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電機、かすむ「貿易黒字」 スマホ輸入増、生産移転も影響 携帯赤字1兆円

2013年4月4日 日本経済誌新聞朝刊

日本の輸出を支えてきた電機産業の「貿易黒字」が急速に縮小している。1991年に9兆円を超えていた貿易黒字は2012年には16分の1以下になった。

携帯電話では輸出額から輸入額を引いた「貿易赤字」が初めて1兆円を超えた。海外製スマートフォン(スマホ)の人気に加え、日本メーカーの海外への生産移転が加速したためだ。

(中 略)

日本メーカーもコスト削減のため海外への生産移転を進めており、これが輸入超過に拍車をかけている面もある。

すでに日本メーカーが国内で販売する携帯電話の5割近くがアジアでの生産とみられる。ソニーは今年3月末に岐阜県美濃加茂市の工場を閉鎖して携帯電話の国内生産から撤退した。

テレビやパソコンも貿易赤字が続く。電子情報技術産業協会(JEITA)によると、薄型テレビなど「カラーテレビ受像機」は08年以降、5年連続で輸入超過。

パソコンを中心とする「電子計算機本体」は12年の貿易赤字が8983億円に上った。

(中 略)

日本勢が高い輸出競争力を維持してきた電子部品にも陰りがみえる。昨年までの超円高で価格競争力が低下したのを受け、徐々に海外生産比率が高まっている。12年の「電子部品・デバイス」の貿易黒字額は3兆1383億円と11年比で13%減少しており、12年の黒字額は過去5年で最小になった。

一方、電機とともに日本の輸出産業の両輪だった自動車は依然として輸出競争力を保っている。財務省の貿易統計によれば、12年の「自動車」(トラクターや特殊車両なども含む)と「自動車の部分品」の輸出額は合計で約12兆4000億円となり、輸入額(約1兆4600億円)の約8.5倍にのぼる。貿易黒字は11兆円近くあり、電機とは対照的だ。

(後 略)

2013年4月4日 日経1

2013年4月4日 日経2

戦後の日本経済の発展を支えてきた2大産業であり、世界に冠たる経済大国日本の象徴でもあった電機産業と自動車産業。

この2大産業の明暗がはっきりと数字で表れています。

下記は1991年と2012年の「貿易黒字」の比較です。

<電機産業>   9兆2,000億円 ⇒ 6,000億円(16分の1以下に減少)

<自動車産業>  (資料なし)  ⇒ 11兆円(輸出は輸入の8.5倍)

この記事の中では、1991年当時の自動車産業の貿易黒字額には触れていないため比較はできませんが、強かった日本の自動車産業がより強くなっていることは容易に想像できます。

それにしても「ジャパンアズNo.1」と呼ばれた1980年代後半、米国の工場労働者たちが、日本製品の不買運動を全米に訴え、東芝のラジカセをハンマーでたたき割る、という映像がテレビのニュースに流されたのがウソのようです。

あの当時、日本の電気製品も電子部品も世界を席巻し、コンピューターでさえも米国の地位を大いに脅かす存在になっていたのです。

それなのになぜ自動車業界と電機業界にここまで差がついてしまったのでしょうか?

自動車のほうが部品点数が圧倒的に多く、すそ野の広い産業であるため、新興国が追いついてくるまでにまだ時間がかかる、ということでしょうか。

いずれにせよ新興国が日本の自動車産業に追いついてくる日もそう遠くはないでしょう。

とにかく日本は早く成長戦略をうちたて、次の主力商品にターゲットを絞らなければなりません。

1981年に就任した米国レーガン大統領の掲げた、自由主義経済政策、レーガノミクスの主力は、「規制緩和」と「ソフトウェア重視」でした。

それにより、大きく米国の産業構造を転換させたのです。強い米国経済の復活は、まさに競争社会の実現とハードからソフトへの転換から始まったと言えるしょう。

「産業の発展」のために不可欠なもの

「イノベーション」
そのために不可欠なもの

「競争」
そのために不可欠なもの

「規制緩和」
そのために不可欠なもの

「政治と行政の構造改革」

強い電機業界の復活、貿易黒字の復活、日本経済の復活、のために、大いにアベノミクスに期待をしています。

グローバル化の流れは変わらない

2013年4月1日号 日経ビジネス特別編集版「イノベーションへの挑戦」より

(前略)

仮にデフレが解消されても日本企業によるグローバル化の流れは変わらないだろう。

経営者が注目する2つ目の大きな経営環境の変化である「人口減少・少子高齢化」によって国内市場が長期的に縮小していく傾向にあるからだ。

2030年、日本の人口は2005年に比べて1,067万人減って1億1,661万人になると推計されている。国内市場だけを相手にしていると、お客の数は年々減っていき、ヒット商品や画期的なサービスを開発するか、単価を上げない限り売り上げは増えるどころか維持すら難しくなる。

人口を増やすには、子供を産みやすい環境を整えたり、規制を緩和して多くの移民を受け入れたりしなければならないが、そう簡単ではない。そして10年20年と時間を要することになる。

従って、高度成長している、アジアを中心とする新興国に収益を求める動きはさらに加速するとみられる。しかし、モノ作り立国である日本にとって大きな問題だった「生産の空洞化」に歯止めがかかる可能性が出てきた。

円高が続いていた昨年までの状況では、製造業の多くが生産拠点の海外移転に踏み切った。2011年秋に上場企業の経営者に実施したアンケートでは、2010年度の営業利益が2006年度に比べて増えた企業41社の海外生産比率(平均)は22.4%だったが、3年後は25.2%、5年後は28.3%に高まるという結果を得た(「21世紀を勝ち抜く決め手グローバル人材マネジメント」(日経BP社)より引用)。

2年以上連続増益の企業31社で見ると、海岸生産比率は27.8%から3年後に29.4%、5年後に33.6%と、超円高を避けて海外生産を増やす傾向が明確だった。減収企業を見てもその傾向は変わらなかった。ただし、昨年暮れから続いている円安が定着することになれば、生産拠点の海外移転は一段落する可能性もある。

(後略)
2013年4月1日 日経ビジネス
(以上で日経ビジネスの記事終り)

未だかつて世界中のどの国も経験したことのないスピードで超高齢化社会を迎える日本は当然「課題山積」となるでしょう。

しかし、悪いことばかりではありません。

世界に先駆けて貴重な経験を積むことができる日本は、「超高齢化社会」に適合した画期的なモノやサービスを発明、発見できる壮大な実験場ともなりうるはずです。

まさにそこにイノベーションの芽があるというわけです。

世界があっと驚くような画期的なモノやサービスの創造により、輸出が増大し、再び日本が「ジャパンアズNo.1」の座を獲得するという日を迎えたいものです。

それは単なる夢物語ではなく、実現性の高い目標であると信じています。

機械受注4カ月ぶりマイナス

2013.3.12 日本経済新聞朝刊

機械受注4カ月ぶりマイナス、設備投資回復に遅れ 基調判断は据え置き 輸出持ち直しカギ

設備投資の回復が鈍い。内閣府が11日発表した1月の機械受注統計は、民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需(季節調整値)」は4カ月ぶりに前月を下回った。投資が本格的な回復軌道に乗るには輸出の持ち直しがカギを握りそうだ。

(中略)

設備投資のけん引役となる輸出が持ち直す公算も大きい。米中景気が緩やかに回復しているほか、円高修正で輸出企業の価格競争力が改善しているためだ。「今年4~6月期以降、輸出回復とともに設備投資の持ち直しが明確になる」(野村証券の木下智夫チーフエコノミスト)との見通しが多い。

(後略)

2013年3月12日 日経

(以上で記事終り)

