中小企業とBRICs (その4)

メディアが作ったインド投資ブームを疑う理由――その1

引き続き、日経ベンチャーの中で財部誠一氏が連載している「中小企業とBRICs 熱狂と混沌の市場の中で、日本企業は・・・・・・・」の記事をご紹介しながら、内容を考えていきたいと思います。

(以下、記事の要旨)
2003年秋、ゴールドマン・サックスは、インドのGDPは2016年にイタリアを追い越し、2032年には、日本に追いつくと予想を発表した。さらに、日本のマスメディアもインドへの投資ブームを後押しした。

その結果、日本からインド株への投資信託の残高は、2004年秋の20億円から、2005年9月の5,000億円へと、250倍に急増した。

しかし、過去10年間、日本のマスコミが取り上げる注目企業の顔ぶれは、変わっていない。いつもインドのIT企業“インフォシス・テクノロジーズ”と日本の自動車メーカー“スズキ”の2社だけだ。

インドに進出している日本企業を見つけて、取材を申し込んでも「うまくいっていない」ことを理由に断る企業が後を絶たない。唯一の例外が建設機械メーカーの“コマツ”だけだった。

日本と交戦経験のないインドには、中国や韓国のような半日感情もないし、政治体制も民主主義。日本との親和性は一見良さそうである。だが、実は日本とインドの距離は地球と月ほどにも遠い。

以上で記事の要旨は終わりです。

“コマツ”は、土木・建設機械に関する特殊な技術を持っているため、世界的な資源需要逼迫の折、いまやBRICsのみならず、世界各国から引っ張りだこの企業です。

一方の“スズキ”ですが、2005年にインド国内で生産された95万台の乗用車のうち、実に55%が“スズキ”製だったそうです。いまや“スズキ”抜きに、インドのモータリゼーションは語れないほど、圧倒的な存在感を持ってスズキはインド市場に君臨しています。

しかし、2004年11月の時点で、中国に進出している日系企業数が約5,000社なのに対し、インドは約300社に過ぎません。圧倒的大多数の日本企業が、“インド進出”に失敗しているのです。なぜでしょうか?

財部氏は、その理由を2つあげています。一つは「インドの労働市場(人件費と気質)」の問題で、もう一つは「インドのカースト制度」の問題としています。

(この項、続く)