「世界のIT景気」と翻訳業界

2009年7月25日(土)、日経新聞朝刊に「世界のIT景気 回復探る ネットサービス堅調」というタイトルの記事が出ていました。下記はその中で使われていた表とグラフです。

「足元の業績にはばらつきはあるものの、(IT)業界内には『需要低迷の最悪期は脱した』との見方が広がりつつある」とあります。

2009.7.25 日経(1)

2009.7.25 日経(2)

以下、日経の記事の中から一部抜粋して、わかりやすく編集してみました。

<好調 アップル
高性能携帯iPhone(アイフォーン)で新たな市場を開拓したアップルは快走が続く。iPhone販売は7.3倍の521万台に増え、売上高が8%減ったパソコン事業の穴を埋めた。iPhone向けソフトは65,000種類に達し、ソフト開発業者と共存共栄する事業モデルも確立されつつある。

<好調 アマゾン・ドット・コム
ネット小売最大手のアマゾン・ドット・コムも売上高14%増と2けた増収。既存の小売各社が苦戦するなか、割安な価格や品ぞろえの豊富さが評価された。

<好調 グーグル
ネット広告分野ではグーグルの一人勝ちの様相だ。パソコン用基本ソフト(OS)への参入も表明、ネット広告を軸にした勢力の拡大を急ぐ。

<低調 ヤフー
3四半期連続の減収。

<好調 インテル
MPUの販売が伸びず売上高が前年同期比で15%減。ただ、「ネットブック」向けのMPU「アトム」関連売上高に限れば前期比65%増と大きく伸びた。

<低調 マイクロソフト
「ネットブック」の普及など市場環境の変化に対応が遅れ、パソコンやサーバー販売が振るわず、打撃を受けた。主力のパソコン用OS「ウィンドウズ」部門は売上高、営業利益とも3割減った。

<好調 サムスン電子
業績回復で先行するのが韓国勢。サムスン電子の営業利益は前年同期比5%増の2兆5,200億ウォンと世界景気後退前の水準まで戻した。販売価格上昇で液晶パネル部門と半導体部門の営業損益が黒字転換を果たした。

IT業界では、需要低迷の底は打ったとの認識が広がり始めているが、回復の主役は個人。

米調査会社アイサプライは09年のパソコン出荷台数を前年同期比4%減と見込むが、個人利用が多いノートブック型は12%増を予想。

一方で企業のIT投資は回復が遅れている。IBMの4~6月期も情報システムに使う高性能コンピュータなどハード部門は売上高が前年同期比26%減。顧客別売上高でも製造業や金融業向けは前年割れだった。

<以上、日経新聞の記事終わり>

さて、翻訳業界に対する影響ですが、IT関連企業が翻訳業界の重要なクライアントの一つであることはまちがいないので、その直接的な影響も徐々に現れてくるでしょう。

しかし、「回復の主役は個人」であって、「企業のIT投資は回復が遅れいる」という点が問題です。特に製造業と金融業のIT投資額が増えないと、翻訳業界への波及効果も限定的とならざるを得ません。

現在でも中国を中心とする途上国向けの輸出は、欧米向けに比べればまだ堅調なわけですが、重厚長大産業から発生するドキュメントの翻訳量はそう多くを期待できません。

つまり、同じ金額の輸出であっても、IT関連分野と重厚長大産業とでは、そこから派生する翻訳の需要が圧倒的に違うからです。

各国政府が積極的な減税と公共投資を行う
→ 世界各地で個人の財布のヒモが緩む
→ お金が企業へ流れ、業績が好転する
→ 企業が設備投資を積極的に行う
→ 大量生産の効果が生まれ、価格が安くなる
→ 安くなった物品をさらに個人が購入する
→ ますます企業業績が好転する・・・

経済学の単純な理屈はこうなります。しかし、全てのメカニズムが複雑化した現代社会では、なかなか理屈どおりには動きません。

「翻訳業界サバイバルゲーム」の時間はまだちょと続きそうですが、おそらくあと1年くらいが勝負の分かれ目となるでしょう。「山高ければ谷深し、谷深ければ山高し」です。21世紀初めに現れた、「世界的超バブル経済」の谷は深く、長くなりますが、上昇した時の景色はまた今世紀最高の「絶景」となるのは間違いありません。

企業はPCを3年以内に買い換えるべき――報告書が指摘

2009.7.7 ITmedia News

古いPCを使い続けると、メンテナンスコストやセキュリティリスクの上昇、生産性の低下などで余分な経費が掛かることが明らかになった。

・・・・(記事の転載ここまで)

この調査は世界7カ国の630社の企業を対象として今年3月に実施されたものだそうですが、その報告書によると、「旧式のPCを使い続けた場合、エンドユーザーの生産性低下による損失は9600ドル(90万円)に上る」とのことです。

ここではこの9,600ドルが何に対してなのかが明確ではないのですが、恐らく1人のPCユーザーが、パフォーマンスの落ちたPCを使い続ける間に蒙る経済的損失のことでしょう。

3年以上使っているデスクトップは、3年未満のPCに比べて

・不正ソフトウェアやウイルスの攻撃にさらされやすい。
・ネットワークカードの故障を経験する回数が8倍近く多い
・電源の故障が多い
・マザーボードの故障が多い
・ソフトウェアのクラッシュが多い

また、「多くの企業では、買い換えコストの削減のために、ノートPCの使用寿命を推奨期間の3年間から5年間に延長している。ノートPCの使用期間を3年からさらに2年延長すれば、実際には1台当たり960ドルの追加費用が発生し、これは標準的な買い換えコストと変わらない」とあります。

実際、ほとんどのハードウェアは発展途上国で生産されているため、生産コストは安いのですが、その修理等のメンテナンス費用は、人件費の高い先進国で行うため、当初の機器全体の購入価格に比べて、メンテナンス費用が「バカ高く」なるのはもはや現代の常識でもあります。

また、PCのパフォーマンスが落ちたり、トラブルが発生すると、仕事の能率は急落し、思わぬ損失を蒙ります。これは仕事とPCが切っても切り離せない状態にある翻訳業界にあっては大変深刻な問題です。

一方、この調査を額面どおり受け取れない面もあります。本当にPCの寿命が3年なのかどうかは完全には納得はできません。PCをはじめとするOA機器・ソフトウェアの売上を伸ばし、ひいてはIT業界全体の経済不振を払拭したいという狙いも見え隠れするからです。

しかし、ここはあまり深く考えずに世界中が「騙されて」、どんどんPC、OA機器、ソフトウェアの買い替えを促進させていくべきでしょう。そうすれば、世界同時不況も少しは持ち直してくるというものです。弊社でも早速、3台のPCを新規購入し、また私個人としても1台のPCを新規購入しました。

「景気刺激のため、家を買い換えろ」とか「車を買い換えろ」というのは、ちょっと大変ですが、「仕事の能率アップのためにPCを買い換えろ」ということであれば、世界経済発展のために「大海の一滴」を投じる価値はあるのではないでしょうか?

上場企業の決算発表と翻訳業界

2009.6.9 NIKKEI NET

街角景気、5カ月連続で改善 5月、経済対策が下支え

内閣府が8日発表した5月の景気ウオッチャー調査によると、景気の実感を示す「街角景気」の現状判断指数は前月に比べ2.5ポイント高い36.7となり、5カ月連続で改善した。

・・・・(記事の転載ここまで)

昨年(2008年)9月のリーマンショック以降、急降下し続けた日本経済も多少の落ち着きをとりもどしたようです。しかしそれも政府による緊急経済対策のおかげでなんとか持ちこたえているという説が有力です。

昨年の秋、心臓マヒによる突然のショックでICU(集中治療室)へ担ぎ込まれた日本経済は、医師団の必死の介護により、最悪の時期を過ぎ、現在小康状態を保っている・・・・という感じでしょうか?

例年5月6月は、数多くの上場企業が決算発表と株主総会の時期を迎えるわけですが、今回はほとんどの大企業が大幅減益もしくは赤字となっています。なかでも製造業は目も当てられないほどひどく、戦後最悪の惨状となっています。それに引きづられて金融業も惨憺たる結果です。

ところが思い出してみてください。一昨年(2007年)の決算発表では、上場企業の経常利益は5年連続で過去最高益を記録し続けました。昨年でさえ、まだかなりの企業は6年連続で過去最高の利益をあげ、わが世の春を謳歌していたのです。

2002年の春から続いた”21世紀の日本好景気”は、1965年11月から1970年7月まで57ヶ月間続いた“いざなぎ景気”を期間において超えたのです。

人は「バブルの最中」にいる時は、決してバブルを実感しません。バブルは常に崩壊した後にわかるものです。どんなに科学や経済学が発達しても、不思議なことにバブルの発生とその崩壊についてだけはわからないのです。

あの金融・経済の神様と言われたグリーンスパン前FRB議長でさえ、「バブル経済を予見し、崩壊を食い止めることはできない」と発言していたくらいですから、われわれ凡人に予見できるはずもありません。

2002年以降続いた日本経済の景気拡大が”バブル”なのだとしたら、現在はやっと”平時”に戻りつつあると考えるのが妥当でしょう。

”お祭り”に浮かれていた時期が終わり、これから”平穏無事”な普通の生活に戻る時がやっと来たのです。企業においても個人においても、今を”通常”と捕らえられるか否かで今後の展開(個人においては生活)がかなり違ってくるでしょう。

ベルリンの壁が崩壊し、大きな戦争もない現在の平和な世界に、新興国が先進諸国の経済を猛追しているわけですから、”デフレ経済”は今後も先進諸国へ浸透していくはずです。

1,500兆円の個人金融資産を抱える日本人にとって、デフレ経済は必ずしも悪いものだとは、私は考えていません。ただ、”行け行けドンドン”の借金体質の企業や個人にとっては、つらい日々が続くでしょうね。デフレ社会においては、借金は早く返さなければいけません。特に会社運営に大きな資金を必要としない翻訳会社はなおさらのことです。

特許書類の一部で機械翻訳OK

2009.5.21 日本経済新聞

2009.5.21日経

特許庁のホームページを見ると下記の記載がありました。

「2009年5月19日、オーストリアで開催された日オーストリア特許庁長官会合において、両庁は特許審査ハイウェイ(PPH)の試行を本年7月1日から開始することに合意しました。オーストリアとのPPH締結によって、世界の特許出願の約76%を占める主要13の国と地域の特許庁がPPHを実施することとなり、質の高い権利を早期に取得することを可能にするPPHの取組が、さらに拡大されることとなりました」

しかし、私がざっと調べたところでは特許庁のHPのどこにも「機械翻訳」に関する記述はなかったのですが、なぜでしょうか?

PPHに加盟する13カ国のうち多くは欧州諸国のようですから、欧州言語間では、一部の書類に機械翻訳が使われているという現実があるのでしょうか?

上記の日経の新聞記事は、今ひとつ意味がわかりません。

「相手国に提出する書類の一部で機械翻訳を認めることで合意した」

「米国とカナダは、(中略)専門家が翻訳して提出するよう求めている」

「ただ特許権の請求範囲などを示した明細書については、引き続き手翻訳を求めている」

この記事を読んだ限りでは、実際どこまで機械翻訳化が進むのかまったくわかりません、というよりは実際は何も変わらないのではないでしょうか?だから特許庁のHPはその点につきなにも触れていないのではないでしょうか?

それにしてもこの日経新聞の記者は、「言葉のプロ」であるはずなのに、言葉の使い方を知らないようです。

「引き続き手翻訳を~」・・・・・これは何でしょうか?

翻訳は人間が「頭」で行うものであって、「手」が行うものではありません。

「手作業での翻訳に比べ~」・・・・・この表現も気になります。

たとえば、「従来の手作業での郵便仕分け作業に比べ~」なら理解できます。

この記者は、翻訳は郵便仕分け作業と同じレベルの作業としか捕らえていないようなので、同じ文筆業者としのて見識を疑います。

変わる「世界の利益地図」と翻訳業界

2009年5月20日の日本経済新聞の特集記事に「企業収益回復の条件(中)、変わる世界の利益地図 雪崩うち新興国シフト」があります。下記のグラフと文章はその日経新聞の記事から引用したものです。

2009.5.20日経

<以下、日経新聞の記事>

(前略)
「世界の利益地図」が大きく変わろうとしている。これまで成長を続けてきた欧米が大きく落ち込み、新興国の需要が企業収益を支える構図が鮮明になってきたからだ。

日本の主要輸出企業30社を分析すると、2009年3月期に欧米で稼いだ売上高は43兆円と22%減少した。「欧米の不振が本格化するのはこれから」(スズキの鈴木修会長兼社長)とも言われ、今期も大きく落ち込む懸念がある。

一方、新興国は底堅さが目立つ。同じ30社のアジア・オセアニアの売上高は26兆円(10%減)。全体の売上高に占める割合は23.1%に上昇し、欧州の15.5%、米州の22.7%を上回った。

典型はホンダの決算。2009年3月期にアジアなど新興国で2,400億円近い営業利益をあげた。中国が大半を占める持ち分法利益も加えると、新興国で稼いだ実質的な利益は3,000億円にのぼる。

これに対して(ホンダが日本であげた損益は)輸出不振や円高で1,616億円の営業赤字。北米と欧州は黒字だが、合計で900億円にすぎない。

「中国、アジアでどれだけ稼げるかが勝負の分かれ目」(コマツの野路国夫社長)――― 収益地図の激変を映し、今期は新興国シフトが一段と鮮明になる。

ブリジストンは「中長期的には中国が最も成長する」(高橋康紀執行役員)と判断、約100億円を投じ中国でタイヤの生産能力を1.5倍へ高める。日米欧の乗用車向け投資は減らすが、中国向けは増やす見通しだ。

中東に商機を見い出す動きもある。ユニ・チャームは昨年、サウジアラビアで生産能力を拡大。高機能の紙おむつや生理用品を拡販し、同国の事業は今期も増収増益を見込む。

<以上、日経新聞の記事終わり>

実際に財務省の貿易統計から、数字を拾ってきて下記に表にしてみました。2009年3月のデータですから、現在入手できる最新の情報です。

2009年5月20日

日本の全輸出の53%がアジア向けで、全輸入の45%がアジアからです。改めて日本の貿易相手国としてのアジアの存在に驚かされます。

現在(2009年5月20日)、「新型インフルエンザ」で日本は大騒ぎしていますが、私は、現時点においては、そう大騒ぎするべき問題ではないと考えています。むしろこれは日本政府が民衆の不満をかわすため、政策的にミニパニックを作り上げて利用している(ちょっとうがった見方で恐縮ですが)とさえ考えています。

なぜなら、現時点においては、まだ東南アジアに「新型インフルエンザ」はほとんど発生していないからです。

これが東南アジアにしっかり定着し、冬を向かえ、強毒性の「鳥インフルエンザ」と結合した新ウイルスが発生したら問題は大きくなるでしょう。

それこそアジア貿易はストップし、翻訳業界にもより深刻な打撃を与えかねません。

うがった見方のついでですが、今回メキシコで発生した「豚インフルエンザ」は、不況克服のため、欧米系の製薬会社が意図的にウイルスを作って流した、という説さえ流れています。

現在ウイルスのワクチンというのは製薬会社の重要な”知的財産”として、強力に保護されているため、発展途上国には決して行きわたらないそうです。従って未だに「鳥インフルエンザ」のワクチンはまったく数が足りません。

そこへ「鳥+豚インフルエンザ」が発生したらどうなるでしょうか?製薬会社は大喜びでしょう、・・・などと不謹慎なことを言ってはいけませんが、金儲けのために決して情報公開をしない一部の欧米系超大手製薬会社の姿勢には、いつも疑問を感じています。

「文学界新人賞にイラン人女性」&「小学生と英語教育」

2009.5.11 NHK

新人作家の登竜門として知られる文芸誌「文學界」の新人賞に、大阪府在住のイラン人女性が日本語で書いた恋愛小説が選ばれました。半世紀余りの歴史があるこの賞を、漢字を使わない国の作家が受賞したのは初めてです。

シリン・ネザマフィ

・・・・(記事の転載ここまで)

現在大阪府在住の29歳のイラン人女性、シリン・ネザマフィさんが、日本語の小説で新人賞をとりました。
日本で技術を学び、その後日本で就職もしたいということで、今から10年前に来日しました。日本語学校に通い、神戸大・大学院で情報知能工学を修了後、現在はパナソニックでシステムエンジニアとして働いているそうです。

エンジニアとしての技術知識を学びながら、日本語を学び、それで文学賞をとってしまうのですから、まずその才能の豊かさに驚かされます。しかし、それよりなにより驚くことは、彼女が来日後わずか10年でこの快挙をなしとげた、ということです。

本人の弁によると「来日して5~6年で自然に日本語で書けるようになった。習熟のコツはテレビを見ること。特にバラエティー番組は話し言葉がよくわかる」とのことです。

上記のNHKニュースの動画を見ると、とても流暢な日本語で受け答えをしていますが、流暢に話せても日本人と同程度の日本語を書ける外国人にはめったにお目にかかれません。

ましてや彼女の場合、19歳までイランで過ごしたわけですから、完全に大人になってから外国語である日本語を学び始めたというわけです。

われわれ翻訳業界の話で言えば、ターゲット言語のネイティブでなければ、良い翻訳はできないと決め付けている人たちへの警鐘となるのかもしれません。

さて、それに加えてもうひとつ思いあたることがあります。最近日本でもさかんに議論されている「小学校での英語教育の是非」です。

数学者であり、大道芸人でもあるハンガリー出身のピーター・フランクル氏の言葉を思い出しました。

ピーター・フランクル氏は、ハンガリー語のほか、ドイツ語、ロシア語、スウェーデン語、フランス語、スペイン語、ポーランド語、英語、日本語、中国語、韓国語の計11ヶ国語を大学で講義ができるレベルまで使いこなすことができることで有名です。

そのピーター・フランクル氏が、「日本では、小学校1年生から英語教育を導入するべきか」というNHKのパネルディスカッションで発言していた言葉を思い出します。

フランクル氏は、はっきり「導入するべきではない」という立場をとっていました。その理由は、

「日本ではただでさえ、”ゆとり教育”のおかげで小学校の授業数が削られている。それなのにさらに英語の授業を加えたら、子供にとって非常に重要な学習項目である、国語や算数の時間がますます減ってしまう。」

さらに加えてこうも言っていました。

「子供には外国語を学ぶ前に、学ぶべき重要なことがたくさんある。一番重要なことは、自分の考えを持ち、その考えを論理的にはっきりと主張できるようにする訓練だ。それもできずにいくら外国語を学んだって、中身のない話など誰も耳を傾けない」

今回のシリン・ネザマフィさんの文学賞受賞が、その論争の答えを出したのかもしれません。

「国内工場閉鎖」と翻訳業界

2009年4月18日(土)、日経新聞1面トップ記事です。

2009.4.18日経新聞-1
2009.4.18日経新聞-2

(以下、記事からの引用)

「2008年度に国内工場の閉鎖を公表した大手企業を日本経済新聞が独自集計したところ、下期は計110ヶ所で上期の28ヶ所に比べ大幅に増えた。このうち2009年1月-3月は94ヶ所と全体の7割を占め、閉鎖の勢いは増している。

(中 略)

各社とも今後景気が回復し為替が円安に振れても、国内需要は大きな伸びが期待できないと判断。短期間で設備過剰を解消するとととに、海外の成長市場に経営資源をシフトすることで、景気回復時に世界で一気に攻勢をかけられるよう事業構造を転換する。

(中 略)

未曾有の不況に直面し、今回は『過去に例のないほど短期間にあらゆる業種が閉鎖を決めている』(ニッセイ基礎研究所の百嶋徹主任研究員)。

(中 略)

日本の製造業は主要製品を国内で開発・生産し、世界に輸出して事業を拡大してきた。国内市場が成熟する中、新興国を中心とする海外市場の開拓が収益力を左右するようになり、事業戦略の見直しを迫られている。

シャープは工場閉鎖はしないが、『液晶パネルや太陽電池は日本から世界へ輸出する事業モデルを変える』(片山幹雄社長)。国内生産を基本としてきた先端製品も現地企業と組み海外で生産・販売する方針だ。」

(以上で記事は終わり)

さて、リーマンショック以後、「派遣切り」を中心とする製造業の従業員削減策をマスコミが痛烈に批判するのを見ていて、私は以下のような心配をしていました。

「日本の製造業が日本国内で従業員を雇うことに嫌気が差し、どんどん国外脱出を試み、やがて産業の空洞化が加速していく・・・・・」

まさに私が恐れていたことが現実のものとなってきました。

さて、この現象がわが翻訳業界の今後にどのような影響を与えるのか考えてみました。

1. 近いうちに、工場移転に伴う膨大な文書(技術標準関連文書が中心)の翻訳需要が発生する。

2. 今後も引き続き開発・設計は日本国内で行われるため、コアとなる新技術の翻訳需要は、増えることはあっても減ることはない。

3. 新興国の現地企業と組み、生産・販売する日本企業が増えるので、機器の取扱説明書の類は、現地で翻訳、執筆される割合が増え、日本国内での翻訳需要は減少する可能性がある。

4. 新興国で作った製品を現地で販売あるいは他国へ輸出する(たとえば中国やベトナムやタイ、あるいは旧東欧諸国で生産し、米国や欧州へ輸出する)割合が一層増えるため、日本国内で英語へ翻訳した文書を現地で多国語化する傾向が増す。

5. 日本製造業の空洞化は加速し、知的財産戦略とグローバル化戦略に成功した製造業のみが生き残る。したがってその企業戦略に耐えうる翻訳事業者のみが必要とされる。

いずれにせよ、今世界の製造業地図は大きく塗り替えられようとしています。頼れるのは日本人の頭と心の中にある”技術者魂”だけなのですが、やっぱり”大和魂”だけでは勝てません。

翻訳業界の春は秋?