以下のグラフは、財務省貿易統計の数字を使って、私がエクセルでグラフにしたものですが、日本の貿易(輸出・輸入)総額のグラフと民間設備投資・機械受注のグラフが似ていることが興味深いです。

2013年3月12日 貿易統計

特に輸出額はリーマン・ショック前の8割の水準にも満たないという点で、民間設備投資や機械受注の動きと酷似しています。

日本の工作機械、産業用ロボット、電子部品などの多くは、世界で高いシェアを占めているものも多く、海外の工場のなかでも代替の利かない重要な役割を果たしているケースが多いのです。

したがって、海外からの機械受注が増えれば、海外の工場での増産が始まり、日本の電子部品の需要も高まり、輸出が増え、それにつられて輸入も増え、景気が刺激され、設備投資も活発化していく・・・・・・というシナリオが描けるのではないでしょうか。

この記事にあるように、今後の日本の輸出の持ち直しがカギとなっていくでしょう。

輸出が活発化するということは、当然日本の翻訳業界にも朗報となることは言うまでもありません。

2013年3月期の経常損益改善額 トヨタ・ホンダで1兆円

2013年2月16日 日本経済新聞朝刊

2013年3月期の経常損益(米国会計基準などは税引き前損益)見通しの改善額をみると、トヨタ自動車など為替相場の円安で輸出採算が改善する自動車メーカーが上位に並んだ。ソフトバンクや東海旅客鉄道(JR東海)なども堅調な内需を背景に利益を伸ばす。為替相場の円高修正を受け、為替差益の計上による損益改善も目立っている。

トヨタの改善額は8571億円と突出している。12年4~9月期決算発表時点では年間で1100億円の減益要因だった為替が300億円の増益要因に転じる。原価低減も利益を底上げする。ホンダも改善幅が2575億円と、2社だけで改善額は合計1兆1000億円を超す。

自動車ではほかに、富士重工業が00年3月期以来の過去最高益更新となる。米国での販売増に加え「コストと品質を管理する経営が実を結びつつある」(高橋充・最高財務責任者)という。マツダも黒字転換するなど損益改善が進んでいる。

リストラを進める企業の収益改善も目立つ。パネル合弁会社の解消など不振のテレビ事業の赤字縮小が進むソニーは資産売却益の計上もあり税引き前損益が黒字転換。リコーも「構造改革が進み円安も収益を押し上げる」(三浦善司副社長)効果で黒字転換を見込む。

(後 略)

2013年2月17日上場企業業績

(以上で記事終わり)

円安が日本の製造業に与える影響に明暗が出ているようです。

「電気機器」や「自動車・部品」などの輸出の比重の高い産業は、経常損益を大幅に改善しつつある一方、同じ製造業でも資源を輸入し、国内で加工販売する装置産業の場合は円高がマイナスに働いているようです。

超円高というあまりにも過重な手かせ足かせをはめられて苦戦一方であったかつての「日本経済の顔」、電機・自動車産業の復活を強く望んでいます。

それにしても「電気機器」と「自動車・部品」という2つの業種だけで、製造業全体の売上の約半分(48%)を占めているという事実には改めて驚かされます。

やはり日本経済復活のキーはこの2業種にかかっていると言っても過言ではないでしょう。

ただちょっと気がかりこともあります。

日本の輸出先にアジア諸国が増えたということもあるのかもしれませんが、今や日本の輸出の4割が円建てという統計結果が出ているそうです。

「円建て」であれば円安になればなるほど売る側に不利になるからです。いずれにしても急激な為替の変動は経済活動にとってあまり好ましいことではありません。

今後数年かけてゆるやかに円安に向かい、1ドル120円くらいで安定してくれれば一番好ましいような気がするのですがいかがでしょうか。

その根拠は、円が1ドル120円だった2001年から2008年にかけて、日本の貿易額が急増していったからです。

日本の電機・自動車産業が復活してどんどん輸出額を伸ばし、アメリカのシェールガス・シェールオイルを安く輸入し、貿易黒字をたっぷりためこんで国内産業に投資する・・・・。

そのうちにメタンハイドレートの目処がたち日本が資源大国となっていく・・・・。

こんな夢のようなシナリオをぜひとも実現していってもらいたいものです。

G7、為替レート目標にせず 緊急共同声明

2013.2.13 日本経済新聞朝刊

主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁は12日、緊急共同声明を発表した。各国の財政・金融政策は「国内目的の達成に向けられており、為替レートを目標にはしないことを再確認する」と初めて明記。安倍政権発足後に進んだ円安を事実上、容認した。

G7が緊急共同声明をまとめたのは、15~16日にモスクワで開く20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議を前に、先進国として統一見解を示す狙いがある。麻生太郎副総理・財務・金融相は12日、記者団に「デフレ不況対策のためにとってきた政策が為替相場に使っていないと、各国から正式に認識された」と述べた。

(以上で記事終わり)

為替が円安に向かえば、輸出関連企業(自動車・電機・精密機器など)の業績に有利に働くため、日本の翻訳業界にとってもプラス面が多いはずです。

下のふたつのグラフを見ると円が1ドル120円前後で安定していた2000年から2008年の間に急激に貿易額が増加している様子がわかります。

しかし、2008年におきたリーマン・ショックを契機に円は行き過ぎた円高へ向かい、それにより日本の貿易総額は急激に落ち込み、景気に暗い影を落とすことになります。

為替相場を決めるのは市場なわけですが、このグラフを見る限りにおいては、日本にとって円は1ドル120円前後が一番好ましい額のような気がします。

1ドル120円前後に落ち着き、再び日本の貿易額がどんどん増えていくことを願っています。

為替レートの推移(1980~2013年) - 世界経済のネタ帳

2013年2月13 日本の貿易総額

輸出力の低下鮮明 「リーマン後」通信機など15品目 価格競争力に円高直撃

2012.06.14 日本経済新聞朝刊

日本企業の輸出競争力の低下が鮮明になってきた。主要30品目の2011年の競争力指数は米リーマン・ショック前の2007年に比べ、通信機や医療品、コンピュータ類など15品目で下がった。特にテレビの苦戦が鮮明だ。新興国との価格競争が激しくなる中で、歴史的な円高に直面したことが響いた。

国際競争力係数と呼ぶ指標で2007年と2011年を比較した。輸出力が下がったのはほかにプラスチック、DVDなどの記録媒体、家電など。戦後の経済成長を支えた輸出力の低下が浮き彫りになり、国や企業は新たな成長モデルの構築が急務になっている。

2012.06.14 日経
(以上で記事終わり)

以下、記事の内容を簡単にまとめました。

<安定的に競争力を発揮>
・ 中国向けの輸出が拡大した工作機械や荷役機械など

<比較的堅調>
・ コンピューターの部品や音響・映像機器の部品

<07年よりは低いが、01年の水準は上回っている>
・ 自動車

<07年と比べると下がったものの、競争力はなお高い>
・ 建設・鉱山用機械

<主要30品目のうちリーマン前よりも輸出力が上がった>
・ 化学光学機器や電気計測機器など11品目

<07年とほぼ同水準>
・ゴム製品、金属製品など4品目

要するに70年代以降の日本経済をけん引してきた通信機やテレビの輸出競争力が大きく落ち込み、コンピュータ(含む周辺機器)、家電、医薬品の輸出競争力が長期低迷しているわけです。

