シングルモルト、シングルカスク、カスクストレングス
ウイスキーの話題になると必ずと言ってよいほど出てくる言葉に、シングルモルトがあります。この「モルト」は麦芽(通常は大麦)、「シングル」は「一つの蒸溜所」を意味します。
つまりシングルモルト(Single Malt)とは、「一つの蒸溜所で造られた麦芽を原料としたウイスキー」のことを意味します。したがって複数の蒸溜所で造られたモルトウイスキーをブレンドした場合は、シングルモルトとは呼びません。
また、シングルカスク(Single Cask)という言葉も聞いたことがあるかもしれません。「カスク」とは樽のことなので「一つの樽から取り出されてボトル詰めされたウイスキー」という意味になります。
さらにカスクストレングス(Cask Strength)という言葉も聞いたことがあるかもしれません。「ストレングス」とは強さ、つまりアルコール度数の強さを意味します。したがって樽から取り出したウイスキーに加水することなく、樽から出したままのアルコール度数でボトル詰めされたウイスキーということになります。
まさに「何も足さない、何も引かない」状態なので、通常50度~60度という高いアルコール度数になります。ウイスキーファンにとってはあこがれの「至極の一杯」となります。
さて、私たち大学時代の友人3人は「死ぬまでにできる限り多くの世界の蒸溜所と醸造所を訪ねてみたい」という共通の夢を持っています。その夢を叶えるべく遠路はるばるアイラ島までやってきて、あこがれのカスクストレングスのボトル詰めを実現しました。
蒸溜所の見学ツアーのあとお待ちかねのテイスティング・タイムとなるわけですが、その時はガイドの女性に倉庫の中へ案内され、3つのカスク(樽)をテイスティングさせてもらいました。
そして3つの中から自分の気に入ったウイスキーを選び、樽の中に巨大なスポイトのようなものを差し込んでコップに注ぎ、コップから所定のボトルへ移し替えるのです。
移し替えた LAPHROAIG のビンが下記の写真です。Cask No. 51、樽詰めされた年:2005年、アルコール度数:55.1%、容量:250ml、ボトルNo.22というように自分でタグに書き込みしました。現在自宅の自分の机の上に置いてあるのですが、時々あの時を思い出しながらチビリチビリとスモーキーな深いコクを楽しんでいます。
ブナハーブンのハンドフィルボトル
上記のラフロイグ(LAPHROAIG)蒸溜所では、樽から直接自分の手でボトル詰めしたわけですから、まさにそれはハンドフィルボトルということになります。しかし、直接自分の手で「ハンドフィル」しなくても、現地の蒸溜所限定で販売されているボトルのことを指す場合もあるようです。
いずれにせよ、わざわざ蒸溜所まで足を運んで、テイスティングしてから購入するような人たちが対象なので、かなり出来の良いカスク(樽)が厳選されていると聞いています。また、一つのカスクがなくなってから、別のカスクを空けるわけですから、蒸溜所へ行った人だけが、その時だけの限定品を買えるという魅力もあります。
さて、私たちはブナハーブン(BUNNAHABHAIN)でも蒸溜所の見学ツアーに参加し、最後に蒸溜所のショップで数種類のテイスティングをさせてもらい Hand-Filled Exclusive のボトルを購入しました。
私が購入したのは下記の2本です。ひとつは16年モノでアルコール度数が55.4%、もうひとつは12年モノでアルコール度数が60.4%です。
両者ともアルコール度数は高いのですが、口当たりの柔らかな飲みやすいモルトウイスキーです。なぜならブナハーブンはピート(泥炭)をほとんど炊かずに造られているため、アイラモルトの中では異色の存在で、スモーキーさは控えめでクセの少ない「最も飲みやすいアイラ」と言われているからです。
そう言った意味では、最初に紹介したラフロイグはピート香の強い、典型的なアイラモルトですが、対照的な存在としてブナハーブンがあり、その両方の「ハンドフィルボトル」を自宅で味わえるというのはとても幸せなことです。