2009.4.9 朝日新聞

2009.4.9朝日新聞

輸出が同50.4%減の3兆3100億円、輸入が同44.9%減の3兆1079億円で、いずれも減少幅は比較可能な85年以降で最大。自動車や電子部品の減少が大きかった。金融危機が実体経済の直撃につながった昨年秋以降、輸出額も輸入額も前年同月を下回り続け、その幅は月を追って拡大している。

・・・・(記事の転載ここまで)

上記は朝日新聞紙媒体の記事の一部とグラフデータのスキャンですが、去年の9月の「リーマンショック」以降、見事に輸出入が激減しています。感覚や感情にとらわれることなく、また群集心理やマスコミの誘導にもとらわれることなく、冷静に事実を分析するために、統計の数字というものはとても大事な役割をはたします。

しかし今回に限って言えば、経済変動の幅があまりにも大きく、かつ急であったために、この統計を見た時私は「なにを今更、わかりきったことを」という感じを持ちました。

貿易の数字に限らず、雇用統計も個人消費も企業の決算予測も景況感も全ての統計結果が「言わずもがな」の最悪の数字を示しています。まさにどん底のお先真っ暗な日本経済です。

多くの経済専門機関は、世界全体あるいは日本全体の景気回復は、早くても2010年の後半からと発表しています。マクロ経済を考えたとき、きっとそれが正解に近いのでしょう。

しかし、暖かな春とともに桜が満開になったからというわけではないでしょうが、企業活動が少しずつ変化して来ているのを肌で感じます。

世の中全般の経済が大きく落ち込むときは、必ずと言ってよいほど、まだら模様でいち早く急回復をとげる企業が出始めます。今私はその動きを敏感に感じ始めています。

そもそも「技術翻訳」に限って言えば、基本的に儲かっている企業にしか、大きな需要はないと言って差し支えありません。

それらの企業群がこれから向こう10年間の日本経済を大きく前へ引っ張って行くはずです。しばらく錨を下ろして港に身を潜めていた船団が、外洋へ出帆する準備を始めています。どの船がいち早くメインセールにフォローの風を捕らえるのでしょうか?これからが楽しみです。

私の勘ですが、今年の秋ころから、わが翻訳業界はまだら模様で急回復していく気がしています。

世界貿易量9%減 戦後最大の下落 WTOの09年の予測

まずは、2009年3月24日の朝日新聞の記事から。

「世界貿易機関(WTO)は23日、09年の世界の貿易量が実質ベースで前年比約9%減となり、第2次世界大戦後で最大の落ち込みになるとの見通しを発表した。昨年秋の金融危機の深まりで世界各地の経済が一斉に減速したため。世界貿易は過去約30年間一貫して拡大してきたが、09年は一転する」

(ここで記事終り)

上記の記事の元になったWTOのレポートはこちらです。

続いては、 ドイツ証券チーフエコノミスト、松岡幹裕氏の「米大恐慌と現在の日本の相違点と類似点」 を下記に紹介します。

「99%の読者やエコノミストは、1929年以降の米国大恐慌と現在の日本を比較するのは、ナンセンスだと考えるであろう。しかし、現在の日本における鉱工業生産の低下幅とスピードは、1929年の米国のそれを上回っている。両者の間には、さまざまな制度的な差異が存在するにもかかわらず、鉱工業生産で計測した日本の景気悪化のスピードや幅が当時の米国よりも深刻だという事実は、われわれが気づかない両者の類似点の存在を示唆している。

大恐慌時の米国を上回る景気悪化のスピード

図表1は、現在の日本と大恐慌時の米国の鉱工業生産について、ピーク月(米国は1929年6月、日本は2008年2月)をそれぞれ100とする指数で表し、横軸もピーク月を基準にそろえて示したものだ。日本の鉱工業生産はピークから11カ月後に31.0%低下したのに対し、当時の米鉱工業生産のピークから11カ月間の低下幅は18.6%であり、現在の日本は大恐慌時の米国の低下ペースを上回る悪化を示している」

2009年3月25日

ながい論文なので、以下は省略しますが、最後に松岡幹裕氏は、こう結んでいます。

「これらを考えると、筆者は、現在の経済体制や経済思想が1920~30年代と全く異なると断じるには、不安を感じるのである」

最後に、NIKKEI NET の記事を紹介します。

”世界経済「2010年末までに回復」 OECD経済政策委 ”

「経済協力開発機構(OECD)は緊急の経済政策委員会を開き、各国の景気対策の効果などから、2010年末までには世界経済が回復に向かうとの認識をまとめた。各国に求められる対策はそれぞれ異なっているが、迅速な政策実施が有効だとの考えで一致した。OECDは今回の議論をもとに世界経済見通し(エコノミック・アウトルック)を作成し、31日に公表する」

この記事の詳細はこちら。

上記の3つの記事を簡単にまとめるとこうなります。

1. 2009年の世界の貿易量は戦後最悪の落ち込みとなる(WTO)。

2. 日本経済が世界大恐慌時のような深刻な状況に陥る可能性も完全には否定できない(松岡幹裕氏)。

3. 2010年末までには世界経済は回復に向かう(OECD)。

「2010年末までには回復に向かう」ということは、少なくとも2010年末頃までは底に落ちていくということです。そこからV字回復できるかどうかは、日本を含めた主要国の政策によるのでしょう。

いずれにせよ、日本の翻訳業界にとっては、まだしばらくの間「冬の時代」が続きそうです。

英語「一人勝ち」に対抗 自国語守れ、政策動く

2009年3月15日(日)の日本経済新聞に興味深い記事が載っていました。長い記事なので下記に要点をまとめてみます。

(以下、記事の要約)

経済や文化のグローバル化、インターネットの普及を背景に世界の言語は英語の一人勝ちの様相だ。たとえば、ユーロ通貨を使う16カ国のうち英語が公用語なのは、アイルランドとマルタだけだが、理事会の決定は英語で読み上げられる。危機感を抱く国々は自国語の擁護策に動き出している。

【フランス】
・ フランス政府は昨年、”ユーロアシスタンス”という一企業に対し、会計書類に英語を使ったという理由で5,000ユーロ(約60万円)の罰金刑を申し渡す”見せしめ”に出た。

・ 1994年制定の”トゥーボーン法”は職場での会話やメディア、製品の説明書、デモ、国際会議などでフランス語を使うことを義務付けている。

・ ラジオで流す楽曲の40%以上はフランス語の曲で、懐メロ番組は60%以上が最低ライン。

・ 昨年11月フランス政府機関は、「金融用語はフランス語を使いましょう」と国民に通達を出したが、金融界では評判が悪い。

【ドイツ】
・ シュタインマイヤー外相は、オルバン欧州委員に「重要書類はすみやかにドイツ語に翻訳してほしい」のと書簡を送りつけた。EU本部では公表書類の多くが英語とフランス語。ドイツ与党幹部は、ドイツ誌に「翻訳だけで年間数百ユーロが無駄になっている」とこぼしている。

【アラブ首長国連邦】
・昨年春、政府は市内の飲食店900店にアラビア語のメニューを用意するよう警告書を送った。そのため、ドバイのファーストフード店では、メニュー板にアラビア語を書き加える作業に追われた。

民間調査機関の推計によると、インターネットで流れる全情報の約29%は英語、次いで中国語(20%)、スペイン語(8%)。フランス語やドイツ語は5%にすぎない。手っ取り早く世界の情報を得ようとする若者やビジネスマンは英語を選ぶ。

そのため、中国とスペインは鼻息が荒い。

【中国】
・ 中国政府は3月12日、「外国で中国語を学ぶ人の数が5年で倍増し、4,000万人を超えた」と発表した。

・ 2004年に始まった中国語教育機関”孔子学院”は、81カ国に広がり、政府派遣の中国語教師は、昨年だけで1,500人以上。欧州からも年200人の教師を研修で受け入れ、海外の中国語学習者を1億人まで増やす計画だ。

【スペイン】
・スペイン語も着実に広がっている。1991年に始まったスペイン国王肝いりの教育機関は40ヶ国に及ぶ。中南米で唯一ポルトガル語を使うブラジルでも、2010年から高校でのスペイン語の選択授業設定が義務化される。

(以上、要約終わり)

国連の公用語は、英語、フランス語、ロシア語、中国語、スペイン語、アラビア語の6ヶ国語ですが、なぜ日本語は入っていないのでしょうか?

日本の人口は世界で10番目に多く、また何と言っても、世界第2位の経済大国です。またインターネットで使われている言語でも、英語、中国語、スペイン語に次いで世界第4位に位置しています。それなのに世界的には、まったく無視されています。

ここでも日本の政治力・外交力の弱さと外へ訴える文化力の貧しさを実感せざるを得ません。非常に残念なことです。

しかし、戦後の日本に限って言えば「日本語を使え」とか「外国語禁止」とかの声をあまり聞いたことがありません。なぜでしょうか?

答えは簡単でしょう。

「日本語を使え」と強制しなくても、未だに日本人の大部分は日本語でしかコミュニケーションを取れないので、心配する必要すらないのかもしれません。

グローバリゼーションを考えたとき、逆の意味で心配になりますが、これは翻訳会社にとっては良いことなのか、悪いことなのか・・・・・・。やっぱり良いことなのでしょうね。

電機8社、自己資本13%減

2009.2.23 日本経済新聞

2009.2.23日経新聞

上記新聞の切り抜きの中のグラフは、「前期末自己資本に対する今期予想赤字の比率」を表しています。そこで「2008年12月末の自己資本に対する今期予想赤字の比率」を下記に表にしてまとめてみました。

 

2008年12月末の自己資本に対する今期予想赤字の比率
日立 41%
NEC 36%
東芝 42%
三菱自 25%
パナソニック 11%
シャープ 9%
日産自 9%
富士通 6%
ソニー 5%
トヨタ 3%
マツダ 2%


日立、NEC,東芝の赤字比率の高さに愕然とします。特にこの3社は半導体を多く取り扱っているため、他の電機メーカーに比べて極端に業績が悪くなっています。

自己資本の減少は経営の足かせとなり、特に資金調達コストを割高にします。たとえば、東芝が今期計上している構造改革(リストラ)費用が150億円なのに対し、パナソニックは3,450億円を計上しています。

余裕のあるパナソニックが思い切った「リストラ」を行えるのに対し、東芝はお金がないため、思い切った手を打てません。そのぶん対応が後手後手に回る可能性があります。

1990年のバブル崩壊後、日本の銀行が不良債権の実態額をなかなか公表しなかったのは、恐ろしくて公表できなかったからでした。当時一番健全経営をしていると言われていた三菱銀行は、いち早く不良債権額を公表し、他行に先駆け一番最初にウミを出し切ってしまいました。公表しても「信用不安」に陥る心配がないと自信を持っていたからです。

それに比べて、今回の日立、NEC,東芝の三社はどうでしょうか?大変心配です。

自己資本がマイナスになれば債務超過となり、保有資産を全て売却しても負債が残ってしまう状態で、企業の存続そのものが危うくなってしまいます。

今の状態があと1年も続けば、上記の3社は本当に債務超過に陥りかねません。まさにアメリカ自動車産業ビッグスリーの二の舞となります。

日立やNECや東芝が倒産の危機にさらされるなど、ちょっと前の日本人には想像も出来ませんでした。

しかし、原子力発電という21世紀に最も有望な重電部門を持つ日立、東芝と違い、重電部門を持たないNECの次の戦略商品はいったい何なのでしょうか?

一時期,新卒就職人気ランキングで理科系大学生からの人気No.1の座をソニーと争っていたNECのことですから、若き優秀なエンジニア達が、世間を驚かすような何かをやってくれると期待しています。

10年後に過去を振り帰ったとき、2009年はわれわれ技術翻訳業界にも非常に重要な分岐点となる年になっているはずです。

「輸出と成長率」と翻訳業界

日本経済新聞の2009年2月14日の朝刊からデータを拾って、下記に表を作ってみました。

「2008年10月~12月期の実質国内総生産(GDP)は、前期比年率で10%前後のマイナスと、第一次石油危機以来約34年ぶりの大幅な落ち込みになる見通しとなった」とあります。輸出の落ち込みが突出していることが、この数字をみてもよくわかります。

2009年2月14日(1)

さて、同じく日経新聞から拾ってきた数字をもとに下記に表を作成してみました。

2009年2月14日(2)

上場企業の業種別の業績予想ですが、「電気機器」と「自動車・部品」が突出して悪いということが、この数字からもよくわかります。特にこの2つの業種だけで製造業売上合計の45%近くを占めていることもあり、製造業全体の業績を大きく悪化させています。またこの2業種の最終損益の赤字だけで3兆円をはるかに超えているわけですから、製造業全体の最終損益が赤字になっている理由もわかります。

日経新聞によると「4月~12月期で増益は鉱業と通信の二業種のみ。上場企業全体が最終赤字に転落したITバブル崩壊時の2002年3月期には、自動車や医薬品など8業種が増益だった」とあります。

長い間ハイテク技術日本の象徴であった電機産業、自動車産業は、また輸出の花形でもあり、貿易黒字の稼ぎ頭でもありました。その両方が今回極端に業績を悪化させています。このようなことが過去にあったでしょうか?

終戦直後を除けば、日本の花形産業である電機業界、自動車業界の全ての企業が同時にここまで極端な危機に直面したことは未だかつてなかったでしょう。あの第一時石油危機のときでさえ、電機業界のなかのコンピュータメーカーは、逆に特需に沸いたそうです。つまり企業の合理化で人員削減をした代わりにコンピュータ投資が国内外で積極的に行なわれたというわけです。

またそのときに日本の自動車業界は、原油価格の高騰という追い風により小型車の売上を伸ばし、現在の礎を築いたのです。

輸出の花形が瀕死の重症を負っているということは、われわれ翻訳業界にとっても大変由々しき問題です。

かつてのバブル崩壊の時は、まだ外国は景気が良かったため、輸出で稼ぐことができましたが、今回は国内も国外も経済を悪化させているため、本格的な景気回復までにはかなりの年月が必要でしょう。 私たち翻訳業界にも相当な覚悟が必要です。

 

日本の製造業バブルの崩壊

ソニー1万6,000人削減でも底が見えぬ業績低迷 (ダイヤモンド社 2008.12.15)
東芝、最悪2800億円の赤字 期間従業員4,500人削減 (産経ニュース 2009.1.30)
日立製作所7,000億円の赤字、従業員7,000人配置転換、希望退職(毎日新聞 2009.1.30)
NECも最終赤字に転落、全世界で2万人超の削減へ (日経新聞 2009.1.30)
住友化学:最終赤字150億円 正社員含め2,500人削減 (毎日新聞 2009.2.3)
パナソニック国内外で1万5,000人削減へ 今期3,800億円赤字(産経ニュース 2009.2.4)
シャープ、非正規1,500人削減へ=役員年収最大50%カット(時事通信 2009.2.6)
日産2万人削減へ 3月期、営業赤字1,800億円に(毎日新聞 2009.2.10)
パイオニア1万人削減 正社員6割、薄型TVから撤退(共同通信 2009.2.12)

製造業のうち、主だった大企業の人員削減計画をネット上で拾っただけでも、上記のようになりました。なかでも自動車メーカーの落ち込みは激しいため、下記に一覧でまとめてあります。

国内自動車メーカーの人員削減数(毎日jpより)

社名

国内の人員削減数

トヨタ

6,000人

ホンダ

4,310人

日産

13,500人

スズキ

960人

マツダ

2,000人

三菱自

3,300人

ダイハツ

500~600人

富士重

1,200人

いすゞ

1,400人

日野自

2,100人

三菱ふそう

580人

日産ディ

900人

合 計

36,750~36,850人


自動車産業の裾野は広いため、自動車メーカーへ納入する部品メーカー、半導体メーカー、工作機械メーカーの惨状は言うまでもありません。今まで輸出産業の花形と言われ続けてきた、日本の自動車メーカーや電機メーカーの落ち込みは目も当てられず、まさに戦後最大の危機と言っても過言ではないでしょう。

1990年代初めの「日本経済のバブル崩壊」の時は、「不動産を始めとする資産バブルの崩壊」でした。2000年頃に起きた「ITバブルの崩壊」は、米国を始めとする新興IT企業が急成長し、その行き過ぎにブレーキがかかり、文字通りの「ITバブルの崩壊」が世界的規模で起こりました。

今回はどうでしょうか?一般的には、アメリカのサブプライムローンに端を発する「米国発金融危機」が「世界同時不況」へつながったと言われています。しかし、外国はともかく日本に限って言えば、前々回バブル崩壊のように不動産価格がクラッシュしたわけでもなく、金融機関が不良債権で危機に陥っているわけでもありません。

際立って悪いのは、製造業なのです。6年間連続で過去最高利益を更新し続けてきた、「製造大企業のバブルの崩壊」と言ってもよいのかもしれません。

人によっては、「構造改革により、日本政府が製造業への人材派遣を認めたから今回の大量首切りにつながった」という人もいるようです。しかし、それはちょっと違うと思います。なぜなら派遣を認めなければ、日本の工場は、雪崩を打って中国やベトナムへ移転し、今以上に産業の空洞化が進んでしまっていたでしょう。

「終戦直後」や「オイル危機」や「資産バブルの崩壊」の時と同じく、今まさに既存の価値観が音を立てて崩れ始めつつあります。

戦後の日本は一貫して、外国から資源を輸入し、それを加工して輸出し、外貨を稼ぎ今日の繁栄を築きあげてきました。

「終戦直後」は、それまでの植民地支配による天然資源の確保をあきらめ、世界中から一番安い資源を選び、輸入し、加工後輸出し、工業国としての基礎を固めました。

「オイルショック」では、99%以上輸入している石油価格の暴騰に対処すべく、猛烈な省エネ研究開発に成功し、世界に先駆けてもっとも環境にやさしい製造業を作り上げました。

「資産バブルの崩壊」では、多くの日本の製造業は「土地担保主義」に見切りをつけ、グローバル化の時流に乗り遅れまいと、捨て身で海外に進出して成功を収めてきました。

また、前々回の「資産バブルの崩壊」では、日本は不景気に苦しみましたが、世界は逆に好景気に沸いていたため、日本のお家芸である「輸出」でなんとか景気を取り戻すことができました。

前回の「ITバブルの崩壊」では、世界的にIT関連企業はショックを受けましたが、他の分野の企業は特に痛手を負っていたわけではありません。

さて、今回の「日本製造業のバブルの崩壊」ですが、世界的な大不況に加え、日本はなぜか今回の不況の発信元であるアメリカよりも、経済が悪化しています。つまり、輸出もダメ、輸入もダメ、という状況です。

加えて、米国マイクロソフトも5,000人の人員削減を発表しているように、IT関連企業にも今までになく暗い影を投げかけています。

さて、こんな中、日本の翻訳業界は何をしたらよいのでしょうか?

私は「ネット戦略」と「知的財産」が今まで以上に大きなキーワードになってくると考えています。

世界同時不況と翻訳業界

私が翻訳業界に入ったのは1981年4月ですが、それ以来、さまざまな不況(プラザ合意後の円高不況、バブルの崩壊、山一・拓銀破綻ショック、ITバブルの崩壊)を経験してきました。しかし、今回の米国金融危機発世界同時不況は、最大かつ最長のものとなるでしょう。

私は1990年代初め、ある大手都市銀行の元役員で、当時はノンバンクの会長をしていたN氏にこんな話を聞いたことがあります。N氏はある勉強会の講師をボランティア的に務めてくださっていました。銀行家らしからぬそのユニークな経営理論に、数多くの中小企業経営者が“師匠”として慕っている方でもありました。

私がN氏と話をしているとき、たまたま手元に4~5社の大手新聞社の新聞紙が置かれてあり、その日はどの一面も「金融機関の不良債権8兆円」という巨大な見出しが躍っていました。

そのときN氏は、各新聞紙の一面を指で強く叩きながら、私にこう言いました。

「いいか丸山君、マスコミというのはこういうウソを平気でつくから、こんな報道をまともに信じちゃダメだぞ。いまや金融の専門家の間では、日本の金融機関の不良債権が100兆円を超えるなんていうのは常識だ。8兆円なんかで済むわけがない」

現にその後、しばらくしてから新聞各紙の一面に「金融機関の不良債権12兆円」という大きな見出しが躍りました。しかしその後しばらくするとまたまた「金融機関の不良債権20兆円」、しばらくするとまたまた「金融機関の不良債権28兆円」、その後も何度か同じような見出しが続き、最後は「40兆円」を超えたあたりから、やっと日本のマスコミも「何かおかしい」と感じ始めました。最初の報道から数年以上は経過していたでしょう。

N氏によると、もともと日本の金融機関には「6ヶ月間元本も金利も一切返済しないと不良債権とする」というあいまいな基準があったそうです。そこで当時の日本の金融機関は、このあいまいな基準を悪用したのです。

たとえば、ある銀行が経営破綻している不動産会社に300億円を融資していたとします。しかし銀行がその不動産会社を「破綻した」と認めてしまうと、銀行にとって、その300億円は「不良債権」となってしまいます。そこで銀行はその不動産会社の口座へ半年毎に1億円を振り込み、その直後、金利として1億円を回収するのです。

6ヶ月毎に金利をきちっと支払っているその不動産会社は、「不良債権先」にはなりません。銀行にとっては巨大すぎてつぶせないのです。

そうやって「臭いものにフタをして」次から次へと先送りが行なわれていったのですが、そんな子供だましがいつまでも通用するはずもありません。そしていよいよにっちもさっちも立ち行かなくなったのが、1997年の山一證券と北海道拓殖銀行の経営破綻だったのです。

1998年10月に金融機能再生関連法」が制定され、「不良債権の定義」が決まりました。その後、日本の金融機関の不良債権処理が終わったと言われているのが、2005年ですから、バブルの崩壊から実に15年が経過しています。

さて、今回の「世界同時不況」です。米国のバブル崩壊と日本のそれとは非常に酷似しているのですが、ショック直後の政策の混乱ぶりまでまた同様に酷似しています。

今一番懸念されるのは、サブプライムローン関連不良債権の全体像をいまだに公的機関が公式発表していないという点です。米国政府すらもいまだその把握ができていないというのが実態なのかもしれません。

日本のバブル崩壊の時がそうであったように、誰もが不良債権の真の姿を隠そうとするのです。その結果、実態が明らかになるまで時間がかり、政策が常に後手後手に回らざるを得ません。

私は米国はじめ欧州各地にはもっともっと巨大な不良債権が多数隠れていて、これから時間をかけて順次明らかにされていくと確信しています。

加えて懸念されるのが中国の経済です。中国はここ数十年間、一本調子で高度経済成長を遂げてきました。常識的に考えてもこんなバブルがそう長く続くわけはありません。長期的にはまだまだ経済発展するとしても、必ずやどこかで巨大な経済ショックに見舞われるでしょう。その「中国ショック」が今回の「米国金融ショック」に加わったら、日本経済へ与える影響は計り知れません。

私は今回の「世界同時不況」は今後7~8年続くのではないかと考えています。その根拠は、日本は不良債権の処理に15年を費やしたので、米国がその2倍のスピードで処理を行なったとしても7.5年はかかるからです。3倍であったとしても5年はかかります。

さて、日本の翻訳業界の話ですが、私の過去の経験則から言って、今回の「世界同時不況」の間にきっと多くの翻訳会社が消えてなくなることでしょう。そして次代の発展産業を追い求めながら、アメーバのごとく離合集散を繰り返し、業界全体としては発展を続けていくはずです。

1970年代のオイルショックが日本経済に構造的転換をもたらし、技術主導型の日本的効率経営を生み出しました。80年代初頭の「世界同時不況」は日本の超円高を誘発し、ひいては日本のバブル好景気を生み出しました。世界的な経済混乱が起こるたびに、その機に乗じて「成功」する企業・産業が生まれてくるものなのです。

そういう意味から言っても、今は翻訳業界にとっても、千載一遇のチャンス到来と言っても過言ではないでしょう。少々不謹慎な言い方かもしれませんが、私はこのような世の中の変化を見るのが楽しくてしょうがありません。

「緊急融資」と翻訳業界

2008年12月5日、中小企業庁は「緊急保証制度」の対象業種の中に「翻訳業」を加えました。以下は中小企業庁のサイト内の記述です。

【10月31日から開始しました「緊急保証制度」については、11月14日に73業種を追加し、現在、618業種を対象に実施しているところでありますが、最近の景況悪化や中小・小規模企業の年末資金繰り対応等を踏まえ、電子部品製造業、理美容業、ビルメンテナンス業など80業種を追加指定することとなりました。

この結果、対象業種は全体で698業種となります。

追加指定業種は12月10日から本保証制度の対象となります。

対象業種の中小・小規模事業は、金融機関から融資を受ける際に一般保証とは別枠で、無担保保証で最大8,000万円、普通保証で最大2億円まで信用保証協会の100%保証を受けることが出来ます。】

とあります。正直言って、私はこの「緊急保証制度の対象業種拡大」の中に「翻訳業」を加えることには反対です。

会社経営に「資金の確保」が重要であることは今更言うまでもありません。たとえば、小売業・卸売業などはその典型例で、粗利益額に対し、動かすお金(仕入と売上)が巨額になるため、不測の事態に備え、常に余裕を持って資金の確保をしておく必要があります。

また、装置産業とも言える製造業であれば、最初に多額の設備投資をしてから、長期間にわたって投資額を回収していく必要があります。そのため、常に多めに運転資金を確保しておかねばなりません。

しかし、「翻訳業」はどうでしょうか?