なかでも21世紀のけん引役になると思われる医薬品も長期低迷していることはかなり問題でしょう。

しかし、この記事では「国や企業は新たな成長モデルの構築が急務」と言っておきながら、その後何も触れていません。

そこで2010年に閣議決定された政府の「新成長戦略~元気な日本復活のシナリオ~」の中から、その大項目だけをご紹介しておきます。

(1)グリーン・イノベーションによる環境・エネルギー大国戦略

(2)ライフ・イノベーションによる健康大国戦略

(3) アジア経済戦略

(4)観光立国・地域活性化戦略

(5)科学・技術・情報通信立国戦略

(6)雇用・人材戦略

(7)金融戦略

詳細は割愛しますが、この「新成長戦略」に書かれていること自体は素晴らしい内容だと思います。

またそのすべてが私たち翻訳業界の人間と深くかかわりあっている内容と言えるでしょう。

大震災と原発事故により頓挫していますが、なんとしてもこの「新成長戦略」を実現していってほしいと願っています。

上場企業 今期利益ランキング けん引役10年で様変わり 電機3社赤字1.2兆円

2012年2月8日 日本経済新聞朝刊より

企業業績のけん引役が様変わりしている。2012年3月期の予想連結純利益が多い順に上場企業をランキングしたところ、上位にはNTTドコモなど内需型の通信や、資源高で潤う商社が名を連ねた。テレビ不振と円高で苦境に立つ電機大手は、パナソニックなど5社が1000億円以上の赤字となる。日本の稼ぎ手が製造業から非製造業へ、輸出関連から内需関連へと移り、産業地図が塗り替わろうとしている。

2012.02.08 日経

(以上で記事終わり)

これは日本の翻訳業界のみならず、日本全体にとって大変由々しき問題といえるでしょう。

利益上位に名を連ねた「通信」と「商社」は、いわば国策会社とも言える産業です。

「通信」はインフラ整備のため、莫大な国家予算を費やす産業であり、また国防上においても非常に重要なため、昔からどの国においても、国家が大きく関与してきました。

また、今回「商社」は、資源高により莫大な利益を上げたようですが、この「資源」もまた「国策企業」が扱う最たるものです。

日本は、今後「製造業」という産業をどのような位置に置こうとしているのでしょうか?

① 米国アップルのように、製造は新興国にまかせて、設計、デザイン、ソフトウェア開発に特化する製造業を目指す。

② 韓国のように国策で同業者を一つか二つにまとめて、世界で戦える巨大企業に集約してしまう。たとえば自動車メーカーにおける現代、電機メーカーにおけるサムスン、LGのように。

③ 日本はもう「ものづくり」はしない、と切り捨ててしまう。

まさか③の対応を考えているとは思いませんが、現在の日本政府の無為無策を見ていると、結果的に③になりそうで心配です。

強力な円高対策はもちろんのこと、企業グローバル化への後押し、法人税、相続税の減税も必要です。やはりまずは選挙でしょうか・・・・。

世界景気、同時減速の足音

日経ビジネス2011.8.8-15合併号の記事の抜粋です。

(以下、記事の抜粋)

上場企業の4~6月期決算は米国、欧州、中国という主要市場での減速が目立った。家電は薄型テレビの売り上げ減に悩む。円高も重しとなり、自動車も苦戦した。震災の影響を脱した企業にとって、世界景気の行方が最大の経営リスクになってきた。

2011.08.11 日経ビ

パナソニックの上野常務>

「世界的に販売が落ち込んでおり、特に北米と欧州の落ち込みが激しい」

サムスン電子

4~6月期の液晶パネル部門が2,100億ウォン(約154億円)の営業赤字。

ソニーの加藤CFO)

「もはや(薄型テレビの)台数シェアは追わない」

パナソニックの上野常務>

「(薄型テレビの)数は追わず収益を重視する」

シャープの野村経理本部長>

「いたずらに(薄型テレビの)販売台数を増やすのはなく、強みが発揮できる大型液晶で攻める」

日本電気硝子

液晶テレビ向けガラスの販売が鈍く、単価も下落。4~6月期の連結営業利益が280億円と前年同期に比べ31.7%も減少した。

富士通

円高により、4~6月期の営業損益が171億円の赤字に転落した。

東芝

円高により4~6月期の売上高が810億円、営業利益は70億円減少した。「この水準の円高が続くと、事業ごとに日本でやっていけるのかを検討せざるを得ない」(同社の久保専務)

マツダ

4~6月期に230億円の営業赤字を計上。「円高の影響が大きい米国市場では、マツダが主力とする中・小型車で韓国や欧州の自動車メーカーによる攻勢がすさまじい」(同社の尾崎副社長)

コマツ

コマツは販売した建機に取り付けた情報端末で、建機の稼働率を常時、監視している。その情報によると、(中国市場では)5月に稼働率が前年同月より5%低下し、6月はさらに落ち込み14%の低下になった。稼働率の低下は、建機の需要が減少していることに、ほぼ等しい。コマツは4~6月期の中国の建機売上高が前年同期比23%減の754億円にとどまった。「成長のエンジン」と目された中国市場の変調は、建機各社に重くのしかかる。

スズキ

インドでの4~6月期の販売台数が前年同期比3%増の約25万台と、同27%増だった1~3月期に比べて急減速した。

ホンダ

2012年3月期の連結営業利益見通しを2,700億円と、6月の公表と比べて700億円引き下げた。

(以上で記事の抜粋、終わり)

世界景気の後退が日本の翻訳業界にどのような影響を与えるかなど、いまさら言うまでもありません。リーマンショックの傷が癒え、なんとか回復傾向を見せ始めた日本経済を覆う暗い影はなんとも不気味です。

近頃の極端なドル安やニューヨーク株式市場の急落が、「実は~だった」という隠れた経済スキャンダルの前兆ではないことを、ただただ祈るばかりです。

国内造船、受注減で悲鳴 円高で中韓に競り負け

2011年07月20日 日経新聞朝刊より

日本の造船業界が受注減に悩まされている。19日に日本船舶輸出組合が発表した6月の受注実績は15隻で前年同月比55%の減少。実数ベースでも過去最低の水準となった。7月も商談環境は厳しく、このままでは2013年にも一部造船所で建造予定船がなくなる見通し。国際競争に勝てる体質づくりが待ったなしの課題だ。
(以上、記事終わり)

2011.07.20 日経新聞

この記事によると、 

(1) 中国企業や韓国企業とのコスト競争で負けている。
(2) かつ、現在の日本の造船所の規模では顧客からの大量発注に応えられない。

よって、ご多分に漏れず、「資材費40%の削減」と「高付加価値船」の開発、つまり「省エネ船」の開発に活路を見出そうとしている、とのことです。

しかしそれだけでは(1)の対策にはなっても、(2)の解決策にはなりません。

この造船業界の問題は、日本の産業が抱える諸問題の縮図でもあると思います。

今こそ中長期的視野に立った「国家的戦略」がなんとしても必要です。ちょうど韓国が行なったように、ハブ空港やハブ港の建設。自動車業界や電機業界の統合再編など大胆な国家プロジェクトが必要でしょう。

日本中には大小様々な港がありますが、大型船が横付けできる港や大量のコンテナを取り扱える設備を持った巨大な港はほとんどありません。お隣の韓国では、小さい港を廃止し、釜山港ひとつに絞って巨大設備を建造中です。

また、日本は1995年の「阪神淡路大震災」のあと、港の復興を急いだのはよいのですが、「現状復帰」を急いだがために、大型タンカーが横付けできる巨大なハブ港を建造する千載一遇のチャンスを逃してしまいました。

韓国産業界の「選択と集中」はすさまじく、自動車業界は現代自動車、電機業界はサムスン電子とLG電子にすべて統合してしまいました。初めから小さな国内市場を捨て、世界のマーケットを視野に入れていたからです。

日本に2つも国際線の航空会社(JALとANA)が必要でしょうか?日本に10社以上の自動車メーカーが必要でしょうか?日本に数十社を超える電機メーカーが必要でしょうか?

