国語の調査(その2)

引き続き、文化庁の「平成24年度 国語に関する世論調査 の結果の概要」の話題です。

「慣用句の言い方」 どちらの言い方を使うか?の問いに対して、

が辞書等で本来の言い方とされるもの、✖が本来の言い方ではないとされるもの)

◆「つっけんどんで相手を顧みる態度が見られないこと」を 

(ア)  取り付く島がない・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・47.8%

(イ) ✖ 取り付く暇がない・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・41.6%

【 私の感想 】

年齢別にみると興味深い結果が出ています。16歳~19歳と60歳以上、つまり十代の若者と60歳以上の年配者が(イ)の「取り付く暇がない」を使っている割合がわずかながら多いということです。20歳代では、(ア)が55.4%で(イ)が29.1%にもかかわらずです。ちょっとこれはミステリーですね。

ちなみに私は(ア)の「取り付く島がない」を使います。

◆「実力があって堂々としていること」を

(ア) ✖ 押しも押されぬ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・48.3%

(イ) ◯ 押しも押されもせぬ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・41.5%

【 私の感想 】

年齢別にみると、60歳以上を除く全ての年代で,本来の言い方ではない(ア)「押しも押されぬ」を使うと答えた人の割合が,本来の言い方である(イ)「押しも押されもせぬ」を上回っていました。

私も60歳未満ですが、(ア)の「押しも押されぬ」を使うと思います。

◆ 「物事の肝腎な点を確実に捉えること」を

(ア) ◯ 的を射る・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・52.4%

(イ) ✖ 的を得る・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・40.8%

【 私の感想 】

これも年齢別にみると大変興味深いです。16歳~19歳は、(ア)が73.0%、(イ)が18.9%、20歳代が(ア)が56.0%、(イ)が37.1%と「本来の使い方」の割合が非常い高いのに対し、その他の年齢は(ア)が上回っているものの、そこまで極端な差がついていません。

これは最近この手の「言葉の使い方」がマスコミ等で話題になり、それを学校の先生方がとりあげ、生徒たちに教えたため、若い子がたちが「本来の使い方」を選ぶようになったのではないでしょうか?

ちなみにこの「的を得る」も正解であると唱える人もいるようなので、なにが正解なのかはよくわかりません。これに関する詳細は⇒こちら

◆「いよいよというときに使う,とっておきの手段」を

(ア) ✖ 天下の宝刀・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・31.7%

(イ)  伝家の宝刀・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・54.6%

【 私の感想 】

これも年齢別にみると若い人の方が「本来の使い方」を使う率が高く、60歳以上が一番低くなっています。これもやはりマスコミから得た情報を先生や親が子供たちに教えた結果ということでしょう。

ちなみに私が中学校1年生の時、この「伝家の宝刀」という言葉をやたらと使うクラスメイトがいました。「奇妙な言葉を使うヤツだな」と思い、その意味を辞書を使って調べてみました。それ以来「伝家の宝刀」の意味を知っているので「天下の宝刀」にはやはり違和感があります。しかし、「天下の宝刀」という表現も悪くはないな、という気持ちも少しはあります(笑)。

◆「激しく怒ること」を

(ア) ✖ 怒り心頭に達する・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・67.1%

(イ)  怒り心頭に発する・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・23.6%

【 私の感想 】

これは全年齢で(ア)の「怒り心頭に達する」が(イ)の「怒り心頭に発する」を大きく上回っています。正直言って、私も「怒り心頭に発する」には違和感があります。

いつも思うことですが、この「日本列島に住む日本民族の7割が正しいと感じる日本語」と「老人学者が正しいと主張する日本語」のいったいどちらが正しいのか?

言葉は時代とともに変わっていくものですから、多くの人が長年使ううちに「正しい」という基準は変わっていくものです。

「一所懸命」が「一生懸命」に変わっていったように・・・・

「波止場」が「港」へ変わっていったように・・・・

「停車場」が「駅」に変わっていったように・・・・

「ご尊顔を拝し奉り、恐悦至極に存じ奉る」が「お会いできて光栄です」に変わっていったように(笑)。