まずは、2009年3月24日の朝日新聞の記事から。
「世界貿易機関(WTO)は23日、09年の世界の貿易量が実質ベースで前年比約9%減となり、第2次世界大戦後で最大の落ち込みになるとの見通しを発表した。昨年秋の金融危機の深まりで世界各地の経済が一斉に減速したため。世界貿易は過去約30年間一貫して拡大してきたが、09年は一転する」
(ここで記事終り)
上記の記事の元になったWTOのレポートはこちらです。
続いては、 ドイツ証券チーフエコノミスト、松岡幹裕氏の「米大恐慌と現在の日本の相違点と類似点」 を下記に紹介します。
「99%の読者やエコノミストは、1929年以降の米国大恐慌と現在の日本を比較するのは、ナンセンスだと考えるであろう。しかし、現在の日本における鉱工業生産の低下幅とスピードは、1929年の米国のそれを上回っている。両者の間には、さまざまな制度的な差異が存在するにもかかわらず、鉱工業生産で計測した日本の景気悪化のスピードや幅が当時の米国よりも深刻だという事実は、われわれが気づかない両者の類似点の存在を示唆している。
大恐慌時の米国を上回る景気悪化のスピード
図表1は、現在の日本と大恐慌時の米国の鉱工業生産について、ピーク月(米国は1929年6月、日本は2008年2月)をそれぞれ100とする指数で表し、横軸もピーク月を基準にそろえて示したものだ。日本の鉱工業生産はピークから11カ月後に31.0%低下したのに対し、当時の米鉱工業生産のピークから11カ月間の低下幅は18.6%であり、現在の日本は大恐慌時の米国の低下ペースを上回る悪化を示している」
ながい論文なので、以下は省略しますが、最後に松岡幹裕氏は、こう結んでいます。
「これらを考えると、筆者は、現在の経済体制や経済思想が1920~30年代と全く異なると断じるには、不安を感じるのである」
最後に、NIKKEI NET の記事を紹介します。
”世界経済「2010年末までに回復」 OECD経済政策委 ”
「経済協力開発機構(OECD)は緊急の経済政策委員会を開き、各国の景気対策の効果などから、2010年末までには世界経済が回復に向かうとの認識をまとめた。各国に求められる対策はそれぞれ異なっているが、迅速な政策実施が有効だとの考えで一致した。OECDは今回の議論をもとに世界経済見通し(エコノミック・アウトルック)を作成し、31日に公表する」
この記事の詳細はこちら。
上記の3つの記事を簡単にまとめるとこうなります。
1. 2009年の世界の貿易量は戦後最悪の落ち込みとなる(WTO)。
2. 日本経済が世界大恐慌時のような深刻な状況に陥る可能性も完全には否定できない(松岡幹裕氏)。
3. 2010年末までには世界経済は回復に向かう(OECD)。
「2010年末までには回復に向かう」ということは、少なくとも2010年末頃までは底に落ちていくということです。そこからV字回復できるかどうかは、日本を含めた主要国の政策によるのでしょう。
いずれにせよ、日本の翻訳業界にとっては、まだしばらくの間「冬の時代」が続きそうです。