W杯の開催が迫るブラジル

世界1500メディアから記事を厳選し、日本語に翻訳して載せる、COURRiER JAPON という名の月刊誌(講談社)があります。

その 2013年12月号に「W杯の開催が迫るブラジルで犯罪と隣合わせの生活を体験した」という興味深い記事がありました。オリジナルは、 “The New York Review of Books” というアメリカの月刊誌です。

このアメリカ人記者が、ブラジルのサンパウロの高級繁華街でタクシーをつかまえ座席に座ると、突然10代後半の少年がタクシーに駆け寄って来て、彼の頭に銃を突きつけたそうです。

記者が少年にスマホを渡し、続いてお金を渡そうとした瞬間、まったく見知らぬ人がその少年を倒し殴り始めました。そしてその少年は相棒を連れてどこかへ逃げて行ったそうです。

助けてくれた人は警察でもなんでもなく、普通の一市民だったそうですが、被害がスマホだけで済んだのはむしろ幸運だったとのことです。

(記事): 「この国では誰でもそんな体験談を持っている。 (中略) ブラジルの都市部は、世界で最も危険な場所の一つだ。2010年には40,974人が殺されている。国連薬物犯罪事務所(UNODC)によると、殺人事件の人口10万人あたりの年間発生率は21人(注1)で、世界平均の6.9人(注1)をはるかに上回る。被害者(注2)の大半は男性で貧しく、15~30歳に集中している。リオデジャネイロのファベーラ(スラム街)では、平均余命が7年も短い」

注1: おそらく「21件」、「6.9件」の間違い(丸山)    注2: おそらく「加害者」の間違い(丸山)

よく聞く話ではありますが、ブラジルの都市部の治安は想像以上に悪いのかもしれません。

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(写真): ファベーラ(スラム街)を走る警察の特殊部隊を乗せたブルドーザー(COURRiER JAPON)

また、本日(2013年10月29日)の日経新聞朝刊にも「ブラジルW杯 募る不安 サッカー、来年6月開幕」という記事がありました。

(記事): 「サッカー・ワールドカップ(W杯)の開幕を来年6月に控えるブラジルで、開催準備の遅れや混乱に対する懸念が強まっている。競技場の建設が予定通りの日程で進んでいないほか、大会期間中の航空運賃や宿泊料金が高騰。政府は価格監視を強化するなどの対応に追われている。」

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(図): 西部クイアバのスタジアムはまだ建設中(10月8日)=ロイター

ギリシャでのアテネオリンピックや中国での北京オリンピック、そして南アフリカでのサッカーワールドカップなど、途上国開催のオリンピックやワールドカップの場合には、「会場準備の予定が大幅に遅れている」との不安が常につきまとっていました。

しかし、どの大会も問題なく開催されたので、恐らく今回のブラジルワールドカップも何事もなかったかのように問題なく終りを迎えることでしょう。そういえば数か月後に迫っている、ロシアのソチでの冬季オリンピックも会場建設の予定が大幅に遅れているとの報道が最近ありました。しかし、これもきっと最終的には何とかなるでしょう。

治安の問題にしても、ブラジルと肩を並べるほど治安の悪いあの南アフリカでさえ、結局なんとか乗り切ったのですから、これもなんとかなるでしょう。

余談ではありますが、日本と韓国の両国で開催された「FIFA 日韓ワールドカップ」のことを思い出しました。友人に頼んでプラチナチケットを買い求め、息子と二人で「アルゼンチン対ナイジェリア戦」を鹿島スタジアムまで観戦に行きました。

はるばるアルゼンチンから来た応援団も数百人ほどいて、ワールドカップならでは独特の雰囲気の中でスタジアムも盛り上がっていました。

しかし、超満員売り切れだったはずのスタジアムに500人ほどの無人の席がポッカリと開いていたのです。あとで知ったのですが、ヨーロッパのFIFA事務局の手違いで販売されない席が出てきてしまったとのことでした。鹿島スタジアム以外にも多くの会場で、同様の事態が起こり、実に残念なことでした。

FIFAやオリンピック委員会は「発展途上国は不安だ」と考えているようですが、ヨーロッパ人を中心とする組織委員会の人たちも相当アバウトなような気がするのですが・・・・。

「緻密で正確、期日厳守」という点に関して言えば、やはり日本人にかなう国はないと思います。2020年の東京オリンピック決定は正解でしたね!