翻訳業に巨額の仕入や設備投資が必要でしょうか?

なぜ、今回のような8,000万円だ、2億円だ、というようなお金が必要になるのでしょう。しかも、一般保証とは別枠ということですから、通常の設備投資資金や運転資金とは別に特別融資を受けると言うわけです。

創業間もない「翻訳会社」であれば、途中で資金が枯渇してしまうケースも出てくるでしょう。また、たとえ歴史のある会社であったとしても、経済の激変により一時的に資金ショートする場合もあり得るかもしれません。

しかし、その会社が本当に「翻訳会社」なのであれば、一般の保証枠の中で十分に資金を確保できるはずです。

もしそれがカバーできないのだとすると、それは現在の経営の「何かが間違っている」からだと思います。

「借金」とは「もらったお金」ではなく、金利や保証料を上乗せして「必ず返さなければならないお金」のことです。すこし厳しい言い方をすると翻訳会社にとって「借金」は「麻薬」であるとも言えます。

今回のこの「緊急保証制度」の業種の中に「翻訳業」を入れるか入れないかについては、経済産業省から社団法人日本翻訳連盟(JTF)に問い合わせが来ました。

私もJTFの理事として、理事会では「翻訳業」を対象に入れることには反対の立場を表明しようと考えていたのですが、一部の会員企業から事務局宛に、実施に向けての強い要望が出ている、ということもあり、私としては黙認することにいたしました。

人それぞれ価値観が違いますが、もし今回の「緊急保証制度」を使って、新たな融資を受けようとしている「翻訳会社」の経営者の方がいるとしたら、私はこう申し上げたいと思っています。

「“麻薬患者”に“麻薬”を打てば、今はよくても数年先は地獄です。会社を健全に回復させるために、“今何をすべきか”をもう一度冷静に考え、信念に基づき果敢に実行してください」・・・と。

しつこいようですが最後にもう一言、結論です。

「“翻訳会社”が“翻訳会社”であるかぎり、決して借金をしてはいけません」。

企業のグローバル化とIT革命

20世紀に発達した通信・航空・運送技術の進歩は、企業のグローバル化を加速させ、巨大な「多国籍企業」も多数生み出しました。

当時は、東西冷戦による微妙なバランスのもとに、軍事的、政治的、経済的「安定」が続き、米国とソ連がにらみ合いを続けていたため、人々も企業も、ある意味暴れようにも暴れられなかったとも言えます。

しかし、1989年11月に起きた「ベルリンの壁崩壊」は、旧東欧諸国を一挙に自由主義経済へと参入させました。西側諸国は、失業者に苦しむ旧東欧圏に目をつけ、こぞって東側諸国に工場を建て、安い人件費で作った製品をどんどん西側諸国で売りさばき始めたのです。

アジアでも中国が自国に市場経済を導入し、NIES、ASENに負けじと急成長を続けています。同様に人口・資源大国であるインドやブラジルも後に続き、その結果、世界の工業用資源が逼迫し、中近東やアフリカ諸国のような資源大国も経済発展をとげるという、地球的規模での大規模な経済発展が21世紀の初めに実現したのです。

一方20世紀後半から始まった「IT革命」は、大量の情報を迅速かつ安価に伝達させることに成功しました。

情報を一方的に流すテレビ、ラジオ、新聞、映画とは違い、インターネットは非常に安価なコストで情報が縦横無尽に世界各地を駆け巡ります。また、PCを持てない地方の人々には、携帯電話が決定的な影響を与えました。

たとえばかつて中国奥地の人々は、「人民日報」を読むか、政府の流すテレビのニュース番組を見るしか情報を得る手段がありませんでした。それが今では携帯電話を手にすることにより、クチからクチへ「真実の声」が縦横無尽に流れ始めたのです。

人々は「良い暮らし」を得るためにはどうしたらよいのか、携帯電話を使って自由に情報交換を行っています。もう今や政府による情報統制は効きめがありません。

世界中の企業が、生き残りをかけ必死になって少しでも「安い人件費」の地域に工場を建て、製品を製造しようと競い合います。また貧しい地方の人々は、少しでも「良い暮らし」を求めて、命を懸けて移動を試みます。

その結果、世界的規模で「貧富の格差」が拡大してきていると言われています。確かにそうかもしれません。かつての世界は、東西冷戦による「東西の壁」と、先進諸国と発展途上国による「南北問題」により、バランスがとれていました。「バランスがとれていた」というのは、「東」と「西」はまったく別世界、別経済であり、「先進国」と「途上国」はまったく別世界、別経済だったからです。

つまり貧しい者は常に貧しく、「豊かな人」の存在すら知らなかったわけですから、羨ましがることもなく、また怒る必要もなかったからです。

「IT革命」は、世界中の眠れる民衆の目を覚まさせてしまいました。同時に世界的バブルに酔い、マネーゲームに狂奔した先進諸国の「富裕層」は行き過ぎた資本主義、つまり極端な弱肉強食が生み出す貧富の拡大という問題点に今気づき始めたのかもしれません。

今はリーマンブラザースに始まった、金融危機という目の前の「火事」を消すのに躍起でしょうが、少し落ち着いたら「資本主義反省会」がマスコミの間で賑わうに違いありません。

アジア内需に期待高まる

日経新聞(2008年11月11日)の紙媒体の「景気指標」に上記の見出しで記事が出ていました。 下記にご紹介します。

(以下記事)

米国発の金融危機が実体経済に波及し始めているが、アジアの内需拡大が世界経済悪化の衝撃を和らげるのではないか——。アジアで自信と期待の入り交じった見方が出始めた。日米欧主要国・地域の「景気後退」が現実味を帯びる反面、中国やインド、東南アジアなどで消費や投資など内需が堅調に推移し、世界経済の落ち込みを下支えするというのだ。

「IT(情報技術)バブルがはじけた2000年頃と違い、中国は世界の景気減速(の一部)を補える規模に育った」。仏大手銀行ソシエテ・ジェネラルのアジア通貨債券ストラテジスト、パトリック・ベネット氏は指摘する。

中国の2007年の名目国内総生産(GDP)は2000年の約3倍弱に拡大。2007年の前年比増加額は約6,220億ドルで、米国の増加額(約6,290億ドル)とほぼ方を並べた。2008年以降、中国が1年間に拡大する経済規模は米国のそれを超え、年々差が広がることは確実とみられる。

シンガポールのDBS銀行チーフ・エコノミスト、デービッド・カーボン氏も「中国やインド、東南アジアの年間内需創造は米国にほぼ匹敵する」と指摘する。中印の輸出依存度はGDP比4割以下。経済成長の内需依存度は高い。

外需依存型とみられてきた東南アジア諸国も、一人当たりGDPの拡大と人口増で内需に期待が高まる。たとえばインドネシア。自動車販売は1―9月に前年同期比46%増の46万台と過去最高。人口は過去7年間で2億人から2億2,400万人に増加。マレーシアほぼ一国分が生まれた格好だ。

もちろん日米欧の景気悪化でアジア経済の減速は避けられないだろう。だがマレーシアやフィリピン、タイなどは公共投資や減税を打ち出すなど金融危機の波及を警戒し始めている。

アジア新興国市場に着目し、企業はいち早く動き出している。「アジアでの売上高を世界全体の2%から10%に拡大する」(武田薬品工業)。世界経済が低迷するなかで、改めて「市場としてのアジア」に関心が集まっている。

(記事終わり)

それではこの記事の内容をデータで検証してみましょう。JETRO(日本貿易振興機構)のデータを抜粋して簡略化した表を作り、それをもとに日本の輸出先地域の円グラフを作成してみました。

日本の輸出相手国は、半分近くがアジアだとわかります。

 

2007年 日本の貿易相手 ~その1~  (単位:100万ドル)

 相手地域

 輸出

輸入

収支 

 アジア

 343,113

267,926 

75,187 

 北米

 153,903

80,857 

73,046 

 欧州

 112,492

72,510 

39,982 

 中南米

 35,063

24,117 

10,946 

 中東

 26,184

113,824 

-87,640

 大洋州

 17,891

35,529 

-17,638

 ロシア・CIS

 12,482

11,514

968 

 アフリカ

 11,602

14,770 

-3,168

 世  界

712,730

621,047

91,683

 

日本の輸出先地域 (その1)

さて、それでは貿易相手を下記の6つの国、地域に分けて再分析してましょう。

 

2007年 日本の貿易相手 ~その2~  (単位:100万ドル)

 相手地域

 輸出

輸入

収支 

 アジアNIES

159,581

55,541

104,040

 米国

143,383

70,836

72,547

 欧州

112,492

72,510

39,982

 中国

109,060

127,644

-18,584

 ASEAN4

59,085

70,791

-11,706

 その他

129,129

223,725

-94,596

 世  界

712,730

621,047

91,683

 

アジアNIES、ASEAN4、欧州の内訳は下記です。
アジアNIES・・・・・韓国、香港、台湾、シンガポール
ASEAN4・・・・・・・・タイ、マレーシア、フィリピン、インドネシア
欧州・・・・・・・・・・・・ロシアと旧ソ連邦国家を除く全欧州

日本の輸出先地域 (その2)

アジアNIES(韓国、香港、台湾、シンガポール)へ対する輸出は、米国や中国への輸出よりも多いことに驚きます。

それでは、今年2008年に入ってからの日本の貿易はどうでしょうか?同じくJETRO(日本貿易振興機構)のデータを編集して、簡素化した表を作ってみました。

 

2008年1月~9月 日本の貿易 対前年比 増加率

 相手地域

 輸出

輸入

 ロシア・CIS

71.3%

38.9%

 中 東

35.1%

69.5%

 大洋州

30.7%

40.8%

 中南米

21.2%

16.1%

 アジア

20.2%

18.0%

 アフリカ

19.1%

57.4%

 欧 州

14.5%

13.0%

 北 米

0.8%

15.3%

 世  界

16.8%

28.6%

 

金融危機に揺れる、米国への輸出を除けば日本の輸出は絶好調なことがわかります。

それでは、中国やアジアNIESやASEAN4に対する日本の貿易伸び率はどうなっているでしょうか?

 

2008年1月~9月 日本のアジア貿易 対前年比 増加率

 相手地域

 輸出

輸入

 中 国

22.6%

13.3%

 ASEAN4

21.8%

23.9%

 アジアNIES

16.1%

13.1%


日本株式会社の最大のお客様、アジア市場は絶好調の内需拡大を続けていることがわかります。米国は自国に信用力があるのをいいことに、「サプブライムローン」を証券化した「詐欺商品」を世界中に売りつけ、現在の金融危機という爆弾を世界中にばら撒きました。ばら撒いた先は、欧州が一番多かったようですが、今や世界中がその「とばっちり」を受けています。

この金融危機の根は深く、回復には時間がかかるでしょう。しかし、現在の日本は必要以上にその影に脅えている気もします。日本の金融機関のほとんどは健全な財務体質を持ち、製造業は相変わらず高い技術力を堅持しています。

需要爆発のアジア市場を隣に控え、今や日本企業の多くは新しいビジネスチャンスに遭遇しています。世界経済が大きく変動する時、それはまさに翻訳業界にとって千載一遇のチャンス到来の時期といえるでしょう。

トンネルの先は明るい

日経新聞の紙媒体に「大機小機」というコラムがあります。これは、「マーケット総合2」という比較的目立たないページにあるからでしょうか、いつもここでは率直な意見が述べられ、読んでいてとても興味深いと感じています。少なくとも「社説」や「特集」よりも記者が大胆に発言している気がします。

さて、本日(2008年10月31日)の「大機小機」には「トンネルの先は明るい」と題した、なかなか説得力のある前向きな意見が載っていました。

下記にその要旨をご紹介させていただきます。

(以下記事)

「最近、証券会社の店頭がにぎわっているようだ。口座を新規に開設する個人投資家も多いという。いわゆる専門家と称される人々が難しい顔をして思考停止に陥っているのとは対照的な動きだ。この行動は正解なのではないか。

(中略)

実体経済がどうなるかを考えるときに思い出すべきなのは、我々の記憶にある1980年代前半の『世界同時不況』だ。当時の不況の深刻さは、現在予測されている状況をはるかに超えていたのがわかる。

(以下の一部は私が箇条書きにまとめました)

・第二次石油ショックにより、欧米諸国が軒並みスタグフレーション(景気後退下の物価上昇)に陥り、深刻の度合いが増した。

・経済成長率は米国や英国など主要国でマイナスとなった。

・世界のGDPの70%を占めたOECD諸国全体でみても、82年にはマイナス成長を記録した。

・完全失業率は欧米主要国で10%を超え、先進国の失業者は3,000万人を上回った。

・インフレ率は日本以外の主要国で二ケタとなった。

・日本は欧米ほど失業率もインフレ率も上がらずに済んだが、戦後最長の不況を経験した。

・ほとんどの非産油途上国は成長へのきっかけもつかめないまま、累積債務の重みに押しつぶされようとしていた。

・まさに『大恐慌の再来』と言われたが、それでも米国を先導役にして世界経済は83年から回復を始めた。

それでは、今はどうか。いくつかの経済見通しが出ているが、当時ほどには深刻なシナリオは想定されていない。

(中略)

80年代と決定的に違うのは、中国やインドといった人口大国がしばらく前にテイクオフを果たし、しっかりした成長軌道に乗っているという明るい材料があることだ。

石油ショックに対して最も弱いといみられていた日本の企業は、80年代前半の同時不況後、省エネ技術とエレクトロニクス技術で世界をリードしたことは記憶に新しい。

経済史を正しく理解し、トンネルの先を冷静に見据えようではないか。」

(記事終わり)

私が翻訳業界に入った1981年4月は、まさにこの「世界同時不況」の真っ只中でした。

その後、1985年のプラザ合意後の円高ショックによる「円高不況」、1990年のバブル崩壊による壊滅的な「資産不況」、1997年の山一証券倒産パニックによる「平成不況」、2000年のITバブル崩壊による「IT企業不況」・・・・・・・。

思い返せば、「○○不況」といわれる時期が来るたびに、周りの競合他社が1社、2社、3社、4社・・・・・と勝手に脱落していきました。そして、気がついたら大手クライアントに入っているライバル企業の大半が消えてなくなり、やがて迎える景気回復時の仕事が、随分とやりやすくなっていたことが思い出されます。

経営者にとって、会社を成長させる「企業戦略」を持つことはもちろん重要ですが、同時にサバイバルゲームに勝ち残る「企業体力」を充実させる責務もあることは言うまでもありません。

日本が資源大国になる? メタンハイドレートの商業化

経済評論家今井徴氏の講演CD(日経ベンチャー2008年10月号)の中に大変興味深い話がありましたので、下記にその要点をご紹介させていただきます。

・ メタンハイドレート(天然ガスがシャーベット状になったもの)が、低温・高圧状態で日本近海1,000メートルの海底に眠っている。

・ メタンハイドレートを商業化するためには、1バレル当たり77ドルが採算ライン、と言われているが、近年の原油相場の高騰により、俄然現実味を帯びてきた。

・ 日本は世界有数のメタンハイドレート保有国で、世界の埋蔵量の半分が日本近海にあると言われている。

・ なかでも南海トラフと呼ばれる海域(静岡県から和歌山県沖)に大量に埋蔵されているので、他国との領域争いもない。

・ この8月、アメリカのエネルギー省と日本の経済産業省とが話し合い、共同でメタンハイドレートを商業化することが決まった。

・ 日本では、石油資源開発がその鉱区のほとんどをおさえている。また、三井海洋開発という会社がテスト用の色々な機器を作り、世界中へ販売している。

・ メタンハイドレートの生産開始は、20012年からで、本格生産は2018年からとなっている。

・ このプロジェクトが成功すれば、日本が資源大国に生まれ変わるばかりでなく、その生産技術や商業化技術を世界各国へ輸出するようになり、日本の経済構造そのものが大きく変わる可能性がある。

今井徴氏の講演は以上ですが、関連する記事が新聞にも出ていました。

「経済産業省は9月29日の総合資源エネルギー調査会石油分科会で、日本の領海と排他的経済水域(EEZ)での海洋エネルギー開発の骨子案を示した。石油・天然ガスでは、探査船を使って2008年度から11年間で約6.2万平方キロメートルを立体的に探査する。さらに有望な地点を選定し、機動的にボーリングを実施する。

次世代エネルギーとして期待され、排他的経済水域の埋蔵量も多い”メタンハイドレート”は2018年度までに技術整備や経済性、環境への影響を検証し、将来の商業化を目指すことを打ち出した。2015年度までアラスカなどの永久凍土地帯での陸上産出試験の継続なども盛り込んだ」
(2008年9月29日の日経新聞)

ところが、この夢のような話にもまだまだいくつかの問題点が残っているようです

『Nature』誌の2008年5月29日号に掲載された論文によると、メタンハイドレートは「石油に代わる新エネルギーとして期待される一方、地球温暖化を激化させる脅威をはらんでいる」(→メタンハイドレートの二面性)とのことです。

しかし、この「日本を資源大国へ変貌させる」、という夢の実現のためには、私自身も一人の日本人として、おおいに拍手をおくり、応援したいと思っています。

日本が持つ様々な省エネ技術や、海水を真水に変える技術、海の波を電気エネルギーに変える技術等々、エネルギーや環境に関する日本の誇るテクノロジーは、今後一層その輝きを増していくことでしょう。

また、このブログのなかでも再三指摘している、「食料」および「食料の安全性」に関る翻訳需要同様、「エネルギー」や「環境」に関する翻訳需要もきっと増え続けていくに違いありません。

非製造業の海外進出加速 07年度 対外投資35%増加

2008.8.11 NIKKEI NET

流通や運輸、通信など非製造業の海外投資が加速している。2007年度の対外直接投資額は約4兆3000億円と前年度に比べて35%増え、投資残高も約28兆円(07年末)に膨らんだ。

・・・・(記事の転載ここまで)

「非製造業の投資額はバブル期には、不動産投資などで年間6兆円を越えたが、2005年度は2兆円を下回る水準に落ち込んでいた」 (日経新聞の紙媒体)とのことなので、日本人がいかにバブル期に海外で騙され、海外の不動産を買い漁り、お金を失っていったかがわかります。

つまり、日本人に自国の不動産をたっぷり買わせたあとに、自国の法律を変えてお金を全部巻き上げてしまうという海外ではよくある、単純にして大掛かりな手口です。バブル期にオーストラリアのゴールドコーストあたりで、盛んに日本人がカモにされたと、後日大手都市銀行の幹部から聞かされたことがあります。海外事情に”うぶ”な日本人などは、”赤子の首をひねる”ように騙せたでしょう。

このように海外直接投資の中には、不動産投資も含まれるわけですが、海外子会社への出資や企業買収など”事業目的への投資”が本来の中心的な中身となります。

さて、製造業が新興国に工場を建てて投資するのはよくある話ですが、”非”製造業が盛んに海外へ投資しているとは、一体どういうわけなのでしょうか?

流通、運輸、鉱業、通信等の内需型産業が少子高齢化の進む国内市場に見切りをつけて、活路を新興国へ求めていることは明らかです。また、海外へ進出した日本企業相手のビジネスも当然視野に入っているでしょう。

2004年(平成16年)の国内総生産に占める第二次産業の割合は、25.7%、第三次産業の割合は73.1%となっています。(→ 2007年度版「ものづくり白書」と翻訳業界

GDPの7割以上を占める日本の非製造業ですが、「それでも日本の非製造業の海外事業の規模は欧米と比べなお低水準だ。対外直接投資残高のうち非製造業が占める割合には日本は45%だが、米国やドイツなど欧米主要国は全体の70~80%」(日経新聞の紙媒体)とあります。

また、「新興国ではサービス業などの外資規制が厳しく、収益につなげるには通商交渉による投資の自由化も欠かせない」(同)ともあります。

要するに、企業の努力だけではなく、日本の政治力が求められるということでしょうか?

またぞろ、バブル期における日本人の海外不動産投資の悪夢が再現されないようただただ祈るばかりです。

いずれにせよ、日本の翻訳業界には製造業に関係する技術文書だけでなく、非製造業にまつわる様々な関連文書の需要が増加していくことでしょう。

原油価格と翻訳業界

昨今の世界経済の一番の話題は、なんと言っても、原油価格の急上昇でしょう。

まずは過去に2度あったオイルショックをふり返ってみます。

第一次オイルショック ・・・・・ 1973年10月(約$3/バレル) → 同年12月(約$12/バレル)
2ヶ月あまりの間に原油価格が約4倍

第二次オイルショック ・・・・・ 1979年2月(約$18/バレル) → 翌年9月(約$39/バレル)
1年半ほどの間に原油価格が約2倍

しかし、その後の原油価格の歩みは実に奇妙です。1980年以降はほぼ一貫して下がり続け、その後長期低迷します。なんと1998年は約$12/バレルにまで下がり、第二次オイルショック後の最高値を更新するまでには、なんと25年以上もの年月を費やすことになります。

oil graph
<グラフの出所:過去の原油価格・ガソリン価格の推移からみた限界点の考察

一方、第二次オイルショック後の米国の名目GDPはどうだったでしょうか?

1980年実績   27,900億ドル  (出所:世界各国のGDP上位60

2008年見通し 148,430億ドル (出所:2007-2008米国経済見通し

つまり、25年間低迷していた原油価格を尻目に、その間の米国の名目GDPは、5.3倍も拡大しています。

それでは原油価格はどこまで上がるのでしょうか?

