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アジアでM&A最高 日本企業、中堅も進出

2014年3月31日 日本経済新聞朝刊

日本企業によるアジア地域へのM&A(合併・買収)が一段と活発になっている。2013年度のM&A件数は前年度より25%増え、過去最高となる。株高や収益力回復を背景に成長市場を取り込む動きが大企業だけでなく、中堅企業にも広がっている。資本市場からリスクマネーを調達してM&Aなど攻めの投資に使う動きも鮮明だ。

2014年3月31日日経1

2014年3月31日日経2

(以上で日経新聞の記事終り)

この記事によると中国を除くアジア各国の企業をM&Aする日本企業の動きが活発になっているとのことです。

M&Aが発生すれば、当然、翻訳の需要も高まります。したがって日本の翻訳業界にとって、良い話であることは間違いありません。

ところで違う日の日経新聞にファーストリテイリングの柳井会長のインタビュー記事が載っていました。「ファーストリテイリングはアメリカでの売上を1兆円まで伸ばしたい。全世界での売り上げ目標は5兆円」とのことです。

そこで取材した記者が「M&Aをするのですか?」と聞くと次の答が返ってきました。

「5兆円の目標はオーガニック(自社の成長)だけでもいけるんじゃないかと思う」

この「オーガニック」という言葉使いがちょっとおもしろいなと思いました。

もともと「オーガニック」と言う言葉は「有機栽培」や「有機農法」から来ている用語ですが、そこから発生して、今ではWeb上での自然検索結果を表しています。

つまり有料のリスティング広告によって検索されたのではなく、そのサイト独自の力によって検索された、という意味で使われています。

その「オーガニック」をファストりの柳井会長は、「M&Aではなく自社独自の成長」という意味で使っています。

この意味での「オーガニック」を使ったのが柳井氏が初めてなのかどうかはわかりませんが、なかなか興味深い言葉使いであると感心しています。

まあ、なにはともあれ、日本企業は、もっともっとM&Aで世界中へ羽ばたいて行ってほしいものです。

同時に日本企業をM&Aしたいという世界からの誘いに対しても殻を閉じずに、積極的に受け入れ、日本経済全体が真に国際化されるよう願っています。

生保、日本流生かす営業 アジア潜在需要に的

2014年3月25日 日経新聞朝刊

日本の大手生命・損害保険会社がアジアの生保市場開拓を急ピッチに進めている。経済成長や中間層の拡大が見込まれるインドやインドネシアなどで、潜在需要の掘り起こしに照準を定める。各社は日本流で押したり、現地の慣習も採り入れたりして営業手法を確立し、成長市場での上位進出に挑む。

2014年3月25日日経1

2014年3月25日日経2

(以上で日経新聞の記事終り)

インド、タイ、ベトナム、シンガポール、マレーシア、インドネシアなどの新興アジア各国で、日本の生保各社が日本式スタイルで営業を強化しているそうです。

日本式スタイルの生保販売とは、「日生のおばちゃん」に代表されるような、中高年の女性が企業や家庭を歩き回って生保を売りまくるという、あのスタイルのことです。

戦後ながらくのあいだ日本では、「生命保険はおばちゃん達が売り歩くもの」というイメージが定着していましたが、欧米諸国では、やり手の男性セールスマンが生命保険を売る方が主流だと聞いています。

(もっともここ数十年の間にすっかり事情は変わってきていて、日本でも欧米同様、やり手の男性セールスマンが生保を売るケースがかなり増えてきているように感じますが・・・・)。

さて、以前、生保の業界関係者に「日本の生保販売員は、なぜあんなにおばちゃんが多いのか」と聞いたことがあります。

その話によると終戦後、戦争未亡人が大量に国中に溢れかえり、なんとかして彼女らの仕事を作ってあげなければならなくなったとのことでした。

そして、この生保販売員のアイディアを思いついたとのことです。能力とやる気にあふれるハングリーな女性たちにとって、歩合給のセールスレディーの仕事は一発逆転の狙える夢のある仕事だったのかもしれません。

