に日本の国益にかなっているのでしょうか。
海外企業に負けないため、日本企業もこれからはもっと積極的に合併や買収を推し進め、豊富な資金力で新興国ビジネスのリスクを分散しながら取り込んでいって欲しいものです。
各企業が持つ個別の戦略だけでなく日本国全体の国家戦略がより重要になってくるはずです。