中小企業とBRICs (その2)

チャイニーズドリームに魅せられるサラリーマン起業家

引き続き、日経ベンチャーの中で財部誠一氏が連載している「中小企業とBRICs 熱狂と混沌の市場の中で、日本企業は・・・・・・・」の記事をご紹介しながら、内容を考えていきたいと思います。

(以下記事の要旨)
1970年代に日本企業の対中投資が始まって以来、幾多の中堅・中小企業が中国に投資してきたが、現実は厳しく、死屍累々である。だから日本の経営者たちからは中国の悪口が絶えない。

一方で今、中国で一旗上げようという日本人サラリーマンも増えている。

BRICsの中でも中国経済の充実ぶりは群を抜いている。米ゴールドマン・サックスのリポートによると、2041年には、中国がGDPで米国を追い越し、世界一になると予測している。

中国沿岸部に多数の世界の一流メーカーが生産拠点を構え、その周りを中堅・中小企業が取り囲み、巨大なピラミッド構造を構築している。

「世界の工場」としての中国の地位は当分、揺るぎそうにない。それだけに中国国内での外資系企業の競争は激しくなってきている。

中国国内の日本企業をターゲットに起業した日本人ビジネスマンが多数でてきている。一度中国経済の“熱さ”を肌で感じてしまった人々は、もう中国からは離れられない。今や日本にはない、サクセスストーリーを夢見ることができるからだ。

以上で記事の要旨は終わりです。

さて、1~2年ほど前の話になりますが、私は、中国国内に工場を構えるある日本人経営者の話を聞いたことがあります。その人の話によると、過去10年間、上海などの大都市の人件費、特に知識人の給料はすごい勢いで上がっているが、工場労働者の賃金はほとんど上がっていない、とのことでした。

なぜかと言うと、地方に住む農民の生活レベルはきわめて低く、都市住民との賃金格差は桁違いに激しい。したがって都市部に移住して工場に勤務したいと願っている人々が無数にいる。そのような人々が5億人位いるのではないか、という説さえある。

その人の会社では、各作業を流れ作業で分担させ、一つ一つのグループを5人くらいに分けている。なぜ、流れ作業かというと、流れ作業であれば仕事の全体がつかめず、社員が辞めてもノウハウが流出しない。またなぜ、5人なのかと言うと、数年毎に5人のうち2人くらいを首にしているが、3人が残れば仕事の引継ぎに影響は出ない。なにせ5億人もの「工場で働きたい人々」の待機者がいるので、首にしてもすぐに補充ができる。だから、インフレ社会の中で給料を据え置いても、それこそ異論を唱える者など誰もいない、したがって中国の工場の価格競争力は当分の間ゆるぎそうにない、とのことでした。

この安い労働力が「世界の工場」中国の経済を根本から支えているわけですが、中国政府による「住居移転の制限」により、地方の貧しい農民は、「一路都会へ!」とは簡単にはいかないようです。したがって、地方住民の不満はもはや限界に近づきつつある、とはよく日本でも聞く話です。また、地方農民の暴動を中国政府が必死になって抑え込んでいる、という噂も絶えません。

さて、それでは、経済産業省の最新の統計資料、我が国企業の海外展開の動向、を見てみましょう。

2005年度新規設立・資本参加現地法人数

北 米     76社
中 国    185社
ヨーロッパ  76社

2005年度撤退現地法人数及び撤退比率

北 米 135社 4.6%
中 国 109社 2.6%
ヨーロッパ 122社 4.9%

注.撤退比率=05年度撤退現地法人数/(05年度対象現地法人数+05年度撤退現地法人数)×100

つまり、2005年度には、北米やヨーロッパへの進出企業数の倍以上が中国へ進出し、中国から撤退した企業数も、撤退比率も、欧米進出に比べて少ない、と言うことがわかります。数字だけを見れば、日ごろ喧伝されているような、「理解しがたい国、中国」というイメージはなく、むしろ欧米人よりも、われわれ東アジア人に近い国「中国」、ではないでしょうか。

また、過去十年間の撤退比率を見ても、欧米進出に比べて、中国だけが「理解しがたい、ひどい市場」だとは言えないことがわかります。日本企業の海外進出の失敗は、中国の特殊性ではなく、グローバル化できない、日本企業そのものに問題があるのかもしれません。

(この項、続く)

中小企業とBRICs (その1)

業績絶好調の日本の大企業は、海外で大儲けしている!

日経ベンチャー(日経BP社発行)という月刊誌に、フリーのジャーナリスト、財部誠一(たからべせいいち)氏が連載している記事があります。「中小企業とBRICs 熱狂と混沌の市場の中で、日本企業は・・・・・・・」という題名なのですが、なかなか興味深い内容です。また、われわれ翻訳業界にも大いに関係があるので、これから何回かにわたってその内容をご紹介しながら考えていきたいと思います。

まず、第1回は「中小企業が好景気に乗れない理由」という題ですが、その内容を下記にまとめてみます。

日本の景気拡大は、「いざなぎ景気」を抜いて戦後最長。
上場企業は4年連続増益。直近の3年は、毎年史上最高益を更新
大手企業のボーナスは去年(2006年)史上最高額に達した。

ところが、多くの中小企業経営者は好景気を実感していない。
そこから生まれた発想が「格差」、
景気がいいのは「東京だけ」、
調子がいいのは「大企業だけ」

しかし、「景気がいいのは東京だけ」はまったくのウソ。
トヨタのお膝元である愛知県、
大規模な自動車工場の集積地となった福岡県、
液晶テレビでリードするシャープの工場誘致に成功した三重県など、
好調な地方は少なくない。今起こっているのは東京と地方の格差ではなく、地方間格差であり、その差は業績好調な大企業誘致の成否の差である。

要するに今の景気拡大のエンジンは大企業の劇的な業績回復に尽きる。
しかし、大企業ならどこもみな好調というわけではない。
業績好調組の共通点は、海外でとてつもない利益を上げている、ということだ。
海外で巨大な営業利益を上げている日本企業の例は、
トヨタ  8,023億円
日産   5,117億円
ホンダ  5,024億円
松下電器 1,000億円以上
キヤノン 1,000億円以上

実は今、世界景気はかつて人類が経験したことがない、火をふくような好景気に見舞われている。IMF(国際通貨基金)によると、過去3年間、世界の経済成長率は4%を上回り、06年、07年もこの驚くべき高成長が続くと予測されている。

要するに今、素晴らしい業績を上げている大企業は、絶好調の世界経済を、自社の収益拡大に直結させた企業ばかりだ。そこには劇的なビジネスモデルの転換が見られる。

単純な「輸出」という発想を捨て、世界のどこで生産し、いかなるブランドを立ち上げ、どのような販売ネットワークを構築するか、を考えることが重要。

人口減少時代に突入した日本の国内市場の成長にはおのずと限界がある。だが、「フラット化する世界」は今、かつてない高度経済成長を迎えている。その象徴がBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)である。この歴史的チャンスに目をつむっているようでは経営者とは言えない。中小企業も本気で世界を視野に入れるべき時代がやってきたのである。