ちょっと話は脱線しますが、これに関連してゴルフ場のキャディーさんの話を思い出しました。

日本ではキャディーさんは、「おばちゃん」の仕事となっていますが、欧米では通常キャディーなどいませんし、いてもたいていは男性です。なぜならば、重労働だからです。

「日本ではなぜあんな中高年の女性に重労働の仕事をさせるのか?」「そもそもキャディーなど必要ないではないか?」「これは女性虐待ではないのか?」と欧米の人たちは思うそうです。

しかし、業界関係者に話を聞くと、田舎にはなかなか仕事がないため、おばちゃん達が働ける場所を提供するという条件でゴルフ場の建設が許可され、地元の住民達にも受け入れられてきた、という事情があったようです。

さて、話をアジアでの生保販売に戻しますが、日本の文化や風習、それに日本人の考え方などは、やはり欧米よりもアジアでのほうが、受け入れやすいと私は感じています。

従って、日本式営業で日本の生保各社は今後アジアにおいてもっともっと販売額を伸ばしていけると思っています。

また、上記の「世界の生命保険料収入のシェア」のグラフを見ると2012年の「先進アジア」のシェアが「北米・オセアニア」や「西欧」に比べて非常に大きいのに驚きました。

「先進アジア」というのは、日本と韓国の2国だけですから、いかに日本人や韓国人が保険好きなのかがわかります。

これから大きく発展するアジア市場ですから、生保・損保各社のアジア向け翻訳も増えていくことは間違いないでしょう。

勃興する「VIP」3国

2013年1月16日 日本経済新聞朝刊

安倍晋三首相が16日から東南アジア諸国連合(ASEAN)を歴訪する。就任後初の外遊先としてASEANを選んだのは、日本にとって経済と政治の両面で重要性が増しているためだ。台頭する東南アジアの実力を点検する。

財政の健全化が進む東南アジアの力の源泉は、6億人に達する人口規模と、堅調な経済成長に支えられた購買力の拡大だ。

東南アジア主要5カ国で年間の家計可処分所得が15,000ドル以上の中間所得層・富裕層の人口は2009年時点で約5,000万人。このうち企業誘致などで先行したタイやマレーシアが6割を占めるが、ここに来てベトナム、インドネシア、フィリピンの頭文字を取った「VIP」で所得が急拡大している。

日本貿易振興機構によると「VIP」では20年までの10年間で中間所得層・富裕層が約7倍に膨張。「一億総中流」を達成した1960年代の日本の人口に相当する1億人の購買層が新たに誕生する計算だ。同5,000~15,000ドル未満の中間層予備軍も1億人増え、2億2千万人に達する。

この3カ国は人口構成が若いという特徴がある。65歳以上の人口は5%前後で高齢化とは当面無縁。逆に14歳以下は2~3割を占める。これが域外企業の投資を呼び寄せる要因の一つになっている。

欧米の景気が停滞する中、ASEAN加盟10カ国の国内総生産(GDP)は昨年、5%台の実質成長率を確保したもよう。個人消費を軸とする国内需要の拡大で、域外の経済情勢の変化への耐性はさらに高まりそうだ。

2013年1月16日 日経新聞

(以上で記事終わり)

一時期、NIES (newly industrializing economies 新興工業経済地域) という言葉がもてはやされました。

輸出産業を軸として急速に工業化を遂げ、高い経済成長率を達成している諸国・地域のことですが、具体的には、韓国・台湾・シンガポール・ギリシア・メキシコなどです。

1988年のサミットあたりから使用されたようですが、現在ではあまり使用されていません。

なぜなら各々の国の存在感があまりにも強まってきたからでしょう。

シンガポールは、2007年に一人当たりの名目GDPで日本を追い越し、最近では日本と抜き抜かれずのデッドヒートを繰り広げています。

韓国のサムスンは、1社で日本の電機業界の大半を壊滅の危機に追い込むまでに成長し、現代自動車も今後日本の自動車業界にかなりの脅威となってくるでしょう。

台湾の電機メーカーは、日本の大手電機メーカーを買収する、しないと騒がれるまでに存在感を強めてきています。

また、今や世界経済を語るとき、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)の動向を抜きに語れないほど、BRICs諸国は決定的な影響力を持ち始めています。

