唐突に何を言い出すのか?とお思いでしょうが、かねてより私が不思議に思っていた日本の常識について、これから少し検証してみたいと思います。
今から10数年前、私があるアメリカ人に、「日本人の祖先はほとんどが農民だから欧米人の考え方とはずいぶん違う」と言ったところ、彼はけげんな顔をして「ヨーロッパでも昔はほとんどの人が農民だった」と答えました。まさに「目からウロコ」だったワケですが、まずは、小麦とお米の歴史から考えてみましょう。
世界各地の古代遺跡から麦の穂や粒が発見されていることから、今から1万年以上も前から、人類は小麦を食べていたと言われています。また、稲の栽培が始まったのは、今からおよそ1万年~7000年前。インドのアッサム地方から中国の雲南省(うんなんしょう)という地域にかけての山あいと言われ、その後、東南アジアや中国各地に広がり、日本に伝わったのは今から3000年~2700年前の縄文時代と言われています(※資料:文珠省三・福原敏男「米と日本文化」および渡部忠世編「稲のアジア史3 アジアの中の日本稲作文化」より)。
(検証1)
欧州・アジアの各地で1万年以上もの昔から小麦や米が食べられていたが、日本でお米が食べられ始めてから、まだわずか3,000年ほどの歴史しかない。
→ 欧米人が筋金入りの「農耕民族」ならば、日本人は「農耕民族」としては実に「新参者」である。
次にここ数百年間の動きを見てみましょう。
(検証2)
士農工商という身分制度が存在した時代、つまり江戸時代の、農民と漁師を合わせた人口は、全人口の83%~76%であったと推定されている。中世ヨーロッパにおける全人口に占める農民の割合に関する資料は残念ながら見あたらないが、18世紀から19世紀まで農奴制が敷かれていたヨーロッパでは、農民の比率が日本と同様か、それ以上であったということは、容易に想像できる。
→ 農民人口の比率を歴史的に見れば、欧米人はまちがいなく農耕民族と言える。
次に「狩猟民族」について考えてみましょう。
(検証3)
そもそも現存する狩猟民族は、現在地球上にほとんどいない。ジャングルの奥地に住むごくわずかな未開人だけだからだ。あたりはずれの大きな「狩り」だけでは、多くの人口を支えることはできず、農耕技術が発達することにより、多くの人口を支えることができるようになったからである。
→ 農耕作業を行うようになる以前の民族を「狩猟民族」と呼ぶのであれば、日本人は欧米人よりもより「狩猟民族」に近いことになる。
次に、まわりを海に囲まれている日本の漁師事情を考えてみましょう。
(検証4)
現代社会において、弓矢や鉄砲で動物を捕まえて食べて生計を立てている人間はほとんど存在しない。もし「狩猟」で生計を立てている人たちがいるとしたら、それは「漁師」のことである。
→ 現在世界で「漁師」による「狩り」が最も盛んに行われている漁業大国は、日本である。
次に日本の食料自給率の観点から考えてみましょう。
(検証5)
日本の穀物自給率は、OECD加盟30か国中29位。日本よりも低いのは、アイスランドのみ。供給熱量自給率で見ると、フランス141%、ドイツ100%、イギリス78%、日本40%(平成10年、農林水産省)となっている。
→ そもそも、本当に「農耕民族」を標榜する民族が、こんなにも自国の食糧事情を軽視するだろうか?「狩猟民族」であるからこそ自国の農業をここまで軽視するのである。
結論:
以上から鑑み、欧米人は純粋な「農耕民族」であり、日本人は「農耕民族」と言うよりは、むしろ「狩猟民族に限りなく近い農耕民族の一種」と言える・・・・・・・、と言うのが私の結論です。