さて、以上で記事は終わりですが、この中の「単純な輸出という発想を捨て」という記述が気になります。確かに日本の大手電機メーカー各社は、海外での生産高や販売高を急激に伸ばしてきています。海外での販売高がこんなに急激に伸びているのだから、当然翻訳の発注量もうなぎ登り、と思いきや、ほとんど増えていなかったり、逆に減っていたりもします。

なぜだろうと不思議に思い、調べてみたことがありますが、わかったことは「国内で生産して輸出する」という従来型ケースと「海外で生産して海外で販売する」という21世紀型ケースの違いにある、という私なりの結論に達しました。

部品をアジア諸国に点在する現地法人で生産し、北米や欧州へ輸送して、そこで組み立て、そこで販売する。そして、現地で組み立てを担当した企業のマニュアルライターが、簡単に作られたスペックだけを頼りに、現地の言葉でマニュアルを書き起こす。したがってそこには「翻訳」という工程が発生しない。

20世紀の翻訳会社は、国内のオフィスで翻訳の仕事が発生するのを待っていればよかったのですが、21世紀の翻訳会社は、BRICsのような成長著しい新興国へ自ら乗り出し、「翻訳関連ジョブ」を開拓していくセンスが求められる、ということなのでしょうか?

(この項、続く)

NEC、利用者の意図を推定して効率的に検索する技術を開発

2007.4.6 CNET Japan

NECは4月6日、利用者が情報検索時にシステムから提示される検索ルールの中から、検索時の意図に近いものを選択することにより、検索結果を効率的に抽出する技術を開発したと発表した。

(中略)

これにより、たとえば「新製品」の「発売」に関する検索などといった単語の使われ方を特定した検索や、あるいは、「歯磨き粉」「口臭消臭剤」「デンタルフロス」といった「オーラルケア製品」の一括検索のような、その単語の上位概念も含めた包括的な検索など、従来は不可能とされていた検索方法が可能となった。利用者のイメージにあった、柔軟な検索が容易に実行できる。

(中略)

NECでは、この技術を同社の検索ソリューション、ドキュメント管理ソリューションなどの競争力を向上させるものと考えている。今後は、本システムの社内利用による導入効果の実証と改良をすすめ、ドキュメント管理製品・ソリューション、検索サービスなどでの早期の実用化を目指して研究開発活動を推進していくとしている。

・・・・(記事の転載ここまで)

今回のこの記事の説明では、あまりに抽象的すぎて、どこがどう画期的なのか、がよくわかりません。


どうやら、ある単語の「関連概念」や「上位概念」をも判断して、人間の行う検索をヘルプする機能のようです。

それが事実であるとすれば、検索時のみならず、ワープロの文字変換や機械翻訳の精度向上にも一役買うことになるでしょう。

ただし、今までの機械翻訳の進歩の度合いを見ていると、機械が言葉の「関連概念」や「上位概念」を判断できる能力を持つことは”至難のわざ”であると言わざるを得ません。

人間にとっては、誰もが知っていることが「常識」なのですが、機械に人間の「常識」を覚えさせることは大変です。まず、膨大な量の単語の概念を、ひとつひとつ覚えさせていかねばならないからです。

たとえば、「妻を食べた」と言うと、ホラー映画になりますが、「妻のさしみを食べた」後に「さしみの妻を食べた」のであれば、普通の会話となります。

通常、人間は常識で「妻」は「人」であることを誰もが知っています。しかし、機械がその常識を持つことは至難のわざでしょう。これ以外にも、建築用語で使う「妻」は、「建物の長手方向のはし」とか「切妻」などの意味も持っています。

機械が常識を持つようになると、そのうち機械にも感情が生まれてくるのでしょうか?

人間の脳を研究している学者によると、脳の細胞数と同じだけの部品を使い、同じアルゴリズムのプログラムを組めば、微生物から進化してきた動物や人間の脳と同様、機械(コンピュータ)が感情を持つことになるそうですが・・・・。

世界ネット広告費、2007年は28.2%の伸びを予測

2007.4.4 ITmedia News

インターネット広告費が急増、2008年中にラジオ広告費を上回る――メディアサービス代理店ZenithOptimediaが4月3日、世界の広告支出についての統計と、2009年までの予測を発表した。

これまでの10年間、毎年平均5%の伸びを見せてきた世界の広告支出額は、2006年には前年を6.2%上回り、4316億ドルに達した。広告市場は今後も拡大を続けるが、2007年の伸びは対前年で5.2%程度にとどまる見通し。一方、翌2008年は夏季オリンピック、米国の大統領選挙、サッカーの欧州選手権大会と「4年に1度」のイベントが相次ぐことから広告支出が増加、前年比6.2%の伸びが予測されている。

・・・・(記事の転載ここまで)

世界の広告費支出が伸びているということは、翻訳業界全体にとっても良いことでしょう。

近い将来、あらゆる情報がパーソナライズされ、各個人の好みに応じて、ピンポイントで個人宛に”配達”される時代が来るでしょう。

たとえば、インターネット検索や閲覧サイトの情報を記憶し、その人に興味ある情報だけをカスタマイズし、ニュースやCMとして配信する、とか、

ケーブルテレビのチャンネルの中から、その人がよく見る番組を記憶し、恋愛ドラマが多ければ化粧品とブランドバッグのCMを流し、サッカー中継が多ければスポーツ用具とスポーツドリンクのCMを流すとか、

iPodでダウンロードした情報に応じて、その人の好みの音楽・映像・芸能情報をカスタマイズして、CMとして流す、とか、

あるいは、車であるスーパーの前を通ると、カーナビやラジオやケータイに、その日のそのスーパーの特売品情報が流れている、とか、

非常に便利な世の中ではありますが、反面とても不気味な世の中とも言えます。しかし、世の中の情報量に応じて、「翻訳」の需要も増えていきますから、やはり、喜ぶべきこと、ではありますが。

2006年中日貿易額が2000億ドルを突破、経済依存度の深化を示す

2007.4.4 北京週報

商務部の最新の統計によると、2006年の中日貿易高は総額2073億6000万ドルと、2000億ドル代に突入。中日貿易依存関係は日増しに深くなっていることがわかった。

中日貿易額は1972年には10億4000万ドルだったのが、2002年には1000億ドルを突破し、その後2000億ドルを越えるのにたった四年しかかかっていない。

・・・・(記事の転載ここまで)

2004年の貿易統計資料をみると、日本からみた最大の輸入相手国は中国で、最大の輸出相手国はアメリカでした。その時点においても台湾と香港との貿易額を加えれば、日本にとって最大の貿易相手国は、中国語圏でした。そこからさらに対中貿易額は急増を続けています。いったいどこまで伸び続けるのでしょうか?

