中小企業とBRICs (その3)

脅威の市場 ロシア

引き続き、日経ベンチャーの中で財部誠一氏が連載している「中小企業とBRICs 熱狂と混沌の市場の中で、日本企業は・・・・・・・」の記事をご紹介しながら、内容を考えていきたいと思います。

(以下、記事の要旨)
モスクワでは今、消費が爆発している。「脅威の市場」と化しつつあるモスクワには、欧米資本が殺到している。だが残念なことに、日本企業の存在感は無に等しい。

ペレストロイカ以降、猛スピードで市場経済が進んだ90年代、ロシア経済は大混乱に陥った。マフィアが外国製品を輸入しては、高値で売りさばくブローカー商売であぶく銭を稼いでいた。

そこに98年、金融危機が勃発、ルーブルが4分の1に暴落し、ブローカー商売は成り立たなくなった。

「マフィア経済」が表舞台から去ったことを「チャンス」と見た欧米企業は、ロシア進出を加速した。

一方、金融危機に恐れをなした多くの日本企業は、ロシアから撤退した。

欧米資本の算入で、モノが市場にあふれ出てきた矢先に資源価格が高騰、ロシア経済は劇的な成長期に突入した。

以上で記事の要旨は終わりです。

さて、最近のロシアの天然資源やヨーロッパのエネルギー事情に関し、私なりに色々と調べてみました。多岐に渡る資料の要旨を下記に簡単にまとめてみました。

2006年元日、ロシアのプーチン大統領は、ロシアからウクライナへ送られる天然ガスパイプラインの圧力をいきなり2割下げ、西欧諸国へ大混乱を引き起こしました。ウクライナが天然ガスの単価値上げに応じなかったためです。

そのパイプラインは、ウクライナを通って欧州諸国にも天然ガスを供給していました。世界中から非難を浴びたプーチン大統領は、翌2日にはパイプラインの圧力を元に戻し、結局、ロシアとウクライナの望む中間の金額で単価交渉は決着しました。

この一件で欧州諸国のロシアに対する不信感は一挙に高まりました。しかし、地理的にもロシアに近い西欧諸国が、エネルギー大国ロシアに頼らない方向に動くことは難しいでしょう。

ドイツではむしろ、ロシアからのエネルギー供給を増やす方向へ動いています。ドイツとロシアは、合弁でバルト海の海底にパイプラインを通し、ロシアと仲の悪いポーランドやバルト三国を迂回してロシアの天然ガスをドイツに運ぶ巨大プロジェクトをスタートさせました。このパイプラインは、2010年から稼働することになっています。将来は英国その他の欧州諸国へも伸ばす予定です。

また、EU諸国は、カスピ海沿岸諸国からロシアを経由せずに、トルコ、ブルガリア、ルーマニア、ハンガリーを経由してオーストリアのウィーンに至る全長3,300キロメートルの長大なパイプラインを建設することに合意しました。2011年の完成を目指しています。これら数々の超巨大プロジェクトでは、日本の商社、伊藤忠や丸紅や、日本のメーカーが、一役買うことになります。

天然ガスは石油に比べて二酸化炭素の排出を制限できるので、地球温暖化防止策に協力している西欧諸国は、発電所などで使うエネルギー源を、石油から天然ガスに切り替える傾向を強めています。そのため、すでに天然ガスは世界中で奪い合いに近い状態です。

加えて、中国やインドといった人口大国が高度経済成長を始めた結果、世界的に石油の需要が増え、かなり逼迫してきています。

ロシアは、世界最大の天然ガス産出国、かつ、世界第2位の石油産出国ですから、国際舞台において、ロシアの発言力がこれからますます強まっていくことはほぼ間違いないでしょう。