メディアが作ったインド投資ブームを疑う理由――その3
引き続き、日経ベンチャーの中で財部誠一氏が連載している「中小企業とBRICs 熱狂と混沌の市場の中で、日本企業は・・・・・・・」の記事をご紹介しながら、内容を考えていきたいと思います。
(以下、記事の要旨)
ヒンドゥー教を背景に3000年もの歴史を持つカースト制度は、日本人には想像もつかぬ複雑さと重さを持ってインド社会に沈殿している。
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・ バラモン(僧侶・司祭階層)
・ クシャトリア(王侯・武士階層)
・ ヴァイシャ(平民・商人階層)
・ シュードラ(上位3カーストの被征服民)
この4つのカーストが広く知られているが、実はこの下にアウトカーストと呼ばれる階層があり、そのアウトカーストもまた、上下二つの階層に分かれている。
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さらに身分制度だけでなく、「ごみ拾い」は孫の代まで「ごみ拾い」という徹底ぶりである。インドではよく見合いを募集する新聞広告が出るが、プロフィールには必ずカーストの階層が明記されている。
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インドに工場を持つある日系企業を取材すると、管理職は例外なしにバラモン・クシャトリアという上位2階層の出身者だけ、工場労働者はヴァイシャ・シュードラという下位2階層の出身者だけであった。
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しかし、例外もある。インド最大の自動車メーカーであり、かつインドで最も成功している日系企業、スズキの鈴木修会長によると、スズキのインドの工場では、同じ食堂で、インド人の工場労働者も管理職も一緒に食事をとっているという。鈴木会長がまず率先垂範して、自らが工場労働者たちと一緒に食事をとり始め、その姿を見たインド人管理職たちも徐々に仲間に加わり、今ではそれが当たり前になっているという。
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いずれにせよ、強く、明確な意思を持った経営者でなければインド社会では到底やっていけそうにないだろう。
以上で記事の要旨は終わりです。
この記事を読んで、有名な「たとえ話」を思い出しました。アフリカへ靴を売りに行った2人の日本の商社マンの話です。
商社マンAはこう会社へ報告しました。
「アフリカで靴を売ろうなんて、絶対に無理です。だってみんな裸足ですから」
商社マンBはこう会社へ報告しました。
「最高のビジネスチャンスです!だってアフリカの人は誰も靴を履いていないから」
インドにおけるカースト制度は、きっと日本人の想像をはるかに超える過酷な現実なんでしょう。しかし、日本でも欧州でもかつては厳しい身分社会を経験して現在に至っています。
カースト制度は2,500年続いたという説もあれば、5,000年続いたという説もあるようですが、いずれにせよ300年も5,000年も同じことです。五十歩百歩です。人間の寿命は長くてもぜいぜい50~60年なのですから。
実際、第10代インド共和国大統領、コチェリル・ラーマン・ナラヤナン氏(1921-2005)は、最下層のカーストとして生まれ、最後は大統領にまで昇りつめました。
日本の「士農工商」のように、カースト制度は、職業により身分を区別する制度のようですが、カーストが成立した時期には存在しなかった職業などはカーストの影響を受けにくいそうです。そのため、インドでIT関連事業が急速に成長しているのは、カーストによる差別を嫌った人たちが集まってきているからだそうです。
スズキ自動車の鈴木会長の言う「身分制度なんか関係ない!みんな一緒だ」という考えに、必ず多くのインド人たちが賛同するはずです。成功している日系企業が少ないだけに、逆に大きなビジネスチャンスなのかもしれません。
(この項、終わり)