日本政府も早く“21世紀”を見据えた産業ロードマップを作成してほしいものです。そこに日本の翻訳業界の未来もかかっていると言っても過言ではないでしょう。

日本の貿易依存度と翻訳業界

TDB景気白書 2010年~2011年版より

帝国データバンクから毎年送られてくる「景気白書」の中から、日本の輸出依存度に関するデータをご紹介いたします。

このグラフは1980年から2009年までが、内閣府「国民経済計算」による実績データであり、2010年以降が帝国データバンクによる予測となっています。

2011.2.16_輸出依存度

私が翻訳業界に入ったのが今からちょうど30年前の1981年4月のことですから、このグラフは、私がこの業界で歩んできた道のりとほぼ同じ時期を示していることになります。

1985年9月のプラザ合意後におきたいわゆる「円高不況」ですが、それまで1ドル250円ほどだった円が1年後に160円、2年半後には120円にまで急騰しました。

当然この円高は、日本の輸出企業に大変深刻なダメージを与えました。今でも覚えているのは、大手新聞が特集した「このまま円高が進み、1ドル170円になると、日本の輸出関連中小企業の7割が倒産する」というまことしやかな記事でした。

実際輸出関連企業にとっては、とても深刻な不況ではありましたが、多くの日本企業はたくましく生き残り、やがて空前絶後の「バブル景気」を迎えることになります。

そしてその後1990年「バブルの崩壊」と2000年「ITバブルの崩壊」を迎え、2008年の「リーマン・ショック」で再び急速に落下します。

この「名目輸出金額」のグラフから3つのことがわかります。

(1)1980年から2003年までの24年間、かなり大きな景気のアップダウンがあったが、輸出はほぼなだらかに右肩上がりに推移している。

(2)2004年から2007年までの急上昇とその後2年間の急激な落ち込みをみると改めて、リーマン・ショックの激しさがよくわかる。

(3)帝国データバンクによる2010年以降の予測は、過去30年間と比べて、かなり急激な輸出増になっている。

この予測が的中するとなると、日本経済はいまだかつて経験したことのない爆発的な貿易増(輸出増は必然的に輸入も増やします)と高い輸出依存度を経験することになります。

これが日本の翻訳業界にとって良いことであっても悪いことであるはずがありません。

各相場から見た景気見通し

本日(2010年10月28日)のニュースの中から「景気見通し」に関するニュースを検索してみました。3ヶ月から6ヶ月先の景気を占う上で重要な指標となる各国の株式相場や為替相場を中心に見てみます。

2010年10月28日 47NEWS

東証株価終値は反落21円安 米景気減速懸念で
28日の東京株式市場は、米国の追加金融緩和が小規模にとどまるとの観測から米景気の減速懸念が強まり、日経平均株価(225種)終値が反落した。
⇒ 少し弱気見通し

2010年10月28日 47NEWS

東京円続落、81円台後半 米景気先行き懸念和らぐ
27日の東京外国為替市場の円相場は続落し、1ドル=81円台後半で推移した。これまでの円高基調で戦後最高値の1ドル=79円75銭に迫っていたが、一服した形だ。(中略)米国の景気先行き懸念がやや和らぎ、追加金融緩和の規模が想定より小さくなるとの観測から、いったん円を売ってドルを買い戻す動きが優勢となった。オーストラリアの利上げ観測後退で豪ドルに対して米ドルが急速に買われたことも、対円でドルが買われる材料となった。
⇒ 少し強気見通し

2010年10月28日 ウォールストリートジャーナル

【米国株市況】ダウ反落、エネルギー銘柄が安い
27日の米国株式市場のダウ工業株30種平均とS&P500種指数は反落。米連邦準備制度理事会(FRB)による追加金融緩和への期待感に変化がみられたほか、企業の好決算が織り込み済みとなり、売りが優勢になった。ダウ平均は一時150ドル近く下げたものの、その後は切り返して日中高値近辺で取引を終えた。FRBは金融危機の際に2兆ドル近くの米国債を買い入れたが、来月発表される景気対策の買い入れ規模は数カ月にわたり数千億ドル相当を買い入れるものになる、との見方が市場に広がった。
⇒ 少し弱気見通し

2010年10月28日 ロイター

欧州株式市場=続落し2週間ぶり安値で引け、米追加緩和の規模巡り不透明感
27日の欧州株式市場は続落し、2週間ぶり安値で引けた。来週の米連邦公開市場委員会(FOMC)で連邦準備理事会(FRB)が打ち出すとみられる量的緩和第2弾の規模をめぐり不透明感が出ていることや、さえない米耐久財受注を背景に、投資家の間に慎重姿勢が広がった。
⇒ 少し弱気見通し

2010年10月28日 日本経済新聞

韓国、景気回復に陰り ウォン安でも輸出低迷
韓国の景気回復に陰りが見えてきた。韓国銀行(中央銀行)が27日発表した7~9月期の国内総生産(GDP)は実質で前期比0.7%増にとどまり、4~6月期の同1.4%増に比べ伸び率は半減。最大のけん引役である輸出がウォン安の傾向にもかかわらず伸び悩んだ。今後はウォン高の兆しもあり、輸出への逆風が強まりそうだ。国内では不動産市場の低迷が不安要素となってきた。
⇒ 少し弱気見通し

2010年10月28日 ロイター

10年の中国貿易黒字は1800億ドルの見通し=商務相
中国の陳徳銘商務相は、2010年の貿易黒字が09年の1960億ドルを下回る1800億ドルに達するとの見通しを示した。4月時点の政府予測の1000億ドルから大幅に上方修正した。
⇒ かなり強気見通し

2010年10月28日 財経新聞

翻訳センターは2Q業績を上方修正、利益で米国子会社の貢献が大
翻訳センター <2483> は取引終了後、11年3月期第2四半期連結業績について、5月14日公表の予想を上方修正し、売上高2,196百万円(前回予想比4.6%増)、営業利益106百万円(同76.7%増)、経常利益96百万円(同61.5%増)、純利益57百万円(同65.2%増)とした。なお、11年3月期通期連結業績予想は、前回公表予想を据え置いた。
⇒ かなり強気見通し

上記のように見方は分かれていますが、翻訳業界に一番大きな影響を与える世界景気の動向は、「大きな経済スキャンダル」、「大規模テロ」、「天変地異」、「パンデミック」、「戦争」等々・・・・さえなければ、そろそろ景気拡大の時期にさしかかっていると考えても良いのではないでしょうか。

とは言っても「大きな経済スキャンダル」も「大規模テロ」も「天変地異」も「パンデミック」も「戦争」も、いつ起こっても不思議ではない世相ではありますが・・・。

円高の影響に関する緊急アンケート

2010.9.24 日本経済新聞

大手製造業が海外生産比率を一段と引き上げる。トヨタ自動車や日産自動車の海外生産比率は通年で過去最高に達する見通し。電子部品や精密機器も海外生産が拡大する。2010年4~9月期の実績為替レートは主要輸出企業の平均で前年同期比7円前後の円高・ドル安になるとみられる。海外生産拡大は円高対応力を強めるが、生産能力全体が増えない中での海外拡充は国内の空洞化につながる懸念もある。

(以上で日経の記事終わり)

2010.9.24 日経新聞
<日経新聞朝刊より>

円高の影響に関するジェトロ・メンバーズ緊急アンケート結果概要
2010年9月17日 日本貿易振興機構 海外調査部

円高による海外部門の業績への影響(業種別)

