2011年10月28日 朝日新聞朝刊
野田佳彦首相は31日、ベトナムのズン首相と会談し、原発輸出を表明する。菅前政権は昨年10月、原発受注の見返りとして、政府の途上国支援(ODA)によるインフラ整備を確約しており、改めて輸出方針を伝える。福島第一原発事故後の輸出再会だけに慎重論も根強く、ODA活用をめぐって議論を呼びそうだ。
(中 略)
日本政府関係者によると、ベトナム政府は昨年10月当時の菅政権に対し、ハイテクパークや南北高速道路など優先度の高い7事業の支援を確約すれば、原発とレアアースの強力を前向きに進める意向を伝えていた。7事業とも原発関連施設と直接関係はない。
(後略、以上で記事おわり)
要するに、ベトナムに資金援助すれば、その見返りとして、レアアースを発掘し、それを日本へ供給してあげるし、また日本が輸出したがってる原発も買ってあげますよ、・・・・・ということです。
いまだ原発事故の後処理で四苦八苦している日本が、自国の難題を解決することもなく、他国へその難題の種を売って金儲けしようなどとはとんでもない、というのが日本人の素直な感想でしょう。
ところが事情はなかなかそうも単純ではないようです。
現在ベトナムは、中国に次ぐ世界の工場を目指していますが、電力不足が海外企業誘致の最大のネックとなっています。
海外資本を呼びこめなければ、国内のインフラ整備も進まず、ますます経済発展から取り残されてしまいます。
ベトナムでは毎年15%も電力消費が伸びながら、天候に左右される水力発電に発電量のほぼ半分を依存しているため、昨年は工業団地でも1日2時間以上の計画停電が実施されました。
ベトナム政府は5年ごとの電源開発計画を立てていますが、資金不足から06~10年の計画達成率は7割に過ぎず、外資呼び込みなど国の成長維持のためには電源開発が喫緊の課題となっているのです。
「そんなに経済発展する必要はないんじゃないの?」と考えるのは、すでに経済的に発展してしまった日本人の発想のようです。
途上国からすれば、「日本は今までさんざん環境汚染を撒き散らしながら、豊かになってきたくせに、私たちが豊かになるために環境汚染しようと余計なお世話だ」となるのです。
実際、ベトナムの隣国、中国では現在建設中の原発を含めて、2030年までに193基を新規増設する予定です。まさに原発大ラッシュです。
悲しいかなこの流れを変えるためには、戦争を始めるしかない・・・・・・、というブラックジョークに行き着いてしまいます。
もちろん戦争を始めるなどは論外なので、結局はなんとか「安全な」原発作りを目指し、日本国内は原発を作らず、代替エネルギーの開発を急ぐ、というあまりにも常識的な結論にならざるを得ません。
まあ、いずれにしても、中国の賃金高騰問題や、タイの洪水被害などにより、ベトナムの安く、豊富で、優秀な労働力を求めて、今後ベトナムへの移転を検討する企業が数多く出てくるのは間違いありません。
私たち日本の翻訳業界もベトナムからは目が話せません。