異才経営者による2008年大予測
日経ベンチャー(日経BP社)2008年1月号の記事から抜粋しました。
飯田 亮 (セコム取締役最高顧問)
「中国の発展で日本経済も明るい」
2008年は基本的にはいい年だと思います。大きな流れとして、やはりアジアの発展があります。その点、日本は地政学的に非常いい場所にあるから恩恵を受けやすい。
中国から距離が近いというのもあるが、それは大したことじゃない。一番は人種的に近いこと。アジアの人間は、アジアの考え方を理解できます。
青木定雄 (近畿産業信用組合会長、MKタクシー創業者)
「本気で戦う経営者に金が集まる」
小泉改革で規制緩和が大きな流れとなったのに、中小企業の経営者には、競争の時代だということをまだ理解していない人が少なくない。タクシー業界もそうだ。他社よりも少しでも努力して、「選ばれるタクシー会社」を目指せばいいのに、皆で足並みをそろえて「運賃を上げよう」なんてやっている。
土屋公三 (土屋ホーム会長)
「量を追う経営は成り立たない」
当社では1990年から、社内で大工を養成している。まず1年間は訓練生として、グループの認定職業訓練校「土屋アーキテクチュアカレッジ」に通ってもらう。その後2年間は見習いとして現場に出て、4年目から棟梁の下で、本格的に建築技術を学ばせる。この間、もちろん給料は払い続ける。
一人前の大工を育てるには、15年、20年という長い年月と膨大な費用がかかる。工務店に任せておけばいいと考える人もいるが、一見遠回りのようでも、良質な住宅を確実に提供していくには、自前の大工を育てていくしかないと考えている。修了生は今までで、既に200人以上。その多くが会社の中核として活躍している。地道な活動ではあるが、着実に身を結んでいる。
三森久美 (大戸屋社長)
「市場縮小控え、大胆に戦略転換」
海外ではヘルシーな日本食の人気が高い。また、アジアでは食材の鮮度管理がまだ確立されていないから、そうした技術を持ち込めば、大きなビジネスチャンスが広がる。これまで日本企業は製造業を中心に技術移転をしてきたが、外食などのサービス業でも進むだろう。
大山健太郎 (アイリスオーヤマ社長)
「地方企業は『変革の年』」
中国人は日本人以上にブランド志向が強いから、日本語の取扱説明書とPOP広告をそのまま付け、「日本ブランド」をアピールしている。
中国の都市部と日本の地方都市の人件費の差は、年々縮まってきているから、今後はますます、地方企業が中国市場を狙いやすくなる。特に、九州の企業は地理的にも近いから有利だろう。誰も彼も、東京を向いて仕事をする時代ではない。
大体、政府が地方間格差を埋めようとするから、地方企業が努力しなくなる。
松井利夫 (アルプス技研最高顧問)
「中国人の雇用・活用が加速する」
当社では6年前から中国人の採用事業に乗り出したが、中国の学生は優秀だ。先日も、理工系の日本の大学生に出した入社試験を、中国人の新卒社員にやらせてみたら、中国人のほうが平均点が10点~15点も高かった。
私は年に何度も中国に足を運ぶが、今の中国は日本以上に激しい競争社会となっている。沿岸部は豊かになってきたが、それでも学生たちには日本の若者にはないガッツがある。地方へ行くとまだ貧しいから、ハングリー精神が強い。日本でニートやフリーターが増えるのも、この豊かさのためだろう。
田口 弘 (エムアウト社長)
「古い業界にビジネスの芽がある」
2008年は「オープン」がキーワードになるだろう。2007年、食品偽造や建材の耐火性偽造など、企業の不祥事が頻発したことで、消費者は猜疑心の固まりになっている。従来の日本企業は消費者に十分な情報を提供してこなかったが、内向きの経営ではもはや許されない時代に入った。
ここにビジネスチャンスが生まれる。隠すのが当たり前だった情報をオープンにすれば、新しい商売になる。
(中略)
私が創業した、金型部品などのカタログ販売会社ミスミも、業界では納入価格はクローズだったが、それをオープンにすることで成長したわけだ。
今後は、供給側の論理でビジネスを発想する「プロダクトアウト」から、顧客視点で商売をする「マーケットアウト」への転換が加速度的に進むだろう。
江副浩正 (ラ ヴォーチェ代表 リクルート創業者)
「不動産が値下がり、不況が来る」
国そのものが危機に立たされているのに、日本は依然、外国人労働者に対して閉鎖的だ。出稼ぎ労働者に厳しい規制をかけている。だから、外国人研修制度を悪用して外国人を低賃金で働かせるという企業も出てくる。
米国ではベトナムの難民を受け入れ、農業分野などの貴重な労働力にしてきた。多くの外国人に働いてもらえば、彼らからの税収入も得られる。外国人労働者の受け入れに門戸を開かなければ、日本は駄目になる。