1970年代のオイルショック時 ・・・・・ 1972年(約$1.9/バレル) → 1980年(約$39/バレル)
8年間で約20倍

今回のオイルショック      ・・・・・ 1998年(約$12/バレル) → 2008年(約$147/バレル)
10年間で約12倍

今回のオイルショックが「まだまだ甘い」と言うことがよく分かります。

また、米国GDPとの関係で見てみると、1980年の5倍ほどになると考えれば、$180~$210/バレルまで上がることになります。

もちろんこれは、米国GDPとの関係だけからみた私の”推論”であり、このような発言をしている専門家はどこにもいません。素人だからこその奇想天外な発想(無責任ですみません)とお考えください。

今世界では、原油価格が”異常に暴騰”していると騒いでいますが、25年間米国に抑圧されていた中東諸国の原油価格が、先進諸国の成長度合いに合わせて、遅ればせながら補正されつつあるとも考えられます。

石油の専門家の中には、「現在の原油マーケットには大量の投機マネーが流れ込んでいるだけなので、近いうちに大暴落する。石炭や天然ガスや原子力発電のコストとの兼ね合いで考えれば、バレル50ドルくらいが妥当」と主張する人もいます。

さて、現在の原油高騰は、わが翻訳業界にどのような影響を与えるのでしょうか?歴史から学ぶ必要があります。

70年代のオイルショック後、日本企業は猛烈な省エネと人員削減に取り組みはじめました。それにより、製造業は世界最強の省エネ、省コストの製造方法を生み出し、かつ、オフィスオートメーション、ファクトリーオートメーションの需要が、コンピュータ業界、ソフトウェア業界を飛躍的に発展させることになったのです。

今回の”ニューオイルショック”は、一時期の勢いを失いつつある世界中のIT産業を再び活性化させるでしょう。また、現在の日本の”省エネ技術という知的財産”も、そう遠くない将来、”輸出の花形”へと変貌していくでしょう。

世界で最も話されている言語、中国語

2008.6.23 中国情報局

世界各国で話されている言語は大きく分けると、およそ100言語ほどだと言われている。最も多くの国で使用されている言語(公用語、準公用語を含む)は英語であるが、最も多くの人が使用している言語は中国語である。第2言語として使用している人口も含めるとおよそ14億の人口を擁するといわれている中国語に迫る。

・・・・(記事の転載ここまで)

数十年前までは、世界で一番話されている言語は”スペイン語”だという説がありましたが、それはまだ中国が秘密のペールに覆われていた時代の話でしょう。現在において第一言語(母国語)として一番多く使われている言葉は、まちがいなく中国語でしょう。

中国の人口は公称13億で、そのほかにも戸籍に載っていない人の数が1億人以上いると言われています。また台湾は人口2,300万人ですが、世界各地の”華僑”の数は日本の人口を上回っているとさえ言われています。

ちなみに”Wikipedia”のデータによると、スペイン語の総話者数は、3億3000万人(第二言語話者を含めると4億1700万人) 、英語は母語として約3億8000万人(第二言語として約6億人、外国語として10億人以上)だそうです。

アメリカ合衆国の人口だけですでに3億人を突破していますから、英語を第二言語とする人達や、英語を学習する人達までをも含めれば、総数が20億人に達するという説には説得力があります。しかし、あくまでも”母国語”という観点で考えれば、やはり世界最多の話者数を持つ言語は中国語と言えるでしょう。

それでは、インターネットで使用されている言語の比率はどのくらいなのでしょうか?
下記の表は、2004年 9月における言語毎のオンライン人口を示したものです。
(Wikipediaの 「インターネットにおける言語の使用」より。オリジナルデータは、”Global Reach”)

第1位 英語     32.5%
第2位 中国語    13.7%
第3位 スペイン語  19.0%
第4位 日本語     8.4%
第5位 ドイツ語    6.9%
第6位 その他    29.5%

2004年のデータでは、やはり英語が一番多いようです。しかし最近の新聞報道によると、「中国のネット利用者数はすでに米国を抜き世界一」と言われていますから、インターネットの世界でも中国語が英語を抜き「世界最多の言語」となる日も近いのかもしれません。

さて、ここで興味深いデータがあります。

世界中のブログで使われている言語は日本語が一番多い

というのです。日本語が37%で1位。英語は36%で2位。3位は中国語で8%。英語圏の有名ブログが日本語版を開設する理由はこのあたりにありそうです。ただしこれはブログ数ではなくて「記事の投稿数」なので、正確には「ブログ投稿数は日本語が世界で一番多い」ということになりますが。

それにしてもなぜでしょうか?私が想像するに、日本は携帯電話を使ってブログへ書き込みをする人たちがとても多いので、きっと1行、2行の簡単な書き込み数も含まれている、ということなのでしょうか。

さて、話は戻りますが、世界で最も話されている言語は中国語ですが、「中国語には沢山の方言があって、それぞれがまるで外国語のように違う、だから中国語を一つの言語と考えることはできない」とお考えの方もいるでしょう。

確かに中国語には多くの方言があり、なかでも5つから7つに分類される「大方言」があります。実際各方言の違いは著しく、同じ中国人同士でもまったく話が通じないというケースがあるようです。しかし、中国政府が普通話(標準語)による学校教育を普及させたため、現在ではほとんどの中国人が普通話を理解するそうです。つまり家庭内では方言を使いますが、学校や公の場では普通話を使うわけです。

また、現在、中国大陸と台湾・香港で使われている文字は異なります。基本的に大陸の新聞や雑誌などは「簡体字」を使います。一方、台湾・香港は「繁体字」を使います。1950年代の文字改革の時、使用頻度が高くかつ画数の多い517の漢字が選ばれ「簡体字」となりました。つまり繁体字を簡略化したものが簡体字なのです。それから半世紀以上の年月が経過した現在では、大陸の人達が台湾・香港の書籍を読むと多少の違和感を持ちます。また逆に台湾・香港の人たちが大陸の書籍を読む場合も同じです。しかし、多少違和感があってもなんとなく理解できるのは、漢字の不思議なところです。

自動車輸出23年ぶり最高 08年度計画700万台

2008.6.3 NIKKEINET

自動車メーカー12社合計の2008年度の輸出台数が約700万台に達し、23年ぶりに過去最高を更新する見通しになった。

・・・・(記事の転載ここまで)

日経新聞によると「輸出台数のこれまでのピークは日米自動車摩擦が激しくなった1985年度の685万台。2008年度の12社の輸出計画はこれを上回る」とのことです。

不思議な気がしませんか?急成長した日本の自動車産業の輸出台数が過去23年間低迷していたなんて。

この新聞記事ではとりあげていませんが、輸出台数が増えていないのに自動車メーカーの業績が伸びている理由は簡単に想像がつきますよね。

単純明快! 海外で生産した車を海外で販売しているワケです。これは翻訳会社にとってはあまりうれしくない話なのですが・・・・。

日本自動車工業会の資料によると、日本の自動車メーカーの海外生産台数は1985年に約90万台だったものが、2006年には約1,100万台へと実に12倍以上にも拡大しています。

つまり1980年代初め、日米貿易摩擦でバッシングを受けた日本の自動車メーカーは、一所懸命に現地に工場を建て、現地の従業員を雇用し、米国に税金を支払って共存共栄をはかってきたわけです。

ところで、「日本の貿易摩擦の元凶は自動車輸出」と思っている人は多いのではないでしょうか?

私は過去にこのブログの中でも何度かこの話題を取り上げてきましたが、日本の輸出の主役は自動車や家電品などの耐久消費財ではなく、資本財(クレーン、金属・工作機械など設備投資に向けられる機材)なのです。

2007年の日本の全輸出に占める耐久消費財の割合は19.4%で、うち乗用車の比率は15.1%にすぎません(⇒JETROの統計より)

日本の輸出拡大や貿易黒字が問題になるたびにテレビのニュース番組は、必ず港で船積みされる乗用車の映像を繰り返し背景に流します。

まるで「日本の貿易摩擦の元凶は自動車輸出」だと言わんばかりです。

これはデータの裏づけもなく、感覚で大衆をミスリードする日本のマスコミの象徴だと私は考えています。

世界各国の特許等使用料の収支

財団法人 国際貿易投資研究所 国際比較統計のデータを編集して下記の表を作成してみました。

日本の特許収支の黒字が2006年暦年で過去最大の約46億ドル(当時の為替相場で約5,358億円)となり、アメリカに次ぐ世界2位の黒字国に浮上しました。

大変喜ぶべきニュースなのですが、「これはただ日本企業が海外子会社から受け取る特許料が増えただけ」と指摘する声もあり、手放しで喜ぶわけにはいかないようです。

また、黒字額を対GDP比で比べてみると、スウェーデンの0.6%に比べて、日本の0.11%は明らかに見劣りします。

さて、これらの統計を編集してみて、気がついたことを下記に列挙してみます。

1. 特許等使用料の世界収支が、2006年で161億ドル以上という巨額の赤字となっています。世界収支が赤字というのも奇妙な話なので、(財)国際貿易投資研究所へメールにて問い合わせをしたところ、下記のような返事をもらいました。

(返事始まり)
統計の精度やタイムラグ等、さまざまな要因から、実際に計算した結果は一致しないのが現実となっています。特許等使用料の場合を例にとると、受取り額を公表している国。支払い額を公表している国収支のみを公表している国など、発表している国数が異なります。

世界中の国地域が200前後の数が在るのに対し、特許等使用料の公表国は110を前後ですので、集計可能な国で計算するとどのような金額になるのかを示しています。

そこで、WORLDには集計可能な国数を表示してあるのは、そのためです。これは、当研究所のホーページ国際比較統計のWORLDに国数を示しているのは、掲載時に集計計算が可能な国のみを対象に作成する方法を採用していることを示しています。
(返事終わり)

つまりどこかの国に巨額の黒字が隠れ、表面に出てきていないということになります。

そんなことが本当にあるのでしょうか?その答えのひとつに下記の問いかけがあると私は推測します。

2. 「黒字国TOP10」の6位にアンゴラ、9位にパラグアイが入っています。このような発展途上国がなぜ黒字国となっているのでしょうか?

調べてみると「特許等使用料の定義」は、「居住者・非居住者間の特許権、商標等の工業所有権、鉱業権、著作権などに関する権利の使用料、~」とあります。

つまり、アンゴラやパラグアイはきっとこの「鉱業権」の対価をもらっているに違いないと私は考えます。

そのため巨額の「鉱業権」を先進国からもらいながら、その統計もよく把握できない発展途上国が数多くあり、「世界の特許等使用料の国際収支」が巨額の赤字になっているのだろうと、私は推測します。

<世界各国の特許等使用料 黒字国 TOP10   単位:100万ドル>

順位

国 名

1980年

1990年

2000年

2005年

2006年

 

 world

 1,794

2,595

▲5,315

▲13,375

▲16,142

 

 (国 数)

(52)

(69)

(122)

(129)

(112)

 1

アメリカ

6,350

13,500

26,765

34,777

35,945

2

日 本

▲980

n.a.

▲780

3,002

4,595

 3

イギリス

210

▲520

1,515

4,336

3,626

 4

 フランス

▲532

▲334

277

3,123

2,932

 5

スウェーデン

▲114

▲180

375

1,969

2,346

 6

 アンゴラ

n.a.

n.a.

10

46

1,338

 7

 ベルギー

n.a.

n.a.

n.a.

311

468

 8

 オランダ

▲225

▲ 666

▲334

175

261

 9

 パラグアイ

n.a.

76

194

217

234

 10

ルクセンブルグ

n.a.

n.a.

12

147

212

「特許黒字」のTOP5(2006年暦年)

 

黒字額

名目GDP

GDP比

アメリカ

359億ドル

131,947億ドル

0.27%

日 本

46億ドル

43,664億ドル

0.11%

イギリス

36億ドル

23,985億ドル

0.15%

フランス

29億ドル

22,480億ドル

0.13%

スウェーデン

23億ドル

3,930億ドル

0.60%

<世界各国の特許等使用料 赤字国 TOP10 + 注目国   単位:100万ドル>

順位

国 名

1980年

1990年

2000年

2005年

2006年

1

アイルランド

n.a.

▲553

▲7,691

▲18,450

▲19,788

2

シンガポール

n.a.

n.a.

▲4,959

▲8,317

▲9,739

3

中 国

n.a.

n.a.

▲1,201

▲5,164

▲6,430

4

カナダ

n.a.

n.a.

▲1,510

▲4,028

▲4,075

5

韓 国

▲99

▲1,327

▲2,533

▲2,652

▲2,477

6

台 湾

n.a.

▲461

▲1,463

▲1,562

▲2,077

7

タ イ

▲30

▲170

▲701

▲1,657

▲1,999

8

ドイツ

▲840

▲1,810

▲2,763

▲438

▲1,956

9

ロシア

n.a.

n.a.

23

▲1,333

▲1,703

10

オーストラリア

▲205

▲664

▲788

▲1,452

▲1,600

           

12

ブラジル

▲26

▲42

▲1,289

▲1,303

▲1,513

           

17

インド

▲12

▲71

▲200

▲636

▲837

           

20

イタリア

▲355

▲919

▲635

▲811

▲725

           

24

フィンランド

▲84

▲266

321

83

▲407


3. 赤字額で言えば、やはりBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)の存在感がより強まってきています。

4. 意外なことに、あの先進工業国ドイツや豊富な歴史的遺産や高級ブランド品を多く持つイタリアが、大幅な赤字国となっています。

5. 教育国として最近脚光を浴びているフィンランドも赤字国へと転落しているのは、とても興味深いところです。

いずれにせよ、”感覚”ではなく”数字による客観的データ”をもとに、科学的に考えていかなければ真の姿は見えてこない、ということが改めてよくわかります。

ソフトバンク、中国ネット大手を傘下に・最大市場に攻勢

2008.4.30 NIKKEI NET

ソフトバンクは中国のインターネット大手、オーク・パシフィック・インタラクティブ(OPI、北京市)を傘下に収めることで同社と合意した。約400億円で株式の40%を取得、経営権を握る。急成長する中国ネット市場で携帯電話経由の情報提供など新サービスの拠点とする。中国のネット人口は今年、2億2000万人超と米国を抜き世界最大に浮上する。国内大手のミクシィや米グーグルなど米国勢も事業展開を加速しており、巨大市場を巡る攻防が激化する。

・・・・(記事の転載ここまで)

本日(2008年4月30日)の日経新聞紙媒体の1面トップはこの記事でしたが、例によってネット上に配布される記事は”無料”のため、詳細情報は載っていません。

したがって紙媒体からいくつかの情報を拾って下記に載せておきます。

1. OPIが運営するSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)「校内網」は、約2,200万会員を持ち、利用者数は日本国内最大手ミクシィの約1,300万人を上回る。

2. OPIの業績は非公開だが、毎月200万人が加入する巨大メディアに育っており、将来の株式上場をにらんで投資ファンドも出資している。

3. ソフトバンクは中国で約30%出資するアリババグループを通じ企業間電子商取引のシェア70%、消費者間競売サイトの80%を握る。OPIへの出資で主要なネット関連事業の布陣が整う。

4. 世界のネット大手はM&A(合併・買収)を加速している。

・ 今年3月には、米タイムワーナーのネット部門AOLが英SNS「ビーボ」買収を発表。
・ 米ニューズコーポレーションなどもSNS大手に出資している。
・ 米マイクロソフトが米ヤフーに買収提案をしている。
・ 米グーグルは中国のネット企業に出資するなどアジアへの攻勢を強めている。
・ 日本の大手SNSミクシィは、今春中国の上海に子会社を設立。
・ 日本のネット広告会社サイバーエージェントも中国のSNS「愛情公寓」の運営会社に出資している。

紙媒体からの情報は以上です。

さて、かねてより個人ユーザーが情報発信する際に用いる機器はPCからケータイへ、手段はブログからSNSへ移行すると言われていましたが、その動きが世界的な規模で始まっていると感じます。一般消費者をターゲットとした広告などは、益々その傾向を強めていくことでしょう。

私自身数年前からミクシィを始めましたが、確かに趣味や地域や出身校など限定された世界での情報交換や友達つくりにはとても役に立つ”社交場”だと感じます。

しかし、先日ミクシィ社長笠原健治氏の講演を聞いたところによると、ミクシィ加入者の73%が20歳代以下で、34歳まで含めると実に87.3%を占めるとのことでした。

現在においてはまだまだ若年層の”遊び道具”の域を出ていないのかもしれません。しかし、あの”ファミコン”も最初は”子供のおもちゃ”でしかなかったものが、今や世界を巻き込む一大産業に育っているわけですから、SNSも将来どう化けていくのかが楽しみです。

なによりも”言葉”を操る”遊び道具”ですから、当然そこには翻訳の需要も発生し、何らかの形で新しいビジネスチャンスが発生してくることでしょう。

さて、米国において最も人気の高いWebsiteは何でしょうか?
米国Hitwize社が調べた、訪問者数が最も多いサイト(2008年3月)の一覧が下記です。

当然第1位は、”Google”だと想像できますが、世界最大手のSNSである”MySpace”が堂々の第3位に位置し、第9位にも現在最も伸び盛りのSNS、”Facebook”がランクされています(わかりやすいように緑色の矢印をつけておきました)。

Top Website
http://www.hitwise.com/datacenter/rankings.php

また、同じくHitwiseからの資料ですが、米国SNSの上位10サイトのマーケットシェアを示したものが下記です。右端は「対前年比」ですが、既述の”Facebook”のほかに、”Club Penguin”や”myYearbook”なども現在急成長していることがよく分かります。

Top10 SNS
http://www.hitwise.com/press-center/hitwiseHS2004/social-networking-visits-in-2007.php

東芝、原発1兆4000億円受注・米で4基、WH買収後最大

2008.4.3 NIKKEI NET

東芝が米国の電力会社2社から計4基の原子力発電所を総額約1兆4000億円で受注することが2日、明らかになった。傘下の米ウエスチングハウス(WH)の新型軽水炉が採用される見込み。2006年にWHを買収してから最大規模の受注となる。東芝は先に米国で8000億円の原発受注も決めており、新設ラッシュが続く米国市場で攻勢を強める。世界最大の市場である米国での実績をてこに、新興国を含めた原発事業の世界展開を加速する。

・・・・(記事の転載ここまで)

この件に関しては、このブログの中で過去に2回とりあげています。

2007.6.27 「東芝がアメリカの原発受注、総事業費6000億円」

2007.3.20 「原子力白書、情報公開徹底求める」

本日(2008年4月3日)の日経新聞(紙媒体)の記事に、世界の原発メーカーの状況が分かりやすく書かれています。下記に私が作成した「世界の原発大手の提携関係」の図を載せておきますので、ご参照ください。

genpatsu

図の中にある、「PWR方式」と「BWR方式」とは、原子炉の種類のことです。原子炉は、加圧水型軽水炉(PWR)と沸騰水型軽水炉(BWR)に大別されるのですが、現在では「PWR方式」が主流になりつつあります。その理由は、「BWR方式」は建設費は割安なのですが、放射能の管理が難しいと言われているからです。

目下、この「PWR方式」を提供できるメーカーは、世界広しと言えども、アレバと東芝傘下のウェスチングハウス(WH)、三菱重工業の3社しかありません。

アメリカでの同時多発テロ(9.11)後の石油価格の暴騰と中東情勢の不安および世界的規模でのCO2排出規制の流れで、今後世界における原発需要は膨大なものがあります。

米国だけでも、今後20年間に約30基の原発を建設する計画があります。その他、ロシア、中国、インド、南アフリカ、日本等の国々の計画も含めれば全世界で100基は優に超えるでしょう。

原発プラントを1基建設するのに、最低でも2,000億円は下らないと言われていますから、今後、すさまじい特需がこれらの原発メーカーに舞い込むことになります。

いずれにせよ、世界の原子力発電所の行方は、日本企業の手にゆだねられている、と言っても過言ではないでしょう。

言うまでもなく、関連する翻訳需要も膨大なものがあるはずです。

日本は「貿易立国」のウソ

日本は「貿易立国」・・・・・・・・これは「日本の常識」と、考えている人は多いのではないでしょうか?

下記の表を見てください。諸外国に比べると、”日本経済は輸出に依存していない”ことがよく分かります。

各国の輸出依存度


この表には出ていませんが、世界貿易機関(WTO)や国際通貨基金(IMF)の2006年データで、G7(先進7ヶ国、日本、米国、英国、フランス、イタリア、カナダ、ドイツ)の輸出依存度の平均値を調べてみると”22%”となりました。日本は14.8%で7ヶ国中6番目で、日本を下回る国は、米国しかありません。

”自給自足できる大国”の米国はともかくとして、日本の輸出依存度はかなり低く、とても「貿易立国」などと呼べる状況ではないことがわかります。

それでは、昔の日本はどうだったのでしょうか?

下のグラフを見てください。近年日本の輸出依存度が急激に高まってきているのがわかりますが、それでも1985年9月のプラザ合意直前の水準、15.1%のレベルにやっと戻っただけ、ということが分かります。

つまり、プラザ合意による急激な円高により、日本の輸出依存度も急降下しましたが、その後の世界経済の成長と日本経済の停滞(デフレ)により、実効レートで考えた場合、”円は安く”なっていて、プラザ合意の頃とほぼ同水準になっている、とも考えられます。

長らく翻訳業界にいる方々は、このグラフを見て感じることはありませんか?

日本の輸出依存度が10%前後の時代は、英文和訳(英日翻訳)の時代、それを大きく上回るときは、逆に和文英訳(日英翻訳)の時代と言えるのではないでしょうか?

日本の輸出依存度


もうひとつ、貴重なデータがあります。

【2006年、日本の地域別輸出先】
米国向け・・・・・・22%
中国向け・・・・・・14%
新興工業経済地域(NIES)向け・・・・・23%
東南アジア諸国連合(ASEAN)向け・・・・・12%

【1985年、日本の地域別輸出先】
米国向け・・・・・・37%
中国向け・・・・・・ 7%

つまり、いよいよ本格的に”英語+アジア各国語”の時代が始まった、と言えるでしょう。

大雪と中国経済

最近の日本における中国関連のニュースは、”毒入りギョーザ”ばかりが注目され、同じくらい重要なニュースがあるのにもかかわらず、あまり熱心には報道されていません。

現在中国は2つの”憂鬱”を抱えています。ひとつは、サブプライムに揺れる米国経済、もうひとつは50年ぶりに中国を襲った大雪です。

米国は1600億ドル(18兆円)に上る財政出動の政策パッケージやFRBの大幅な利下げにより、深刻な経済危機を打開しようとしています。

米国は世界の消費市場の20%を占める、巨大な消費マーケットですが、特に中国から多くの製品を輸入しています。たとえば世界最大の小売業ウォルマートの商品の70%は中国からの輸入品だと言われています。

実は現在の中国は、日本以上に輸出に頼る経済構造になっています。2006年の日本の輸出依存度(財の輸出金額/名目GDP)は、14.8%ですが、中国は36.9%も占めているからです。

それともうひとつの問題が、この冬に中国中南部を襲った50年ぶりの大雪です。鉄道も飛行機もストップし、港湾では荷役が滞留、道路は大渋滞で、中国の発電の85%を占めるといわれる石炭の輸送ができず、在庫が底をつき、発電所の操業が停止され、大規模な停電が発生しました。

そのため野菜を初めとする食料品の価格が大暴騰しているのにもかかわらず、日本向け冷凍食品は、毒入りギョーザのおかげで完全にストップし、輸出価格は大暴落しています。

2月7日に始まった春節(旧正月)の帰省ラッシュも完全にストップしました。広東駅だけでも18万人が野宿を余儀なくされた、という報道もされています。

また、中国へ進出している日本企業も部品を調達できなくなったため、工場の操業停止を余儀なくされています。

このように中国経済の60%を占めるといわれる揚子江以南の地域が雪のため大混乱に陥り、今年1月中旬から2月上旬の経済活動の停止により、1-3月期の中国経済に大打撃を与える、と考えられています。

今年2月の上海証券取引所の株価は、昨年11月に比べて30%も大暴落しています。「今年8月の北京オリンピックまでは、なんとか持ちこたえる、大丈夫」という声もありますが、「はたして本当にそれまで持つのか?」という声も上がってきています。

現在、日本にとって最大の貿易相手国である中国とアメリカの経済に暗雲が漂い始めたということは、われわれ翻訳業界にとっても見過ごすことのできない”きざし”と言えます。

アメリカの粉飾決算と日本の美点

今から6年以上も前になりますが、2001年12月、アメリカのエンロンが破綻しました。負債総額は3兆7,200億円から4兆8,000億円と言われ、未だはっきりしていません。その8ヶ月後の2002年7月、今度はワールドコムが、米国史上最大の資産(12兆4,000億円)を抱えたまま破綻しました。負債総額は、4兆7,000億円でした。

その後両社とも粉飾決算の実態が次々と明るみに出て、結局、ワールドコムの経営責任者は、懲役25年の実刑判決を受け、エンロンの経営責任者は、判決を受ける前に病死しました。巨大企業のトップに立ったことのある人間にとっては、あまりにも悲しい末路となりました。

現在アメリカでは、上場企業のCEO(最高経営責任者)やCFO(最高財務責任者)は、決算報告書をSEC(証券取引委員会)へ提出する際に「もしこの報告書に粉飾があったら、裁判抜きに26年間の実刑に服する」旨の誓約書にサインをさせられるそうです。現在ニューヨークの隣の州、ニュージャージー州にそのための刑務所が完成しているそうです。現在はまだ空き家だそうですが、そこに収監される”犯罪者”が出てきたら、アメリカ中の経営者が震えあがることでしょう。

これ以外にも、”株主代表訴訟”という足かせがあります。今まさに話題になっている、マイクロソフトによる米国ヤフーの買収問題ですが、ヤフーの行う株価吊り上げの駆け引きが裏目にでれば、「ヤフー取締役会は引き続き役員報酬を得るために、マイクロソフトとの交渉を怠り、保身に走った」と、株主代表訴訟を起こされかねないのです。

巨額の役員報酬を得るアメリカの経営者達は、とかく非難されがちですが、その分責任も非常に重い、というわけでしょうか。私の目から見ると、アメリカという国はなにごとによらず、たいていの場合、「決断が早く、実行も早く、画期的で、過去やしがらみにとらわれない」という美点とともに、「良いも悪いもとにかく極端」というようなイメージが付きまといます。

その点日本という国は、「決断はせず、実行もせず、前例や慣習を重んじ、常に周りの顔色をうかがってから集団で動く」ので、良きにつけ悪しきにつけ”格差”が生まれず、また”格差”を忌み嫌うため、”みんな同じ”という安心感とともに気楽に暮らせる、という”美点”があるようです。

日本列島に日本人だけで暮らしている間は良かったのですが、グローバリゼーションの進む21世紀に、外資による買収を”黒船”と恐れたり、海外からの移民をほとんど受け付けないという”日本列島孤立主義”では、日本そのものが生きていけない、と早く気がついて欲しいものです。

Microsoft の Yahoo 買収問題を考える

米国マイクロソフトが446億ドル(4兆7,500億円)で米国ヤフーを買収したいと表明しました。この問題は過去に何回か表面化しては消え、表面化しては消え、を繰り返してきたのですが、今回のマイクロソフトの態度表明には、相当な意気込みを感じます。

かねてより私は、「検索エンジンを制する者は21世紀を制す」と言い続けてきたのですが、今回の”事件”は、その言葉を裏づけるような重みを持っています。

膨大なキャッシュを保有する”超優良企業”マイクロソフトが、創業以来続けてきた無借金経営を捨て、多額の借金をしてまで「ヤフーが欲しい」と叫ぶ背景には、いったい何があるのでしょうか?