しかも、3月30日のブログの中でもふれたように、日本企業が海外に設立した現地法人の売上額は、今や北米での売上額に迫り、かつアジア諸国の現地法人から得る利益額は、どこよりも多くなっているのです。

途上国から資源を輸入し加工して、欧米諸国へ輸出し、外貨を稼ぎ繁栄を謳歌した、という戦後の日本経済成長の仕組みが、すでに終わっている、ということがこの数字を見てもよくわかります。

ところで、貿易立国日本は、天然資源をほとんど持たない国ですが、持たないからこそ得をした、という説があります。

ペリーの黒船以降、欧米列強は日本に関心を示さず、中国その他のアジア諸国ばかりを競って植民地化しました。その最大の理由は、日本に天然資源がなかったから、とのことです。

さらに第二次世界大戦後、日本は世界で一番安く、一番良質の天然資源を世界各国から自由に輸入しました。石油、石炭、天然ガス、鉄鉱石、ボーキサイト、天然ゴム、等々、一番安い国から買えたのです。なぜでしょうか?それは、日本に資源にまつわる産業がほとんどなかったからです。なまじ中途半端な資源産業を持つ欧米諸国は、自国の産業をつぶさないため、安い原材料を自由に外国から輸入するわけにはいかなかった、というわけです。そのため日本は、コスト競争力で他国より優位に立てました。

膨大な天然資源と人口の両方をあわせ持つ、”大国”中国は今後どのような成長戦略を持つのでしょうか?

中国経済の行方は、われわれ日本人の生活を、大きく左右する存在にいつの間にかなっていたのです。

字幕屋は銀幕の片隅で日本語が変だと叫ぶ

2007.4.2 SankeiWeb

本書は洋画の字幕翻訳者による、映画字幕業界の裏話&字幕翻訳者からみた日本語論。

ユーモア込めつづる業界裏話

映画と言語台本を渡されてから字幕をつくりあげるまで、わずか1週間ほどしかないということにびっくりしました。

・・・・(記事の転載ここまで)

上記は映画の字幕翻訳者が書いた本の紹介記事です。

かつて字幕翻訳のプロといわれる翻訳者やその業界関係者から、下記のような話を聞いたことがあります。

映画のセリフはすべて文字になっていて、 かつ、”it” とか “that” とか “them” とかの指示代名詞は、それが何を指すのかが、全て注釈で明らかにされているそうです。文章の主語が何なのかさえわかりずらい、技術翻訳の原文とはずいぶんと大きな違いです。

また、上記でふれているように「翻訳と字幕作成の期間がわずか1週間」なのだそうです。もともと字幕・映像分野の翻訳マーケットは規模が小さいうえ、それを一握りの著名な字幕翻訳者達が、短納期、低料金で仕事を請け負ってしまうため、料金相場が崩れ、この分野で翻訳者が生計を立てるのはかなり難しい、とのことでした。

ケーブルテレビやDVDの普及とともに、字幕・映像翻訳の需要も増えてきているとは聞いていますが、もともとの仕事の量が少なく、競争が激しい世界ですから、趣味を仕事に生かす、とはなかなかいかないようです。

同じ翻訳業ではありますが、字幕・映像関係の仕事は、われわれ技術翻訳専門の翻訳会社とはかなり違う世界のようです。やはり「餅は餅屋」ということでしょうか。

海外事業活動基本調査結果概要

2007.3.30 経済産業省統計

第36回
海外事業活動基本調査結果概要

- 平成17(2005)年度実績 -

売上高は製造業、非製造業ともに大幅に増加し、過去最高

2005年度の現地法人の売上高は、184兆7884億円、前年度比13.5%の増加となり、過去最高となった。このうち、製造業が87兆3340億円、同10.1%の増加、非製造業は97兆4544億円、同16.7%の増加と、製造
業、非製造業ともに大幅な増加となった。

アジアが大幅に増加し、北米との水準差は縮小

2005年度の地域別売上高をみると、北米は66兆1548億円、前年度比10.7%の増加となった。このうち、製造業は29兆9982億円、同5.7%の増加、非製造業は36兆1566億円、同15.2%の増加となっている。

アジアは65兆2723億円、前年度比23.8%と大幅に増加し、北米との水準の差は縮小した。このうち、製造業は36兆1382億円、同16.2%の増加、非製造業は29兆1342億円、同34.7%の増加となっている。

アジアの内訳をみると、中国は製造業、非製造業とも大幅に増加したことから23兆2353億円、前年度比25.3%の増加、ASEAN4は18兆6604億円、同16.6%の増加、NIEs3は21兆630億円、同28.7%の増加となった。

ヨーロッパは38兆2402億円、前年度比2.7%の増加となった。このうち、製造業は15兆9001億円、同4.0%の増加、非製造業は22兆3402億円、同1.8%の増加となった。

なお、BRICsは17兆798億円、前年度比48.3%の増加となっている。

・・・・(記事の転載ここまで)

詳細かつ膨大な量の情報なので、翻訳に関係ありそうな情報だけをほんの少し抜粋しました。

なお、上記中で使われている略語の国々は下記となります。

NIEs3 : シンガポール、台湾、韓国
ASEAN4 : マレーシア、タイ、インドネシア、フィリピン
BRICs : ブラジル、ロシア、インド、中国(除.香港)

ご多分に漏れず、アジアの躍進が著しいわけですが、売上だけでなく、経常利益においても、アジアの重要性が増しています。

アジア    2兆4960億円
北米     2兆4053億円
ヨーロッパ    9416億円
(アジアの経常利益は03年度以降、北米を上回っている)

アジア地域での経常利益の内訳は、下記です。

ASEAN4   9738億円
NIEs3    6845億円
中国    6332億円

NIEs3が若干ですが、中国を上回り、ASEAN4が圧倒的に利益をあげているところが意外でした。

一方、現地法人の撤退数はヨーロッパとアジアで増加。

アジア   242社 (前年度比 4社増加)
ヨーロッパ 122社 (前年度比24社増加)
北米    135社 (前年度比 1社減少)

アジアの内訳は下記で、なかでも中国は大幅に増加しています。

中国    109社(前年度比17社増加)
ASEAN4    71社(前年度比 6社減少)
NIEs3    51社(前年度比 9社減少)

撤退比率は、北米4.6%、ヨーロッパ4.9%で全地域の3.4%よりも高くなっているところが気になります。

Googleは機械翻訳を変革する

2007.3.29 ITmedia News

米Googleの将来のビジョンでは、人々は文書を世界の主要言語に瞬時に翻訳できるようになる。その実現を先導するのは言語学の専門家ではなく、機械のロジックだ。

Googleのアプローチは統計的機械翻訳と呼ばれるもので、言語学の専門家が文法ルールと辞書をコンピュータにプログラミングすることを必要としないという点で、従来の機械翻訳の試みとは異なっている。

Googleのアプローチは、人間が既に翻訳して2つの言語のバージョンがある文書を、コンピュータに大量に入力し、そのパターンを認識させ、その蓄積に基づいて翻訳を行わせるというものだ。

・・・・(記事の転載ここまで)

「人間が既に翻訳してある、2つの言語のバージョンがある文書」とは、おそらくTRADOS等の翻訳支援システムを使って作られた、「翻訳メモリー」のことでしょう。また「主な素材は国連と欧州連合(EU)の文書」とあるので、この両組織は翻訳メモリーを公開しているのかもしれません。

翻訳メモリーのオープンソース化とGoogleの検索技術の融合に関しては、私が書いている他のブログのなかで触れています。

→ 翻訳メモリーのWikipediaの出現?

