2012年6月29日 日本経済新聞朝刊
財務省は海外から電子書籍や音楽、広告などを日本向けに配信するサービスに消費税を課す方針を固めた。消費増税関連法案が国会で成立すると2014年4月から消費税率が8%に上がることから、早ければ同時に実施する。ネット取引課税について国内企業と海外企業の格差が解消に向かうが、海外勢にどうやって確実に納税させるかが課題となる。
(中 略)
国境をまたぐ取引の場合、どこでサービスが提供されたかの判定は難しい。航空機の国際便運賃は免税とされ、事実上、消費税はかかっていない。海外企業による音楽ダウンロードを日本で利用する場合も、日本の消費税はかかっていない。
だが海外事業者が事実上、優遇される仕組みを放置すれば、日本企業は拠点を海外に移すといった対応を迫られる。コスト競争力への不安から、海外にも課税の網を広げるべきだとの要望は産業界から強まっている。
実際に効果があがる枠組みを作れるかどうかは不透明な面もある。欧州連合(EU)はサービスを提供する事業者に対して各国に登録させ、納税させる仕組みを作っているが、きちんと機能しているかどうかの検証は難しい。課税のための情報交換なども特定国との協力にとどまれば、企業が別の国に事務所を移して課税逃れをする「いたちごっこ」になる可能性もある。
(以上で記事終わり)
消費税法ができた1989年には、このような「インターネットによる電子商取引」など、とうてい想像もできなかったことでしょう。
法律というものは常に世の中の動きに遅れて、止むを得ずかつ突然にして動き始めるものです。
『文芸春秋』の2012年5月号に、「税金を払っていない大企業リスト―隠された大企業優遇税制のカラクリ」という論文が掲載されています。元国税庁職員で、中央大学の富岡幸雄名誉教授が書いているものです。
上記は法人税を「節税」している例ですが、今後消費税率が上がれば、海外の関連企業を使って、ありとあらゆる税逃れが行われるでしょう。結局「いたちごっこ」が続くのでしょうが・・・・・。
20数年前の話ですが、ある税務署職員から聞いた話を思い出しました。
当時東南アジアをはじめとする世界各国の途上国の税務官が日本の税務署に研修に来ていたそうです。
その中の一人、ある東南アジアの税務署員Aさんと日本の税務署職員Bさんの間のやり取りです。
Aさん:「あそこに並んでいる長蛇の列は一体なんですか?」
Bさん:「日本では毎年3月15日が確定申告の締切の時期なんです。その申告のために窓口に並んでいる人たちの列ですよ」
Aさん:「え!・・・と言うことは、あの人たちは税金を払うために長時間並んで待っているのですか?」
Bさん:「そうですが、それが何か?」
Aさん:「信じられない!私たちの国では、税金を払えと言っても誰も払わず皆雲の子散らすように逃げ回るので、それを捕まえるのが大変なんです。それなのに、日本人は税金を払うためにわざわざ何時間も並んで待っている。んー、信じられない。これが日本の強さなのですね」
世界で戦うためには相当な「したたかさ」も必要でしょうが、この日本人固有の生真面目さも忘れずにいてほしいものです。