つい最近まで「発展途上国」の一部にすぎないと思われていた「新興国」が、急速に日本に対する影響力を強めています。

上記の記事にあるVIP3国も現在の生産国としての存在から、消費国としての存在に変化していくことでしょう。

つまり、いつまでも安い人件費を求めて進出する「生産現場」としてばかり見るのではなく「お客様国」として認識する必要があるということです。

当然、今後はグローバルマーケットでの「ライバル国」にもなりうるわけです。

「安い人件費の国で作ったモノを仕入れて、裕福な先進国へ売って儲ける」という20世紀型ビジネスモデルが通用しなくなる時代がすでに始まっているのかもしれません。

シャープ、台湾・鴻海が出資 1割、筆頭株主に 液晶パネル合弁

2012年2月28日 日本経済新聞より

シャープは27日、台湾の電子機器受託製造会社、鴻海グループと戦略的な業務・資本提携を行うことで合意したと発表した。同グループを割当先にした第三者割当増資を実施する。新株発行数は発行済み株式数の10.95%にあたる1億2164万9000株。併せてシャープの堺工場が生産する液晶パネルや関連部品を鴻海精密工業が最終的に50%まで引き取る。この結果、堺工場の操業安定を目指す。

堺工場を運営するシャープディスプレイプロダクトの出資比率も現状はシャープが約93%、ソニーが約7%だが、提携後はソニーの比率は変えずに、シャープの出資比率を約46.5%に下げ、鴻海精密の郭台銘会長や他の投資法人なども合わせて約46.5%にする。

記者会見した次期社長の奥田隆司常務執行役員は提携を「もの作り分野を変革する一環」と位置付けた。そのうえで「シャープが研究開発や設計、生産、調達、販売、サービスなどすべてのバリューチェーンを手がけるのではなく、バリューチェーンの中に協業を含めた取り組みをおこなうことが重要だ」と語った。液晶に関しては「シャープの単独垂直統合では限界がある」とも指摘した。

2012.3.29 日経2

2012.3.29 日経3

2012.3.29 日経1

(以上、日経新聞2012年2月28日・29日朝刊より)

2012.3.29 日経B
(日経ビジネス2012年3月26日号より)

・・・・(記事の転載ここまで)

すでに中国家電大手のハイアールが旧三洋電機の白物家電部門を買収し活動を始めていますが、今度は台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業がシャープの筆頭株主となりました。

私はかねてよりこのブログの中でも指摘してきましたが、アジア企業のグローバル化の波が、いよいよ現実のものとなって日本企業にも押し寄せ始めたのです。

今後この傾向はどんどん強まっていくはずです。

日本人は、企業買収というとすぐに拒絶反応を起こしますが、“資本(紙幣)の色”が何色であろうと、“経営者の目の色”が何色であろうと、そんなことはどうでもよいのです。

山一證券や北海道拓殖銀行のように、日産自動車をつぶしたほうがよかったのでしょうか?

日産に外国資本が入ったおかげで、“進駐軍”による優秀な経営者が海外から送り込まれ、みごとに日産は復活をとげました。

フランスから来た“進駐軍”は日本人を不幸にしたでしょうか?

