ペネデス(Penedés)のワイナリー
遅い夏休みを利用して、大学時代の友人たちと3人で、スペインのペネデスのワイナリーを訪ねました。
ペネデスはカタルーニャ(Cataluña)地方を代表するワインの生産地で、バルセロナから西へ車で1時間から2時間ほどの場所にあります。
私たちは、バルセロナからバスツアーを利用して3つのワイナリーを訪ねたのですが、バスには、イギリス、アメリカ、オーストリア、デンマーク、オーストラリア、ニュージーランド等々、7~8ヶ国から30名ほどの人たちが参加していました。
ジャン・レオン(Jean Leon)
最初に訪れたのは、日本でもジャン・レオンというブランドでおなじみのワイナリー、ジャン・レオン社でした。
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Jean Leon ワイナリーの正面玄関
創業者のジャン・レオン氏は、19歳の時にスペインを飛び出し、世界各地の放浪の旅に出かけます。その後、アメリカのハリウッドにおいてウェイターから身を起こし、レストラン事業で成功を収めます。そこで数多くのハリウッドの映画スターから信奉を集め、やがて祖国スペインのカタルーニャ地方、ペネデスに自前のワイナリーを持つことになります。
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ナビゲーターの男性が、ワイナリーの説明をしてくれています。
ジャン・レオン氏はそれまでスペイン国内では栽培されていなかった、カベルネ・ソーヴィニョンやシャルドネ等の様々な種類の国際品種を自らのワイナリーに植樹しました。
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様々な種類のブドウの樹の前で
その後、彼の作るワインは次第に評価を高めていき、1980年の米国レーガン大統領の就任式では、「カベルネ・ソーヴィニヨン・レゼルヴァ 1975年」がパーティーで採用されるまでになったそうです。
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ラッキーなことに搾汁のシーンを目の前で見学できました。
ジャン・レオンでは2008年から有機農法を採用していて、2012年からはすべてのワインがオーガニック認定(CCPAE)を受けています。
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美しいブドウ畑をバックにワインを注いでくれています。
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最初の試飲タイムを待つ私
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試飲のワインとおつまみ
トーレス(TORRES)
次に訪れたのがスペイン最大手のワイナリー、トーレス社でした。300年以上もの長きにわたりブドウ栽培やワイン造りを続けてきた名門ワイナリーです。ここはスペイン最大のワイナリーというだけでなく、家族経営のワイナリーとしても世界最大とのことです。
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TORRES社の正面玄関
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TORRES社のブドウ畑
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広大な敷地をこんなトレイン風のバスで案内してくれました。
当主であるミゲル・トーレス氏は、スペインの伝統的スタイルのワイン造りには将来性がないとみて新しいスタイルのワイン造りに挑戦を始めました。スペインでもいち早くステンレスタンクや温度調整装置を導入するなど、徹底的に醸造所の近代化を図っています。
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近代的かつ大規模な設備でした。
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TORRES社のワイン貯蔵庫。広大な貯蔵庫にはクラシック音楽が流れていました。
それによりトーレスは、ヨーロッパにおける数々の権威ある賞を受賞しています。とりわけ、2014年、2015年、2017年の3回にわたり、英国の権威ある雑誌 ”Drinks International” にて「世界で最も称賛されるワインブランド」No.1に選出される快挙をなしとげています。
また、トーレスは量産で成功しているだけでなく、マス・ラ・プラナ(Mas La Plana)という名のカベルネ・ソーヴィニョンの逸品を生み出しています。マス・ラ・プラナは、1979年のパリのワイン・オリンピックにおいて、ボルドーの5大シャトーを押さえて世界の頂点にたったことがあるそうです。
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TORRES社内にあるワイン博物館にて-その1
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TORRES社内にあるワイン博物館にて-その2
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試飲の準備をする女性
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試飲のワイン4杯とおつまみの4種のチーズ
フレシネ(Freixenet)
3つ目に訪ねたワイナリーは、スパークリングワインのカバ(CAVA)で有名な、フレシネ社です。
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Freixenetワイナリーの駐車場
スペインワインが世界的に大成功した理由の一つにカバの存在があり、スペインで生産されるカバの95%がカタルーニャ産です。
カバの発泡性は、シャンパンと同じで瓶内発酵により自然に生まれたものであって、人工的に炭酸ガスを注入したものではありません。
瓶内貯蔵熟成期間は最低9カ月が義務付けられていて、一般的には1年から2年、高級品では3年から4年寝かせているそうです。長く熟成させるほど泡は細かくなり、香りや風味に洗練さを帯びてきます。
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ワイナリーの説明をしてくれた女性
カタルーニャ語のCAVAは、「洞窟」または「地下蔵」を意味しているため、なるほど私たちが案内された場所は、確かに暗い地下の「洞窟」で、おびただしい数のボトルが貯蔵されていました。
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まさに洞窟
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こんなトレインに乗って貯蔵庫内を移動しました。
また、2007年に改定されたスペインのワイン法では、レゼルバ(Reserva)と表示する場合は15ヶ月以上、グラン・レゼルバ(Gran Reserva)は30ヶ月以上の瓶貯蔵・熟成期間が義務付けられているそうです。
ところで1960年代までは、スペインはじめ他の国でも発泡性ワインのことを「シャンパン」と呼んでいました。しかし、その後フランスが「シャンパンと呼べるのは、フランスのシャンパーニュ地方で生産されたもののみ」と抗議をし、1970年代にはそれが認められることになりました。
私が高校1年生の時(1973年)、地理の先生が少々興奮気味に下記のような話をしていたのを覚えています。
「シャンパンという呼び名をめぐってフランスが訴訟を起こし勝ちましたね!これにより、フランスのシャンパーニュ地方で生産されたものしか、シャンパンという名前を使えなくなりました。ハイカラなサントリーさんがどんな名前をつけるのか、とっても興味深いですね!!」
それはさておき、CAVAが一大産業として世界的に成功している理由は、シャンパンに比べて値段が安いだけでなく、口当たりがソフトで飲みやすく、果実味がいきいきとしているからでしょう。
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試飲のワインとおつまみの生ハムやチーズなど
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瓶内発酵されているため、いつまでたっても泡が出てきます。
さて、最後に蛇足ではありますが、今回スペインへ行った最大の理由は、私の長男が住むバレンシアを訪ねることでした。バレンシアは、スペイン随一の米どころで、パエリア(Paella)の発祥の地でもあるため、とても美味しいパエリアを食べることができました。
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バレンシア風パエリアは、ウサギの肉と鶏肉の出汁がよく効いていました。