2010.9.24 JETRO 1
* 現在の円高が今後(半年から1年程度)続くことによる、海外部門(輸出含む)の業績の影響については、4分の3の企業が業績が悪化すると回答し、4割超が業績は「大いに悪化する」との回答であった。

* 業種別には、製造業の約85%、非製造業は6割程度が業績悪化を見込んであり、非製造業では3割近くが業績への影響は無いとの回答であった。

円高による海外部門の業績への影響(業種別詳細)●2010.9.24 JETRO 2
*業種を詳細にみると、特に機械類(「一般機械」、「電気機械」、「情報通信機械器具/電子部品・デバイス」、「自動車/自動車部品/その他輸送機器」、「精密機械」)で悪影響が大きくなると見込まれ、いずれも8割以上の企業が業績の悪化を見込んでいる。これに対し、非製造業への影響は相対的に限られると見込まれる。

(以上でJETROの記事は終り)

このブログの中で何度も指摘してきましたが、日本製造業の海外脱出と国内産業の空洞化の問題が今後さらに強まりそうです。

今回の急激な円高が日本製造業を海外脱出させる直接的な原因となっていることは間違いありませんが、もちろん原因はそれだけではありません。「日本製造業の派遣社員切りに対するヒステリックな社会的批判」や「諸外国に比べかなり高率の法人税」に嫌気がさしていたところへ、今回の円高がとどめを刺したというところでしょう。

まあ、いずれしてもこれも時間の問題ではありました。なぜならグローバル化が進めば、製品売却先の国に工場を建て、現地人を雇用し、納税し、「売って儲けているだけ」という批判を少しでもかわさなければならないからです。

ただし、翻訳業界にとって気になるのは、工場の移転よりも「開発や設計の海外移転」のほうですが、これも今や着々と途上国へと移転が進んでいるようです。ITソフトウェアの世界では十数年間から途上国でのオフショア開発が盛んに行われてきましたが、これが今後は製造業一般にまで広がっていくのかどうかが気になるところです。

円安と国債とインフレと

2010年4月6日、朝日新聞の朝刊より

「外国為替市場で円安傾向が強まっている。5日の円相場は一時、対ドルで94円70銭まで下げ、昨年8月18日以来となる95円台の大台に迫った。米国で景気回復の予想から金利の先高感が高まり、日本より金利が高いドル資産に投資しようとする動きが広がっているからだ。ただ、米景気の回復に力強さは乏しく、円安がさらに進むかどうかは不透明だ」

2010.4.6 朝日新聞
(以上で記事終り)

戦後の日本経済の発展は、製造業による輸出に「おんぶにだっこ」されてきたわけですが、その傾向が近年さらに強まってきたことが先のリーマン・ショックでばれてしまったわけです。

その輸出企業にとって円安は良いことで、輸出が増えれば輸入も増え、これはこれで日本の翻訳業界にとっても良いこととなります。

しかしことはそう単純には運びそうにありません。いまや日本の国債の予定発行残高は約860兆円となり、国家予算の10倍超、約500兆円といわれるGDPの1.7倍となりました。

このまま永遠に赤字国債の発行が続くわけもなくいつかは必ず行き詰るときが来ます。そのときはどうなるか?

1. 日本の国債の格付けが下がる。

2. 日本のカントリーリスクが高まり、資金が海外へ移動し円安となる。

3. 日本の国債の金利が上昇することにより、国家予算が破綻する。

4. 郵便貯金を初めとする金融機関の預貯金が凍結される(引き出しができなくなる)。

5. 消費税の大増税により不況に拍車がかかる。

6. 日銀が紙幣を刷りまくりインフレ政策をとる。

7. 円安がいっそう進み、輸入原材料が高騰し、さらにインフレに拍車がかかり、瞬く間にハイパーインフレとなる。

8. 国民の預貯金や紙幣が紙くず同然となる。

9. 日銀が新紙幣を発行することにより、国債という借金がすべて棒引きにされる。

10. 「経済大国」日本のデフォルト(国家債務不履行)が引き金となり、世界大恐慌となる。

現在アメリカの金融機関もサブプライムローンによる不良債権の処理を3年間返済猶予されているにすぎません。

恐ろしい話ですが、現政権が郵便貯金限度額を1,000万円から2,000万円に引き上げるなど準備を始めているところをみると、このストーリーも決して絵空事ではない気がします。

では私たちはどうすればよいのか?

海外へ移住し資産も海外へ避難させるか、あるいは日本国内に残るならば、全財産を不動産と金に変えてじっと耐え忍ぶか、このくらいしか対策は思い浮かびません。

しかしこれはそう簡単には実行できませんよね。ただし、日本の国債の格付けが現在より2段階下がったら即実行ですね。その時ではもう遅いかもしれませんが。

「外需」概念の混乱

2009年12月11日の日経新聞、「大機小機」の欄に興味深い解説が出ていました。

・「外需」とは「輸出マイナス輸入」のことであり、「外需」=「輸出」ではない。
・したがって輸出が増えて内需があまり増えない場合であっても(つまり輸出にリードされた成長であっても)、輸出と同じように輸入が増えれば、外需の寄与度はゼロとなり、一見「完全内需主導型の経済」となってしまう。
・日本の高度経済成長期(1956~1970年度)の平均経済成長率は9.6%であり、これを寄与度に分解すると、内需寄与度が9.9%、外需寄与度はマイナス0.2%だった。
・これだけで判断してしまうと、日本の高度成長は完全に内需主導型だったように見える。しかし、この期間、輸出は14.6%の高い伸び率だったが、輸入もまた15.4%もの高い伸びとなったからだ。

記事の要旨は以上です。

つまり上記から察するに、高度経済成長期の日本は、旺盛な輸出競争力で円を強くし、結果として実質的な輸入原材料の価格を引き下げ、一段と輸出競争力を強めていく。さらに輸出は個人や企業の所得を増やし内需を拡大させ、さらに円高は一般の輸入物価を引き下げ輸入を益々促進する。安い輸入物価は旺盛な国内消費を刺激し、内需をさらに増大させていく。こうやって輸出・輸入・内需の3者が同時に増加することで経済を拡大させていった。

確かに輸出・輸入・内需の3者を同時に引き上げていくバランスが大事なのでしょうが、やはりことの初めはとにかく「輸出」ということでしょう。輸出で外貨を稼がねば所得が増えず輸入ができないし、輸出で自国の通貨の価値を上げることにより、輸入物価を下げなければ消費に弾みがつかない・・・・ということでしょう。

基本的に豊かな国が豊かであるワケは、モノやサービスを外国へ売ることにより外貨を稼ぐか、外国から観光客を呼び込むことにより外貨を稼ぐかのどちらかでしょう。日本の場合、後者は難しいでしょうから結局のところ「ハイテク日本の輸出」、「ものづくり日本の輸出」に頼らざるを得ない、という従来どおりの当たり前の結論にたどり着いてしまいます。

輸出入総額と翻訳業界

日本の貿易額(輸出入総額)が翻訳業界と密接な関係にあることは言うまでもありません。

財務省貿易統計のページ(→ http://www.customs.go.jp/toukei/info/index.htm)から数字を拾ってきて、Excelでグラフを作ってみました。

まずは1950年から2008年までの「輸出入総額」を年別にグラフ化したものを見てみましょう。

年度別輸出入

日本の貿易額は戦後ほぼ一貫して成長を続けていますが、中でも1972(昭和47)年から1985(昭和60)年までの13年間と2004(平成16)年から2008(平成20)年までの5年間の急上昇が目立ちます。

1972年におきた出来事を調べてみました。

1. 札幌オリンピック開催
2. 連合赤軍の浅間山荘事件
3. 川端康成自殺
4. 沖縄返還
5. 田中角栄が総理大臣になり「日本列島改造論」を発表
6. ミュンヘンオリンピック開催
7. 田中首相、中国を訪問
8. 中国政府寄贈の2頭のパンダが上野動物園に現る