その経緯からみて、日本人だけでは、あの難局を乗り越えることは難しかったでしょう。

雇用を確保し、利益を上げ、税金を払ってさえいれば、“資本の色”や“経営者の目の色”など何色でも構わないのです。

これからも同様だと思います。自分のボスの国籍がどこであろうと、そんなこと自体がもうニュースにならない時代がやってくるはずです。

マリナーズのイチローが初めて野茂と対戦した時、日本中のマスコミが「メジャー・リーグで日本人同士が対決する」と大騒ぎをしました。

その時のイチローのインタビューが印象的でした。

「早く誰も騒がなくなるよう、多くの日本人がアメリカでプレーしてほしいものです」

事実、今では多くの日本人がアメリカでプレーしているため、日本人同士の対決など、たいしたニュースにもなりません。

近い将来、アジア企業による日本企業の買収報道は、きっと大きなニュースではなくなっていることでしょう。

アジアから目指す世界一

「日経ビジネス」に「ファーストリテイリング会長兼社長の柳井正氏(下記写真)へのインタビュー記事」が載っていました。日本企業のグローバル展開の重要性を説く思想はとても示唆に富み、興味深い記事だと思います。その一部を抜粋して下記に載せておきます。なお文中の赤字は私がつけたものです。詳細を知りたい方はぜひ「日経ビジネス」を定期購読してください。

2011.05.27 柳井社長

<以下、日経ビジネス 2011.5.30号からの記事の抜粋>

日本の一番の問題は、ずっとピンチだと感じていなかったことでしょう。アジアに追いつかれようとしているのに、いまだに自分たちが上にいると思っている。20年間給料が下がり続けているのに、中流意識に浸かっている。

「もう頑張らなくてもいい」とか「成長しなくてもいい」とか言う人がいますが、信じられません。グローバル経済でそんなことができるはずがない。鎖国をやっていた江戸時代に戻るつりですか。

日本を食べさせていくのは、グローバル化した企業とグローバル化した日本人なんです。日本を支えていくには海外展開しかあり得ません。この思いは震災を経てますます強くなりました。

僕たちはアジアについて勉強しなければなりませんし、「一緒にやっていきましょう」とお願いする立場にある。そうした意識を持っていない人はいまだに多い。日本はアジア各国よりも進んでいると思い込んでいる。上から目線なんです。それはまったくの錯覚で、日本は20年もの間、成長から遠ざかってきました。あと10年もすれば、アジア各国に完全に追いつかれるでしょう。こうした認識を持ったうえでアジア展開にとりかかることが大切です。

自前のグローバル展開を推し進めるため、組織も見直しました。東京をグローバル本社に位置づけ、上海、シンガポール、パリ、ニューヨークの4拠点に地域本社を立ち上げます。理想的な姿としては、本部社員の3分の2を外国人に、日本の店舗の2割を外国人店長に任せ、海外では8割を現地の店長にしたいと思っています。

「僕は国内の店舗は運営できますが、海外はどうも」などと言っている場合ではありません。日本で店長をやっていても、国内市場が縮小していけば、給料は下がってしまう。外国人と、あるいは外国企業と一緒に仕事ができない人は、本当には仕事ができない。

英語は外国人と一緒に仕事をするえでのツールにすぎません。ビジネスの能力はあるのにコミュニケーションできないというのは非常にもったいない。

経営は座学では身につきません。実業を通して、自分でやってみなければ分からない。

日本ブランドはまだまだ強いと思いますが、それでも、今回の原発トラブルは企業のブランディングからすれば最悪の事態です。もっとも、最悪だと思うのは事故そのものというよりも、政府をはじめとした関係者の対応です。今回の原発対応で政官民の癒着、談合体質、隠蔽主義など日本のダメな部分が一気に噴出してしまいました。日本のセールスポイントの1つとして「安心、安全」がありましたが、そんな評価はもう当てはまらないでしょう。

現状を見る限り、日本はとても資本主義の国とは思えません。むしろ官僚社会主義の国といったほうがしっくりきます。税金の使い道を考え、税金を払っている企業や個人を大切にしないと、本当にみんな出ていってしまいます。国に助けてほしいと言いませんが、邪魔だけはしないでほしい。

