フランスのドキュメンタリー映画「モンサントの不自然な食べもの」とアメリカのドキュメンタリー映画「フード・インク “Food, Inc,” 」を観ました。両映画とも公開年は2008年ですが、その内容は全世界に衝撃を与えるものでした。
そこで改めて自分なりに「遺伝子組み換え作物」や「モンサント社」や「家畜用肥育ホルモン」を調べてみました。
遺伝子組み換え作物
遺伝子組み換え作物には「除草剤耐性品種」と「害虫抵抗性品種」およびその両方を組み合わせた「スタック品種」の3種類があります。
◆除草剤耐性品種
アメリカのモンサント社(Monsanto)が開発したラウンドアップ(Roundup)という除草剤を広大な農場に散布すると、雑草などの植物は全て枯れ死しますが、遺伝子を組み換えられた大豆やトウモロコシなどの農作物は育ちます。
これはラウンドアップに耐性のある土中バクテリアの遺伝子をトウモロコシや大豆の遺伝子の中に組み入れているからです。この人為的な操作による遺伝子の変化は、自然交配では起こりえないことと言われています。
◆害虫抵抗性品種
同じくモンサント社により開発されたあるトウモロコシの品種は害虫被害を受けません。ヨーロッパアワノメイガというトウモロコシを食い荒らす蛾の幼虫を殺す細菌 Bt (Bacillus thuringiensis) から取り出した遺伝子物質を含んでいるからです。この人為的な操作による遺伝子の変化もまた、自然交配では起こりえないことと言われています。
「スーパーに行って棚を見渡すと90%の製品に遺伝子組み換えコーンか遺伝子組み換え大豆成分が含まれている。たいていはその両方だ。ケチャップ、チーズ、乾電池、ピーナッツバター、スナック菓子、ドレッシング、ダイエット甘味料、シロップ、ジュース、粉末ジュース、オムツ、鎮痛剤、ファーストフード・・・・」(映画 “Food, Inc.”より)
モンサント社
モンサント社は2018年6月にドイツのバイエル社に買収され「モンサント」の企業名は現在では消滅しましたが、「遺伝子組み換え作物」以外でもいろいろと世間を騒がせています。
◆PCB(ポリ塩化ビフェニール)
「電気器具の冷却剤や潤滑油として使われていたPCBは50年以上にわたりモンサント社の主力商品でした。しかし人体に有害であることが明らかになり、欧米では1980年代初めに製造販売が禁止されました。
2001年、アラバマ州アニストンの住民2万人がモンサント社を相手取り2件の訴訟を起こし、結局モンサント社と子会社のソルシア社は7億ドルを支払うことで和解しました。2002年、ワシントンポスト紙は『モンサント社 環境汚染を数十年間隠ぺい』と報道しました(映画『モンサントの不自然な食べもの』より)」。
日本においてもPCBはその毒性(ダイオキシン、発がん性物質など)により1975年に製造、輸入が禁止されています。
◆枯葉剤
ベトナム戦争時、アメリカ軍は、猛毒のダイオキシンを含む大量の除草剤(枯葉剤)をベトナムの森にばら撒きました。ジャングルに隠れるベトコンのゲリラに手を焼いたアメリカ軍は、森を枯らして空からゲリラを発見しようと考えたからです。
ベトナム政府の発表によると、これにより300万人のベトナム人が枯葉剤にさらされ、奇形児等の深刻な健康被害に苦しむ人々がいまだに増え続けているそうです。現在では、この猛毒のダイオキシンがガンや重度の遺伝的機能不全を引き起こすことが明らかになっています。
モンサント社はこの枯葉剤を製造していた企業の中の1社です。1984年、アメリカのベトナム帰還兵4万人に集団訴訟を起こされ、モンサントを含む化学メーカー7社が1億8,000万ドルを支払うことで和解が成立しました。
◆データの捏造
1949年、アメリカのウエストバージニア州で、強力な除草剤2,4,5Tを製造するモンサント社の工場で爆発があり、従業員228人に塩素挫創と呼ばれる皮膚の疾患が発症しました。原因は、除草剤を製造する時に生成される、猛毒のダイオキシンでした。
モンサント社は工場爆発事故で、ダイオキシンを浴びた従業員と浴びなかった従業員では、ガン発症率に違いはなかったとする研究結果を裁判所に提出しました。しかし、この研究結果については、1990年代になって、データの捏造があったことが判明しています(映画『モンサントの不自然な食べもの』より)」。
家畜用肥育ホルモンと遺伝子組み換え飼料
アメリカでは、遺伝子組み換え作物を牛、豚、鶏、養殖魚に飼料として与えるばかりでなく、その成長を早めるため肥育ホルモンが使われています。
◆鶏肥育ホルモン
「全米の食肉業界を支配しているのはわずか3~4社。これほど巨大で強大な企業はかつて存在しなかった。たとえばタイソン社は史上最大の精肉会社。養鶏を根底から変えた企業だ。
ヒナは50年前の半分の日数で育つ。だが大きさは2倍。消費者は胸肉を好む。だから胸の大きな鶏を作る」(映画 “Food, Inc.”より)
「これは養鶏じゃない。工場で作られる製品と同じよ。ヒナから7週間で2.5キロの成鶏に育つの。骨や内臓は急激な成長に耐えられない。ほとんどの鶏は数歩 歩くと倒れてしまう。自分の体重を支えきれないからよ。
飼料に抗生物質を混ぜるから、当然鶏の体内に入る。細菌は抵抗力を増し、抗生物質が効かなくなる。私は抗生物質のアレルギーになったわ」(キャロル・モリソン氏、米国の大手精肉会社の契約養鶏業者:映画 “Food, Inc.”より)
◆牛肥育ホルモン
「肥育ホルモンを投与した米国産牛は、およそ20カ月齢のメスで400~450キロの枝肉重量があるのに対し、投与しない日本国産牛は29カ月齢くらいまで太らせてやっと450キロ程度になる(米国産牛肉、『肥育ホルモン』の衝撃的な実態:山本謙治氏著)より」
誕生から出荷までの期間が約3分の2に縮まるわけですから、牛肉生産者にとってはとてもありがたい話です。ちなみに「枝肉」とは、皮と内臓を取り出し、脊柱の中央に沿って切断されたものだそうです。
しかし、次のような指摘もありました。
「米国産牛と日本国産牛のホルモン残留濃度を計測すると、米国産牛は日本国産牛に対して、赤身で600倍、脂肪で140倍のホルモン残留が検出された」(前出のサイトより)
◆O-157
「遺伝子組み換えトウモロコシで安価な飼料ができたおかげで、現在コーンは家畜飼料の主原料となっている。おまけに良く太る。しかし、牛はもともとコーンを食べるようにはできていない。草を食べる動物だ。
牛の第一胃には、無数のバクテリアがいる。動物は草を消化するように進化した。研究によればコーンの多い飼料を続けると大腸菌が耐酸性を持つようになり、より危険な大腸菌に変わる。コーン飼料によって普通の大腸菌が進化し、突然変異を起こした。そして大腸菌O-157という株が登場した」(アイオワ州立大学の反芻動物栄養学専門家、A・トランクル氏:映画 “Food, Inc.”より)
農林水産省のデータによると2014年の日本の飼料の自給率は27%となっています。そのため73%が輸入飼料ということになりますが、その大部分は、アメリカ、ブラジル、アルゼンチンなどの遺伝子組み換え飼料生産国です。
また、肥育ホルモンについては、やはり農林水産省のHPによれば、日本国内では、承認されていないため使用されていないとのことです。