2013年11月1日 朝日新聞より
政府の教育再生実行会議は31日、大学入試改革に関する提言をまとめ、安倍晋三首相に提出した。大学入試センター試験を改編し、成績を点数でなく上位から下位まで何段階かにランク分けして表示。複数回実施も検討する。その上で、意欲や潜在能力がある学生を迎え入れるため、面接などによる人物本位の選抜に転換するよう大学側に求める内容だ。
(以上で記事終り)
「面接などによる人物本位の選抜」って何でしょうか?
何万人もの受験生にわずかな時間の面接を行い、一体なにがわかるというのでしょうか?受験生にとっては、せっかく努力したのに面接官による当たりはずれで人生が決まってしまう、という不安が常につきまとうことでしょう。
そもそも「専門知識」を身に着けるべきはずの大学教育になぜ人柄や性格が求められるのでしょうか?
「ゆとり教育」の時と同様、日本人が大好きな「建前」だけでことを進めていけば、悪いものをより悪くするという単なる「教育改悪」に終わりかねません。
日本が今すぐにやるべき教育改革は、たった一つしかありません。
幼稚園から大学までの授業料の無償化
現在、OECD加盟30ヶ国のうち高校の授業料が無料の国は26ヶ国あり、大学の授業料が無料の国も14ヶ国あります。日本は高校、大学ともに有償であるばかりでなく、大学授業料などは飛びぬけて高い国となっています。 ⇒ 詳細はこちら
現在日本の大学4年間にかかる費用は、平均的に400数十万円から600数十万円で、医学部や薬学部等はさらにずっと高くなっています。
しかもそれに加えて日本の場合は、小学生も中学生も高校生も学校とは別に多額の授業料を払って「塾」や「予備校」に通わなければなりません。
大学に入っても資格をとるためには、さらに別途授業料を支払って「資格の予備校」へ通わなければ資格がとれません。
日本では家計に占める子供の教育費の割合が異常に高く、勤労世帯の平均可処分所得の半分以上を教育費が占めています。 ⇒ 文部科学省の統計資料より
しかし、日本が幼稚園から大学まで教育費を無償化するためには、一つの条件があります。
それは「学校で勉強を教える」ということです。
日本は世界でも珍しい「落第」のない国
下記のグラフは、“ OECD, PISA 2009 Database” の資料(クリックすれば大きくなります)ですが、世界各国において「小学校、中学校、高校で少なくとも1度以上、留年したことのある人の割合」です。
フランス、ルクセンブルグ、スペイン、ポルトガル、ベルギーでは3人に1人、オランダ、スイス、ドイツでは4人~5人に1人、アメリカでも15%ほどの人が留年、つまり「落第」を経験しているのです。
日本では小学校、中学校で「落第」などと言うと、「とんでもない!、うちの娘が嫁に行けなくなったら誰が責任とってくれるのか?」と先生や校長が親に詰め寄られて大問題となることでしょう。
日本においては「世間様からどう見られるか?」が一番重要なことなので「落第」などとんでもありません。そのため小学校、中学校、高校と「留年」することなくスルーし、大学も入ってしまいさえすればほとんどの生徒が卒業できる「システム」が確立されています。
なぜ日本には落第がないのでしょうか?
日本の学校では勉強を教えない?
日本の学校では子供たちに満足な教育を授けません。
まず、1クラスに40名以上の生徒がいては、先生1人できめの細かい授業などできません。また授業時間数もあまりにも少なすぎます。
そして落第者を出さないようにするため、常に「できない子」のレベルに近づけて授業を進めます。「できる子」たちは学校が終わった後、勝手に「塾」へ行くので何の心配もありません。
授業についていけない子がいたら、「できない子」用の「学習塾」を勧めます。それでもついていけない場合には潔く諦めます。日本の親にとって一番大切なことは子供の「学力」ではなく「進級」と「卒業」だからです。
日本の小学校、中学校、高校は自動的に卒業できるシステムが出来上がっています。高校においても、もし学力が極端に不足して卒業が難しいという生徒がいたら、そのために用意された「必ず卒業証書を出してくれる公立高校」へ転校するよう勧められます。
しかし、子供をそれなりの大学まで進学させたいと考える親たちは、自分の子供を学習塾や予備校へ通わせます。「日本の学校では勉強を教えない」ということは、もはや日本の常識なので、親たちもなんの疑問ももたずに自分の子供を塾や予備校へ通わせます。
もし日本が幼稚園から大学まで教育費を無償化すれば、その分税金が高くなりますが、学校で勉強を教えることにより、塾や予備校という無駄な出費が大幅に家計から削られることになります。
これは少子化対策にも絶大な効果を発揮します。
「学校で勉強を教える」・・・これは世界の常識
学校で勉強を教える国では、塾も予備校も必要ありません。受験浪人もなければ、沢山の大学を受験するために発生する多額の受験料も必要ありません。
オランダの小学校では宿題もないそうです。勉強は学校だけで十分との考えだからです。学校で勉強を教えるので、当然「できる子」と「できない子」の差がでてきます。そのため「できない子」のために上級生が教えてあげたり、先生が時間をかけて勉強を教えたります。少人数クラスだからできるメリットでもあります。
しかし、それでもついていけない場合には、本人の意思があれば「留年」してもらい、本人が納得いくまでじっくりと勉強させます。そのため落ちこぼれは非常に少なく、教育格差も大きくはなりません。
長い間豊かな先進国として君臨し続けるオランダは、小国であるがゆえ、人材教育、つまり子供の教育に大変熱心な国としても有名です。またオランダは、ユニセフにより「世界一子供の幸せな国」として認定されているそうです。最後にそのオランダの小学校の教育システムに関する動画をご紹介して終りにします。
「留年する小学生 子ども幸福度世界一 オランダの秘密」 http://www.youtube.com/watch?v=O60VppJC45o
「教育先進国 オランダ 驚きの教育法 イエナプラン」 http://www.youtube.com/watch?v=nCi2kTh0nww