<以上で記事からの抜粋終わり>

ソフトブレーン創業者の宋文洲氏が彼のメルマガの中で以下のように記述しています。

<日本人は数十年前から中国の政治不安を「心配」してきましたが、中国は未だに安定しています。逆に、日本の政治は未だにリーダーシップが確立できず、総理大臣の名前が覚えられないほど政権が変わります。「政治不安」がもし政治の不安定を意味するならば、結果的にどちらの政治不安が高いだろうか。>

日本のカントリーリスクを真剣に考え、リスクヘッジのために今われわれは何をしなければならいのか考えさせられます。

半導体需要 アジアが支え 世界売上高の過半に

2010.7.8 日本経済新聞

世界の半導体需要が2008年秋の金融危機前の水準を越えて伸びている。5月の売上高は過去最高を更新した。地域別では中国を含むアジア太平洋(日本を除く)の比率が世界の5割を超え成長が続く。米アップルの多機能携帯電話「iPHONE(アイフォーン)」などパソコン以外の用途拡大も進み、生産が追いつかない。ただ欧州経済の減速懸念などもあり、今秋以降の需要動向には警戒感も出ている。

(記事終わり)

2010.7.8 日経新聞(1)2010.7.8 日経新聞(2)

・・・・(記事の転載ここまで)

さて、全世界の半導体の需要がリーマン・ショック前の水準を越え伸びている、ということは世界経済にとっても日本経済にとってもわが国の翻訳業界にとっても確かに良いことではあります。しかし1980年代、世界の半導体生産量50%超の日本メーカーが、海外に日本製半導体を売りまくっていた時代とは明らかに状況がちがいます。技術立国日本の象徴だった半導体が「今は昔」となってしまったのは本当に残念としか言いようがありません。

しかし本日(2010.7.9)の日経新聞の見出しに

・ 米成長を上方修正 3.1% → 3.3%
・ 電子部品5社、受注拡大 「リーマン前」回復
・ キヤノン、営業益2.8倍
・ 半導体・パネル製造装置販売額70%増に
・ 工作機械受注額2.4倍 6月
・ NEC、通信会社向け機器事業 9,000億円目標

などという見出しが躍っているだけでもせめてもの救いです。

アジア内需に期待高まる

日経新聞(2008年11月11日)の紙媒体の「景気指標」に上記の見出しで記事が出ていました。 下記にご紹介します。

(以下記事)

米国発の金融危機が実体経済に波及し始めているが、アジアの内需拡大が世界経済悪化の衝撃を和らげるのではないか——。アジアで自信と期待の入り交じった見方が出始めた。日米欧主要国・地域の「景気後退」が現実味を帯びる反面、中国やインド、東南アジアなどで消費や投資など内需が堅調に推移し、世界経済の落ち込みを下支えするというのだ。

「IT(情報技術)バブルがはじけた2000年頃と違い、中国は世界の景気減速(の一部)を補える規模に育った」。仏大手銀行ソシエテ・ジェネラルのアジア通貨債券ストラテジスト、パトリック・ベネット氏は指摘する。

中国の2007年の名目国内総生産(GDP)は2000年の約3倍弱に拡大。2007年の前年比増加額は約6,220億ドルで、米国の増加額(約6,290億ドル)とほぼ方を並べた。2008年以降、中国が1年間に拡大する経済規模は米国のそれを超え、年々差が広がることは確実とみられる。

シンガポールのDBS銀行チーフ・エコノミスト、デービッド・カーボン氏も「中国やインド、東南アジアの年間内需創造は米国にほぼ匹敵する」と指摘する。中印の輸出依存度はGDP比4割以下。経済成長の内需依存度は高い。

外需依存型とみられてきた東南アジア諸国も、一人当たりGDPの拡大と人口増で内需に期待が高まる。たとえばインドネシア。自動車販売は1―9月に前年同期比46%増の46万台と過去最高。人口は過去7年間で2億人から2億2,400万人に増加。マレーシアほぼ一国分が生まれた格好だ。