当時私は中学2年生~3年生だったのですが、これらの出来事が昨日のことのように思い出されます。なにせあの「列島改造論」が出てきた年ですから、世の中全体がイケイケドンドンだったことは容易に想像できます。そのムードの中で日本の輸出額は急上昇し、稼いだ外貨でどんどん輸入額も増えていったのでしょう。

一方の1985年ですが、忘れもしません。プラザ合意の円高ショックが始まった年だからです。日本の輸出企業はあまりに急な円高に対応ができず、景気は低迷し、翻訳業界にも深刻な不況が訪れました。

しかし強い円は結果的に日本の国力を高め、安くなった輸入品は人々の消費意欲を大いに刺激し、未曾有の大好景気(バブル経済)を作り出します。

改めてこのグラフを見てみると、バブル経済(87年~90年)の間、日本の輸出入総額は低迷していたことがわかります。円高による内需拡大は、あえて日本の貿易増大を必要としなかったのでしょう。

つまり「貿易立国日本」は貿易が低迷しても、内需さえ拡大できれば、国民生活は改善できるということを示唆しています。現在の日本とは大違いです。

1990年のバブル崩壊から失われた10年が始まります。その間日本の景気は低迷し、他の先進国から日本だけが置いてけぼりにされます。当然、日本の貿易額も低迷します。

しかし、今世紀に入った頃から、特に中国経済の急成長とアメリカのバブル消費によって日本の貿易額は再び急上昇を始めます。翻訳業界にも再びブームがやって来たわけです。

そして2008年9月のリーマンショックに始まった「世界同時不況」は、世界経済に大打撃を与え、日本の輸出産業もかつてないほどのダメージを受けることとなります。

下のグラフは、2007年10月から2009年8月までの日本の輸出入総額の月額(速報値)を示したものです。やはりリーマンショック後、貿易額全体が“つるべ落とし”になり、その後底を這っていることがこの図を見てもよく分かります。

月別輸出入

最後に「日経平均株価」のグラフを下記に掲載しておきます。1989年12月にピークをつけた株価は直後に急降下し、その後長期にわたり低迷を続けます。

日本の輸出入総額のグラフもこの「日経平均株価」のようにならないよう願っていますが、その可能性も高いと感じています。

今後企業のグローバル化はますます加速し、業務のアウトソーシングも積極的に行われていくはずです。したがって世界的に見れば翻訳業そのものの需要は減ることはないと考えていますが、同時に日本の翻訳業界は、厳しい構造不況の中、絶えざる革新を続けていかなければ、厳しい生存競争の中で生き残っていけなくなるでしょう。

日経平均株価

「対外直接投資」と翻訳業界

2009年9月8日、日本経済新聞1面トップ記事からの抜粋

「中国での販売 日本抜く 製造業、依存高まる

自動車や建設機械の販売で日中逆転が起きている。日産自動車は1~7月の中国での版台数が日本を抜き、建機ではコマツの2009年4~6月の中国売上高が地域別のトップになった。大手メーカーは対外直接投資を米欧中心から中国など新興国に切り替えており、収益面でも対中依存は高まっている。日本を含む先進諸国が伸び悩むなか、中国が日本メーカーの最重要市場になってきた。」

2009.9.8日経(1)
2009.9.8日経(2)

(以上で記事終り)

「対外直接投資」の意味についても同じ日の日経新聞に説明が出ていました。

「国内企業が海外で実施する投資のこと。日本銀行の調査では日本の製造業による1~3月の対外直接投資は米欧向けが激減。7,848億円となり対前年同期比48%減少した。一方で対中国、対インド、対ブラジルは前年同期を上回った。日本の製造業は投資先を中国など成長余力のある新興国に切り替えつつある。

中国など新興国向け投資では、コスト圧縮や現地需要の獲得を狙った日本からの工場移転が目立つ。もたつく先進諸国を尻目に景気回復が期待される新興国市場で、他社に先駆けて存在感を示せるかどうか。これが今後の成長力を左右するというコンセンサスが、日本企業の間にうまれつつある。」

日本製造業の海外への工場移転に関しては、ブログ等で何回か指摘してきましたが、大変憂慮すべき問題です。今回の不況に円高が加わり多くのメーカーがその製造拠点を新興国へ移す準備を始めています。まさに「産業の空洞化」が加速していきます。

さらにそれに追い討ちをかけるように今日本では「製造業への派遣禁止」を法制化する方向へ向かっています。「不況で首を切られた派遣社員がかわいそうだから、製造業への派遣を禁止すれば、きっとメーカーは派遣社員を正社員として雇うだろう」と。

はたしてそうでしょうか?私はこの規制は「産業の空洞化」を助長させるだけだと考えています。

ソフトブレーン創業者の宗文洲氏の説によると、「日本はいつのまにか江戸時代の身分制度に逆戻りした国家になってしまった。『士農工商』ならぬ4段階の身分制度、つまり『正社員、契約社員、パート社員、派遣社員』だ。」

私も宗さんと同感ですが、派遣社員を規制する前にもっと日本の労働人口の流動化をはからねばなりません。つまりかつて明治政府が行ったように『士農工商』制度を廃止して下克上や転職がしやすい社会に変えていくのです。

ただ現実的になって、冷静に海外事情を分析すれば、これからも企業のグローバル化は増えることはあっても減ることはないでしょうから、製造業の海外移転を憂えたって実はしかたがないのです。世界の大きな流れは止めようもないからです。

このグローバル化の波そのものはわが翻訳業界にとって大変良いことなのですが、日本という国家そのものが弱体化してしまっては本も子もありません。

かつて1970年代、経済低迷に苦しんだ米国は製造業に見切りをつけ、ソフトウェアやコンテンツ産業を重点的に育成し、金融・エネルギー・食料政策を重視して、かつ知的財産の徹底した保護を行いました。それにより「ジャパン・アズ・No.1」を引き摺り下ろす国家戦略を打ち立てたのです。

グローバル化の波に乗り遅れたかつての「ものづくり大国」日本が、ただの「斜陽国家」に落ちぶれることのないよう、正しい方向へ舵をきって欲しいものです。

具体的には、環境、エネルギー、農業等の“新しい産業”への国家ぐるみの重点投資と、いまやその公共投資の額で世界の三流国になりはててしまった国民教育への重点投資です。

変わる「世界の利益地図」と翻訳業界

2009年5月20日の日本経済新聞の特集記事に「企業収益回復の条件(中)、変わる世界の利益地図 雪崩うち新興国シフト」があります。下記のグラフと文章はその日経新聞の記事から引用したものです。

2009.5.20日経

<以下、日経新聞の記事>

(前略)
「世界の利益地図」が大きく変わろうとしている。これまで成長を続けてきた欧米が大きく落ち込み、新興国の需要が企業収益を支える構図が鮮明になってきたからだ。

日本の主要輸出企業30社を分析すると、2009年3月期に欧米で稼いだ売上高は43兆円と22%減少した。「欧米の不振が本格化するのはこれから」(スズキの鈴木修会長兼社長)とも言われ、今期も大きく落ち込む懸念がある。

一方、新興国は底堅さが目立つ。同じ30社のアジア・オセアニアの売上高は26兆円(10%減)。全体の売上高に占める割合は23.1%に上昇し、欧州の15.5%、米州の22.7%を上回った。

典型はホンダの決算。2009年3月期にアジアなど新興国で2,400億円近い営業利益をあげた。中国が大半を占める持ち分法利益も加えると、新興国で稼いだ実質的な利益は3,000億円にのぼる。

これに対して(ホンダが日本であげた損益は)輸出不振や円高で1,616億円の営業赤字。北米と欧州は黒字だが、合計で900億円にすぎない。

「中国、アジアでどれだけ稼げるかが勝負の分かれ目」(コマツの野路国夫社長)――― 収益地図の激変を映し、今期は新興国シフトが一段と鮮明になる。

ブリジストンは「中長期的には中国が最も成長する」(高橋康紀執行役員)と判断、約100億円を投じ中国でタイヤの生産能力を1.5倍へ高める。日米欧の乗用車向け投資は減らすが、中国向けは増やす見通しだ。