また、Googleの翻訳への取り組みの遅れに関しては、このブログの中でも最近取り上げたばかりです。

→ 言葉の壁とインターネットと将棋ソフト

「Googleが繰り出すサービスはどれも斬新で卓越しているのに、翻訳だけはダメだ」と言ったばかりですが、さすがGoogle、ちゃんと画策中だったのですね。

しかし、この記事の中で、

昨年、長期有給休暇を利用してGoogleのプロジェクトに協力したエディンバラ大学のマイルズ・オズボーン教授は、下記のように語っています。

「チェスの対戦では、コンピュータは人間と互角の勝負をするようになったが、ソフトウェアが人間の専門家の翻訳のレベルに追いつくことはないだろう。また、機械翻訳は、専門家に翻訳を頼むべきものかどうか、を判断するための材料に使えば有益だろう。例えば、日本語の特許文献を機械翻訳にかけて、重要な内容かどうか見極めをつける、といった使い方が考えられる」

まさに地に足の着いた、現実的な考え方ですが、これでは現在の状況と大差ない気もします。

Wikipediaライバル「Citizendium」、パブリックベータ開始

2007.3.28 CNET Japan

Wikipediaの新しいライバルが米国時間3月25日、パブリックベータを開始した。

Citizendiumは一般的な知識に関する「市民による概説書」を自称している。誰でも情報を登録できる点で、Wikipediaとよく似ている。ただし、ユーザーには実名による登録が求められ、編集委員会が記事を管理する。

・・・・(記事の転載ここまで)

不特定多数の人間が自由に参加して、Web上で何かを作り上げていく、という意味では、OSの”Linux”や百科事典の”Wikipedia”が有名です。日本では、英語辞書の”英辞朗”なんかも有名です。

ただ”Wiki”を利用した情報源に関しては、出所が明確ではないため、書かれている内容の信憑性が必ずしも高いとは言えない、という声があるのも事実です。その点を解消しようとして新しく生まれたのが、この”Citizendium”なのでしょう。

かつては、限られた人間しか書物を出版できませんでした。しかし、インターネットの出現により、世界に発信される情報量は、天文学的数字の倍率で増えたのです。なにしろ、人類が今までに産み出してきた書籍情報量の300万倍が、去年のたった一年間で産み出されたわけですから→世界のデジタル情報量、4年後には6倍に

それでは、紙の情報は信憑性が高く、Web情報は信憑性が低いと言えるのでしょうか?私は必ずしもそうとは思いません。いつの時代も情報の質は玉石混交です。それでも、情報統制され”大本営発表”しか聞けなかった時代を思えば、たとえ洪水のような情報量であっても、ないよりはあったほうが良いに決まっているのです。したがって、これからの時代は、情報量が増えた分、情報を利用する側の選択眼や洞察力がより重要になってくる、と言えるでしょう。

いずれにせよ、この”Citizendium”の話は、利用者にとって、良いことはあっても、悪いことはないので、どんどん発展させていってもらいたいものです。

【社説】韓流、日本の大衆文化に負んぶに抱っこで生き残れるのか

2007.3.27 朝鮮日報

韓国に日本の大衆文化がなだれ込んできている。音楽や漫画、アニメーションに続き、映画やドラマ、小説の分野でも翻訳・翻案された日本発の作品が席巻している。

最近、大きな反響を呼んだドラマ『白い巨塔』と660万人を動員した映画『美女はつらいの』も、それぞれ日本のドラマと漫画を下敷きにした作品だ。日本の作品を原作とする映画は今年に入ってからすでに8本を数え、ドラマの制作者たちは日本の作品の版権を手に入れようと先を争っている。10代や20代の間では日本ドラマのマニアを指す「日ド族」という流行語まで誕生している。

日本の勢いは文学にも及んでいる。教保(キョボ)文庫(韓国最大規模の書店の一つ)の今週の売り上げ順位を見ると、10位までに日本の小説が6冊も含まれている。村上春樹、吉本ばなな、江國香織、奥田英郎らの小説は、とてつもないスピードで売り上げを伸ばしている、出版界の稼ぎ頭だ。先を争って日本の小説を翻訳しようとするため、版権料もかつての約10倍にまで膨れあがった。

・・・・(記事の転載ここまで)

韓国は、2000年の第三次日本文化開放策により、日本歌謡公演の全国開放、劇場用アニメの一部とすべての一般映画の上映など許可、CD(日本語以外の歌)、パソコンゲームソフトなどを解禁しました。終戦から実に55年もの歳月を経たのち、日本文化が韓国国内で開放されたわけです。

その後、わずかの期間で日本文化がここまで韓国国内に浸透しているとは知りませんでした。日本では、いわゆる韓流ブームにより、韓国の映画やテレビドラマが日本を席巻したわけですが、両国が文化を通じてお互いの交流を深めていくことは、実に素晴らしいことです。

1997年、サッカーフランスワールドカップ予選での出来事が思い出されます。日本代表の成績不振により、加茂監督がクビになり、日本は正に背水の陣で敵地、韓国のソウルに乗り込みました。ここで負ければフランス行きは絶望となります。結果は2対0で日本が勝ったのですが、試合後スタジアムを真っ赤に染めつくした韓国のサポーターが、「日本よ、一緒にフランスへ行こう」と大合唱のエールを日本へ送りました。すでにフランス行きを決めていた韓国に余裕があったことは事実ですが、その光景をテレビで見た私は、驚きと感動で胸が熱くなったことを覚えています。

文化の交流を通じて、お互い尊敬しあえる関係を築ければ、おのずと紛争は減り、協力し合ってこれからのアジア圏の発展に貢献できると信じています。韓国のみならず、中国も台湾もその他の国も含めて、アジア全体で協力し合い、21世紀のアジア圏を盛り上げていきたいものです。

言葉の壁とインターネットと将棋ソフト

2007.3.26 Tech-on

(前略)
ところで,インターネット検索サイトのGoogleは「世界中の情報を体系化し,アクセス可能で有益なものにする」というのがミッションだそうです。実際,Googleの繰り出すさまざまなツールやサービスは,どれもその目的にかなう優れたものだと感じていますが,残念ながら翻訳ツールに関してはお世辞にも誉められたものではありません。天才プログラマーがおおぜいいるらしいGoogleでも,自然言語処理の革新的アルゴリズムはおいそれと見つからないのでしょう。

(中略)
さて,ここで話が戻ります。翻訳という作業は,毎日毎日,世界中で大量に行われています。もし,これらが対訳集としてインターネット上で公開されていたらどうでしょう。コンピュータは文章の意味など理解できなくても,膨大な対訳データベースがあれば,それを元にして相当,的確な翻訳ができるのではないでしょうか。Googleの人もそのことには気づいているでしょうが,残念ながら原文と訳文はたいてい別々に掲載されます。そこでWWWコンソーシアムなどが音頭をとって「翻訳文を載せるサイトはできるだけ原文も載せること。ただし“対訳タグ”を付ければ原文は非表示でもよい」などのルールを決めるのです。世界中の翻訳者が協力すれば,すぐに実現できるアイディアだと思いませんか。

・・・・(記事の転載ここまで)

翻訳会社の経営者にとっては、なかなか興味深い記事です。この記事の趣旨を下記のように、「起承転結」でまとめてみました。

(起) 英語が世界共通語として普及してきたとはいえ,まだまだ私たちは高い言葉の壁にさえぎられている。

(承) Googleの繰り出すさまざまなツールやサービスは,どれも優れているが、翻訳ツールだけはダメ。天才プログラマーがたくさんいるGoogleでさえ,自然言語処理の革新的アルゴリズムは見つけられない。

(転) 先週、将棋ソフトも人間に勝てるレベルに近づいて来たらしい,というニュースが流れた。なぜ将棋ソフトが強くなったかと言うと,膨大な量の棋譜をソフトに読み込ませたため。

(結) 世界中で毎日大量に行われている翻訳を、対訳集としてインターネット上で公開し、その膨大な対訳データベースを利用する翻訳ソフトを作れば、かなり的確な翻訳ができるのではないか?