もちろん日米欧の景気悪化でアジア経済の減速は避けられないだろう。だがマレーシアやフィリピン、タイなどは公共投資や減税を打ち出すなど金融危機の波及を警戒し始めている。

アジア新興国市場に着目し、企業はいち早く動き出している。「アジアでの売上高を世界全体の2%から10%に拡大する」(武田薬品工業)。世界経済が低迷するなかで、改めて「市場としてのアジア」に関心が集まっている。

(記事終わり)

それではこの記事の内容をデータで検証してみましょう。JETRO(日本貿易振興機構)のデータを抜粋して簡略化した表を作り、それをもとに日本の輸出先地域の円グラフを作成してみました。

日本の輸出相手国は、半分近くがアジアだとわかります。

 

2007年 日本の貿易相手 ~その1~  (単位:100万ドル)

 相手地域

 輸出

輸入

収支 

 アジア

 343,113

267,926 

75,187 

 北米

 153,903

80,857 

73,046 

 欧州

 112,492

72,510 

39,982 

 中南米

 35,063

24,117 

10,946 

 中東

 26,184

113,824 

-87,640

 大洋州

 17,891

35,529 

-17,638

 ロシア・CIS

 12,482

11,514

968 

 アフリカ

 11,602

14,770 

-3,168

 世  界

712,730

621,047

91,683

 

日本の輸出先地域 (その1)

さて、それでは貿易相手を下記の6つの国、地域に分けて再分析してましょう。

 

2007年 日本の貿易相手 ~その2~  (単位:100万ドル)

 相手地域

 輸出

輸入

収支 

 アジアNIES

159,581

55,541

104,040

 米国

143,383

70,836

72,547

 欧州

112,492

72,510

39,982

 中国

109,060

127,644

-18,584

 ASEAN4

59,085

70,791

-11,706

 その他

129,129

223,725

-94,596

 世  界

712,730

621,047

91,683

 

アジアNIES、ASEAN4、欧州の内訳は下記です。
アジアNIES・・・・・韓国、香港、台湾、シンガポール
ASEAN4・・・・・・・・タイ、マレーシア、フィリピン、インドネシア
欧州・・・・・・・・・・・・ロシアと旧ソ連邦国家を除く全欧州

日本の輸出先地域 (その2)

アジアNIES(韓国、香港、台湾、シンガポール)へ対する輸出は、米国や中国への輸出よりも多いことに驚きます。

それでは、今年2008年に入ってからの日本の貿易はどうでしょうか?同じくJETRO(日本貿易振興機構)のデータを編集して、簡素化した表を作ってみました。

 

2008年1月~9月 日本の貿易 対前年比 増加率

 相手地域

 輸出

輸入

 ロシア・CIS

71.3%

38.9%

 中 東

35.1%

69.5%

 大洋州

30.7%

40.8%

 中南米

21.2%

16.1%

 アジア

20.2%

18.0%

 アフリカ

19.1%

57.4%

 欧 州

14.5%

13.0%

 北 米

0.8%

15.3%

 世  界

16.8%

28.6%

 

金融危機に揺れる、米国への輸出を除けば日本の輸出は絶好調なことがわかります。

それでは、中国やアジアNIESやASEAN4に対する日本の貿易伸び率はどうなっているでしょうか?

