勃興する「VIP」3国

2013年1月16日 日本経済新聞朝刊

安倍晋三首相が16日から東南アジア諸国連合(ASEAN)を歴訪する。就任後初の外遊先としてASEANを選んだのは、日本にとって経済と政治の両面で重要性が増しているためだ。台頭する東南アジアの実力を点検する。

財政の健全化が進む東南アジアの力の源泉は、6億人に達する人口規模と、堅調な経済成長に支えられた購買力の拡大だ。

東南アジア主要5カ国で年間の家計可処分所得が15,000ドル以上の中間所得層・富裕層の人口は2009年時点で約5,000万人。このうち企業誘致などで先行したタイやマレーシアが6割を占めるが、ここに来てベトナム、インドネシア、フィリピンの頭文字を取った「VIP」で所得が急拡大している。

日本貿易振興機構によると「VIP」では20年までの10年間で中間所得層・富裕層が約7倍に膨張。「一億総中流」を達成した1960年代の日本の人口に相当する1億人の購買層が新たに誕生する計算だ。同5,000~15,000ドル未満の中間層予備軍も1億人増え、2億2千万人に達する。

この3カ国は人口構成が若いという特徴がある。65歳以上の人口は5%前後で高齢化とは当面無縁。逆に14歳以下は2~3割を占める。これが域外企業の投資を呼び寄せる要因の一つになっている。

欧米の景気が停滞する中、ASEAN加盟10カ国の国内総生産(GDP)は昨年、5%台の実質成長率を確保したもよう。個人消費を軸とする国内需要の拡大で、域外の経済情勢の変化への耐性はさらに高まりそうだ。

2013年1月16日 日経新聞

(以上で記事終わり)

一時期、NIES (newly industrializing economies 新興工業経済地域) という言葉がもてはやされました。

輸出産業を軸として急速に工業化を遂げ、高い経済成長率を達成している諸国・地域のことですが、具体的には、韓国・台湾・シンガポール・ギリシア・メキシコなどです。

1988年のサミットあたりから使用されたようですが、現在ではあまり使用されていません。

なぜなら各々の国の存在感があまりにも強まってきたからでしょう。

シンガポールは、2007年に一人当たりの名目GDPで日本を追い越し、最近では日本と抜き抜かれずのデッドヒートを繰り広げています。

韓国のサムスンは、1社で日本の電機業界の大半を壊滅の危機に追い込むまでに成長し、現代自動車も今後日本の自動車業界にかなりの脅威となってくるでしょう。

台湾の電機メーカーは、日本の大手電機メーカーを買収する、しないと騒がれるまでに存在感を強めてきています。

また、今や世界経済を語るとき、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)の動向を抜きに語れないほど、BRICs諸国は決定的な影響力を持ち始めています。

つい最近まで「発展途上国」の一部にすぎないと思われていた「新興国」が、急速に日本に対する影響力を強めています。

上記の記事にあるVIP3国も現在の生産国としての存在から、消費国としての存在に変化していくことでしょう。

つまり、いつまでも安い人件費を求めて進出する「生産現場」としてばかり見るのではなく「お客様国」として認識する必要があるということです。

当然、今後はグローバルマーケットでの「ライバル国」にもなりうるわけです。

「安い人件費の国で作ったモノを仕入れて、裕福な先進国へ売って儲ける」という20世紀型ビジネスモデルが通用しなくなる時代がすでに始まっているのかもしれません。