日経ビジネス 2013年7月8日号より
日本の技術者が海外企業に転職、技術ノウハウが流出する問題が深刻になっている。最大の受け入れ先企業となっているのは韓国サムスングループ。
同グループの躍進を支えるのは、日本人技術者が培ってきた高度な技術だ。
サムスンの日本の特許出願に関わった日本人技術者485人を追跡し、彼らの出身企業を集計したのが下記の表。日本の名だたるエレクトロニクス企業の雄の名前が並んでいる。
それぞれの技術者がどのような分野の出願に関わっているのか。これを調べるためFI記号(特許庁が付与している技術分類コード)を利用して、出身企業別に技術分野をまとめたのが下記の図。
以下のことが読み取れる。
① 画像処理・通信技術は、三洋電気と富士通出身者が最多
② 光ディスク関連技術は、パナソニックと東芝出身者が最多
③ 有機EL関連技術は、NEC出身者がダントツ
④ 電池関連技術委は、パナソニックと日立技術者が最多
⑤ 半導体装置関連技術は、ルネサスエレクトロニクス出身者が最多
(以上で記事終り)
今から10年ほど前だったと思いますが、日本の技術者の技術が韓国や中国などアジア諸国へ流出している、という話をある事情通から聞いたことがあります。
話を要約すると下記のようになります。
「毎週金曜日の夜、成田と羽田の中国行きと韓国行きの飛行機の座席は満席だ。日本の技術者が1日10万円の報酬をもらって、中国や韓国の企業に技術指導に行くからだ」
「技術指導の後、月曜日の早朝に現地を発ち帰国するのだが、土日で20万円もらえるので、飛行機代とホテル代を支払っても採算がとれる」
「日本では冷遇されている技術者でも、向うへ行けば『先生』と呼ばれ、非常に大事にされるので、日本で働くよりずっと気持ちがいい」
「さらにサムスンは、世界中の超一流の技術系大学や大学院から新卒者を高待遇で一本釣りしている。日本からも東大、京大、東工大等の技術系大学院から新卒者を数十名単位で採用している。高給に加え、個室と十分な研究予算を提示するので優秀な若者がどんどん韓国へ移っている」
・・・・とまあ、こんな感じの話でしたが、結論は、
「日本の電機業界はこのままでは危ない。いずれサムスンにやられる」
この話を聞いたのが、だいたい今から10年ほど前でしたが、その時は正直、ここまで日本の電機業界が壊滅的状態に陥るとは予想できませんでしたし、サムスンがここまで台頭するとも予想できませんでした。
この日経ビジネスの記事を読むと、現場の技術者や新卒者のみならず、特許にかかわる研究所の社員などもかなり一本釣りされてサムスンへ転職していた状況が伺えます。
この話以外にも確か7~8年ほど前だったと思いますが、NHKの特集で中堅中小企業からも熟練した技能工の技術が東南アジアなどへ流出しているという実態が報道されていました。
「技術立国日本」と言われた戦後日本の誇るべき技術が、音を立てて崩れ落ち、「重要な技術」も「使い古された技術」も併せ飲みで周辺諸国へなだれ込んでいるという印象を受けます。
「使い古された技術」はともかく「重要な技術」の流出だけはなんとしても食い止めねばなりません。
そういった意味からも、日本は一刻も早くガラパゴス化した労働慣習を捨て、グローバル化した社会に生まれ変わっていく必要があるのかもしれません。