 

2008年1月~9月 日本のアジア貿易 対前年比 増加率

 相手地域

 輸出

輸入

 中 国

22.6%

13.3%

 ASEAN4

21.8%

23.9%

 アジアNIES

16.1%

13.1%


日本株式会社の最大のお客様、アジア市場は絶好調の内需拡大を続けていることがわかります。米国は自国に信用力があるのをいいことに、「サプブライムローン」を証券化した「詐欺商品」を世界中に売りつけ、現在の金融危機という爆弾を世界中にばら撒きました。ばら撒いた先は、欧州が一番多かったようですが、今や世界中がその「とばっちり」を受けています。

この金融危機の根は深く、回復には時間がかかるでしょう。しかし、現在の日本は必要以上にその影に脅えている気もします。日本の金融機関のほとんどは健全な財務体質を持ち、製造業は相変わらず高い技術力を堅持しています。

需要爆発のアジア市場を隣に控え、今や日本企業の多くは新しいビジネスチャンスに遭遇しています。世界経済が大きく変動する時、それはまさに翻訳業界にとって千載一遇のチャンス到来の時期といえるでしょう。

日産・東洋エンジなど、アジアで技術者大量採用

NIKKEI NET 2008.1.28

自動車、機械など製造業各社がアジアの新興国で技術者を大量採用する。日産自動車はインドとベトナムで今後3年程度をめどに4000人を新規採用、技術者の海外比率を2倍の約4割に引き上げる。東洋エンジニアリングはインドの設計人員を1000人増員した。団塊世代の退職や少子化による国内の技術者不足に対応し、豊富な人材を抱える新興国を製造だけでなく「頭脳」の拠点にも活用する狙いで、雇用のグローバル化が加速する。

・・・・(記事の転載ここまで)

サブプライム問題で世界中の金融機関が萎縮するなか、製造業が元気です。特に日本の製造業は、独自の技術でまだまだ世界の”ものづくり”をリードしていくでしょう。

米国ボーイング社の次世代中型旅客機、”ボーイング787”は、未だ試作機が完成していないにもかかわらず、ふれこみだけで既に1,400機の受注をとりつけているそうです。これは実に4年分の納入実績に匹敵する注文なんだそうですが、このボーイング787は機体の70%近くを海外メーカーを含めた約70社に開発させる国際共同事業だそうです。日本からも三菱重工を始めとして数十社が参加し、日本企業の担当比率は合計で35%と過去最大だそうです。この35%という数字はボーイング社自身の担当割合に等しいとのこと。

また、ボーイング社は飛行機の組立工場をシアトルに持っているのですが、さらにその隣に現在の3倍規模の組立工場・部品工場を建設中です。そしてそこで使われる工作機械が、つい最近、日本の某メーカーに発注されました。年産50台~60台、1台最低1,000万円する工作機械が、「定価で」100台発注されました。

米国では今後大規模な新鉄道網を全米に建設する予定ですが、そこで使用されるレールは従来のものよりも太く長く、より強度の増した鋼材が使われるそうです。しかし、そのようなレールを供給できる技術を持っているのは、日本の鉄鋼メーカしかないそうです。

液晶パネルを作る工作機械メーカーでは、50%の増産を目指し、現在新しい工場を建設中です。一人の専門家がスーパークリーンルームの中で半年かかって、1台28億円の製造装置を完成させるそうです。

シャープでは、液晶テレビを増産するため、亀山第二工場を現在建設中で、関西中のクレーン車をかき集めた500台が、ところ狭しと乱立しているそうです。松下電器は、プラズマディスプレイパネルの新たな生産拠点として、第5工場を、兵庫県尼崎市(現工場隣接地)に建設し、世界最大の量産体制を更に拡大します。

まだまだ、いくらでも出てきますが、今、日本の製造業はとっても”熱い”のです。したがって、この影響は日本の輸出額、ひいては日本の翻訳業界にも反映されていくでしょう。

台湾・英業達:大陸の翻訳ソフト市場に参入

2007.5.30 中国情報局

台湾の英業達(Inventec)は22日、中国大陸のソフトウェア市場へ参入すると発表した。世界に先駆け翻訳ソフトの「Dr.eye譯典通8.0」シリーズを投入する。

(中略)