中東に商機を見い出す動きもある。ユニ・チャームは昨年、サウジアラビアで生産能力を拡大。高機能の紙おむつや生理用品を拡販し、同国の事業は今期も増収増益を見込む。

<以上、日経新聞の記事終わり>

実際に財務省の貿易統計から、数字を拾ってきて下記に表にしてみました。2009年3月のデータですから、現在入手できる最新の情報です。

2009年5月20日

日本の全輸出の53%がアジア向けで、全輸入の45%がアジアからです。改めて日本の貿易相手国としてのアジアの存在に驚かされます。

現在(2009年5月20日)、「新型インフルエンザ」で日本は大騒ぎしていますが、私は、現時点においては、そう大騒ぎするべき問題ではないと考えています。むしろこれは日本政府が民衆の不満をかわすため、政策的にミニパニックを作り上げて利用している(ちょっとうがった見方で恐縮ですが)とさえ考えています。

なぜなら、現時点においては、まだ東南アジアに「新型インフルエンザ」はほとんど発生していないからです。

これが東南アジアにしっかり定着し、冬を向かえ、強毒性の「鳥インフルエンザ」と結合した新ウイルスが発生したら問題は大きくなるでしょう。

それこそアジア貿易はストップし、翻訳業界にもより深刻な打撃を与えかねません。

うがった見方のついでですが、今回メキシコで発生した「豚インフルエンザ」は、不況克服のため、欧米系の製薬会社が意図的にウイルスを作って流した、という説さえ流れています。

現在ウイルスのワクチンというのは製薬会社の重要な”知的財産”として、強力に保護されているため、発展途上国には決して行きわたらないそうです。従って未だに「鳥インフルエンザ」のワクチンはまったく数が足りません。

そこへ「鳥+豚インフルエンザ」が発生したらどうなるでしょうか?製薬会社は大喜びでしょう、・・・などと不謹慎なことを言ってはいけませんが、金儲けのために決して情報公開をしない一部の欧米系超大手製薬会社の姿勢には、いつも疑問を感じています。

世界同時不況と翻訳業界

私が翻訳業界に入ったのは1981年4月ですが、それ以来、さまざまな不況(プラザ合意後の円高不況、バブルの崩壊、山一・拓銀破綻ショック、ITバブルの崩壊)を経験してきました。しかし、今回の米国金融危機発世界同時不況は、最大かつ最長のものとなるでしょう。

私は1990年代初め、ある大手都市銀行の元役員で、当時はノンバンクの会長をしていたN氏にこんな話を聞いたことがあります。N氏はある勉強会の講師をボランティア的に務めてくださっていました。銀行家らしからぬそのユニークな経営理論に、数多くの中小企業経営者が“師匠”として慕っている方でもありました。

私がN氏と話をしているとき、たまたま手元に4~5社の大手新聞社の新聞紙が置かれてあり、その日はどの一面も「金融機関の不良債権8兆円」という巨大な見出しが躍っていました。

そのときN氏は、各新聞紙の一面を指で強く叩きながら、私にこう言いました。

「いいか丸山君、マスコミというのはこういうウソを平気でつくから、こんな報道をまともに信じちゃダメだぞ。いまや金融の専門家の間では、日本の金融機関の不良債権が100兆円を超えるなんていうのは常識だ。8兆円なんかで済むわけがない」

現にその後、しばらくしてから新聞各紙の一面に「金融機関の不良債権12兆円」という大きな見出しが躍りました。しかしその後しばらくするとまたまた「金融機関の不良債権20兆円」、しばらくするとまたまた「金融機関の不良債権28兆円」、その後も何度か同じような見出しが続き、最後は「40兆円」を超えたあたりから、やっと日本のマスコミも「何かおかしい」と感じ始めました。最初の報道から数年以上は経過していたでしょう。

N氏によると、もともと日本の金融機関には「6ヶ月間元本も金利も一切返済しないと不良債権とする」というあいまいな基準があったそうです。そこで当時の日本の金融機関は、このあいまいな基準を悪用したのです。

たとえば、ある銀行が経営破綻している不動産会社に300億円を融資していたとします。しかし銀行がその不動産会社を「破綻した」と認めてしまうと、銀行にとって、その300億円は「不良債権」となってしまいます。そこで銀行はその不動産会社の口座へ半年毎に1億円を振り込み、その直後、金利として1億円を回収するのです。

6ヶ月毎に金利をきちっと支払っているその不動産会社は、「不良債権先」にはなりません。銀行にとっては巨大すぎてつぶせないのです。

そうやって「臭いものにフタをして」次から次へと先送りが行なわれていったのですが、そんな子供だましがいつまでも通用するはずもありません。そしていよいよにっちもさっちも立ち行かなくなったのが、1997年の山一證券と北海道拓殖銀行の経営破綻だったのです。

1998年10月に金融機能再生関連法」が制定され、「不良債権の定義」が決まりました。その後、日本の金融機関の不良債権処理が終わったと言われているのが、2005年ですから、バブルの崩壊から実に15年が経過しています。

さて、今回の「世界同時不況」です。米国のバブル崩壊と日本のそれとは非常に酷似しているのですが、ショック直後の政策の混乱ぶりまでまた同様に酷似しています。

今一番懸念されるのは、サブプライムローン関連不良債権の全体像をいまだに公的機関が公式発表していないという点です。米国政府すらもいまだその把握ができていないというのが実態なのかもしれません。

日本のバブル崩壊の時がそうであったように、誰もが不良債権の真の姿を隠そうとするのです。その結果、実態が明らかになるまで時間がかり、政策が常に後手後手に回らざるを得ません。

私は米国はじめ欧州各地にはもっともっと巨大な不良債権が多数隠れていて、これから時間をかけて順次明らかにされていくと確信しています。

加えて懸念されるのが中国の経済です。中国はここ数十年間、一本調子で高度経済成長を遂げてきました。常識的に考えてもこんなバブルがそう長く続くわけはありません。長期的にはまだまだ経済発展するとしても、必ずやどこかで巨大な経済ショックに見舞われるでしょう。その「中国ショック」が今回の「米国金融ショック」に加わったら、日本経済へ与える影響は計り知れません。

私は今回の「世界同時不況」は今後7~8年続くのではないかと考えています。その根拠は、日本は不良債権の処理に15年を費やしたので、米国がその2倍のスピードで処理を行なったとしても7.5年はかかるからです。3倍であったとしても5年はかかります。

さて、日本の翻訳業界の話ですが、私の過去の経験則から言って、今回の「世界同時不況」の間にきっと多くの翻訳会社が消えてなくなることでしょう。そして次代の発展産業を追い求めながら、アメーバのごとく離合集散を繰り返し、業界全体としては発展を続けていくはずです。

1970年代のオイルショックが日本経済に構造的転換をもたらし、技術主導型の日本的効率経営を生み出しました。80年代初頭の「世界同時不況」は日本の超円高を誘発し、ひいては日本のバブル好景気を生み出しました。世界的な経済混乱が起こるたびに、その機に乗じて「成功」する企業・産業が生まれてくるものなのです。

そういう意味から言っても、今は翻訳業界にとっても、千載一遇のチャンス到来と言っても過言ではないでしょう。少々不謹慎な言い方かもしれませんが、私はこのような世の中の変化を見るのが楽しくてしょうがありません。

