2014年4月10日(木) 朝日新聞朝刊より
謎は何も解消されず
名古屋大教授・森郁恵
科学者として私たちが抱いていた疑問は何も明らかにされなかった。
一言でいえば「論点がずれている」。
切り張りをした画像について、2枚の画像がそれぞれ存在するので「改ざん」には当たらないと主張していたが、別々の画像を1枚にした時点で科学の世界では「ないものを作った」ことになる。
写真の取り違えについては、自分で気づいてネイチャーに訂正を出した際、今年2月に撮り直した写真を出したと言っていた。これも科学者の常識に反する。実験をした時期に撮った写真を提出すべきだ。
STAP細胞が本当にあるのかについて「ある」と断言し、「コツが必要」と説明しているのに、そのコツを聞かれたら「次の論文に支障があるので言えません」と言ったのも変だ。すでに出た論文の再現に必要な情報を「次の論文」のために明かさないということはありえない。 (後 略)
(以上で朝日新聞の記事終り)
昨日、小保方氏の記者会見が行われました。
そのため、昨夜のテレビニュースや今朝のラジオニュースも新聞もその話題で持ちきりでした。
この件につき、沢山の識者、専門家がインタビューを受けコメントを出していましたが、名古屋大学の森郁恵教授の解説が、最も明快でわかりやすかったので、上記にご紹介させていただきました。
下記はそれに対する私の感想です。
① 画像の切り貼りについて
森教授の指摘どおり「別々の画像を1枚にした時点で改ざんになる」という主張は当然でしょう。ましてやこれは「研究論文」なのですからなおさらです。
研究により、導き出された未知の事実とそこに至るまでの過程を、正確に報告するべきです。堂々と「改ざんではない」と主張する小保方氏の姿勢にやはり大いなる疑問を感じざるを得ません。
② 写真の取り違えについて
「研究論文の中の写真が違っていたから差し替えてください」と言って、ネイチャーに差し替えを頼んだそうですが、その新しく提出した写真が、今年2月に撮影したもの、つまり論文を提出した後に撮影したものというのは、一体どういうことでしょうか?
論文を作成するまでの段階の実験の際に撮った写真でなければ意味がありません。実際、その両者が撮影された環境は条件が異なっていたそうですから何をか言わんやです。
③ 「そのコツは言えません」
論文の検証のためにそのコツ、つまりSTAP細胞を作る具体的な手順を分かりやすく示してください、と言われているのに「できない」とは、これまた一体どういうことでしょうか?
すでに世の中に公開されている論文が事実であるかどうかの検証を求められている訳ですから、「次の論文に支障があるから言えません」では、「全てウソだから言えません」と思われてもしかたないでしょう。
以上、小保方氏の反論は、なんの説得力も持たない非論理的な説明でした。
涙で視聴者の情に訴える作戦であったとしか思えません。
STAP細胞の発見は、人類の歴史を変えるとまで言われた大発見だそうです。だから世界中が注目しています。
それなのに、そんなに重要な研究論文が、あまりにもずさんに作成され、提出されていたという事実に唖然とします。
やはり、一部で報道されているように、「異常な何か」があったのではないか?と勘繰りたくなるほど「異常な」事件と言えます。
「裁判になればこの事件の決着には時間がかかる」という報道もありますが、あっという間に急展開、なんてこともありそうな気もします。
「技術立国日本」
「日本人は勤勉で誠実」
「日本の技術者や職人さんはとても優秀」
そういうイメージを持っている外国の人々から落胆と失笑の声が聞こえてこないよう、日本にとって「良い」結末となるよう望んでいます。