創業者のビル・ゲイツ氏がいみじくも言い放った「マイクロソフトにとって、創業以来最大の脅威は、IBMではなく Google だ」という言葉に、その全てが凝縮されています。

Googleは、すでに表計算ソフトやワープロをネット上で無料提供するサービスを始めていますが、近い将来、OS(基本ソフト)もアプリケーションソフトもそのほとんどが、タダかタダ同然で世の中へ提供される時代が来るでしょう。現在発売されている、アップルの新しいノートPC”MacBook Air”などは、DVD・CDドライブを捨て、アプリケーションソフトを他のPCから、ワイヤレスでインストールするという新しい発想を採用しています。

これなどは将来、すべてのソフトウェアをWeb上からダウンロードしてインストールする、という発想に近づいているのかもしれません。コンピュータはただの”箱”だけでよい、中身はすべてネット上からダウンロードする、というコンセプトです。OSとアプリケーションソフトを収益の柱としているマイクロソフトにとっては、当然死活問題となります。

それでは、無料サービスを提供するGoogleは、いったいどうやって利益をあげようというのでしょうか?その答えの一つは「広告料収入」であり、もう一つは「マーケティングビジネス」と言えます。

2006年3月、ソフトバンクは社運をかけて、ボーダフォンを1兆7,500億円という膨大な金額で買収しました。ソフトバンクの孫正義社長は、配下に抱えるヤフージャパンの持つ、優良なコンテンツを使って差別化を図れば、勝算あり、と考えたに違いありません。

実際、今から数年以内には、日本の携帯電話の通話料金は全て”無料”になるはずです。”無料”といっても基本料金だけの定額制ということですが、現在のインターネットが24時間使い放題と同じことです。

それでは、通信会社であるソフトバンクはどこで儲けるのでしょうか?これも同じく、一つは「広告料収入」であり、もう一つは「マーケティングビジネス」と言えます。

現在Googleとマイクロソフトは、先を競い合って、世界中の図書館のありとあらゆる本を、スキャナーで読み取り、デジタル化しています。優れたコンテンツをより多く抱え、検索し、整理する能力をもった検索エンジンが世界を制するからです。

検索エンジンはコンピュータの中だけでなく、携帯電話、デジタル家電、カーナビ、放送局、図書館、その他ありとあらゆるところに進出し、情報を検索し、整理をはじめます。

将来、車を運転して見知らぬ土地へ出かけると、通りかかった近くのスーパーの特売情報がカーナビに現れ、ラジオからは私のお気に入りのクラシック音楽が流れて、携帯電話のメールには、私の大好きなイタリア料理を紹介する、最寄のレストランメニューが配信されることでしょう。

知らず知らずのうちに、プライベート情報が提供され、その見返りとして、無料サービスという対価を得ることになるのです。

朝日・読売・日経よみくらべ 新’s あらたにす登場

この件については、このブログの中で、過去に2回ほど触れました。

2007年4月17日  「国内ネット広告費、5年後は2倍の7558億円に」

2007年9月27日  「朝日・読売・日経3強連合の動き、毎日・産経追い落としなのか?」

上記2つのブログの中では、日本のマスコミの大いなる問題点を指摘したわけですが、その「大新聞社系列のマスコミ」が今、インターネットの出現に恐れおののき、3社連合を「あらたにす」という形で成し遂げました。

当然のことながら、ネット上の新聞記事は、お金を払って購入する紙媒体よりも、圧倒的に情報量は少ないのですが、今回の「あらたにす」では、各社の社説は全文が掲載されているので、読み比べもでき、その点では便利でしょう。また、何を一面に持ってくるかなども比較でき、その点でも興味深いものとなっています。

ただ、この件で、「ナベツネ」こと、渡邉恒雄氏(読売新聞グループ本社代表取締役会長)のことを思い出しました。昨年、ライバル紙、日経新聞の「私の履歴書」に彼が登場したときには、大変に驚いたのですが、若い頃の”大志と高尚な理想を抱いたひとりの青年、渡邉恒雄”が年とともに変わっていく様がよくわかり、とても興味深い「履歴書」でした。もしかしたら彼自身、それに気づかずに書いていたのかもしれませんが。

”青年期以降”の記者、渡邉恒雄氏は、ライバル紙との「特ダネ獲得競争」や「社内の出世争い」に熱中、奔走し、ただ単に「いかにライバル紙を出し抜くか」とか、「いかにライバル紙に特落ちさせられたか(他社がスクープしている記事を載せられなかったこと)」に終始し、若き日の彼が抱いていた「国家・国民のために」とか「正義感から不正を正す」とか「弱者の声を代弁する」とか「理想の社会を実現するために」とかの観点が、完全に忘れ去られていました。

昨年12月、アメリカでは全米第1位の新聞社”ダウ・ジョーンズ社”が、あのルパード・マードック会長率いる”ニューズ・コーポレーション社”に買収されました。日本風に当てはめて考えれば、”読売新聞社”が”ソフトバンク社”に買収されたようなものです。また、全米第3位のトリビューン社は個人に買収されたくらいですから、もうアメリカで新聞ビジネスは、すでに破綻していると言っても過言ではないでしょう。したがって現在米国では「電子ペーパー」による新聞販売を真剣に模索しています。

今回の「あらたにす」も企画自体は結構なのですが、マスコミが本来持つべき使命を忘れずに運営してほしいものです。ただ実際には、読売1,000万部、朝日820万部、日経300万部という、「旧共産圏なみの新聞発行部数」と「記者クラブ制度」そのものに病巣があるわけですから、かつての国鉄や電々公社や専売公社のようにはやく分割し、その根本から変えていってほしいものです。

日産・東洋エンジなど、アジアで技術者大量採用

NIKKEI NET 2008.1.28

自動車、機械など製造業各社がアジアの新興国で技術者を大量採用する。日産自動車はインドとベトナムで今後3年程度をめどに4000人を新規採用、技術者の海外比率を2倍の約4割に引き上げる。東洋エンジニアリングはインドの設計人員を1000人増員した。団塊世代の退職や少子化による国内の技術者不足に対応し、豊富な人材を抱える新興国を製造だけでなく「頭脳」の拠点にも活用する狙いで、雇用のグローバル化が加速する。

・・・・(記事の転載ここまで)

サブプライム問題で世界中の金融機関が萎縮するなか、製造業が元気です。特に日本の製造業は、独自の技術でまだまだ世界の”ものづくり”をリードしていくでしょう。

米国ボーイング社の次世代中型旅客機、”ボーイング787”は、未だ試作機が完成していないにもかかわらず、ふれこみだけで既に1,400機の受注をとりつけているそうです。これは実に4年分の納入実績に匹敵する注文なんだそうですが、このボーイング787は機体の70%近くを海外メーカーを含めた約70社に開発させる国際共同事業だそうです。日本からも三菱重工を始めとして数十社が参加し、日本企業の担当比率は合計で35%と過去最大だそうです。この35%という数字はボーイング社自身の担当割合に等しいとのこと。

また、ボーイング社は飛行機の組立工場をシアトルに持っているのですが、さらにその隣に現在の3倍規模の組立工場・部品工場を建設中です。そしてそこで使われる工作機械が、つい最近、日本の某メーカーに発注されました。年産50台~60台、1台最低1,000万円する工作機械が、「定価で」100台発注されました。

米国では今後大規模な新鉄道網を全米に建設する予定ですが、そこで使用されるレールは従来のものよりも太く長く、より強度の増した鋼材が使われるそうです。しかし、そのようなレールを供給できる技術を持っているのは、日本の鉄鋼メーカしかないそうです。

液晶パネルを作る工作機械メーカーでは、50%の増産を目指し、現在新しい工場を建設中です。一人の専門家がスーパークリーンルームの中で半年かかって、1台28億円の製造装置を完成させるそうです。

シャープでは、液晶テレビを増産するため、亀山第二工場を現在建設中で、関西中のクレーン車をかき集めた500台が、ところ狭しと乱立しているそうです。松下電器は、プラズマディスプレイパネルの新たな生産拠点として、第5工場を、兵庫県尼崎市(現工場隣接地)に建設し、世界最大の量産体制を更に拡大します。

まだまだ、いくらでも出てきますが、今、日本の製造業はとっても”熱い”のです。したがって、この影響は日本の輸出額、ひいては日本の翻訳業界にも反映されていくでしょう。

2008年、対海外の観点から見た企業経営の展望(その2)

異才経営者による2008年大予測

日経ベンチャー(日経BP社)2008年1月号の記事から抜粋しました。

飯田 亮 (セコム取締役最高顧問)
「中国の発展で日本経済も明るい」

2008年は基本的にはいい年だと思います。大きな流れとして、やはりアジアの発展があります。その点、日本は地政学的に非常いい場所にあるから恩恵を受けやすい。
中国から距離が近いというのもあるが、それは大したことじゃない。一番は人種的に近いこと。アジアの人間は、アジアの考え方を理解できます。


青木定雄 (近畿産業信用組合会長、MKタクシー創業者)
「本気で戦う経営者に金が集まる」

小泉改革で規制緩和が大きな流れとなったのに、中小企業の経営者には、競争の時代だということをまだ理解していない人が少なくない。タクシー業界もそうだ。他社よりも少しでも努力して、「選ばれるタクシー会社」を目指せばいいのに、皆で足並みをそろえて「運賃を上げよう」なんてやっている。


土屋公三 (土屋ホーム会長)
「量を追う経営は成り立たない」

当社では1990年から、社内で大工を養成している。まず1年間は訓練生として、グループの認定職業訓練校「土屋アーキテクチュアカレッジ」に通ってもらう。その後2年間は見習いとして現場に出て、4年目から棟梁の下で、本格的に建築技術を学ばせる。この間、もちろん給料は払い続ける。
一人前の大工を育てるには、15年、20年という長い年月と膨大な費用がかかる。工務店に任せておけばいいと考える人もいるが、一見遠回りのようでも、良質な住宅を確実に提供していくには、自前の大工を育てていくしかないと考えている。修了生は今までで、既に200人以上。その多くが会社の中核として活躍している。地道な活動ではあるが、着実に身を結んでいる。


三森久美 (大戸屋社長)
「市場縮小控え、大胆に戦略転換」

海外ではヘルシーな日本食の人気が高い。また、アジアでは食材の鮮度管理がまだ確立されていないから、そうした技術を持ち込めば、大きなビジネスチャンスが広がる。これまで日本企業は製造業を中心に技術移転をしてきたが、外食などのサービス業でも進むだろう。


大山健太郎 (アイリスオーヤマ社長)
「地方企業は『変革の年』」

中国人は日本人以上にブランド志向が強いから、日本語の取扱説明書とPOP広告をそのまま付け、「日本ブランド」をアピールしている。
中国の都市部と日本の地方都市の人件費の差は、年々縮まってきているから、今後はますます、地方企業が中国市場を狙いやすくなる。特に、九州の企業は地理的にも近いから有利だろう。誰も彼も、東京を向いて仕事をする時代ではない。
大体、政府が地方間格差を埋めようとするから、地方企業が努力しなくなる。


松井利夫 (アルプス技研最高顧問)
「中国人の雇用・活用が加速する」

当社では6年前から中国人の採用事業に乗り出したが、中国の学生は優秀だ。先日も、理工系の日本の大学生に出した入社試験を、中国人の新卒社員にやらせてみたら、中国人のほうが平均点が10点~15点も高かった。
私は年に何度も中国に足を運ぶが、今の中国は日本以上に激しい競争社会となっている。沿岸部は豊かになってきたが、それでも学生たちには日本の若者にはないガッツがある。地方へ行くとまだ貧しいから、ハングリー精神が強い。日本でニートやフリーターが増えるのも、この豊かさのためだろう。


田口 弘 (エムアウト社長)
「古い業界にビジネスの芽がある」

2008年は「オープン」がキーワードになるだろう。2007年、食品偽造や建材の耐火性偽造など、企業の不祥事が頻発したことで、消費者は猜疑心の固まりになっている。従来の日本企業は消費者に十分な情報を提供してこなかったが、内向きの経営ではもはや許されない時代に入った。
ここにビジネスチャンスが生まれる。隠すのが当たり前だった情報をオープンにすれば、新しい商売になる。
(中略)
私が創業した、金型部品などのカタログ販売会社ミスミも、業界では納入価格はクローズだったが、それをオープンにすることで成長したわけだ。
今後は、供給側の論理でビジネスを発想する「プロダクトアウト」から、顧客視点で商売をする「マーケットアウト」への転換が加速度的に進むだろう。


江副浩正 (ラ ヴォーチェ代表 リクルート創業者)
「不動産が値下がり、不況が来る」

国そのものが危機に立たされているのに、日本は依然、外国人労働者に対して閉鎖的だ。出稼ぎ労働者に厳しい規制をかけている。だから、外国人研修制度を悪用して外国人を低賃金で働かせるという企業も出てくる。
米国ではベトナムの難民を受け入れ、農業分野などの貴重な労働力にしてきた。多くの外国人に働いてもらえば、彼らからの税収入も得られる。外国人労働者の受け入れに門戸を開かなければ、日本は駄目になる。

2050年の経済大国

ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントのサイトより

brics1

brics2

・・・・(記事の転載ここまで)

「中国経済は、2016年には日本を追い越し、2041年までには米国すらも上回り、世界最大の経済大国となる可能性がある」とのことです。

昔は欧米から輸入した製品を”舶来品”と呼び珍重し、欧米で勉強して帰ってきた人のことを”洋行帰り”などと称えていた時代がありましたが、近い将来、中国製品を”舶来品”と呼び、中国帰りの人を”洋行帰り”と呼ぶ時代が来るのでしょうか?

世界経済に占める日本のシェアが小さくなれば、当然の理屈で中長期的には、”円”は安くなっていくでしょう。
私が子供の頃、1ドルは360円でした。日本は天然資源のほとんど全てを海外に依存し、食料の60%、家畜に与える飼料の75%を海外に依存して生きています。

したがって、単純に考えれば、円安になると、給料が増えずに物価が2倍3倍になるわけですから、当然日本人は、現在のような豊かな暮らしができなくなるわけです。ちょうど「Always 3丁目の夕日」のような、昭和30年代の日本に戻っていくわけです。

ただ私は、そこまで急激に日本が落ちて行くとは考えていません。なぜならば”技術立国日本”の余韻はあと10年や15年は続くと楽観的に考えているからです。ただそれも、これからの”構造改革”がいかに断行されるか否かにかかっているとは思いますが。

資産形成の面で考えると、日本人は”円”だけを持っていると、どんどん貧乏になっていってしまします。長期で運用するお金、退職金や保険や定期預金などは、円で預けて他国の通貨で運用するという、ハイリスク・ハイリターンの時代はもはや避けて通れないでしょう。

翻訳会社にとっても”円”だけにこだわっていたのでは、いくら仕事をやっても儲からない、お金が貯まらない、という事態に陥る時代になってくるわけです。

これはあくまでも”私の予想”ですが、短期、中期はともかくとして、長期的なトレンドに関して言えば、円が安くなっていくことはほぼ間違いないと考えています。

2008年、対海外の観点から見た企業経営の展望(その1)

「貿易統計と円相場」編

「財務省貿易統計」および「日本銀行外国為替相場」その他政府関連サイトから集めた数値をエクセルでグラフにしてみました。2007年の輸出入額は12月中旬までの速報値をもとに算出した、”私の推計値”ですが、恐らく確定値とそう大きな狂いはないはずです。”今日本で一番早く算出された貿易統計”のはずです。ご参照ください。

日本の輸出と輸入(単位:10億円)
日本の輸出と輸入(米ドル換算)

さて、今回は大層な題名をつけてしまいましたが、最近の日経新聞の中から特に興味を引いた記事を2つ選んでみました。

2008年1月11日、「YEN漂流 私はこう見る」伊藤隆敏氏の記事から抜粋
<いとう・たかとし 一橋大学教授、財務省副財務官などを歴任し、2006年から経済財政諮問会議の民間議員も務める。57歳>

「対ドル相場(名目)だけをみていると見誤る。円はすごく安い水準。日米で見れば約3%のインフレ格差が過去7年間続き、その分だけ円は実質的に安くなっている。1ドル=100円でも昔の120円前後と同じ。輸出産業にとって大打撃ではない。主要通貨のなかでの円の価値を示す実質実行為替レートを見るべきだ」

2008年1月10日、「YEN漂流 私はこう見る」松本大氏の記事から抜粋

<まつもと・おおき 87年東大卒。1994年に30歳で米ゴールドマン・サックスのゼネラル・パートナー(共同経営者)。1999年マネックス証券を設立。日本のネット証券の草分けの一人。44歳>

「今は日本の個人金融資産が1500兆円あり世界でも有数の規模。一人当たりのGDP(国内総生産)でもまだ高く資本市場にもそれなりの厚みがある。だが、2050年に中国のGDPは45兆ドルで日本の7倍以上になるという。インドなどの新興国も台頭しているし、米国も成長を続けるだろう。その中で日本が今の経済的位置を保ち、世界的な金融センターとして存在感を示せると考えるのはおとぎ話」

「円高が進む間は預金を放っておいても日本人は世界の中で裕福になった。今の中国人が人民元資産を持っているだけでお金持ちになっているのと同じだ。逆に日本の地位が低下し円が安くなると、日本人は円預金をしているだけで国際的にはどんどん貧乏になる」

日本車海外生産、BRICsが北米を逆転――2011年にも年500万台に

2008.1.6 NIKKEI NET

日本の自動車メーカーによるBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)での生産台数が2011年にも年500万台を超え、北米生産を逆転する見通しとなった。

・・・・(記事の転載ここまで)

例によって、Web上での情報は極端に少ないので、日本経済新聞の”紙情報”から拾ってきた数字を下記に並べます。

【日本の自動車メーカーによるBRICsでの増産計画】
中国 (2006年 100万台 ⇒ 2011年にも260万台)
インド(2006年 75万台 ⇒ 190万台)
ロシア(2006年 ゼロ ⇒ 50万台)
ブラジル(2006年 17万台 ⇒ 40万台)

各社の計画を集計するとBRICs4カ国での生産台数は2010年台初めで540万台と、2006年(200万台)の3倍近くに増える。2006年に400万台だった北米生産は伸びが鈍化し、480万台前後にとどまる。

(以上で新聞からの情報は終わり)

戦後の日本経済は、途上国から資源を輸入し、加工した製品を欧米先進国へ輸出することにより外貨を稼ぎ、経済的な繁栄を謳歌してきました。

そして欧米各地に工場を建て、その国での雇用を確保し、その国へ税金を払うことにより、”日本の一人勝ち”という批判をかわして来たのです。

しかし、今後単純にBRICsでの生産を増やし、北米での売上を伸ばしていけば、またまた日米貿易摩擦の象徴として槍玉に挙げられてしまうでしょう。

”グローバル化”には常に”雇用問題”と”エネルギー問題”が付きまといます。たとえばブラジルです。

ブラジルは世界最大のコーヒー産出国として有名ですが、多くの人手を必要とするコーヒー農園では、多くの労働者が働いています。その農園で今大きな変化が起きています。

原油価格の暴騰により、代替エネルギーである”バイオエタノール”が注目を浴びていますが、作付けから収穫まで7~8年かかるコーヒーの樹木に対して、バイオエタノールの原料であるトウモロコシ、大豆、サトウキビは、1年で収穫ができます。

しかも、トウモロコシ、大豆、サトウキビは大型トラクターや飛行機、工作機械を使って、大規模経営ができるため、農園の維持や収穫に多数の人手を要するコーヒー農園が嫌われて、今次々とトウモロコシ、大豆、サトウキビ畑へと転換されているのです。

ブラジルへトラクターや農機具を売る日本企業にとっては、まさに”儲け時”なわけですが、失業したコーヒー農園の労働者達が、大地主を相手に暴動を起こし、地主は地主で私兵を雇い、武力装備をして自衛している、と聞いています。

ここでもまた、”グローバル化”が引き起こす新たな”収入格差”の問題が、新たな火種を生みだしています。

”経済のグローバル化” ⇒ ”格差拡大” ⇒ ”テロの勃発” という21世紀の世界が抱える深刻な問題の縮図が今、BRICs内部でも着実に進行しているようです。

第7回 しずおか世界翻訳コンクール

この「しずおか世界翻訳コンクール」については、昨年度もこのブログの中でとりあげたことがあります。毎年今頃の季節になると、豪華な「応募要綱」と「あらまし」と「ポスター」が弊社にも送られてきます。

本コンクールへ情熱をそそぐ、静岡県関係者の日本文化へ対する”誇り”や”使命感”をおおいに感じます。このような企画を”日本国”でもなく、”東京都”でもなく、一地方都市である”静岡県”が行うところに大きな意義と驚きがあるからです。

しかし、なぜかこの「しずおか世界翻訳コンクール」に関するWeb情報は少なく(別の言い方をすると、ホームページが充実していなく)、毎年送られてくる豪華な冊子に詳細情報が書かれています。

下記にその冊子「あらまし」からの情報をご紹介します。

<まえがき>から一部抜粋

経済の海外進出には積極的で日本製品のブランド名は知られるようになりましたが、同様に日本の”心”が知られているわけではありません。ましてや、文化のうちで重要な位置を占める文学は、あきらかに輸入超過の状況です。

<翻訳コンクール企画委員長 大岡信 (詩人、日本芸術院会員)>からのコメント一部抜粋。

静岡県教育委員会からこのコンクールについて初めて相談を受けたとき、私は正直なところびっくりしました。こんなことを考えつくこと自体、現代日本ではまさに夢物語だろうと思ったからです。しかし静岡県は本気でした。

それなら、世界の人々に対して開かれた、質量ともどこへ持ち出しても恥ずかしくないコンクールにしようと念願して、現在のような案が成立しました。

<翻訳コンクール審査委員長 ドナルド・キーン (コロンビア大学名誉教授)>

日本文学を海外で知って貰いたいという声が絶えません。或いは、訳者たちの選んだ作品は古典的であって現代の日本文学を十分反映していないという非難があります。これらの文句に十分意味がありますが、日本文学の若い訳者を育てることがどんなに難しいか斟酌していないように思われます。

外国人として日本語を覚えることは実に難しいです。一応、新聞を読めるようになっても文学をなかなか理解できないことが多いです。

また、文学の翻訳がやりたい人は大学の教師なら、翻訳の業績によって昇格することはまずないと諦めて、論文を書くことがよくあります。しかも、仮に翻訳が本になっても収入が芳しくないことは覚悟しなければなりません。それにもかかわらず日本文学の翻訳を是非やりたいという人がいますので、このコンクールは最高にありがたいものです。若い翻訳家に何よりの刺激を与えて、翻訳という、人間に不可欠な仕事の重要性と有り難さを教えるでしょう。
(以上で引用終わり)

上記それぞれのコメントは、たいへん意義深いものだと思います。ただあえてひとつ私からこのコンクール主催者へ注文をつけるとしたら、やはりWeb情報の充実というところでしょうか。21世紀のコンクールには不可欠な要素ですから。

日本学力トップ集団脱落 高校1年対象OECD調査 読解力、前回並み

2007.12.05 CHUNICHI Web

経済協力開発機構(OECD)は四日、世界の五十七カ国・地域の十五歳(日本では高校一年生に相当)約四十万人を対象に昨年実施した学習到達度調査(PISA)の結果を公表した。数学的応用力は六位から十位に、科学的応用力は二位から六位に転落。前回の調査では読解力の低下が課題とされたが、今回は科学的、数学的の応用力も「一位グループ」から脱落した。

・・・・(記事の転載ここまで)

なかなか鵜呑みにはできない調査結果です。各紙を読み比べてみても、OECDの調査方法の詳細にはあまり触れていません。

今回は57カ国、40万人が調査対象で、日本では約6,000人の高校一年生が試験を受けたとのことですが、40万人÷57ヶ国=約7,000人ですから、まず、日本人のサンプル数が妥当であったのかどうかが疑問です。

人口1億2,800万人の”大国”日本と、人口数百万人の”小国”のサンプル数がほぼ同数で、はたして正確な統計がとれるのかどうか分かりませんが、アメリカ、フランス、ロシア等の”大国”が、TOP20にも入っていないことが気にかかります。

加えて、前々回(2000年)の調査で日本は、「数学的リテラシー(応用力)」で世界第1位、「科学的リテラシー」で世界第2位でした。

ということは、現在の大学4年生(22歳~23歳)は、世界でもトップクラスの「数学的応用力」と「科学的応用力」を持っている、ということでしょうか?

