メディアが作ったインド投資ブームを疑う理由――その2
引き続き、日経ベンチャーの中で財部誠一氏が連載している「中小企業とBRICs 熱狂と混沌の市場の中で、日本企業は・・・・・・・」の記事をご紹介しながら、内容を考えていきたいと思います。
(以下、記事の要旨)
インドは3年連続して8%台の高成長を遂げ、2007年度も7.3%の成長率になると、国際通貨基金(IMF)は予想している。しかもインドは人口10億人の大国だ。
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にもかかわらず、2004年11月時点で、中国に進出している日系企業数が約5,000社なのに対して、インドは約300社に過ぎない。
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海外からの直接投資が多いアジアの国々
1位 中 国 724億ドル
2位 香 港 359億ドル
3位 シンガポール 201億ドル
4位 韓 国 72億ドル
5位 インド 66億ドル
<国連貿易開発会議(UNCTAD)の2006年の資料より>
つまり、中国とインドを横並びで語ることがいかに無意味であるかがわかる。
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なぜ、インドに対する海外からの直接投資がそんなに少ないのか?
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インドで成果を上げている建設機械メーカー、コマツの関係者に尋ねると
・ 関税率が高くて部品を輸入するとコストが大幅に高くなってしまう。
・ インド人の平均的ワーカーの給料は高く平均4万円ほど(上海の労働者の平均賃金は3万円前後)
・ 製造コストだけを考えたらインドに進出する理由は見出せない。
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また、インド人は理屈っぽく、自己主張が強烈で、インドは労働争議の激しい国として知られている。
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このような理由から、日本の大手企業の間では、ポスト中国の投資先として、ベトナムブームが起きている。
以上で記事の要旨は終わりです。
私は2005年9月に「JETROのベトナムITミッション」に参加しました。その時の話をジェスコーポレーションのホームページにも載せているのですが、改めてここでも紹介させていただきます。
「2005年9月に1週間かけてホーチミン市とハノイ市を訪問し、多数のIT関連企業の人たちと話をする機会を持ちました。ベトナムは国民の半数が25歳以下という若い国なので、国全体に活気と熱気を感じました。ちなみに World Fact Book 2005によると、ベトナムの中間年齢は25.51歳で、 中国は32.26歳、日本は42.64歳とのことです。
国民性は真面目、勤勉、正直、シャイで手先が器用で目が良く(確かにメガネをしている人は少なかったでした)、性格的に日本人に近いので扱いやすいとの声(在ベトナム邦人)もありました。
国際数学オリンピックではこの数年間ベトナムは4位(アメリカ、ロシア、中国が1~3位、日本は10位)の座を占めているそうです。基本的に頭がよく理数系の仕事に向いていると思うとのことです(JETROハノイ所長の話)。
IT技術者はほとんど英語をしゃべれると聞いていたのですが、実際にはそう多くないという感じでした。ちなみにTOEICの点数は日本より下で、世界最低とのことです(JETROホーチミン所長の話)。
人口8,300万人の国でITソフトウエア技術者の数が12,000人から20,000人と言われているため、技術者の絶対数があまりにも足りません。そのうえ日本語を理解できる技術者はほんの少数のため、あっという間にキャパシティが満杯になってしまいます。日本メーカーがベトナムに工場を持つと、習熟に時間のかかるIT技術者よりも、手っ取り早く稼げる工場労働者のほうへ日本語の話せる人材が流れて行ってしまう、という心配もあります。
ベトナム政府も今後日本語のできるIT術者の養成に力を入れていく方針ですが、民間企業(ホーチミンにある日本とベトナムの合弁企業)で日本語のわかるIT技術者を独自に育てている会社もあります。日本語のわかるIT技術者を年間50人から100人輩出していく予定で、2005年の時点で、既に第1期生がスタートしています。
日本企業にとっては、工場移転やソフトウェアのオフショア開発の案件のみならず、今後急速に発展していくベトナム経済そのものから目が離せません。」
(この項、続く)