2012年10月9日 日経新聞夕刊
IMFのブランシャール経済顧問は9日の記者会見で「世界経済は回復を続けているが回復力は弱まっている」と述べ、先行きに懸念を表明した。減速の要因としては「財政再建が需要を減らしているほか、欧州を中心に金融システムが不安定だ」と指摘した。
IMFが世界経済の見方を厳しくした理由は欧州危機だ。欧州では「低成長が銀行経営の悪化を招き、融資の基準が厳しくなっている」(ブランシャール氏)。イタリアとスペインは12~13年がともにマイナス成長で、ドイツも13年の成長率を大きく引き下げた。
けん引役だった新興国の高成長も息切れしている。12年の中国の成長率は7.8%と、7月よりも0.2ポイント下げた。中国政府が雇用を確保するために必要としてきた8%を割り込むとみて、同国経済に懸念を強めている。新興・途上国全体では12年に5.3%と、11年の6.2%と比べると減速する。先進国の需要減が新興国に波及しており、インドやブラジルは大きく下方修正した。
先進国では米国について、底堅い個人消費や株価の上昇などを背景に12年の成長率をわずかながら上方修正した。ただ、減税の失効や歳出削減が始まる年明けの「財政の崖」をめぐり、「危険性を取り除かなければ、米経済は再び後退局面に入り、世界に悪影響を及ぼす可能性がある」との懸念を示した。輸出がさえない日本も、12年の成長率は2.2%と、7月から0.2ポイントの下方修正になった。
IMFは13年について見通しを下方修正したが、各国経済が緩やかに回復するとの道筋を描いている。
(以上で日経新聞の記事終わり)
下記のグラフは、環日本海経済交流センターのサイトからの引用
http://www.near21.jp/kan/data/trade/trade2/jcnew.htm
・・・・(記事の転載ここまで)
世界経済の減速懸念に加え、日本の場合は「尖閣問題」による日中関係の悪化があるため、景気の先行きにますます不安が募ります。
日本にとって輸出も輸入も最大の貿易相手国である中国との関係悪化が長引けば、日本の翻訳業界にも深刻な打撃をあたえかねません。
なぜならば「うちの会社は中国語の翻訳は取り扱っていないから関係ない」と単純に言い切れない事情があるからです。
上のグラフのうち、日本が中国から輸入している品目に注目してみてください。
① 電気機器(通信機、音響映像機器、重電機器、半導体等電子部品など)
② 一般機械(コンピューターおよび周辺機器など)
③ 原料別製品(金属製品、織物用糸・繊維製品、鉄鋼、非鉄金属など)
④ 食糧品(魚介類、肉類、野菜など)
⑤ 化学製品(有機化合物、医薬品)
⑥ その他(衣類・衣類付属品、科学光学機器、家具、バッグ類など)
どうでしょうか?
戦後長い間続いていた、「発展途上国から天然資源を輸入し、日本国内で加工した製品を輸出して儲ける」という貿易構造とまったく異なることに気がつきます。
ここ数十年の間、日本の製造業は安い人件費を求めて中国に進出し、工場を建て製品ないしは半製品を中国で製造して日本へ輸出していたのです。
中国から日本への輸出品(日本からみれば輸入品)は、日本国内で消費されるばかりでなく、さらに加工され日本から海外へ再度輸出されるケースも多いわけです。
中国からの部品や半製品の輸入が滞れば日本の製造業への影響は測り知れないものがあります。
「世界の工場」中国で安く生産された部品や半製品を輸入し、自国内で加工して世界市場へ売りに出すグローバル化の時代に、日本だけが自国内だけで全てを製造するなどあり得ないからです。
日本の場合、輸出額が減れば経済力が落ち、早晩輸入額も減り国の経済全体に多大なる影響を与えます。
1982年に3か月間にわたり続いたイギリスとアルゼンチンの戦争「フォーランド紛争」は、イギリスによる空爆とアルゼンチン大統領及び陸軍総司令官の失脚により一応の決着をみました。
しかし今回の「尖閣問題」で日中間に武力衝突でも起これば、対立はますます悪化するだけで、解決するなど決してありえないでしょう。
日中関係がこじれれば、両国経済にとって甚大な被害がでるばかりでなく、「漁夫の利」を得る欧米企業や韓国企業がほくそ笑むだけです。
現に今回の問題で中国国内における日本車の販売台数は急減し、ドイツ車や韓国車が大幅に売り上げを伸ばしているそうです。
日本は、過去2回のオイルショックを圧倒的な省エネ技術の開発により乗り越えてきました。今回も技術力と研究開発力で乗り越えて行ってほしいと願っていますが、やはりそれだけでは少し心もとない、正直言って心配です。
やはりここは米国を動かし政治決着をつけてもらう以外に方法はないでしょう。もちろん日本はそれなりに米国に対し「代償」を支払わねばなりません。
3年前鳩山首相が “Trust me” と発言して以来こじれてしまった日米関係を一刻も早く修復し、アメリカ主導による日中間の関係回復へ向け早く動き出してもらいたいものです。