「学力低下」の諸悪の根源は「ゆとり教育」にあると日本のマスコミは決めつけていますが、1980年度から段階的に始まった「ゆとり教育」をまさに受けた、現在の大学4年生が、実は世界でトップクラスの「数学的・科学的」応用力を持っていたとは、皮肉な話です。

日本のマスコミは、そのへんのことは一切触れていませんが、本当なのでしょうか?

つまり、この統計調査のやり方そのものに少し疑問を感じます。信憑性の高い統計がとれるようになるまでは、もう少し時間が必要なのかもしれません。

ヤフーとイーベイ、共同サイト開設・提携を発表

2007.12.4 NIKKEI NET

ネットオークション世界最大手の米イーベイと日本の最大手であるヤフーは4日午前、業務提携すると正式に発表した。同日にネットオークションサービスを相互乗り入れするための共同サイトを開設。双方の会員が相手国の出展品目に応札できるようにする。

・・・・(記事の転載ここまで)

イーベイは1999年に一回日本へ進出したのですが、ヤフーとの競合に敗退し、2002年に日本市場から撤退しています。やはり”日本語”が最大の非関税障壁だったと私は推察しています。

今回の提携により、日本人は、日本語で入札に参加し、 日本語で出展できるようになり、同様に米国人は英語で入札し、英語で出展できるようになるそうです。当然そこに”翻訳”というプロセスが発生するわけですが、マスコミ情報では、その翻訳をどのようにするのかは、まったく触れていません。機械翻訳を使うのでしょうか?翻訳ミスによるトラブルの発生をどのように認識しているのでしょうか?

この手の話が出てくると、たいていの場合マスコミは、お金の決済方法や物流のやり方が”画期的”であると注目するのですが、常に翻訳の問題は「なんとかなるだろう」であまり深く考えていないものです。

イーベイの2006年の全世界の落札額は520億ドル(約5兆7000億円)で、約半分が北米サイト上です。一方のヤフーの2006年の落札額は7,127億円です。

両社とも落札額は年率10―15%程度成長し、落札額の2007年の合計は日米で4兆円前後に上る見込みだそうです。

いずれにしても、提携により、国境を超えた巨大な消費者間の売買市場が成立するので、今までの企業対企業の間で発生する翻訳需要に加えて、一般消費者をターゲットとした新しい翻訳市場が誕生することになります。

MT(機械翻訳)+TM(翻訳メモリー)に、人間の手を加えた、牛丼並みの「安い、早い、うまい」翻訳需要が急速に強まることは、まず間違いないでしょうが、はたしてその行方はどうなることでしょうか?

日本企業の外国人雇用わずか1%

2007.12.3 日本経済新聞

海外事業を広げ、輸出市場で利益を稼ぐ日本企業。だが、国内ではグローバルな人材登用が進んでいないのが実情だ。労働政策研究・研修機構が2007年1月に実施したアンケート調査によると過去3年間で外国人留学生を正社員などで採用した企業の比率は9.6%にすぎない。

日本の大学などを修了した高学歴の留学生を活用する手もあるはずだが、企業は「自己主張が強い」「定着率が低い」などと慎重な姿勢だ。

(中略)

厚生労働省が2005年にまとめた推計では、日本国内の就労外国人は日系人や不法残留者を含めても63万人程度。6,600万人いる労働力人口の1%程度だ。

同じ島国である英国の人口は日本の半分だが、OECD統計でみても外国人労働者は7倍で、差は大きい。

(後略)

OECD資料
<先進国の外国人労働力(単位:万人)>
1955年  2000年  2004年
日 本      9     15      19
米 国   1,349    1,805    2,199
英 国     86     111     145
ドイツ     257    355     370
フランス    157    158     154

・・・・(記事の転載ここまで)

上記OECDの資料を基に、各国の人口+外国人労働者数に占める外国人労働者の割合を算出してみました。

日 本 (人口+外国人労働者数) 12,790万人 (外国人労働者割合) 0.15%
米 国 (人口+外国人労働者数) 32,199万人 (外国人労働者割合) 6.82%
英 国 (人口+外国人労働者数)  6,166万人 (外国人労働者割合) 2.35%
ドイツ  (人口+外国人労働者数)  8,613万人 (外国人労働者割合) 4.29%
フランス(人口+外国人労働者数)  6,464万人 (外国人労働者割合) 2.38%

英国との開きは16倍、なんと米国との開きは45倍もあります。つまり先進国のなかで日本は突出した”労働閉鎖社会”なのです。

経済のグローバル化が叫ばれている中、日本だけがこのような”ひきこもり症候群”で本当によいのでしょうか?

日本で働く外国人の人たちから、日本人や日本社会に対する不満をよく聞くことがあります。私はそのほとんどは”日本人の外国人に対する無知や人材交流の経験のなさ”に起因すると考えています。

「何々人の考え方は日本人とはまったく違う」、「何々人は本当にドライだ」、「何々人に日本人の心を理解できるわけがない」等々

私の感触では、多くの日本人は「日本文化は特殊だから、外国人に日本人の心が理解できるわけがない」と決めつけ、まるで外国人は宇宙から来たエイリアンであるかのように、自分達とは「違う生物」と考えているフシがあります。

年間数百万人の日本人が海外を旅行し、マスコミやインターネットを通じて、自由に外国の情報が得られる21世紀の世の中にもかかわらず、いまだ日本人の感覚は「日本人特殊論」からさほど変化していないように感じます。

私は「人間は皆同じ」だと考えています。なぜなら誰も皆同じように笑ったり、怒ったり、悲しんだり、恥ずかしがったり、ウソついたり、嫉妬したり、見栄張ったり、同情したり、感動したり、夢を持ったり、愛したり、裏切ったりするからです。人間は皆同じです。日本人だけが特殊であるわけがありません。ただ少し、今まで育ってきた環境が違い、習慣が違うだけです。「人間の根本は皆同じ」だと私は信じています。

日本社会も早く、外国人に対する偏見を捨て、差別のない社会構造を組み立てていかなければ、新しい国際社会の輪の中からはずれてしまい、本当に「ひきこもり」になりかねないと心配しています。

日本産牛肉やマグロ、中国で密輸入増加・上海の空港

2007.11.27 NIKKEI NET

中国・上海の空港で日本からの旅行客が不正に持ち込む日本産牛肉やマグロの摘発が増えている。上海出入境検査検疫局によると、今月3日と8日の摘発では牛肉とマグロの合計1490キロを押収、廃棄。輸入を禁じている日本産牛肉や品質基準が厳しいマグロなど中国内の高級食材人気を当て込んだ密輸の拡大を防ぐため、当局が水際対策を加速しているとみられる。

・・・・(記事の転載ここまで)

この記事によると、中国当局は日本産牛肉の密輸を特に深刻に受けとめているそうです。この5ヶ月間で、約3,500キロもの日本産牛肉の密輸が、上海の検疫局によって摘発されているからです。

日本では、中国産食品の安全性がこれだけ騒がれているのにもかかわらず、逆に中国では日本産食品の安全性を疑い、牛肉、まぐろ、りんご、その他多くの農産物に規制をかけています。

私が思うに、中国政府は日本の食品の安全性を疑っているのではなく、日本政府へのけん制と日本の農産物普及による自国農業の衰退を恐れているのでしょう。

なぜならば、こんなに規制(あるいは禁止)があるにもかかわらず、中国国内では日本産食物への需要が非常に強いからです。

日本国内においても高い和牛ですから、中国の物価を考えたら桁外れに高価な肉のはずです。ましてや密輸してまでも食べたいとなると、信じられないような価格で取引されているはずです。

前回のブログでも触れましたが、今夏、日本のおコメ24トンが試験的に中国へ輸出されました。2キロで3,000円(中国のおコメの20倍以上)という超高額にもかかわらず、富裕層があっという間に買いつくしてしまったそうです。

また、日本の静岡県産のメロンが現在上海の経済界で人気が高まっているそうです。1個2万円にもかかわらず、贈答用として珍重され、贈られてくるメロンの数によって、その人の経済界での力がわかる、というような新しい言葉も生まれてきているそうです。なんだか日本のバブル経済最盛期を彷彿させる出来事ではありますが。

それ以外にも、青森県産のりんご、”ふじ”は最近米国へも輸出されるようになり、米国産りんごの5倍から6倍の価格で、飛ぶように売れているそうです。事実、りんごの産地、弘前では、米国農務省動植物検疫官が常駐して”ふじ”の検疫をおこなっているそうです。

また、JA山形によると、現在山形県産の日本酒が台湾向けに急増しているそうです。特に日本酒を冷やして飲む、いわゆる”冷酒”の人気が急騰しているからです。

とにかく、今、日本の農業が”熱い”のです。

以下は農林水産省のHPからの情報です。

●農林水産物・食品の輸出は増加傾向にあり、2006年は3,739億円と5年前より5割増加。

●政府は、2013年までに輸出額を1兆円規模とすることを目標に、輸出促進ロゴマークの作成、総合的な輸出戦略の策定、海外での展示・商談会の開催等を実施。

●日本食、日本食材の魅力を広く効果的に伝えることを目的に「WASHOKU-Try Japan’s Good Food」事業を行っている。

●世界的なブームとなっている日本食の普及を一層推進するため、2007年3月に海外日本食レストラン推奨有識者会議から提言された「日本食レストラン推奨計画」の具体化に着手。

21世紀に最も成長する日本の輸出品は、日本の食品なのかもしれません。

世界一の中小企業(その7)

高級作業工具を世界へ輸出する最強職人集団、マルト長谷川工作所

ペンチ、ニッパー専業メーカーとしては国内最大手で、欧米や東南アジアを含め世界20数ヶ国に製品を輸出し、アメリカではプラスチック用ニッパーでトップシェアを誇る会社があります。新潟県三条市に本社をおく ”マルト長谷川工作所” です。

keiba
<世界が認める「KEIBA印」の作業工具>

ペンチと言えば、今では100円ショップでも売られていますが、同社の最高級品は、一個6万円(オーダーメード品)もするそうです。しかも驚いたことに、同社のベストセラー、プラスチック用ニッパーの最大の輸出国は中国なのです。

中国人が安い自国製品を使わず、わざわざ飛びぬけて値段の高い同社製品を使う理由は何なのでしょうか?

その理由は、同社の製品を使えば、工場の作業員が手を痛めない、長時間使い続けても腱鞘炎になりにくい、長持ちする、という点で費用対効果が高いからなのだそうです。それだけ同社製品は、圧倒的な人気と信頼感を誇っているわけです。

penchi
<ハイグレードシリーズ ザ・ペンチ 標準価格3,140(税別)~5,460(税別) 同社ホームページより>

とはいえ、中国・台湾・韓国の低価格攻勢、大量生産から多品種少量、変種変量への転換という趨勢は、作業工具の分野も例外ではありませんでした。

同社の生産量はピーク時の450万丁から240万丁へと半減し、逆に製品の種類は、主要12品目から1,200仕様へと100倍に増加しました。

こうした状況に対応するために、1996年から取り組み、大きな成果をあげているのが、「ジャスト・イン・タイム」を究極の目標に、トヨタ生産方式を応用した独自の生産管理システム、MPS(マルト・プロダクション・システム)です。

MPSにより、1995年には在庫が約97万丁あったのが、現在は20万丁にまで縮小(80%減)し、金額ベースでも3分の1にまで減少したのです。また工数削減によって、劇的な経済効果をあげています。

ムダ、ムリ、ムラをなくすために行う標準作業の実践に用いる作業書も非常に細かく、作業者の一挙手一投足を標準化し、一目盛り0.5秒のマス目に合わせてグラフ化します。素材を手に取り、1秒歩いて次の工程に移り、1.5秒でセットして、機械が3秒動いて・・・・・トータル何秒で出来上がる、という具合です。

pinset
<ニューセラミックチップ付ピンセット S形標準価格8,360(税別) 同社ホームページより>

全社員がライン単位でチームをつくり、半年単位で徹底的にカイゼンに取り組みます。作業者の体形や歩幅に合わせたレイアウトづくりなど、数十項目におよぶ「泥臭いカイゼン」を繰り返すことで、チリのような秒単位の削減が積もりに積もって、数万時間の作業時間短縮につながっているのです。

しかし、品質・性能については妥協を許さず、中国メーカーなら10分以内で済ませる、焼入れ後の焼き戻しを、同社では4時間もの時間をかけています。

また、同社は検査工程を独立させず、各工程ごとに全員が全数検査をする「全員検査員」という考え方で品質管理を行っているため、工程内不良率は0.01%レベルとのことです。

(以上、洋泉社の「中小企業ですがモノづくりでは世界トップです」木村元紀著を参照)

一見ハイテクとは無縁に見える作業工具なので、途上国からの安値攻勢でさぞや大変だろうと思いきや、逆に中国をはじめとするアジア各国へ輸出していると言うのですから驚きです。

徹底した効率経営ときめ細かな原価計算、ユーザーのかゆいところに手が届くように豊富な種類をそろえた多品種少量生産、そして超高品質にこだわり続ける飽くなき職人魂・・・・まさに「なりは小さくとも百獣の王」と呼ぶにふさわしい企業でしょう。

さらに加えて現在では、作業工具とは別の”超高級品を求める市場”を開拓しています。1本30万円もする”カリスマ美容師”の「はさみ」や数千円もする「耳かき」や「つまようじ」、”ネイルアート”専用の高級「爪切り」などニッチな市場でその卓越した技術を活かそうとしています。

「マルト長谷川工作所」は今年で創業から満83年、現在従業員数124名、売上高12億7千万円(2006年12月実績)で、現在3代目の長谷川社長の次に4代目も控えているようです。まだまだこれからも発展し続けるでしょう。

私たち翻訳業界にも大変参考になる、模範となる企業なのかもしれません。

関税撤廃で北海道の打撃は1兆4000億円 日豪EPA交渉

2007.11.14 Brain News Network

(前略)
今年8月に農林水産省が発表した2006年度の食料自給率(熱量に換算したカロリーベース)は、前年度から1ポイント下がり、13年ぶりに40%台を割る39%となった。

内閣府が昨年11月に実施した「食料の供給に関する特別世論調査」では、日本の将来の食料供給について「非常に不安がある」「ある程度不安がある」との回答が合わせて76.7%に達した。

先進国の中で食料自給率が最低水準にある日本の農業は近い将来、未曾有の危機を迎えようとしている。

(後略)・・・・(記事の転載ここまで)

日本の食糧問題に関しては、このブログの中でも何回か触れていますが、今回は日本とオーストラリア、2国間での具体的な貿易摩擦問題をとりあげてみます。

現在、日本がオーストラリアに輸出する自動車や機械類は、0~10%の低関税となっているのに対し、オーストラリアから輸入する農林水産物には、高い関税がかけられています。

たとえば、牛肉は38.5%ですが、なんと小麦は252%、砂糖は379%、雑豆は403%と異常に高くなっています。

オーストラリアは今回のEPA交渉でこれらの「関税撤廃」を求め、日本はそれに抵抗しています。また、農林水産省は、日本の農作物の関税がすべて撤廃されると、食料自給率は12%にまで低下(現在39%)すると試算しています。

現在、先進諸国の中で、日本だけが異常に低い食料自給率(カロリーベース)となっているのにも関わらず、さらにそれを低下させる要因が発生している訳です。

経済活動や学校教育など、大抵の問題において「公平な自由競争の導入」を支持する私ですが、さすがにこの食料問題だけは簡単に「自由競争万歳」とはいきません。

どこの国においても、自国の農業を保護育成し、食糧危機という有事に備えているのですが、耕地面積の狭い日本国において、今すぐ諸外国との競争にさらされれば、ほとんどの農家は破綻せざるを得ないからです。

しかし、今まで日本政府が施してきたバラマキの農業保護政策を続けよ、と言っているわけではありません。やはり競争原理の導入は必要で、日本人の得意とする技術力を駆使して、他国との差別化ができるよう技術革新を推進していく必要があります。また、若い人たちが参加したくなるような魅力的な産業にしなければなりません。

たとえば「コメ」です。今夏、日本のおコメ24トンを試験的に中国へ輸出しました。2キロで3,000円(中国のおコメの20倍以上)という超高額にもかかわらず、富裕層があっという間に買いつくしてしまいました。

日本の「りんご」や「メロン」も高額にもかかわらず、アジアを中心に盛んに輸出されています。中国の富裕層の間で超高級品として人気が高いそうです。

このように質の高い商品を作れば、世界のどこかに需要はあるわけですから、日本の農家も付加価値の高い作物を作りながら、大量生産という面でも、技術革新をしていってもらいたいものです。世界と日本の10年後を見据えて。

また、環境破壊の影響により、現在世界のいたるところで異常気象が発生しています。たとえばオーストラリアの異常干ばつやアメリカの洪水、干ばつ、山火事などは、私たちの記憶に新しいところです。これらの影響が徐々に世界の食物相場にも表れはじめています。

自国民の食料が確保できなくなった時、わざわざ外国へなど輸出してくれるでしょうか?気がついた時にはもう遅いのです。

さらに「環境問題」もさることながら、私たち人類は「世界人口の爆発」という深刻な問題を抱えています。私たちはこの問題に対し、今後どのように対処していけばよいのでしょうか?答えは簡単には見つかりそうにありません。

UNFPA 国連人口基金東京事務所サイトより
population
出典:国連人口部「World Population Prospects: The 2004 Revision」(2005年)、同「The World at Six Billion」(1999)、他 ※世界人口の詳しい最新情報については、国連人口部のウェブサイト(英語)へ。

携帯基本ソフト、グーグルが無償提供

2007.11.6 NIKKEI NET

インターネット検索最大手の米グーグルは携帯電話市場に本格参入する。米インテルやモトローラ、韓国サムスン電子、NTTドコモ、KDDIなど世界のハイテク・通信企業33社と提携し、基本ソフト(OS)など携帯電話に必要なソフトをすべて無償提供する。これらのソフトが普及すれば、パソコンに代わって将来、IT(情報技術)機器の中心になるとみられる携帯向けネットサービスの拡大にはずみがつきそうだ。

・・・・(記事の転載ここまで)

相変わらず、ネット上のニュースは、紙媒体のニュースに比べて、その情報量が圧倒的に足りません。

今回の「携帯基本ソフト、グーグルが無償提供」に関する記事でも、紙媒体(日経新聞)の情報は、ネット上の情報(NIKKEI NET)の20倍以上はあるでしょう。

それもそのはず、読者は紙媒体の新聞にはお金を払っていますが、ネット上のニュースは全て”タダ”で読んでいるわけですから。情報を提供する側としては、お金を払ってくれる読者に手厚くするのは、当然といえば当然です。

「もう紙の新聞は読まない。ネット上の情報だけで十分だから」と言って、新聞の購読を止めた人たちも沢山いるようですが、現時点においては、情報を深く知るためには、まだまだネット情報だけでは足りない、ということを知っておく必要があります。ただそれも逆転するのは時間の問題ですが。

しかしなぜ、新聞社各社は、”タダ”で情報をネット上に提供するのでしょうか?

