この件については、このブログの中で、過去に2回ほど触れました。
2007年4月17日 「国内ネット広告費、5年後は2倍の7558億円に」
2007年9月27日 「朝日・読売・日経3強連合の動き、毎日・産経追い落としなのか?」
上記2つのブログの中では、日本のマスコミの大いなる問題点を指摘したわけですが、その「大新聞社系列のマスコミ」が今、インターネットの出現に恐れおののき、3社連合を「あらたにす」という形で成し遂げました。
当然のことながら、ネット上の新聞記事は、お金を払って購入する紙媒体よりも、圧倒的に情報量は少ないのですが、今回の「あらたにす」では、各社の社説は全文が掲載されているので、読み比べもでき、その点では便利でしょう。また、何を一面に持ってくるかなども比較でき、その点でも興味深いものとなっています。
ただ、この件で、「ナベツネ」こと、渡邉恒雄氏(読売新聞グループ本社代表取締役会長)のことを思い出しました。昨年、ライバル紙、日経新聞の「私の履歴書」に彼が登場したときには、大変に驚いたのですが、若い頃の”大志と高尚な理想を抱いたひとりの青年、渡邉恒雄”が年とともに変わっていく様がよくわかり、とても興味深い「履歴書」でした。もしかしたら彼自身、それに気づかずに書いていたのかもしれませんが。
”青年期以降”の記者、渡邉恒雄氏は、ライバル紙との「特ダネ獲得競争」や「社内の出世争い」に熱中、奔走し、ただ単に「いかにライバル紙を出し抜くか」とか、「いかにライバル紙に特落ちさせられたか(他社がスクープしている記事を載せられなかったこと)」に終始し、若き日の彼が抱いていた「国家・国民のために」とか「正義感から不正を正す」とか「弱者の声を代弁する」とか「理想の社会を実現するために」とかの観点が、完全に忘れ去られていました。
昨年12月、アメリカでは全米第1位の新聞社”ダウ・ジョーンズ社”が、あのルパード・マードック会長率いる”ニューズ・コーポレーション社”に買収されました。日本風に当てはめて考えれば、”読売新聞社”が”ソフトバンク社”に買収されたようなものです。また、全米第3位のトリビューン社は個人に買収されたくらいですから、もうアメリカで新聞ビジネスは、すでに破綻していると言っても過言ではないでしょう。したがって現在米国では「電子ペーパー」による新聞販売を真剣に模索しています。
今回の「あらたにす」も企画自体は結構なのですが、マスコミが本来持つべき使命を忘れずに運営してほしいものです。ただ実際には、読売1,000万部、朝日820万部、日経300万部という、「旧共産圏なみの新聞発行部数」と「記者クラブ制度」そのものに病巣があるわけですから、かつての国鉄や電々公社や専売公社のようにはやく分割し、その根本から変えていってほしいものです。