実は昨年の9月に、私はこれに関連した記述を私が書くもうひとつのブログの中で書いています。

翻訳メモリーのWikipedia化に続き、パーソナライズされた情報を各個人へ発信する検索エンジンの登場により、より完成度の高い「翻訳ソフト」が出現してくる、というストーリーです。そして最後は、このような言葉で締めくくりました。

「この項の最後に一言だけ付け加えておきます。
ダーウィンの『種の起源』の中に、次のような言葉があります。

『強いものが勝つわけではない。
賢いものが勝つわけでもない。
変化するものだけが勝つのである』」

チャンドラー代表作「ロング・グッドバイ」 半世紀経て村上版“完訳”

2007.3.22 Sankei Web

米ハードボイルド小説の巨匠、レイモンド・チャンドラー(1888~1959年)の代表作「ロング・グッドバイ」を作家の村上春樹さんが翻訳し、今月、早川書房から出版した。この作品は1958(昭和33)年に同社から出版された故清水俊二さんの名訳「長いお別れ」がよく知られているが、今回の村上版は細部まで丁寧に訳されており、ほぼ半世紀を経て“完訳版”が日本に登場した形だ。

(中略)

清水訳は名訳の誉れ高く、大勢のファンを獲得してきたが、実は省略された部分があり、一部の愛好家は不満があったといわれる。村上訳の初稿は昨春に上がったが、通常は1、2回で終了する推敲(すいこう)作業が、村上さんによって今年1月まで7、8回にわたって行われるなど、正確を期したという。

早川書房の千田宏之編集部長兼ミステリマガジン編集長は「清水さんは映画字幕で有名な方で、エッセンスをうまく抽出してセリフも映画のようにびしっと決まっている。村上さんの翻訳は一字一句を大切にし、しかも翻訳小説であることを意識させないほど読みやすい」と説明する。

(後略)

・・・・(記事の転載ここまで)

この記事を読むと、レイモンド・チャンドラーや村上春樹ファンならずとも、思わずこの新訳を読んでみたくなってしまいます。特に「村上さんの翻訳は一字一句を大切にし、しかも翻訳小説であることを意識させないほど読みやすい」・・・ということですから、とても興味深いところです。

昨年7月に、世界的ベストセラー「ハリー・ポッター」シリーズの日本語訳をした、翻訳家の松岡佑子さんが、同シリーズの翻訳料収入をめぐり、東京国税局から04年分までの3年間で35億円を超える申告漏れを指摘される、という「事件」がありました。

一般的に、文芸翻訳で得られる翻訳者の収入は、本当に少ないと言われています。今回の「ロング・グッドバイ」の翻訳では、「ハリ・ポタ」のような巨額収入は得られないでしょうが、さすがに村上春樹ともなると、そのネームバリューだけで本も売れてしまうのでしょうね。やはり有名人は得です。

実力さえあれば「技術翻訳」では、相当な収入を堅実に得ることも可能ですが、「文芸翻訳」だけでは、生計を立てることさえも困難と言われています。しかし、「文芸翻訳」の魅力は、宝くじのように一発大儲けもあり得る、といったところでしょうか。もっとも一発大儲けを夢見て翻訳している翻訳者はほとんどいないと思いますが・・・・。

原子力白書、情報公開徹底求める

2007.3.20 NIKKEI NET

原子力委員会(近藤駿介委員長)は20日、2006年版の原子力白書を閣議に報告した。エネルギー価格の高騰や地球温暖化問題へ対応するうえで、原子力発電が中核的な役割を果たすと強調する。北陸電力の志賀原発1号機の臨界事故隠しについて、電力各社などに情報公開を徹底するよう求める見解文をまとめ公表した。

白書では中国やインドなどの経済発展で、2030年には世界のエネルギー消費量が現在の1.5倍になると予想する。原油が06年一時、1バレル75ドルになるなど価格高騰を引き起こした背景には、世界第2位のエネルギー消費国になった中国の影響が大きいとした。

・・・・(記事の転載ここまで)

相変わらず日本の原子力発電関係者の「情報隠蔽体質」は困ったものですが、ある意味それも、過去数十年間虐げられてきた彼らの怨念なのかもしれません。1979年のアメリカ、スリーマイル島の原発事故と1986年のウクライナ、チェルノブイリの原発事故以降、世界中で原発に対する猛烈な反対運動が起こりました。それ以後、日本とフランスを除けば、新規の原発建設は先進国では、ほとんど行われていないはずです。

「これからの世の中は原子力の時代」と聞いて、一生懸命原子力分野の勉強をしてきた学生や研究者たちにとって、突如冬の時代が訪れたわけです。アメリカやヨーロッパでも原発関係の技術者の数はどんどん減っていき、相当数が他分野へ移行したと聞いています。

ところがまたまた時代が変わり、近頃の原油高にCO2排出規制の問題も加わり、原発が再び脚光を浴びています。

東京電力(2003年)の試算によると、1キロワット時の発電コストは、原子力(16年) 7.3円 石炭火力(15年) 7.2円 LNG火力(15年) 7.0円 石油火力(15年) 12.2円 水力(40年) 10.6円*設備稼働率80%と仮定(水力は45%)、( )内は法定耐用年数、となります。

つまり、コスト的にみれば、原発は石炭やLNGとそう大差なく、石油や水力よりもずっと安い費用で発電できることがわかります。

一方、1キロワット発電時のCO2排出量は、石炭火力887グラム、石油火力742グラム、LNG火力478グラム。これに対し、原発はCO2排出ゼロです。

この流れにより、近頃アメリカで30年ぶりに原発を新規建設することに決まりました。一説によると今後十年間で60兆円もの膨大な予算を原発建設に費やすそうです。

ところが、現在アメリカには原発関係の技術者が極端に少なく、また巨大な原発プラントを建設できるメーカーは世界に、日立、東芝、三菱重工という日本の3社くらいしか存在しない、とも聞いています。

これからは日本の原発関係、プラント輸出関係の会社は狙い目です。当然、それらに付随する翻訳関係の仕事も急増するはずです。

日本が文化輸出大国になる日は来るのだろうか?

