2013年6月26日 日経ビジネス 2013.6.24号より
本格的な構造改革を怠り、衰退が止まらない日本農業の象徴であるコメ。
TPP参加の有無にかかわらず、守り一辺倒の先に未来はない。
稲作も含め成長産業として再生するには、規制緩和などの政策や農業改革が急務だ。
(中 略)
韓国は米国、欧州連合(EU)などとのFTA(自由貿易協定)に備え総額10兆円規模の農業・農村対策を用意した。農家への直接支払いのほか高齢農家の経営移譲や農業からの撤退促進策などを盛り込み、生産性向上や規模拡大を後押ししている。
ノルウェーも日本では衰退産業とされる漁業で資源管理を計画的に行いつつ、小さな漁船を国が買い取ってスクラップ処理し、大きな船で効率的に魚を取る仕組みへと転換した。
今では世界第2位の水産輸出国に躍り出たノルウェー。水産業者の年収は国民平均の倍近くに達するほど成長産業に生まれ変わっている。
韓国やノルウェーに共通するのは民間の創意工夫に加え目先の損得勘定に左右されない政治の覚悟と国民の理解だ。
(後 略)
・・・・(記事の転載ここまで)
今回の日経ビジネスでは「農協支配の終焉」と題し、農協の束縛から脱し、活路を海外へ求めている元気な日本の農業従事者の話がいくつも紹介されています。
海外への輸出である程度の成功を収めていながらも、今後ますますの発展を海外に求める農業従事者の話もあれば、農業に積極的にITを導入し、国際競争に勝てる商品を作り上げている企業などが紹介されています。
しかし、日本の農業においてどうしても避けて通れない話があります。それが“コメ”です。
この記事には「多くの農家が関わるコメに政府は手厚い保護政策を続ける。生産量を減らして米価を高くする生産調整(減反)と高関税を維持し、負担を消費者に回してきた。耕作者自らが農地を所有すべきという『耕作者主義』の原則も崩さず、農地への優遇税制や所有・利用規制を継続している」とあります。
そして、それを打開するためには、補助金を見直し、規制を大幅に緩和し、企業による競争原理を導入しなければならないとしています。
今から7~8年ほど前だったと思いますが、テレビのニュースの特集でノルウェーの漁業の話が取り上げられていました。
1980年代前半まで、かつての漁業大国ノルウェーは、漁業従事者の高齢化と後継者不足に悩み、漁業は衰退の一途をたどるばかりでした。
そこでノルウェー政府は1980年代に、古い小さな船を国が買い取り、大型船に入れ替え、かつ徹底的なIT化導入の政策を推し進めまていきました。
そのテレビのニュースによると、ノルウェーの漁船の中は超近代的で、若い船員各自にも個室が与えられ、各部屋にパソコンが完備されていました。
魚を探して網で捕獲し、獲れた魚を種類や大きさ毎に区分けし、港へ運ぶまでのすべてをコンピュータと機械が行うため、漁師さんは魚にはいっさい手を触れません。
漁師の年収は他の職業に比べて倍近い「高収入」であり、ITを駆使した「カッコいい」職業であるため、若者の漁師応募者が殺到し、今やノルウェーでは憧れの職業となっているとのことでした。
同じことを日本の第一次産業(農業、漁業、林業)においてもできないわけはありません。
「小麦」を世界一輸入している国イタリアは、世界一パスタを輸出し、小麦の国内生産量もどんどん増えているそうです。
一方で規制ずくめで輸入を制限している日本のコメは生産量が減るばかりです。
日本の技術で世界に誇れる日本の食文化や食料加工品を海外へどんどん輸出して、世界一の農業輸出大国になってもらいたいものです。
あの小さな国オランダが世界第2位の農業輸出国であるわけですから、できないわけはありません。