2009年4月18日(土)、日経新聞1面トップ記事です。
(以下、記事からの引用)
「2008年度に国内工場の閉鎖を公表した大手企業を日本経済新聞が独自集計したところ、下期は計110ヶ所で上期の28ヶ所に比べ大幅に増えた。このうち2009年1月-3月は94ヶ所と全体の7割を占め、閉鎖の勢いは増している。
(中 略)
各社とも今後景気が回復し為替が円安に振れても、国内需要は大きな伸びが期待できないと判断。短期間で設備過剰を解消するとととに、海外の成長市場に経営資源をシフトすることで、景気回復時に世界で一気に攻勢をかけられるよう事業構造を転換する。
(中 略)
未曾有の不況に直面し、今回は『過去に例のないほど短期間にあらゆる業種が閉鎖を決めている』(ニッセイ基礎研究所の百嶋徹主任研究員)。
(中 略)
日本の製造業は主要製品を国内で開発・生産し、世界に輸出して事業を拡大してきた。国内市場が成熟する中、新興国を中心とする海外市場の開拓が収益力を左右するようになり、事業戦略の見直しを迫られている。
シャープは工場閉鎖はしないが、『液晶パネルや太陽電池は日本から世界へ輸出する事業モデルを変える』(片山幹雄社長)。国内生産を基本としてきた先端製品も現地企業と組み海外で生産・販売する方針だ。」
(以上で記事は終わり)
さて、リーマンショック以後、「派遣切り」を中心とする製造業の従業員削減策をマスコミが痛烈に批判するのを見ていて、私は以下のような心配をしていました。
「日本の製造業が日本国内で従業員を雇うことに嫌気が差し、どんどん国外脱出を試み、やがて産業の空洞化が加速していく・・・・・」
まさに私が恐れていたことが現実のものとなってきました。
さて、この現象がわが翻訳業界の今後にどのような影響を与えるのか考えてみました。
1. 近いうちに、工場移転に伴う膨大な文書(技術標準関連文書が中心)の翻訳需要が発生する。
2. 今後も引き続き開発・設計は日本国内で行われるため、コアとなる新技術の翻訳需要は、増えることはあっても減ることはない。
3. 新興国の現地企業と組み、生産・販売する日本企業が増えるので、機器の取扱説明書の類は、現地で翻訳、執筆される割合が増え、日本国内での翻訳需要は減少する可能性がある。
4. 新興国で作った製品を現地で販売あるいは他国へ輸出する(たとえば中国やベトナムやタイ、あるいは旧東欧諸国で生産し、米国や欧州へ輸出する)割合が一層増えるため、日本国内で英語へ翻訳した文書を現地で多国語化する傾向が増す。
5. 日本製造業の空洞化は加速し、知的財産戦略とグローバル化戦略に成功した製造業のみが生き残る。したがってその企業戦略に耐えうる翻訳事業者のみが必要とされる。
いずれにせよ、今世界の製造業地図は大きく塗り替えられようとしています。頼れるのは日本人の頭と心の中にある”技術者魂”だけなのですが、やっぱり”大和魂”だけでは勝てません。