日経ビジネス 2012年8月27日号 特集記事からの抜粋
国家の根幹、それは食にある。
今、日本の食を取り巻く環境には加速度的な変化が訪れている。
隣国では質と量をともなった「爆食」がその勢いを増し、
異常気象に見舞われた生産地からは悲鳴があがる
この危機が、海外からの穀物輸入に依存し、自給率が低迷しながらも、
不作為を繰り返してきた日本という国家の根幹を揺るがそうとしている。
企業が着手し始めた調達体制の見直し、国内農業の抜本改革―。
世界に開かれた変革を躊躇すれば、この国は生き残れない。
今年2月16日、ある人物が大地を踏んだ。男の名は習近平氏。この秋、中国の次期国家主席に就任する現・国家副主席である。
習副主席はこの地で生産された大豆862トン、金額にして43億ドル(約3400億円弱)相当量を中国に輸入する契約を結んだ。その規模は穀物輸入大国である日本が、年間に調達する大豆の3年分に相当する。
世界では食糧不足に端を発する暴動、社会情勢不安が後を絶たない。2010年後半のロシア、ウクライナの小麦禁輸は、中近東を直撃し、食糧価格の高騰が「アラブの春」の引き金となった。世界は食糧を巡る覇権争いの時代に突入しようとしている。
・・・・(記事の転載ここまで)
食糧問題に関しては、「ネットワーク地球村」の中の「5分でわかる食糧問題」にわかりやすく書かれていますが、その要旨を下記にまとめてみました。
世界で年間1500万人以上の人が「飢餓」で死んでいる。
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世界中の食べ物は足りないのか?
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いいえ、穀物は世界中の人が生きていくのに必要な量のおよそ2倍生産されている。
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それではなぜ?
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牛肉1キロ作るために穀物8キロ、豚肉1キロ作るために穀物4キロ、鶏肉1キロ作るために穀物2キロを消費している。
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結果として、世界の 2割足らずの先進国の人間が世界の穀物の半分以上を消費している。
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戦後の日本は戦前と比べ肉や卵を食べる量は10倍になり、家畜のえさ用のトウモロコシや大豆98%を輸入している。
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世界で取れるマグロのおよそ半分が日本で消費されている。マグロの漁獲を減らさない限り、 20年後には、絶滅するといわれている。
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日本の食品の約7割は、世界から輸入したもの。日本人は、その3分の1(1940万トン)を食べずに捨てている。
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食糧の廃棄率では世界一の消費大国アメリカを上回り、廃棄量は世界の食料援助総量740万トンをはるかに上回っている。
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日本の家庭からでる残飯の総額は、日本全体で年間11兆円。
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これは日本の農水産業の生産額とほぼ同額。
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さらにその処理費用で、2兆円が使われている。
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日本は食糧の 7割以上を輸入する世界一の残飯大国。
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では、どうすればよいか?
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・まず食べる量を (例えば一割)減らしましょう
・無駄な買い物、肉食、食べ残しを減らしましょう
・国産品、無農薬の農作物を選びましょう
・輸入品や季節はずれの食品 (ハウスの果物、野菜など)はさけましょう
(以上で要約終り)
私は、ジャレド・ダイヤモンド博士の『銃・病原菌・鉄』というDVD(ナショナルジオグラフィック)を持っています。
これは、人類の歴史をひもときながら、「世界に格差が生まれた原因」を追究する3枚組のDVDです。
「なぜ人間は他の動物よりも繁栄することができたのか?」
「なぜ地球上には、地域により大きな文明の格差が生まれたのか?」
なんとその答えの第一は「穀物」だと言うのです。
1万年前から1万5000年前、中近東では小麦の栽培が始まる。同じころアジアでは米の栽培が始まる。農耕民族の始まり。
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栄養価の高い穀物を栽培することにより、生活に余裕が生まれ、空いた時間に研究することができるようになり、銅や鉄が開発される。
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農業の効率化のために牛や馬などの家畜を飼うようになり、やがて豚やヤギ、ヒツジ、鶏などの家畜を飼い始めて食糧にするようになり、さらに余裕が生まれてくる。
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したがって、人類の文明の格差を生んだ原因は、地域の気候によるところが大である。
というものです。
やはり、穀物を制する者は世界を制するのです。
いつか必ず人類は「飢餓」の時代を迎えるでしょうが、その時期をできるかぎり遅らせるようにこれから知恵を絞らねばなりません。
特に日本にとってはとても深刻な問題といえます。