2013年8月14日 日本経済新聞朝刊
大豆や小麦、トウモロコシといった穀物の世界生産量が2013年度は過去最高となる見込みだ。国際価格も大幅に下がっており、穀物需給の逼迫はひとまず緩和される。円安のあおりで値上がりが続く食用油や大豆製品、飼料などの国内価格も上昇が一服しそうだ。
米農務省の8月の需給予測によると、13年度の世界の穀物生産量は約24億3000万トンと前年比8%増える。三大穀物のトウモロコシと大豆、小麦の生産量はそろって最高を更新する。
(後 略)
(以上で記事終り)
「世界の人口が増加しても食糧危機はおこならい」という説をとなえる人がいます。
東京大学大学院農学生命科学研究科准教授の川島博之氏です(詳細はこちらをご覧ください)。
そのロジックをかいつまんでご説明すると以下のようになります。
グローバル化により、先進国が発展途上国に進出し、その結果として途上国の農村人口が都市部へ移動する。
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近代化、農業の工業化(農業機械の導入、品種改良、化学肥料など)により農業生産性が飛躍的に向上する。
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途上国都市部の人々の収入が増え、生活が豊かになると子供たちに高い教育を授けるようになる。
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かつて先進国が歩んできたように子供への教育費がかさんでくると自然に子供の数が減っていき、人口増加にブレーキがかかる。
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食料危機問題が解決されていく。
というロジックですが、ほかにも下記のようなことにふれています。
現在、全世界の人口増加率は1%強。しかし20世紀後半、全世界の人口増加率は2%程度もあったが、食糧危機は起こらなかった。なぜか?
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一部アフリカなどでおこった食糧危機問題は、人口増大、環境問題、農業生産量の不足のどれでもなく、実は政治の混乱が原因だった。
というのが、川島氏のロジックとなります。
話は変わりますが、1993年に日本では、冷夏によりコメ不足おこりました。いわゆる「平成のコメ騒動」です。
このとき日本は急きょ外国からコメを輸入しました。
なかでもタイ政府などはせっかく良いコメを日本向けに選別して輸出してくれたにもかかわらず、日本人は「口に合わない」と言って、食べずに捨てたりしました。
そのため、大量にドブに捨てられたタイ米の映像がテレビのニュースに出て社会問題になったりもしました。
それにより思わぬとばっちりを受けた国があったのです。
世界最貧国でもあったバングラディッシュは、日本がコメを輸入したため、アジア諸国のコメ相場が突然上がり、ところてん式に一番安いコメを輸入していたバングラディッシュに深刻な飢饉をもたらしたということです。
さて、下記のような報道もあります。
「中国に食糧危機の影 急速な都市化、減る農民、輸入急増…」(産経ニュース)
中国に天変地異による飢饉でもおこれば、なにせ13億を超える人口の国ですから、周辺諸国へ与える影響はかなり大きいでしょう。
また、インドもしかりです。
食料問題は軍事やエネルギー問題と同様、非常に大きな国家の安全保障問題のひとつだと思います。