答えは単純明快で、広告料収入が得られるからです。したがって、サイトを閲覧する読者の数が増えれば増えるほど、広告媒体としての価値も高まります。

ただ皮肉なことに、新聞社が、ネット上の読者を増やそうと紙面を充実させるたびに、紙媒体の売上が落ちていきます。その恐怖から、おっかなびっくりで情報をアップロードしている、という姿が目に浮かびます。

新聞業界は現在、発行部数減、広告収入減など深刻な状況に陥り、朝日、読売、日経が販売店統合へ向けて動いています。ネットニュースに関しても、3社が共同でポータルサイトを立ち上げる計画が報道されています。

さて、Googleです。

ご存知の通りGoogleは、検索やメールなどのサービスを無償提供し、ネット広告で高収益を上げてきました。このビジネスモデルで、IT分野の時価総額でマイクロソフトに次ぐ世界第2位の企業に、創業からわずか9年にして昇りつめました。

まさに「21世紀はGoogleの時代」と言われる所以です。そのGoogleが、次の収益源と位置づけているのが、携帯電話のネットサービスなのです。

ここからは、日経新聞の紙媒体の情報です。

「一般に携帯電話は通信会社が決めた仕様に従って、メーカーが端末を納入してきた。グーグルの無償ソフト群を採用すれば、端末の開発・製造コストの引き下げ余地が生まれる一方、ハード面での差異化が難しくなる。競争力を保つには、応用ソフトやデザインなどを強化する必要があり、ノキアが地図情報会社の買収を決めるなど、ハード依存を改める動きも出ている。事業規模が小さい日本の端末メーカーは今後、生き残りに向け厳しい競争を強いられる」

日本のハードメーカーの戦略が難しくなる一方、有力ソフトや有力コンテンツを所有する会社が相対的に有利になり、かつ、企業の合併・買収や提携が、国際的なレベルで一段と進んでいくことが予想されます。

まさに、「翻訳」の需要が一層強まるわけです。

鉄鋼4社、売上高2ケタ増・9月中間

2007.10.31 NIKKEI NET

新日本製鉄など鉄鋼大手4社の2007年9月中間決算が30日出そろった。自動車向けに高級鋼が増えるなどで、売上高は4社とも10%を超える伸びとなった。

・・・・(記事の転載ここまで)

日本の鉄鋼各社の業績が好調です。

当然その背景には、中国をはじめとする新興国の旺盛な鉄需要があるわけですが、それに加えて、日本の製鉄業の超省エネ技術や高い製品性能を見逃すわけにはいきません。

たとえば、鉄の専門家から聞いたところによると、日本の製鉄会社では鋼(はがね)1トンを生産するのに必要な石炭の量は0.6トンだそうです。それに対して、米国では1トン、中国では1.5トンの石炭を使用します。

つまり、エネルギー消費の点で、日本は米国よりも1.7倍、中国よりも2.5倍の生産効率を誇っているわけです。

それともうひとつ、日本が世界に誇る”高い製品性能”があります。

特に自動車軽量化を支える高強度鋼板では、日本メーカーは圧倒的な強さを誇っているそうです。

日本車の信頼性の高さは、今さら言うまでもありませんが、たとえば、米国ではそれが顕著に表れています。

米国ではリース料が損金算入でき、税金対策上有利なため、新車の90%がリース契約で購入されています。

そして、リース会社が車のリース料を算定する際に、重要な指標の一つに、その車の5年後の中古価格があります。

米国でも人気の高い日本のハイブリッド車の場合、5年後の中古価格(オーバーホール後)は、新車価格の65%だそうです。それに対し、GM車だと、せいぜい40%とのことです。

当然、中古車として高く売れる日本車のリース料は安く設定されますから、リース料が安く、質の高い日本車は、ますます人気が高まっていくわけです。

どんな業界・世界でも、ユーザーに喜ばれ、かつ、ライバルと差別化できる”技術”がキーとなるわけです。この傾向は今後ますます高まっていくことでしょう。

世界一の中小企業(その6)

船舶用プロペラで世界シェア30%弱、ナカシマプロペラ

岡山市に本社を持つナカシマプロペラ株式会社は、国内でほぼ70%、世界で30%弱のシェアを持つ世界最大の船舶用プロペラメーカーです。

まず、この会社の過去のおいたちがなかなか興味深いので、今の話をする前に、少しその歴史に触れてみます(以下「世界を制した中小企業」黒崎誠著、講談社現代新書より要旨を抜粋)。

ナカシマプロペラの前身は、現社長の祖父である中島善一氏が1926(大正15)年に設立した「中島鋳造所」でした。

その後、苦労をして漁船用プロペラの会社として成長し、やがて軍需工場としても発展します。しかし、1945年の大空襲により、岡山市は火の海となり、同社の工場も全焼。終戦後には、軍からの需要もゼロとなります。

またゼロからのスタートとなったわけですが、同氏は再建を決意し、旧海軍のプロペラ設計者を雇い入れて技術の向上を図ります。

その後、先端機器を積極的に取り入れるなどの積極経営で、国内第2位のシェアを確保するまでに成長します。

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<PAIプロペラ(同社のホームページより)、人間と比べてその巨大さがよくわかります>

しかし、1970年代後半に入ると、今度は韓国などの追い上げにより、日本の造船業界は厳しい構造不況に直面します。同社も、人員削減などの合理化を行うと共に、旧海軍出身者をはじめとする技術者を積極的に採用してきたことが花を開き、高い技術力でこの苦境を乗り切ります。

こうした努力の結果、ナカシマの国内シェアは35%程度まで伸びるのですが、どうしてもシェア40%を誇るトップメーカー、神戸製鋼所には追いつきません。

ところがこともあろうに、この神戸製鋼所が、鉄鋼不況の合理化の一環としてプロペラ部門から突如、撤退してしまいます。

その結果、ナカシマは一挙に国内シェア70%というトップメーカーに躍り出ることなります。

(以上で要旨抜粋を終了)

さて、ここでプロペラ部門から撤退を決意した神戸製鋼所の決断が問題となります。当時の神戸製鋼所の経営陣は「どんな方法をとっても途上国との競争に勝つのは不可能」と判断したそうです。

21世紀の現在、日本を含む世界の造船業界はかつてない大好況を謳歌しています。もっとも製鉄業界を含む重厚長大産業そのものが、かつてないほどの大好景気に見舞われているわけですから、先を見通す経営判断というものは、実に難しいものです。

ところで、素人から見ると、たかが船のプロペラ(一般にはスクリューと言われていますが)に、そんな高度な技術が必要とは思えないのですが、どこにそんな先進技術が潜んでいるのでしょうか?

船舶用プロペラに求められる要件とは、以下の4つだそうです。

1. 強い推進力
2. 1ヶ月以上も海中で回転する苛酷な使用条件でも故障しない耐久性
3. 音や振動が少ない
4. 高いエネルギーの効率性

したがって、ナカシマのプロペラを使えば「製造コストは開発途上国のプロペラより割高でも、節約できるエネルギーを計算すれば1~2年の航海で元が取れる」(前述の同著より)そうです。

そして「10メートル近くある大きなプロペラの翼を100分の1ミリ単位で研削していく作業は、その道数十年の熟練工によって行われている。コンピュータを使った機械では、どうやってもできない」(前述の同著より)そうですから、まさに驚きの世界です。

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<二重反転プロペラ、通常のプロペラよりも高い推進効率が得られます(同社のホームページより)>

このプロペラに限らず、いまだに熟練工の腕が、世界の技術を支えている、という話はよく耳にします。

「技術力重視」「先端機器の導入による差別化」、「経営の選択と集中の判断」、「熟練工の腕による差別化」等々、「ものづくり」の世界だけでなく、われわれ翻訳業界にも学ぶ点はたくさんあると感じます。

最後に、蛇足になりますが、私は一応「小型船舶操縦士1級」の免許を持っているのですが、船のプロペラに大量の海草の藻が絡み、エンジンが停止し、あたふたしている間に、船が座礁してしまった、という怖い体験をしたことがあります。あれが大型船だったらと思うとぞっとします。

海の上での一つ一つのパーツの信頼性は、陸上でのそれよりも、はるかに高度なものが求められる、ということだけは、実感としてよくわかります。

<所得格差>各国で拡大「平等社会」の中国でも IMF分析

2007.10.10 毎日新聞

国際通貨基金(IMF)は9日、最新の世界経済見通しのうち分析部分を公表した。IMFはこの中で「所得の国内格差が過去20年間にわたり、ほとんどの国や地域で拡大してきた」と指摘した。技術進歩と金融のグローバル化が格差拡大の主因と分析し、格差是正に向けて、労働者が世界経済に適応した技能を身につけられるように教育や訓練を強化する改革が必要だとの認識を示した。

・・・・(記事の転載ここまで)

「IMF(国際通貨基金)の調査によると、ほぼ全世界にわたって所得格差が広がっている。しかしその中において、日本国内の格差は世界的に見ると極めて小さいことも明らかになった」と、この毎日新聞の記事は触れています。

この「世界的に見ると日本国内の格差はきわめて小さい」という報道をしたのは、私が調べた限りでは、この毎日新聞だけでした。

「他国に比べて日本の所得格差は広がっている」という結果であれば、日本のマスコミは大騒ぎしたでしょうが、”期待”に反して逆の結果が出てしまったため、ひっそり静かに報道された、という点が、いかにも日本のマスコミらしいと、改めて感じました。

さて、問題は「IMFが分析した世界の所得格差の主因」です。

かねてより私が指摘してきたとおり、「技術進歩と金融のグローバル化」だと指摘しています。

その詳細についてはどこにも触れていないので、”私なりの解釈”で考えてみたいと思います。

まず「技術進歩」ですが、これはズバリ”過去20年間で、IT化に成功した企業か否か”につきると言っても過言ではないでしょう。

”IT”はほとんど全ての業界に影響を与えていますが、流通業を例にとれば、日本ではセブンイレブン、米国ではウォルマートがその顕著な例と言えます。

米国で始まった”POSシステム(Point of Sales System、販売時点情報管理システム)”をさらに強化・実用化したのが、日本のセブンイレブンでした。

当初、米国では、”従業員のレジの打ち間違い”や”レジのスピードアップ”を目的としてPOSを導入しました。

そのPOSを”情報の武器”として進化させたのが、日本のセブンイレブンでした。やがて日本のセブンイレブンは、本家である米国のセブンイレブンを買収することになります。

日本で進化したPOSは、再び海をわたり、世界最大の小売業ウォルマートは、徹底した情報管理により、今やメーカーまでをも、その支配下においてしまった話はあまりにも有名です(この件の詳細については、4月18日に私が書いたブログをご参照ください)。

さて、もう一つの原因「金融のグローバル化」ですが、私はこれも、世界の証券マーケットがIT化”されたことにより、資金調達がより円滑化されたため、と解釈しています。

短期間に大量の資金を集め、ライバル企業を合併・買収し、世界での拠点を広め、そのとき一番儲かる地域に重点投資をする。かつ、大量の資金を使って、さらなる”IT投資”を進め、”寡占化”、”独占化”をより強烈に推し進めていく。

経済のグローバル化に、”翻訳”が不可欠であることは、言うまでもありませんが、そのグローバル化が、世界中の所得格差を助長してしまっているわけです。

しかし、残念ながら、この流れはもう誰にも止められません。”格差の是正”については、途上国への援助等、違う形で行っていくほかありません。

19世紀、20世紀に繰り返された人類の愚かな歴史、”植民地支配と戦争”よりは、まだマシだ、と後ろ向きに肯定せざるを得ないからです。

平成17年国勢調査 第1次基本集計結果

総務省統計局

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・・・・(記事の転載ここまで)

この統計局のデータの中から、興味深い結果を選んでみました。

1年前の推計人口に比べ2万2千人の減少,日本の人口は減少局面に

1年前(平成16年10月1日現在)の推計人口(補間補正後)は1億2779.0万人となり,今回の国勢調査人口(1億2776.8万人)は,これを2万2千人下回っている。10月1日現在の人口が前年を下回ったのは,戦後初めてである。

→ かねてよりの予想通り、いよいよ日本の人口が減少を始めました。世の中には様々な種類の未来予測の数字がありますが、人口の増減や人口ピラミッドだけは、常にぴたりと当たるものです。

東京都,神奈川県,沖縄県など15都府県で人口増加,32道県で減少

人口増加率は東京都が4.2%と最も高く,次いで神奈川県が3.6%,沖縄県が3.3%となっており,15都府県で人口増加となっている。平成12年では約半数の24都府県で人口が増加していたが,17年では9県少なくなっている。

→ 大都市圏への人口流入はいまだ衰えをみせず、ただでさえ人口密度の高い、狭い国土を、より一層狭くしています。ちなみに沖縄の人口が増えているのは、人口の流入ではなく、自然増(子供の出生数の増加)が原因のようです。

20歳代後半から30歳代にかけて未婚率は男女とも大きく上昇

25~29歳の未婚率は,男性が71.4%,女性が59.0%と,平成12年に比べそれぞれ2.1ポイント,5.0ポ  イント上昇している。また,30~34歳の未婚率は,男性が47.1%,女性が32.0%と,平成12年に比べそれぞれ4.2ポイント,5.4ポイント上昇している。さらに,35~39歳の未婚率は,男性が30.0%,女性が18.4%と,平成12年に比べそれぞれ4.3ポイント,4.6ポイント上昇している。

未婚率が最も高い都道府県は,男女とも東京都でそれぞれ37.9%,29.9%となっている。一方,最も低いのは,男女とも秋田県でそれぞれ2.4%,17.2%となっている。

→ 30~34歳の男性の半分弱、女性の3分の1が未婚とは驚きです。しかも未婚率の最も高い東京都では、全男性の38%、全女性の30%が未婚とはもっと驚きです。それにしても人口増加率の飛びぬけて高い東京都の未婚率が高く、最も人口減少率の高い秋田県で未婚率が低いとは皮肉な話です。

最後になりますが、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)だけで、世界の人口の42.6%を占めています。この4カ国が経済的に発展することは良いことですが、将来のエネルギーと食料の行く末が本当に心配です。

世界一の中小企業(その5)

標準歯車で国内シェア60%、小原歯車工業

以前このブログの中で「世界最小の歯車を開発した樹研工業」の事をご紹介しましたが、今度は「標準歯車」で圧倒的な強さを誇る歯車メーカー、小原歯車工業(こはらはぐるまこうぎょう、略称KHK)をご紹介します。

「歯車にはオーダーメイド歯車と標準歯車の2種類がある。オーダーメイド歯車というのは、顧客であるセットメーカーの設計図通りに製造した歯車。自動車メーカーの系列会社に多く、設計図に基づいて作るだけなので下請け的な要素が強い。一方、標準歯車というのは、歯車メーカーが自社の規格に基づいて作る歯車。大量生産が可能なので価格を抑えることはできるが、顧客のニーズに合った商品を出さなければ、系列外ゆえに生き残ることは難しい。この標準歯車でシェア60%を占めている企業が、小原歯車工業(埼玉県川口市)。」(「小さなトップ企業」日経BP社)

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<KHK標準歯車133品目、4,000種類の品揃え(同社のホームページより)>

私はこの「標準歯車」の話を知ったとき、あの「マブチモーター」の創業期の話を思い出しました。マブチモーターは今でこそ売上1,000億円を超える超優良の大企業ですが、やはりかつては小さな下請けメーカーでした。

オーダーメイドによるモーター生産は、完全なる下請けだったため、「作ったけど売れない」というリスクが少ない反面、値段を抑えられ、利益を出しにくい、という体質がありました。

しかも、おもちゃ用の小型モーターには季節要因による「繁忙期」と「閑散期」があり、「繁忙期」には、さばききれないほどの注文があるかわりに、「閑散期」には仕事がなくて頭を抱える、という状況があったそうです。

そこでマブチモーターは、思い切って「オーダーメイドモーター」の注文を捨て、「標準モーター」の生産に踏み切りました。

そして馬渕社長自らが「これからは、様々なサイズのモーターを各種取り揃えますから、今後はうちの会社の仕様に合わせて、御社の製品をお作りください」と顧客巡りをして説得に歩きました。

当然、下請けメーカーの社長にそんなことを言われて、顧客側が納得するわけがありません。「ふざけるな!顧客に向かって何を言う。二度とお前の会社の製品など買ってやるものか!」と多くの顧客が激怒したそうです。

ところが、繁忙期、閑散期に関係なく、計画的に大量生産する製品は、当然コストが低く、なおかつ、ジャストインタイムに納品できるマブチモーターは、しだいに顧客の間の評判となっていきました。

やがて一度逃げていった顧客達も、あちらのほうから戻ってきました。なにはともあれ、その圧倒的な価格競争力の魅力には勝てなかったからです。

さて、小原歯車工業の話にもどります。

「歯車は基本的な技術を持ったところであれば、どこで作っても大差がない。商品自体で差別化できないため容易に他社の追随を許してしまう。この対策として小原歯車工業が選んだ戦略が、『商品の種類』で差別化するというものだった」(前述の本)

同社のホームページによると、現在4,000種類にもおよぶ歯車を取り揃え、自社倉庫に大量の在庫を抱えているそうです。そしてコンピュータを駆使して、在庫リスクの軽減を図っている、とのことです。

オーダーメイドを捨て、標準仕様にすることによりコストを大幅に削減し、かつ圧倒的多品種をそろえることにより、顧客ニーズを確実にとらえて、他社からの侵食を防止する、結果として強力な顧客囲い込み戦略となる、ということでしょうか。

「翻訳」は完全なる「オーダーメイド生産」であり、しかも、量産して「作り置き」できる商品ではありません。だからわれわれの業界とはまったく関係ない、と思うでしょう。

しかし、遠い将来、いや、あるいはそう遠くない将来、「翻訳の作り置き在庫品バーゲンセール」なんて事態がおこるかもしれません。

圧倒的大多数の良質な「翻訳メモリー」が、Web上に出現すれば・・・・・・。

「朝日」「読売」「日経」3強連合の動き 「毎日」「産経」追い落としなのか?

J-Castニュース 2007.9.27

朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞が販売店統合へ向けて動いていると「週刊文春」07年10月4日号が「スクープ」として報じた。発行部数減、広告収入減など新聞業界を取り巻く状況は深刻で、これまでは「聖域」といわれた販売店にまでメスを入れざるを得なくなった、というのだ。ネットニュースに関しても、三社が共同でポータルサイトを立ち上げる計画が報道されている。一連の動きは何を意味しているのか。

・・・・(記事の転載ここまで)

この記事は、2007年9月27日にWeb上に掲載されたものですが、昨日(9月30日)夜のテレビのニュース番組で、初めて私はこのニュースを知りました。

テレビの報道によると、「朝日新聞、読売新聞、日経新聞の3社が共同でWeb上のポータルサイトを構築する」というものでした。

このニュースを聞いた瞬間、私は「やはり、起こるべきことが起こり、来たるべき時が来た」と感じました。

私は2007年4月17日に「国内ネット広告費、5年後は2倍の7558億年に」と題する、このブログの中で、日本のマスコミの異常性を指摘しました。

なかでも大新聞会社の持つ問題点を指摘したのですが、

1)旧共産圏さながらの異常に多い発行部数
2)大新聞系列が支配する日本のマスコミ(テレビ、ラジオ系列)
3)「記者クラブ」による情報の独占と統制
4)そこから生まれてくるマスコミの「特権意識」

戦後、民主主義が定着するまでの間、日本のマスコミが大衆を啓蒙したという役割は大きかったと言えますが、もはや現代日本においては、マスコミが大衆を言論誘導する、などという考え方自体が「不遜」と言えます。

日本の新聞・マスコミはほとんど全てが同じニュースを流し、ほとんどすべてが同じ意見を述べています。なぜいつもこんなにも意見が統一されているのでしょうか?

その原因の全てが「記者クラブ」にあるとは言いませんが、やはり「日本の世論は俺たちが動かす」という、あまりにも傲慢な「特権意識」が垣間見られます。

世論を誘導するのではなく、多くの様々な意見を世に送り出し、問いかけ、自由に意見を戦わせる場を作らねば、真の民主主義など永久に訪れないでしょう。

いずれにせよ、主要4紙(読売、朝日、毎日、日経)だけで、2,500万部の発行部数という異常な世の中は、決して長くは続きません。

日本を除くどこの国においても、世界的に有名な超一流紙でさえ、せいぜい発行部数は、50万部から100万部なのです。

日本も「大マスコミ系列」が再編され、分散して、様々な意見がWeb上で自由に戦わされる時代が、必ず来ると私は確信しています。

今回のこの「朝日、読売、日経3社の提携」はその序章にすぎないと思うからです。

米の三菱UFJ系銀行、課徴金36億円 資金洗浄見逃す

2007.9.18 asahi.com

米司法省と米銀行監督当局は17日、三菱東京UFJ銀行の米国子会社傘下の銀行「ユニオンバンク・オブ・カリフォルニア(UBOC)」に対して、資金洗浄(マネーロンダリング)にからむ口座とその取引を見逃した疑いで、課徴金と民事制裁金計3160万ドル(約36億5000万円)の支払いを命じた。同行は支払いに応じる方針。

邦銀や邦銀傘下の銀行が資金洗浄がらみで課徴金などを科されるのは初めて。

米司法省によると、UBOCは03年5月~04年4月の間、メキシコの両替商が開設した口座で、大量のコカインの売買で得たとみられる資金を預かるなどしていた疑い。01年9月の米同時多発テロをきっかけに、犯罪組織などにからむ資金洗浄を制限する目的で規制強化された米銀行秘密法に違反した疑いという。

・・・・(記事の転載ここまで)

1987年に起きた「 東芝機械ココム違反事件」が思い出されます。あの時は、東芝の子会社が、共産圏への輸出が禁止されているハイテク機械(潜水艦の部品)をソ連へ売ったことにより、ソ連の潜水艦のノイズが消え、探知が不可能になった、と米国政府から非難されたことから始まりました。

その後、東芝はアメリカ社会から袋叩きにあってしまったのですが、これには後日談があります。「ベルリンの壁が崩壊」した後に、情報が公開され、東芝機械の部品はソ連潜水艦のノイズ消却には、何も役立っていなかったことが明らかにされたからです。

結局「巨額の対米貿易黒字を出す日本企業へのいじめ」がその背景にあったと言われています。

さて、今回の三菱UFJ銀行の「事件」は、麻薬・覚せい剤販売組織の資金を洗浄したという「罪状」です。ターゲットとなる「敵」が「共産圏」から「麻薬組織」や「テロ組織」へと変わりはしましたが、相変わらず日本企業の「平和ボケ」を突かれた格好になります。

2001年の「9.11テロ」後、米国の「対テロ戦略」は激変しました。表の顔はご存知のとおり、アフガニスタンやイラクへの「軍事行動」です。

「裏の顔」は、世界中の資金の流れを把握する情報戦略です。

小規模テロを完全に防ぐことは不可能ですが、中規模から大規模のテロを封じ込める最大の手段は、ブラックマネーの流れを把握することだからです。

「9.11テロ」後、米国はスイスの各銀行に対し、全ての口座の情報公開を迫りました。もしそれに応じなければ、「米国との一切の取引を禁ずる」と脅しました。米国に見放された銀行は、「倒産」せざるをえないからです。

通常であれば、いかに米国であっても、そのような強硬手段をとれば、世界中の非難を浴び、実現できなかったでしょうが、なにせあの「9.11テロ」の直後だっただけに、徹底的な守秘義務を誇るスイスの銀行でさえも、応じざるを得なかったと言われています。

グローバリゼーションが進めば進むほど、このように米国主導の政治、軍事、経済の各戦略に振り回されることになります。

「平和ボケのまま、一生を終えたい」と願う日本人は多いでしょうが、グローバリゼーションを捨てない限り、日本を取り巻く状況がなかなかそうはさせてくれないようです。

世界一の中小企業(その4)

オイル荷役ポンプで世界シェアの50%以上、シンコー

「シンコーは、タンカーが運んできた原油を陸上の精製施設に汲み上げるのに必要なオイル荷役ポンプで、世界シェアの50%以上を占めるトップメーカー。同社の生産が中止になったり、致命的欠陥商品を送り出すようになったりしたら、グローバルな経済活動に大きな影響が出かねない。中でも世界有数の原油輸入国である日本の経済が、壊滅的な打撃を受けるのは必至だ」(「世界を制した中小企業」黒崎誠著、講談社現代新書)

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<カーゴオイルポンプ (同社のホームページより)>

なんだか、先日ご紹介した自動車部品メーカーの話を思い出します。

地震の被害でリケン(自動車部品メーカー)が、ピストンリングの生産をストップしたら、日本の全自動車メーカー(12社)の生産ラインが一時操業停止となり、12万台もの減産が余儀なくされた、という話です。

この「株式会社シンコー」と言う会社の「概要」を同社のホームページから拾ってきました。

【住 所】  広島市南区大州5丁目7-21

【事業内容】  陸舶用各種ポンプ、蒸気タービン、各種省エネ自家発電プラントの設計・製作

【資本金】   2億円

【従業員】   合計 604名 (男性549名、平均年齢43歳 女性55名 平均年齢33歳)

【売上高】
2000年10月期 130億円
2001年10月期 143億円
2002年10月期 208億円
2003年10月期 192億円
2004年10月期 202億円
2005年10月期 228億円
2006年10月期 246億円

【関連会社】   シンコーマシナリーズヨーロッパ、東洋機械、マスヤ工業

【主要取引先】   国内外の海運、造船、電力、ガス会社 etc

また、同社はつい最近(2007年9月)、経済産業省の「第2回ものづくり日本大賞」で優秀賞を受賞しています。

世界中の原油供給に多大な影響を与えかねない、この「小さな巨人」の力はいったいどこにあるのでしょうか?