世界を席巻する「MANGA」という記事を読んで、改めて考えてみました。

日本が文化輸出大国になる日は来るのだろうか・・・・と。

これはかねてよりの私の持論ですが、ある民族がいくらお金を稼いでも、外国の人たちからは決して尊敬はされません。文化を輸出できるようになって初めて尊敬される民族あるいは国になれると信じているからです。

明治時代の文豪、夏目漱石が「三四郎」の中で、次のように述べていたのを思い出します(趣旨は下記のようであったはずです)。

「日露戦争に勝ったから、もうこれで我々は一等国民だと多くの日本人は騒いでいる。しかし、今の日本人が世界に誇れるものなどいったいどこにあるのだ。あそこに見える富士山は確かに素晴らしい。日本が世界に誇れる財産だ。しかし残念ながら富士山は、太古の昔から日本にあったもので、日本人が作ったものではない」

時代は飛んで、平成の時代の話に戻りますが、日本人が外国へ行くと、「TOYOTAは素晴らしい」とか「SONYは素晴らしい」とか「CANONは素晴らしい」とか、外国の人たちから誉め言葉を頂戴することがよくあります。これらは全て日本人が作り上げた日本の製品です。夏目漱石の時代には誇れるものが富士山しかなかったのものが、現在では世界から賞賛される製品を、日本人が作れるようになった、ということであり実に喜ばしいことです。

しかし、喜んでばかりいて良いのでしょうか?私は外国へ行くといつもこのような質問をしてみます。

「あなたは誰か日本人の名前を知っていますか?」

あるいは、日本に住む外国人には、このように聞いてみます。

「日本に来る前に、誰か日本人の名前を知っていましたか?」

すると、もののみごとに、誰も日本人の名前を知りません。誰も日本の文化に興味を持っていないからです。

織田信長も坂本竜馬も聖徳太子も水戸黄門も赤穂浪士も牛若丸もピンクレディも木村拓哉も松下幸之助も本田宗一郎も夏目漱石も長島茂男も貴乃花もユーミンもサザンオールスターズも、誰も知りません。もちろん日本の総理大臣の名前や政治家の名前など誰も知るよしがありません。

経済的には日本よりもずっと貧しい国なのに、文化大国という国があります。

たとえば、中国・ロシア・ブラジル・ギリシャの一人当たりのGDPは、日本に比べてかなり低いはずですが、これらの国々からは、料理、文学、音楽、スポーツ、思想、学問、等々・・・・・、多くの文化を日本は輸入しています。

そして、欧米先進諸国から日本へ押し寄せる文化の洪水は、今さら言うまでもありません。

現在、日本が輸出している「文化」には何があるのでしょうか?

寿司、柔道、カラオケ、ゲームソフト

最近やっと、この後に続いてきたものがあります。

漫画(&アニメ)です。

未知の国の文化を理解するためには、その国の何か、つまり、文学や音楽や映画やスポーツなどを通じて、その国に強い「関心」を示すことがなによりも一番です。その「関心」はやがて「憧れ」に変わり、ついには「尊敬」へと進化していきます。

ハリウッド映画がアメリカ文化を世界へ広めたように、日本の漫画が日本の文化を世界へ広めてくれることを願ってやみません。

漫画を通じて、「小さな牛若丸が豪腕の弁慶を打ち負かし、家来にしてしまう話」や「明智光秀が織田信長を討つ本能寺の変」や「草履とりの木下藤吉郎が太閤秀吉に立身出世する話」や「赤穂浪士が主君の仇をとる話」や「水戸黄門の印籠を見たとたん、なぜか悪者が突然ひれ伏してしまう話」や「坂本竜馬が薩長連合を成し遂げる話」などを世界中の誰もが当然のように知っている、そんな時代がいつの日か来ることを夢見ています。

物価世界一、今年もオスロ=東京は5位、大阪6位に後退-英社番付

2007.3.9 時事通信

【ロンドン8日時事】英経済誌エコノミストの調査部門、エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)が8日までにまとめた世界主要都市の生活費番付によると、ノルウェーのオスロが昨年に続き「最も物価の高い都市」の座を維持した。東京は5位(昨年は2位)、大阪・神戸は6位(同4位)とそれぞれランクを下げた。
2位にはパリが入り、以下コペンハーゲン、ロンドンと欧州の都市が上位を占めた。このほか、経済の急成長を背景にモスクワが29位から26位に順位を上げ、ニューヨーク(28位)を上回った。
EIUでは「欧州通貨高の影響が大きいが、日本の物価はほとんど変化がないのに対し、欧州の物価は上昇している」と分析している。

・・・・(記事の転載ここまで)

日本の物価は今後長期にわたり、下がり続けるでしょう。

緩やかなデフレが十数年、あるいは数十年間続くことにより、日本の国際競争力は高まり、日本国民の生活レベルは一段と向上していくはずです。

なぜなら日本の金融資産と不動産の大半を所有する、「日本の強者」たち、つまり「老人」たちが、それを望んでいるからです。

1400兆円とも言われる個人金融資産の大半を所有し、かつ年金も定期的に入ってくる彼らにとって、物価が下がることは実に歓迎すべきことであり、誰も声高に文句を言う人はいません。居心地の良い人たちは常に黙っているのです。

物価を下げ、人件費を下げたうえで、知的財産を海外へ売り、外貨を稼いでいく以外に日本人が豊かな暮らしを継続させていく方法はありません。他の先進諸国に比べ極端に少ない観光収入も、物価を下げることにより多少好転していくでしょう。

つまりデフレは日本にとって、「五十害あるけど、百利もあり」と考えるべきなのです。デフレ経済を推進させた小泉政権があんなに人気が高かった最大の理由はここにある、と私は考えています。

世界のデジタル情報量、4年後には6倍に――米予測

2007.3.7 ITmedia News

2010年には、世界で9880億Gバイトのデジタル情報が作られる――調査会社の米IDCが、電子メールや文書、写真や動画などのデジタル情報量の規模について、米EMCの後援で行った調査予測を発表した。

これによると、2006年に作成もしくは複製されたデジタル情報量は161エクサバイト(1610億Gバイト)に上った。この量は、これまでに書かれた書籍の情報量合計の約300万倍に当たるという。デジタル情報量は今後も増加を続け、2010年には2006年の約6倍の988エクサバイト(9880億Gバイト)に達するという。

・・・・(記事の転載ここまで)

人類が今までに産み出してきた書籍の情報量の300万倍が、去年のたった一年間で産み出され、そして瞬時に世界中を飛び交ったわけです。人類が産み出した最初の情報革命が「文字の発明」で、第2番目が「印刷機の発明」、第3番目が「ラジオ・テレビ等のマスメディアの発明」だとすると、「インターネットの発明」が人類にとって第4番目の情報革命となるわけです。そして人類が産み出す情報革命の度に、「翻訳」の重要性が高まってきました。これからますます翻訳の重要性は高まることはあれ、低くなることはありえないでしょう。

英語で授業するフリースクール 相模原市が特区申請

2007.3.6 東京新聞

相模原市内で小学生に相当する年齢の子どもたちに英語で授業を行っているフリースクールについて、同市が学校として認可するよう内閣府に特区申請していたことが分かった。このフリースクールは株式会社が運営しており、認可されれば会社が運営する全国初の小学校となる。

・・・・(記事の転載ここまで)

小学校に英語の授業を導入すべきかどうか、が議論され始めてから久しいですが、私は「導入すべき」という立場をとっています。

ただし、英語の授業だけでなく、日本の学校教育そのものを根本的に変えていく必要があります。現在日本の学校では勉強を教えなくなりました。学校の代わりを塾が行っています。早く「たてまえ」を捨て、教師の間にも、生徒の間にも「競争原理」を導入しなければ、日本の教育現場は崩壊するでしょう。いや、もうすでに崩壊していると言っても過言ではありません。