トンネルの先は明るい

日経新聞の紙媒体に「大機小機」というコラムがあります。これは、「マーケット総合2」という比較的目立たないページにあるからでしょうか、いつもここでは率直な意見が述べられ、読んでいてとても興味深いと感じています。少なくとも「社説」や「特集」よりも記者が大胆に発言している気がします。

さて、本日(2008年10月31日)の「大機小機」には「トンネルの先は明るい」と題した、なかなか説得力のある前向きな意見が載っていました。

下記にその要旨をご紹介させていただきます。

(以下記事)

「最近、証券会社の店頭がにぎわっているようだ。口座を新規に開設する個人投資家も多いという。いわゆる専門家と称される人々が難しい顔をして思考停止に陥っているのとは対照的な動きだ。この行動は正解なのではないか。

(中略)

実体経済がどうなるかを考えるときに思い出すべきなのは、我々の記憶にある1980年代前半の『世界同時不況』だ。当時の不況の深刻さは、現在予測されている状況をはるかに超えていたのがわかる。

(以下の一部は私が箇条書きにまとめました)

・第二次石油ショックにより、欧米諸国が軒並みスタグフレーション(景気後退下の物価上昇)に陥り、深刻の度合いが増した。

・経済成長率は米国や英国など主要国でマイナスとなった。

・世界のGDPの70%を占めたOECD諸国全体でみても、82年にはマイナス成長を記録した。

・完全失業率は欧米主要国で10%を超え、先進国の失業者は3,000万人を上回った。

・インフレ率は日本以外の主要国で二ケタとなった。

・日本は欧米ほど失業率もインフレ率も上がらずに済んだが、戦後最長の不況を経験した。

・ほとんどの非産油途上国は成長へのきっかけもつかめないまま、累積債務の重みに押しつぶされようとしていた。

・まさに『大恐慌の再来』と言われたが、それでも米国を先導役にして世界経済は83年から回復を始めた。

それでは、今はどうか。いくつかの経済見通しが出ているが、当時ほどには深刻なシナリオは想定されていない。

(中略)

80年代と決定的に違うのは、中国やインドといった人口大国がしばらく前にテイクオフを果たし、しっかりした成長軌道に乗っているという明るい材料があることだ。

石油ショックに対して最も弱いといみられていた日本の企業は、80年代前半の同時不況後、省エネ技術とエレクトロニクス技術で世界をリードしたことは記憶に新しい。

経済史を正しく理解し、トンネルの先を冷静に見据えようではないか。」

(記事終わり)

私が翻訳業界に入った1981年4月は、まさにこの「世界同時不況」の真っ只中でした。

その後、1985年のプラザ合意後の円高ショックによる「円高不況」、1990年のバブル崩壊による壊滅的な「資産不況」、1997年の山一証券倒産パニックによる「平成不況」、2000年のITバブル崩壊による「IT企業不況」・・・・・・・。

思い返せば、「○○不況」といわれる時期が来るたびに、周りの競合他社が1社、2社、3社、4社・・・・・と勝手に脱落していきました。そして、気がついたら大手クライアントに入っているライバル企業の大半が消えてなくなり、やがて迎える景気回復時の仕事が、随分とやりやすくなっていたことが思い出されます。

経営者にとって、会社を成長させる「企業戦略」を持つことはもちろん重要ですが、同時にサバイバルゲームに勝ち残る「企業体力」を充実させる責務もあることは言うまでもありません。

日本は「貿易立国」のウソ

日本は「貿易立国」・・・・・・・・これは「日本の常識」と、考えている人は多いのではないでしょうか?

下記の表を見てください。諸外国に比べると、”日本経済は輸出に依存していない”ことがよく分かります。

各国の輸出依存度


この表には出ていませんが、世界貿易機関(WTO)や国際通貨基金(IMF)の2006年データで、G7(先進7ヶ国、日本、米国、英国、フランス、イタリア、カナダ、ドイツ)の輸出依存度の平均値を調べてみると”22%”となりました。日本は14.8%で7ヶ国中6番目で、日本を下回る国は、米国しかありません。

”自給自足できる大国”の米国はともかくとして、日本の輸出依存度はかなり低く、とても「貿易立国」などと呼べる状況ではないことがわかります。

それでは、昔の日本はどうだったのでしょうか?

下のグラフを見てください。近年日本の輸出依存度が急激に高まってきているのがわかりますが、それでも1985年9月のプラザ合意直前の水準、15.1%のレベルにやっと戻っただけ、ということが分かります。

つまり、プラザ合意による急激な円高により、日本の輸出依存度も急降下しましたが、その後の世界経済の成長と日本経済の停滞(デフレ)により、実効レートで考えた場合、”円は安く”なっていて、プラザ合意の頃とほぼ同水準になっている、とも考えられます。

長らく翻訳業界にいる方々は、このグラフを見て感じることはありませんか?

日本の輸出依存度が10%前後の時代は、英文和訳(英日翻訳)の時代、それを大きく上回るときは、逆に和文英訳(日英翻訳)の時代と言えるのではないでしょうか?

日本の輸出依存度


もうひとつ、貴重なデータがあります。

【2006年、日本の地域別輸出先】
米国向け・・・・・・22%
中国向け・・・・・・14%
新興工業経済地域(NIES)向け・・・・・23%
東南アジア諸国連合(ASEAN)向け・・・・・12%

【1985年、日本の地域別輸出先】
米国向け・・・・・・37%
中国向け・・・・・・ 7%

つまり、いよいよ本格的に”英語+アジア各国語”の時代が始まった、と言えるでしょう。

2008年、対海外の観点から見た企業経営の展望(その1)

「貿易統計と円相場」編

「財務省貿易統計」および「日本銀行外国為替相場」その他政府関連サイトから集めた数値をエクセルでグラフにしてみました。2007年の輸出入額は12月中旬までの速報値をもとに算出した、”私の推計値”ですが、恐らく確定値とそう大きな狂いはないはずです。”今日本で一番早く算出された貿易統計”のはずです。ご参照ください。

日本の輸出と輸入(単位:10億円)
日本の輸出と輸入(米ドル換算)

さて、今回は大層な題名をつけてしまいましたが、最近の日経新聞の中から特に興味を引いた記事を2つ選んでみました。

2008年1月11日、「YEN漂流 私はこう見る」伊藤隆敏氏の記事から抜粋
<いとう・たかとし 一橋大学教授、財務省副財務官などを歴任し、2006年から経済財政諮問会議の民間議員も務める。57歳>

「対ドル相場(名目)だけをみていると見誤る。円はすごく安い水準。日米で見れば約3%のインフレ格差が過去7年間続き、その分だけ円は実質的に安くなっている。1ドル=100円でも昔の120円前後と同じ。輸出産業にとって大打撃ではない。主要通貨のなかでの円の価値を示す実質実行為替レートを見るべきだ」

2008年1月10日、「YEN漂流 私はこう見る」松本大氏の記事から抜粋

<まつもと・おおき 87年東大卒。1994年に30歳で米ゴールドマン・サックスのゼネラル・パートナー(共同経営者)。1999年マネックス証券を設立。日本のネット証券の草分けの一人。44歳>

「今は日本の個人金融資産が1500兆円あり世界でも有数の規模。一人当たりのGDP(国内総生産)でもまだ高く資本市場にもそれなりの厚みがある。だが、2050年に中国のGDPは45兆ドルで日本の7倍以上になるという。インドなどの新興国も台頭しているし、米国も成長を続けるだろう。その中で日本が今の経済的位置を保ち、世界的な金融センターとして存在感を示せると考えるのはおとぎ話」

「円高が進む間は預金を放っておいても日本人は世界の中で裕福になった。今の中国人が人民元資産を持っているだけでお金持ちになっているのと同じだ。逆に日本の地位が低下し円が安くなると、日本人は円預金をしているだけで国際的にはどんどん貧乏になる」