英業達によると、世界の翻訳市場は年間売上が130億ドル以上で、そのうちアジア太平洋地区が30%を占める。現在の中国大陸の翻訳ソフト市場は、パソコンと携帯電話向けを含めても2億元足らず。一方、学習機器などハード市場は十数億元の規模があるため、今後の市場拡大に期待が持てるという。

・・・・(記事の転載ここまで)

「英業達によると、世界の翻訳市場は年間売上が130億ドル以上」とあります。これを今日の為替レートをもとに計算すると、

130億ドル×122円=約1兆6,000億円弱 ← (全世界の翻訳市場の規模)

1兆6,000億円×30%=約4,800億円 ← (アジア太平洋地区の翻訳市場の規模)

となります。一方、「中国大陸での翻訳ソフトの市場規模は、2億元足らず」とあります。日本円に直すと、2億元×15.9円=32億円弱 となります。

数字の根拠は何も示されていませんが、例によって翻訳の市場規模を過大評価しているフシがあります。

日本最大の翻訳会社「翻訳センター」の年間売上高が40億円であることや、翻訳支援システムで世界に先行した「TRADOS社」が、思ったよりも成長せずに、SDL社に身売りしてしまったこと、から判断しても、そんなに巨大なマーケットが存在するとはとても思えません。もっとも、正確なところは誰も知らないわけですから、すべて想像の域を出ませんが・・・・。

ただ、本当に使える良い翻訳ソフトが完成すれば、新たな市場が創造され、また違った展開が生まれてくる可能性も否定できません。

信越化、米で1000億円投資・三井化はアジア強化

2007.5.30 NIKKEI NET

信越化学工業は水道管などに使う塩化ビニール樹脂で、1000億円を投じて米国に原料の工場を2010年にも新設する。最大市場の北米で原料からの一貫体制を築き、世界最大手の地位を固める。三井化学は自動車やパソコン向け耐熱性樹脂の原料の工場をシンガポールに300億円超をかけて新設する。国内化学大手が国際競争力の高い製品を軸にグローバル化を加速し始めた。

・・・・(記事の転載ここまで)

信越化学工業株式会社のホームページの2007年決算説明資料から拾ってきたデータです。

(セグメント別 連結売上高)
有機・無機化学品 7,084億円(11.3%増)
電子材料     4,794億円(32.6%増)
機能材料・その他 1,169億円(10.1%減)

(セグメント別 連結営業利益)
有機・無機化学品 1,067億円(10.9%増)
電子材料     1,066億円(63.4%増)
機能材料・その他  276億円(14.9%増)

と、電子材料部門の売上・営業利益の伸びが際立っています。
さらに、電子材料事業の推移・現況(連結)のページを見ると

・半導体シリコン
携帯電話、パソコン、デジタル家電、自動車など幅広い分野でデバイス需要が拡大し(中略)売上、営業利益とも大幅に増加した。

・電子産業用希土類磁石
パソコン、サーバー、映像記録機器用途等のハードディスクドライブ向けが好調で、売上は大幅に増加した。

・その他電子材料
フォトレジスト製品は、デバイスの微細化が進む中、ArFレジストの本格採用が進み、売上、営業利益を大幅に伸ばした。

とあります。電子材料部門の売上の85%を「半導体シリコン」が占めていて、会社全体の売上をみても「半導体シリコン」が稼ぎ頭であることがわかります。さすがに「半導体シリコン」世界No.1シェアを誇る企業だけのことはあります。

ただし、今回信越化学が米国に建設する工場は、「半導体シリコン」のためではなく、水道管などに使う「塩化ビニール樹脂」を製造するため、と記事にはあります。さすがに懐の深い企業です。

2006年の年初、日経新聞が上場企業のトップ相手に「今後最も発展する企業はどこか?」というアンケートを行いました。その際、No.1の地位を占めたのが信越化学だったと記憶しています。

いずれにせよ、企業が海外に工場を建設すると、膨大な量のドキュメントの翻訳需要が発生するものです。しばらくの間、信越化学が翻訳業界の目玉になるかもしれません。