子供達は夜「塾」や「予備校」へ行っているおかげでかろうじて「勉強」をしていますが、昼間の学校の時間が無駄です。子供達がかわいそうです。昼間の学校の時間がなければ、太陽の下でもっと遊ぶ時間が持てるからです。しかしこんな状態が長期間続いている日本と言う国の「異常さ」を思うと、本当に日本という国の将来が心配になります。

中国の電話契約、8億3000万件に

2007.3.5 中国情報局

中国情報産業省の最新統計によると、1月末まで、中国で電話を利用している家庭は8億3000万世帯に達し、そのうち、固定電話を利用している家庭は3億6800万世帯、携帯の利用者は4億6700万人となっている。

・・・・(記事の転載ここまで)

インターネットの普及が世界を変えたことは、誰もが知っている事実ですが、同様にケータイの普及が中国の政治・経済に大きく影響を及ぼしている、といういことはあまり知られていません。固定電話の普及のためには、巨額のインフラ整備が必要となります。しかし、ケータイのアンテナ設置には、そうお金はかかりません。またソーラー発電のアンテナが開発されたため、メンテナンスもほとんど必要ありません。こうやって中国奥地へとケータイが普及していきました。PCを買う金銭的余裕はなくても、ケータイならなんとか手が届くからです。

かつては、政府が発行する新聞「人民日報」や国営放送からしか情報を得られなかった地方の貧しい農民達が、ケータイを通じて情報を交換し始めました。もう政府による情報統制は抑制が効きません。どんどん経済の自由化の波が地方へも押し寄せていきます。もう市場経済の勢いは誰も止めることができません。あとは政治の自由化がいつ起こるかですが、それももはや時間の問題でしょう。

日本人は本当に農耕民族なのか?欧米人は本当に狩猟民族なのか?

唐突に何を言い出すのか?とお思いでしょうが、かねてより私が不思議に思っていた日本の常識について、これから少し検証してみたいと思います。

今から10数年前、私があるアメリカ人に、「日本人の祖先はほとんどが農民だから欧米人の考え方とはずいぶん違う」と言ったところ、彼はけげんな顔をして「ヨーロッパでも昔はほとんどの人が農民だった」と答えました。まさに「目からウロコ」だったワケですが、まずは、小麦とお米の歴史から考えてみましょう。

世界各地の古代遺跡から麦の穂や粒が発見されていることから、今から1万年以上も前から、人類は小麦を食べていたと言われています。また、稲の栽培が始まったのは、今からおよそ1万年~7000年前。インドのアッサム地方から中国の雲南省(うんなんしょう)という地域にかけての山あいと言われ、その後、東南アジアや中国各地に広がり、日本に伝わったのは今から3000年~2700年前の縄文時代と言われています(※資料:文珠省三・福原敏男「米と日本文化」および渡部忠世編「稲のアジア史3 アジアの中の日本稲作文化」より)。

(検証1)

欧州・アジアの各地で1万年以上もの昔から小麦や米が食べられていたが、日本でお米が食べられ始めてから、まだわずか3,000年ほどの歴史しかない。

→ 欧米人が筋金入りの「農耕民族」ならば、日本人は「農耕民族」としては実に「新参者」である。

次にここ数百年間の動きを見てみましょう。

(検証2)

士農工商という身分制度が存在した時代、つまり江戸時代の、農民と漁師を合わせた人口は、全人口の83%~76%であったと推定されている。中世ヨーロッパにおける全人口に占める農民の割合に関する資料は残念ながら見あたらないが、18世紀から19世紀まで農奴制が敷かれていたヨーロッパでは、農民の比率が日本と同様か、それ以上であったということは、容易に想像できる。

→ 農民人口の比率を歴史的に見れば、欧米人はまちがいなく農耕民族と言える。

次に「狩猟民族」について考えてみましょう。

(検証3)

そもそも現存する狩猟民族は、現在地球上にほとんどいない。ジャングルの奥地に住むごくわずかな未開人だけだからだ。あたりはずれの大きな「狩り」だけでは、多くの人口を支えることはできず、農耕技術が発達することにより、多くの人口を支えることができるようになったからである。

→ 農耕作業を行うようになる以前の民族を「狩猟民族」と呼ぶのであれば、日本人は欧米人よりもより「狩猟民族」に近いことになる。

次に、まわりを海に囲まれている日本の漁師事情を考えてみましょう。

(検証4)

現代社会において、弓矢や鉄砲で動物を捕まえて食べて生計を立てている人間はほとんど存在しない。もし「狩猟」で生計を立てている人たちがいるとしたら、それは「漁師」のことである。

→ 現在世界で「漁師」による「狩り」が最も盛んに行われている漁業大国は、日本である。

次に日本の食料自給率の観点から考えてみましょう。

(検証5)

日本の穀物自給率は、OECD加盟30か国中29位。日本よりも低いのは、アイスランドのみ。供給熱量自給率で見ると、フランス141%、ドイツ100%、イギリス78%、日本40%(平成10年、農林水産省)となっている。

→ そもそも、本当に「農耕民族」を標榜する民族が、こんなにも自国の食糧事情を軽視するだろうか?「狩猟民族」であるからこそ自国の農業をここまで軽視するのである。

結論:

以上から鑑み、欧米人は純粋な「農耕民族」であり、日本人は「農耕民族」と言うよりは、むしろ「狩猟民族に限りなく近い農耕民族の一種」と言える・・・・・・・、と言うのが私の結論です。

三菱重:アジアのエンジン事業拡大、中国でも再編

2007.3.2 中国情報局

三菱重工業は需要が堅調なアジア市場での高速の中大型ディーゼルエンジンのサービス事業を拡大する。そのため、シンガポールにアジア地域統括会社を設立。中国でも体制を再編し整備工場を確保する。投資額は約11億円で、アジア地域での同事業の売り上げを、3年後には現在の1.7倍の150億円規模に拡大することを目指す。

・・・・(記事の転載ここまで)

重電、鉄鋼、造船、海運、エネルギーなどの「重厚長大産業」は、一昔前まで、「過去の遺物」とか、「構造不況の象徴産業」などと言われ続けてきました。「これからは軽薄短小の時代だ」などと言われ、世の中から切り捨てられかけていた時代がウソのようです。

長い間の構造不況を勝ち抜いてきた日本の重厚長大産業は、徹底的なコスト削減運動により、超効率経営を生み出してきました。また超省エネ製法から産み出される技術は、やがて環境に一番やさしいエコロジー技術に変わり、それだけでも今や世界中から引っ張りだこの知的財産となっています。

それらの技術を持つ熟年技術者の貴重な技術が、安易な人減らしにより、アジア各国へ流出していると聞いています。政治に頼るのは嫌いですが、「ものづくり」大国日本の灯を消さないよう、行政側にも一役かってもらいたいものです。

平成18年の知的財産侵害物品の差止状況

2007.3.1 財務省

平成18年の税関における知的財産侵害物品の輸入差止件数は19,591件で、前年と比較すると46%の増加となった。一方、輸入差止点数は約98万点で、前年と比較して11%の減少となった。

