若いころに多くの人が体験するデジャヴ
フランス語のデジャヴ(déjà vu)は、「既視感」と翻訳され、今では広く知られた言葉になっています。その意味は、初めて見るものなのになぜか過去に見たことがあると感じてしまう不思議な「体験」のことだと私は理解しています。
皆さんも過去に1度や2度ならず、何度もそのような経験をしたことがあるのではないでしょうか?特に若いころに。
なぜ「若いころ」なのかと言うと、かつて読んだ本のなかに確かデジャヴ体験は、若いころに頻繁に経験し、年とともにだんだんと少なくなっていき、いずれまったく感じなくなってしまうと書いてあったからです。実際私自身がそうでした。
なかでも私が経験した最も強烈なデジャヴ体験は、高校2年生(17歳)の夏休み、北海道旅行をしていた時のことでした。テントを背負って、一人勝手気ままに広い北海道を回遊していた時、気まぐれに富良野駅(45年前の話なので記憶は不確かですが)に降りてみました。
広い道路には、人影も車も見えず、行く当てもなく一人ぶらぶらと歩いていると、目の前にのんびりとした田舎の街並みが見えてきました。そしてふと「この光景、以前どこかで見たことがある」と感じたのです。
しかし、私がその光景をそれ以前に見たはずがありません。なぜなら私はその時生まれて初めて北海道へ行ったのですから。
そのため「これは単なる気のせいだ」と考え直し、さらにまっすぐ歩き続けました。しばらく行くと今度は数百メートル先に突き当りのT字路が見えてきました。
「この光景は確かに以前見たことがある。確か、あのT字路を右に曲がり、しばらく行くと右手に大きな郵便局があるはずだ」と感じました。しかも、かなり具体的な郵便局の外観イメージが頭の中に湧いてきたのです。
「そんな馬鹿な!生まれて初めてこの土地に来たのにそんなはずがない」・・・・そう心の中で呟きながら、T字路を右に曲がり、直進し・・・絶句して立ち止まりました。
私がイメージした通りの郵便局が右手に見えたのです。
「俺には予知能力があるのか?」・・・真剣に考え、真剣に心躍らせました・・・、が、残念ながらその予知能力は、その後再び現れることもなく現在に至っています(笑)。
鎌倉時代の徒然草にデジャヴ体験!
さて、その夏からしばらくして高校の古文の授業で吉田兼好(1,283年~1,352年)の徒然草に出会い、すっかりそのファンになってしまいました。
そして驚くことに徒然草に今でいう「デジャヴ体験」の記述があることを知り、またまた驚きました。
下記は徒然草71段の原文とそれを現代語に私なりに訳したものです。
<徒然草 第71段 原文>
また、如何なる折ぞ、ただ今、人の言ふ事も、目に見ゆる物も、我が心の中に、かかる事のいつぞやありしかと覚えて、いつとは思ひ出でねども、まさしくありし心地のするは、我ばかりかく思ふにや。
<現代語訳>
また、今自分の目の前で人が話したことを以前どこかで聞いたことがあるとか、今目の前に見えているものが、以前どこかで見たことがある、などとふとした瞬間に感じることがある。それがいつのことなのかは思い出せないのだが、まちがいなく過去に同じ経験をしているなどと感じてしまうのは私だけだろうか。
700年近くも前に書かれた徒然草にそのような不思議体験が記述されていることや、20世紀初めにデジャヴという言葉を提唱した学者がフランス人だったということを考えあわせれば、まさにデジャヴは古今東西に存在する超常現象と言ってよいでしょう。
動物の予知能力
デジャヴに関連あるかどうかはわかりませんが、未だに科学の力で解明できない動物の不思議能力のひとつに「地震予知能力」があります。
昔私がスキューバーダイビングをやっていたころの話ですから、今から35年くらい前の話ですが、あるインストラクターから不思議な話を聞いたことがあります。
その人がいつものように伊豆沖でダイビングの練習をしていたとき、いつもたくさんいる魚がその時はまったく見えなかったそうです。
海はとても穏やかだったので、「不思議だな」と思ったそうですが、その直後伊豆近海で大きな地震が発生しました。やはり魚たちは地震を予知してどこかに避難していたのでしょう。
そのほかにも山火事が起こる前に山から大挙して逃げ出す野生の動物たちの話や、もっと不思議なのは、沈没する船から事前にねずみが逃げ出していた、などという大昔の都市伝説のような話も聞いたことがあります。
どのくらいの確率でそれが当たっているのかはわかりませんが、まったく根拠がない話とも思えません。人間の赤ん坊や子供はより動物に近いので、なんらかの野生の能力が残っているのかもしれません。
人間の超能力
草食動物は、生後1~2時間たらずで自力で立ち上がることができます。アフリカのウシ科に属するヌーなどは、生後15分で立ち上がり、1時間後には母親と一緒のスピードで走り出すそうです。
人間の赤ん坊が生まれて15分後に立ち上がり、1時間後に大人と一緒に全力疾走で病院から逃げていった・・・なんて考えられませんね(笑)。
同様にスズメは生後10日~2週間で、巣から飛び立ち大空を羽ばたきます。飛び方は誰に教わるでもなく生まれながらに備わっています。
生後すぐに走ったり、飛んだりできる動物や鳥たちに比べ、人間の赤ん坊はどうでしょうか?大人と一緒に行動できるようになるまでには、少なくとも十数年は必要でしょう。
このように体力的には愚鈍な人間の赤ん坊ですが、代わりに特殊な能力が授けられています。それが「言葉」の理解力です。
人間の赤ん坊はつぶらな瞳でじっと人の話を聞いているだけですが、あるとき堰を切ったように言葉を話しだします。ただ聞いているだけで何ヶ国語もの言語を理解し、自在に操ることができるようになります。
赤ん坊はまさに語学の天才ですが、これこそが人類に与えられた特殊能力であり、他の動物たちから見れば、恐るべき人間の持つ「超能力」なのかもしれません。
逆に野生動物だけが持つ特殊な予知能力が、なにかの拍子に人間に蘇る、なんてミステリー小説のような出来事が絶対に起こらないとは言い切れないかもしれません。