2013.5.30 日本経済新聞 朝刊
世界の大学ランキングには様々なものがあるが、総じて日本の大学の評価は芳しくない。英タイムズ紙から発したタイムズ・ハイアー・エデュケーションによると、上位100位に入るのは27位の東京大学と54位の京都大学だけ。次にランクされる東京工業大学は128位だ。
ひとつには言葉の問題が大きい。上位の顔ぶれを見ると、米国や英国、カナダなど英語圏の大学が圧倒的に多い。中国の北京大学や清華大学の順位は日本とほぼ同じだ。世界の共通言語として、英語で学んだ方が研究や就職活動などに有利というわけだ。
実はこの20年間に世界に広がったインターネットがその流れを加速した。植民地時代から教育やビジネスに英語を使う香港やシンガポールなどは、ネット上の英語文献情報をいち早く吸収、IT革命を先取りした。そうした理由から大学の評価も高い。
さらに高速通信網の普及で「MOOCS」など世界中どこからでも受講できるネット上の大規模授業が広がれば、こうした大学格差はもっと大きくなるに違いない。
日本の大学教員はこれまで欧米の先進的な知識や技術を日本語に訳して伝えることで仕事が成り立ってきた面がある。しかしネット時代にはそうした「翻訳授業」はもはや意味をなさなくなるだろう。
(以上で記事終り)
上記の日経新聞がとりあげた「英タイムズのタイムズ・ハイアー・エデュケーション」とは別のランキングも見てみましょう。
「QS 世界大学ランキング2012-2013発表!初の1位にマサチューセッツ工科大、一覧も」
大学の顔ぶれはほぼ変わらない感じですが、1位から30位までの大学を見てみると、下記以外はすべて英語圏(米国、英国、カナダ、オーストラリア)の大学となっています。
13位 スイスの大学
23位 香港の大学
25位 シンガポールの大学
29位 スイスの大学
30位 東京大学
しかし、香港とシンガポールは、英語が公用語となっている「英語圏」の一つなので、事実上英語圏以外の大学はスイスが2校、日本が1校だけとなっています。
世界大学ランキングの ランクを決める基準については、「研究者からの評価/教員一人当たりの論文引用数/留学生比率/教員一人当たりの論文引用数」 などを総合的に評価したものだそうなので、やはり「言語」つまり「英語」を使用するかしないかはとても大きな要因となるわけです。
この「大学ランキング」は数ある指標のなかのひとつにすぎないわけですが、製造技術、科学技術、研究開発力だけで発展してきた戦後の日本にとっては、たいへん重みのある指標と言えるのではないでしょうか。
20世紀までは、日本人は英語など知らなくても何不自由なく暮らすことができました。しかし、21世紀はそうはいかないでしょう。
まさに「英語」という名の「黒船」が、日本に開国を迫っているのです。