1. 徹底的な顧客第一主義

海外展開を始めた当初、南アフリカ近海を航海中の顧客タンカーのポンプに故障が発生した。すぐさまシンコーの修理要員は飛行機を乗り継ぎ、南アフリカへ飛び、そこからヘリコプターをチャーターして、数百キロ離れた洋上のタンカーへ向かい、タンカーが港に入る前に、全てのポンプの修理を終えてしまった。

今では故障の報せがあれば、遅くとも翌日には、地球上のどこにでも技術者を派遣できる体制になっている。(前述の同著より)

2. 技術第一主義

鋳造製品の生産拠点を人件費の安い海外に移転させている企業は多いが、シンコーがライバル各社と逆の経営方針をとっているのは、自社で作ることによって、比較にならないほど高いクオリティの部品が製造できるからだ。

この高品質の部品が、高品質のオイルポンプをつくり出し、強い国際競争力を生み出している。工作機械の使用などの無人化によってコストを引き下げる一方、「手作りでなければできない分野は国内で」とこだわっているのである。(前述の同著より)

世界一の中小企業各社に共通して言えることは、特定の分野で圧倒的な技術力を持ち、その技術力を自前の社員が支えている、ということです。

「技術力」と「他社との差別化」にこだわるのであれば、多くの翻訳会社も、これを見習わなければならなりません。

グーグル、電子書籍の販売を計画か–米報道

2007.09.07 CNET Japan

Googleは2007年秋、出版社と協力して同社データベースにある書籍の完全デジタル版を有料で公開し始めることを計画している。

・・・・(記事の転載ここまで)

この記事によると「出版社が書籍の価格(表示価格の一定割合と思われる)を設定し、Googleと利益を分配する。もしそうなら、出版界を挙げて書籍のデジタル化に取り組む時代が来るだろう。」とあります。


この件に関しては、”著作権”の問題を中心に、様々な見方があると思いますが、ここでは少し違った側面から、この問題を取り上げてみます。

それは、”紙資源”という側面からです。

通勤電車の中で読む「本」や「新聞」や「雑誌」は確かに便利ではありますが、紙資源という観点から考えれば大いに問題があります。

「紙の無駄使い」→ 「森林の減少」→ 「CO2の増加 」→ 「環境破壊」 → 「地球温暖化」 → 「異常気象」

近頃世界中で見られる、「異常気象」の原因の一つに「CO2」、つまり「二酸化炭素」が深くかかわっている、と多くの学者が指摘しています。

「CO2排出量の抑制」が重要なことはもちろんですが、「CO2を吸収する」森林の減少も同時に問題となっているからです。

となると、今回のGoogleの計画のように、書籍をどんどんディジタル化したほうが森林保護のためにはよいのでしょうか?

下記は、「日本製紙連合会」のホームページに公表されている資料です。

consumption

「国民一人当たりの紙・板紙消費量」は不思議なことに、「IT先進国」ほど多いことがわかります。

「コンピュータにより、ペーパーレス化が進む」と言われながら、実は紙の消費量は、年々増え続けています。わが国の2005年の紙・板紙の生産量は、20年前(1985年)の約1.5倍に増えています(日本製紙連合会の資料より)。

理屈から行けば、電子化により紙の消費量は減るはずなのですが、なぜか増え続けているのです。「コンピューターが最大の紙食い虫」と言われる所以です。

と言うことで、今回のGoogleの電子書籍の販売計画に関しては、著作権の問題をクリアーできたとしても、諸手を挙げて賛成とまではいかないようです。

ウィキペディア、信頼度は?利用者急増、誤った情報も

2007.09.04 asahi.com

だれでも編集できるネット上の無料百科事典「ウィキペディア」が、巨大化を続けている。利用者が急増する一方、誤った情報がそのまま記載されている場合も。常識破りの百科事典は、どこまで信用できるのか。

wiki

紙媒体の朝日新聞の中に同じ記事がより詳細に出ています。

その中に”Wikipedia”創始者、ジミー・ウェールズ氏のコメントがあるので、その一部を下記にご紹介しておきます。

<記事引用>
—-ウィキペディアは、どの程度正確なのでしょうか?
「参加者が増えるにつれ品質が上がってきている。英国の科学誌が2005年、ウィキペディアとブリタニカ百科事典の自然科学分野の項目を調べたら、前者は1項目につき平均4ヶ所の間違いがあり、後者は3ヶ所だった。安楽死など意見が分かれるテーマでも、最終的にはバランスのとれた記事になることが多い」

(中略)

—-誤った情報や中傷への対象はあるのでしょうか?
「ユーザーによる編集を制限・禁止する『保護』機能はすでにあるが、日本語版でも今後、一部の項目で、経験豊かな編集者が内容を認めてからでないと、表示できないようにする。これによってオープン性を保ちながら、質を向上させたい」
<引用終わり>

翻訳業に限らず、今や調べ物をする際に欠かすことのできない「情報源」ウィキペディアですが、当然のことながら、全ての情報が正確であるわけはありません。間違いも多いでしょう。

しかし、何を持って「正確」とするのか、何を持って「不正確」とするのか、それだけでも、なかなか線引きの難しいところです。

「太陽が地球の周りを回っていた時代」もあれば、新発見により「歴史の事実」が変わることもあります。学者によりそれぞれの「学説」が異なる場合もあれば、古代学者が土器を自分で埋めて、「歴史を捏造」する場合もあります。

従来の紙媒体(新聞・雑誌・本・辞書等)の情報は信憑性が高く、ネット情報は低い、と考えるのは危険です。

情報源の少ない時代には、選ばれた数少ない「エリート」からの「古い情報」に、ひたすら頼らざるを得ませんでした。

しかし、今は違います。多くの専門家が、様々な情報を、様々な角度から、ネット上に公開しているので、それらを丹念に調べることにより、以前よりもずっと高い確率でその信憑性を検証できるようになってきているからです。

あふれかえる情報洪水の中から、玉石混交を見分ける目を持てるよう、自らが能動的に動き、自らが「洞察力」を磨く努力をしなければ、個人の持つ「情報格差」は、今後ますます広がっていくでしょう。

グーグルCEO、「ネット検閲を非関税貿易障壁に」と主張

2007.8.30 CNET Japan

検索エンジン業界大手、Googleの最高経営責任者(CEO)は、表現の自由を守るため、インターネットにおける検閲を非関税貿易障壁として認定するよう求めている。

(中略)

Googleで欧州における企業コミュニケーションと広報を担当するディレクター、Rachel Whetstone氏は、同社が中国で自主検閲を実施しながら、一方で言論の自由を促進することに矛盾はないとしている。

「現地の法律に従う必要があるため、中国ではリンクしないよう義務づけられている情報もある。これは言論の自由と相容れないわけではなく、矛盾もない。中国の発展を促す最良の方法は中国と関わりあうことであって、中国を遠ざけることではない。確かにわれわれは中国で情報を削除しているが、削除したことを明確に示している。これを行っている検索エンジンは中国ではわれわれだけだ。中国でサービスを行うことでより多くの情報を提供できるし、削除するのはほんの一部に過ぎない。1%を削除し、99%を提供している。こうした姿勢に異論がある人がいることは承知している」とWhetstone氏は話している。

(後略) ・・・・(記事の転載ここまで)

世界の検索エンジンマーケットで圧倒的なシェアを占めるGoogleが、中国でどのくらいのシェアを持っているかと言うと、下記のとおりです。

「シェアは最大手の地元企業Baiduが43.9%を握り、2位はYahoo! Chinaで21.1%。Googleは3位にとどまりシェアは13.2%となっている」(2006年6月23日のITmedia Newsの記事)

「Baidu」は、漢字で「百度」と書く、中国系企業ですが、シェアで圧倒的大差をつけられている「Google」に焦りでもあったのでしょうか。昨年あたり「Googleは中国政府と裏取引をしたのではないか?」と言う疑惑が持ち上がり、日本国内でも話題になりました。

私は昨年10月10日に「グーグル社長、村上憲朗氏のセミナー」を聞きに行ったのですが、その中で、中国政府とのやりとりに関する質問が出てきて、村上社長の回答は下記のようなものでした。

質問:「中国では中国政府がGoogleに圧力をかけ、中国政府に都合の悪い検索結果は表示させないようGoogleと裏取引をしたという噂が流れていますが、それは真実ですか?もし真実だとしたら一部の権力者の情報統制に加担するという姿勢はGoogleのポリシーに反するのではないですか?」

村上社長:「おっしゃるとおり、中国政府からの要請を受け入れていることは事実です。しかし、それは裏取引というようなものではありません。中国政府では“法〇功”や“天〇〇事件”などいくつかのテーマを違法と認識しているので、さきほどお話した4つのルールの第1番目、犯罪にかかわるサイトに該当すると判断せざるを得ないからです。はっきり言ってこれはGoogleにとって“苦渋の決断”でした。中国では通信の全てを管理しているのは政府なので、”Better than nothing”ということで中国での活動を開始しました。これは“世界中のあらゆる全ての情報を整理する”というGoogleのミッションに反するものであり、本来であればこのように情報を取捨選択するというような僭越な行為など一切やりたくないのですが、犯罪行為や反社会的な行為に加担するわけにはいかないので、ルールを決めてやむを得ず情報の取捨選択を行なっています。」

このときの村上社長の答弁も苦しかったのですが、今回の米国Googleのディレクター、Rachel Whetstone氏の答弁は、もっと苦しいですね。

伊勢丹“名より実”選択…三越、プライド捨て生き残り

2007.8.24 FujiSankei Business i.

三越と伊勢丹が23日、正式に経営統合で合意した。社風や企業文化が極端に異なるうえ、負け組と勝ち組の組み合わせに対し、業界関係者は交渉の難航を予想した。“百貨店衰退”への強い危機感が、予想を覆し、両社を歩み寄らせた。ただ、規模の面では勝ち残りの条件である「売上高1兆円クラブ」入りを果たしたが、交渉の過程でも顔をのぞかせた主導権争いを乗り越えて融和を図り、相乗効果を発揮していく作業は一筋縄ではいきそうもない。

・・・・(記事の転載ここまで)

意地もプライドも捨て、呉越同舟の道を選ばざるを得ないほど、この「百貨店」業界の競争も激しさを増している、ということでしょう。

実際、「百貨店」と書きましたが、現在のデパートの品揃えはすでにもう「百貨」ではなく「十貨」と呼んでもよいほど品数が激減しています。各分野の専門店にはとうていかなわないからです。

そこで、日本人の大好きなヨーロッパ高級ブランド品を目玉に客を呼び、衣料品を中心に販売する「洋服屋」さんに変貌しつつある、と言ったら少し言いすぎでしょうか?

実際米国の老舗デパートへ行くと、日本の「イトーヨーカドーの2階」のような雰囲気の中で、衣料品と日用雑貨品ばかりを売っています。

日本では、90年代以降、流通革命が始まり、大手デパート、スーパーにも大きな影響を与えました。当然、零細商店が寄せ集まる「地元商店街」へは、それ以上に影響が大きく、多くは「シャッター銀座」とか「ゴーストタウン」と呼ばれる悲惨な状況に陥っています。

しかし、日本の全ての流通業が悪いのかと言うと、そうではなく、急成長を続ける小売業や卸売業も数多くあるのです。戦後長きにわたり、規制で守られ続けてきた産業、つまり、金融業、流通業、建設業、運送業などに「勝ち組」と「負け組み」のコントラストがはっきりと現れています。

やはり、ここにも「グローバリゼーション」と「インターネット」の力が決定的な影響を与えているからです。

人々はもう「閉ざされた世界」より「情報のオープン化」を支持します。

「買わされていた時代」より「消費者が選ぶ時代」を支持します。

したがって、もうこの流れは変えようがありません。

ある地方都市の「シャッター銀座」商店街の本屋さんの話です。この埃の積もる小さな本屋さんには、一日にわずか5人ほどのお客さんしか訪れません。

それなのに、この本屋の店主は元気そうに仕事をしています。なぜなのでしょうか?

答えは、”Amazon.com”でした。「インターネット」の集客により、昔の本の在庫を多く持つ、その本屋さんは、見た目とは裏腹に商売を成り立たせています。なかには、1冊数十万円というプレミアムのつく古書もあるそうです。

実際これは私自身の経験ですが、私はある本を数十年間も探していたことがあります。その本は、どの大型書店にも図書館にもありませんでした。

しかし、アマゾンで検索すると、第1巻は山口県、第2巻は茨城県、第3巻は東京都の小さな本屋さんにあるということがわかり、それぞれ取り寄せ、無事読むことができました。あの本も私が読まなければ、ただの「燃えるゴミ」でしかなかったでしょう。

時代の変化を前向きに捕らえるか、後ろ向きに捕らえるかで、結果は大きく違ってきます。私はこの変化がおもしろくて仕方がありません。

世界一の中小企業(その3)

世界最小の歯車と先着順採用、樹研工業

2002年、世界初となる100万分の1グラムの超小型歯車を開発した、工業用プラスチック製品製造メーカーの「樹研工業」は、微細加工の分野で世界中から一気に注目を集めました。

しかし、注目を集めたのはよいのですが、開発した超小型歯車は、そのあまりの小ささに用途がなく、未だにまったく売れていません。

今のところ需要があるのは、1,000分の1グラムの歯車まで、ということですから、100万分の1グラムの歯車がいかにケタ違いに小さいかがわかります。

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<米粒に乗った100万分の1グラム、10万分の1グラム、1万分の1グラムのギア。米粒が巨大に見える。>

それでは、なぜこのような途方もない製品開発に数億円もの資金を投入したのでしょうか?

株式会社樹研工業は、本社を愛知県豊橋市に置く、従業員約70人、売上高約28億円の典型的な地方の中小製造業です。

社長の松浦元男氏によれば、

「樹研工業はいろいろな優れた技術を持っているんです。でも結局、我々のような小企業ではそれを必要とするところに届けることができない。だとしたら、打ち上げ花火を上げて気付かせるしかない。こちらの注目を集め、名前を売り、技術力を見せつけ、向こうから会いたくなるように仕向けなければならないんです」

予想どおり、樹研工業の名前は全国区となり、日本中のマスメディアはもとより、海外のメディアまでもが取材に来るまでになりました。現在では社長の松浦氏は講演会や大学講師としても引く手あまたです。

当然、国内外の大メーカーも黙ってはいません。「それだけの技術があるならこんなものがつくれないだろうか」と、たちまちデンソーのような、売上高3兆円を超える世界企業から仕事が舞い込んできました。また、スイスの有名時計ブランドのスウォッチ社など、欧米の企業からも引き合いが来たのです。

現在同社はヨーロッパ、アジアを中心に世界100社ほどと取引を行うまでになり、まさにオンリーワン企業となったわけです。

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<樹研工業の工場内(同社のホームページより)>

しかし、樹研工業の名前を高めたのは、超小型歯車の技術力だけではありません。実は、この会社はきわめてユニークな人事制度を採用しているのです。

社員を採用するときは、

・先着順 (つまり、早い者勝ち)
・無試験
・学歴、国籍、年齢、性別は一切問わない

ほかにも

・出勤簿やタイムカードは全くない
・徒弟制度による人材育成
・定年はない (本人が希望すれば何歳までも働ける)
・年功序列制

実際、社員の中には、

・数カ国語をこなす茶髪にピアスの高卒の女性
・視察に来た大学教授や博士に技術指導を行う元暴走族

という、この会社に入ってその才能を開花させた、変り種の社員がいるそうです。

matsuura

<株式会社樹研工業 代表取締役 松浦元男氏
まつうら もとお。1935年、愛知県名古屋市生まれ。愛知大学法経学部経済学科卒業後、5年間の会社員生活を経て、1965年に樹研工業を設立。学生時代には、トロンボーン奏者としてジャズバンドで活躍していた経歴も持つ。>

「大体、面接をやったって、人間の本質を10分程度で見抜けるわけがないんだよ。実際、うちで若手のホープと言われている人材が入社したばかりのころ、『今回ばかりは失敗したか』と僕は採用を後悔しました。いま、社内では『天才』とまで言われ、誰からも頼りにされています。でも、そのときは全くわからなかった。だから、当社を志望する気持ちがあれば、もうそれで十分だと思っています。 」(松浦社長)

スゴイですね。こんなことできる「翻訳会社」あるでしょうか?

ないでしょうね。

新日鉄、太陽電池素材に参入・2010年にも新工場

2007.8.19 NIKKEI NET

新日本製鉄は太陽電池の基礎素材である多結晶シリコンを量産、同市場に本格参入する。生産コストを最大5割低減できる製法を開発、年産2000トン規模の新工場を2010年にも建設する方向で検討に入った。JFEスチールも今年度中に同300トンの量産プラントを建設する。太陽電池メーカーの相次ぐ増産で多結晶シリコンは品不足が深刻化。鉄鋼大手の量産開始で素材を含めた太陽電池の国内一貫生産体制が強化され、環境分野での日本企業の競争力が一段と高まることになる。

・・・・(記事の転載ここまで)

非営利団体『エネルギー財団』が2005年に発表した太陽エネルギーに関する報告書では、仮に化石燃料を使う火力発電並みにコスト競争力を持つようになれば、米国の太陽エネルギー業界は、毎年60億ドルを超えるペースで成長する可能性があるそうです。

このNIKKEI NETの記事の中では、「(新日鉄が)生産コストを最大5割低減できる製法を開発、年産2000トン規模の新工場を2010年にも建設する方向で検討に入った」とあります。

多結晶シリコンは現在需要が逼迫し、かつ「化石燃料を使う火力発電並みにコスト競争力を持つようになれば、米国の太陽エネルギー業界は、毎年60億ドルを超えるペースで成長する可能性がある」わけですから、大変な宝の原石ともなりうるわけです。

オイルショック以後、新興国とのコスト競争に明け暮れてきた日本の重厚長大産業が生み出してきた、超省エネ技術が、今や世界の環境問題の重要な鍵を握っていると、10年前、20年前にいったい誰が予想したでしょうか?

数十年前、新日鉄もJFE(旧日本鋼管)も鉄に見切りをつけ、いくつかの高炉を廃止し、数多くの新規事業に乗り出し、見事なまでに全ての分野で失敗しました。

ところが、現在では中国等新興国の鉄需要が急激に旺盛になり、今や世界的に深刻な鉄不足となっています。

つまり新規事業がすべて失敗し、結局本業の「鉄」に回帰してきたというわけです。まさに歴史の「皮肉」としか言いようがありません。

今回のこの「多結晶シリコン」だけは、「世界の環境保全」のためにも、ぜひ成功してほしいものです。いや、成功してもらわなければ困ります。

世界一の中小企業(その2)

日用金属製品の研磨材で国内95%のシェア、宇治電化工業

高級洋食器や特殊金属など、鏡面のような仕上げが求められる高品質な研磨材で国内トップシェアを持つのが、高知県高知市に本社を置く宇治電化工業です。まさにニッチ市場に特化して成功した企業と言えるでしょう。

『同社は1951(昭和26)年に開発した人造研磨材「トサエメリー」を世に送り出して以来、常に最大シェアを維持してきた。日用金属製品の研磨材では現在、国内で95%からほぼ100%のシェアを占める。その主要製品である研磨・研削材は、業界の人間ならば海外でも「トサ(土佐)」のニックネームでどこでも通じるという、超ロングセラーのヒット商品だ。(小さなトップ企業 日経BP社)』

トサエメリーエキストラ
<研削力が高く、優れた耐久性を誇るトサエメリーエキストラは、当社のロングセラーです。(宇治電化工業のホームページより)>

また、宇治電化工業は現在、得意の電気炉を使った溶融技術で環境問題への取り組みに力を入れています。

そのひとつに「リサイクルストーン」があります。

年々増加する都市ゴミを焼却することにより排出される「焼却灰」を再資源化し、石と同じ程度の硬さを持つ物質にする技術を確立しました。

その技術を使って商品化されたものが、「舗装用コンクリート平板リサイクストーン」です。

リサイクルストーン
<焼却灰溶融資源処理「リサイクストーン」(宇治電化工業のホームページより)>

これ以外にも、養殖用水の水質改善、水槽・池の水質改善、染色用水の活水、水耕栽培用の水の活水、研削油の活性化、芝の育成促進に使う、「セラパワーストン&セラミックボール」を開発しています。

セラパワーストーン
<セラパワーストン&セラミックボール (同社のホームページより)>

また、変わったところでは、再生紙として使えない低品質の古紙を使って、「ヤケ鉢・すて鉢」という名前のリサイクル商品も開発しています。

やけ鉢
<高知工科大学坂輪教授など11機関で構成する研究チームで開発し、淡路花博にて、特殊栽培技術部門で銅賞を獲得した。(同社のホームページより)>

「特殊技術」と「環境対応」という21世紀のキーワードを兼ねそろえた宇治電化工業。

世界へ羽ばたく日もそう遠くないかもしれません。

世界貿易4年連続2けた増…中国、機械で日本抜く

2007.8.9 FujiSankei Business i.

日本貿易振興機構(ジェトロ)が8日発表した「2007年版貿易投資白書」によると、2006年の世界貿易額(輸出ベース)は推計で、前年比15.4%増の11兆8,742億ドル(約1,401兆1,556億円)と4年連続の2けた成長になった。

機械輸出

・・・・(記事の転載ここまで)

中国ではパソコンや通信機器などの輸出が伸び(27.2%増)、機械機器輸出の世界シェアで、初めて日本を抜き、ドイツ、米国に次ぐ第3位に浮上した、とのことです。

いずれにせよ、世界貿易額(輸出ベース)が推計で、前年比15.4%増ということですから、まさにグローバリゼーションが急速に進んでいる、というわけです。

また、IMF(国際通貨基金)の2007年4月の統計による世界全体の経済成長率は下記のようになっています。

2006年は、5.4%(実 績)
2007年は、4.9%(見通し)
2008年は、4.9%(見通し)

世界貿易が活発化することにより、各地の経済成長が促進されたのか、世界各地の経済成長が進んできたので、貿易が活発化しているのか、つまり「ニワトリが先か、タマゴが先か」はわかりませんが、とにかく相乗効果で、私たち人類は、人類史上未だかつてない、世界規模での高度経済成長を体験してきているわけです。

日本でも、大企業と中小企業の格差や都市部と地方の格差問題が叫ばれていますが、その原因は決して複雑なものだとは思いません。

答えは実に単純で「グローバリゼーション」・・・・・につきると私は考えます。

高度経済成長を続ける新興国にネットワークを持つ日本の大企業が、「バブル取引」により莫大な利益を上げ、過去4年から5年連続で、史上最高利益額を更新中です。そしてそれらの大企業と取引のある一部の企業も、同時に潤っている、と言うわけです。

ちまたでささやかれている、「2008年北京オリンピック後」や「2010年上海万博後」の「バブル崩壊」が実現しないことを祈っています。

しかし、この反動は、遅かれ早かれ、いずれ必ず訪れるでしょう。