また、一件当たりの平均輸入差止点数は50点で、前年(82点)と比較して39%の減少となった。

なお、平成18年6月から輸出取締りの対象となった育成者権侵害物品に係る輸出差止実績はなかった。

・・・・(記事の転載ここまで)

仕出国(地域)別輸入差止実績構成比(件数ベース)では、中国が48.2%、韓国が44.5%、知的財産別輸入差止実績構成比(件数ベース)では、商標権が98.6%、品目別輸入差止実績構成比(件数ベース)では、バッグ類が56.7%となっています。

つまり中国、韓国からの偽ブランドバッグの取り締まりに右往左往した、というわけです。

ヨーロッパの各有名ブランドメーカーに「御社の全世界の売上に占める日本市場の割合は?」と聞くと、どこも判で押したように「40%でございます」と答えます。

しかし、あるヨーロッパ有名ブランドの元幹部だった人の話によると、実際には40%ではなく、80%なんだそうです。

「このブランドバッグは日本人しか買わない」と言うと売れなくなるので、各社知恵を絞って誤魔化している、とのこと。

真実はわかりませんが、日本市場をターゲットにするニセモノが実は、ヨーロッパ有名ブランドのバッグだけ、というのも知的財産大国を目指す国としては、なんだか寂しい、と思うのは私だけでしょうか?

教委改革、国の権限強化必要=自民政調会長

2007.2.27 時事通信出版局

自民党の中川昭一政調会長は26日、名古屋市内のホテルで開かれた内外情勢調査会で講演し、政府が今国会に提出を予定している教育改革関連3法案のうち、 教育委員会の制度改革を定める地方教育行政法改正案について「教委が国の決めたことやルールに違反した場合、国が何らかの関与をする必要がある」と述べ、 教委に対する国の監督権限の強化を盛り込むべきだとの考えを表明した。

・・・・(記事の転載ここまで)

最近英国人から聞いた話ですが、英国では中学生の授業を各科目別に3段階の学力レベルにクラスを分け、授業を行うそうです。たとえば、数学の授業であれば、「できる子」「普通の子」「できない子」の3つのクラスに分け、各クラスのレベルにあわせて授業を進めていきます。その理由は、「人には個性があり、向き不向きもある。また全ての人に高等数学が必要なわけではない」と言う実に単純明快なものです。また、このクラス分けは、中学生に対してのみで、小学生や高校生には適用しないそうです。理由は、小学生には基礎的なものを全員に教え、高校生は、中学時代にクラス分けしてあるので、すでに同レベルの生徒がそろっているから必要ない、と言うことだそうです。

日本でこんなことをやったら、パニックが起きるでしょうが、実は大昔から行われているのです。塾の内部でです。今、日本の子供達の教育格差は深刻に広がりつつあると思います。日本人にとってなによりも大切な文化、”たてまえ”を未だに捨てきれないからです。

日本の教育制度もそろそろ本腰を入れて変えなければならない時期が来ている、と痛切に感じます。

特許黒字、最高の5470億円・06年

2007.2.23 NIKKEI NET

海外から受け取った特許料収入から支払い分を差し引いた日本の特許収支が、2006年に初めて5000億円を超えた。海外生産の拡大で日本企業が海外子会社から受け取る特許料が増えた一方、特許戦略の強化で欧米企業に支払う特許料を抑制した。アジア企業からの収入も拡大している。特許収支は03年に黒字に転換して以降、着実に黒字幅を増やしており「知的財産」で稼ぐ体制が定着しつつある。

・・・・(記事の転載ここまで)

1980年代初め、米国レーガン大統領が打ち出した「強いアメリカ」構想の中にこの知財戦略がありました。大国にもかかわらず、大統領の一声で迅速に行動を起こすアメリカは、思い切ってどんどん製造業を切り捨てて行き、知財とソフトウェア産業へ経済を集中させていきました。IBMスパイ事件で日本企業がつるし上げられ、やがてマイクロソフト、その他のソフトウェア企業が次々と台頭してきます。あとは皆さんご存知とおりです。日本の知財戦略は出遅れすぎている、と常々思っていたのですが、それでも着実に成果が出てきているということは、一日本人としても、翻訳会社の経営者としても、大変に喜ばしいことです。まあ、日本の製造業が持つ知的財産の価値から言えば、当然のことであり、もっともっと伸びていくと私は考えていますが。

メール中毒を治すための12ステッププログラムが登場

2007.2.21 ITmedia News

アルコール中毒者や麻薬中毒者向けの既存の支援プログラムと同様に、電子メール中毒からの回復を12のステップで導くプログラムが登場した。

ペンシルベニア州在住のエグゼクティブコーチであるマーシャ・イーガン氏が、スピーディで効率的である半面、時間を浪費させられているというユーザーの声もあるこの電子ツールの管理方法を伝授するプログラムを考案した。

イーガン氏のプログラムは、「接待のゴルフ中に、1ショットごとにBlackBerryをチェックしたために、潜在顧客が、電子メール依存者とはかかわりたくないと考え、離れてしまった」といったような症例を踏まえて作成された。このプログラムは、電子メールの乱用が、生産性の低下を通じて企業に多大な損失をもたらす恐れがあるという懸念の高まりに対処する狙いがある。

「米国の産業界は危機を抱えているが、CEOの多くは認識していない」とイーガン氏。「彼らは、この問題がいかに大きな損失につながるか分かっていない」

・・・・(記事の転載ここまで)

インターネットの普及が世界中を変えた、ということは今さら言うまでもありませんが、とりわけ、われわれ翻訳業界には、絶大な影響を与えました。Web検索やe-mailや電子商取引によって、まさに世界が一つになってしまったからです。そして、業種業態を問わず、「メール中毒」というありがたくない社会現象も同時に引き起こしているようです。

ただし、いつの時代にも「行き過ぎる人間」というものは、必ず存在するものです。われわれが子供の頃は、テレビが「一億総白痴化」の元凶と言われ非難され、ちょっと前までは、ファミコンが「子供の人格を破壊する」と言われ非難されていました。今はそれがケータイとメールに入れ替わっただけだのことです。

もちろん極端なメール中毒も困りものですが、今の時代、つまらない用事で会社に電話をかけてくる古いタイプの人間も困りものです。電話は、問答無用で相手の時間を奪い取ってしまうからです。これからの世の中は、「相手の都合」を一切無視して、「自分の都合」だけで割り込みを入れる、電話という行為は、緊急時を除いて「マナー違反」と言われる時代がきっと来るでしょう。まだちょっと時間はかかりそうですが。

「端末メーカーは世界市場に挑戦する気はあるのか?」–第3回モバイル研

2007.2.16 CNET Japan

2月15日に開催した第3回「モバイルビジネス研究会」では、前回、キャリアの姿勢に非難が集中したように、国内端末メーカーの姿勢が厳しく問い質された。

「メーカーは世界市場に挑戦する気はあるのか?」「あるに決まっている」――。

携帯電話における国際競争力低下を背景に、販売奨励金制度やSIMロックの是非など業界の根幹を見つめ直す目的の同研究会。今回も激しい議論がやり取りされ、業界の主要プレイヤーの内向き姿勢が鮮明に浮きぼられる結果となった。

・・・・(記事の転載ここまで)

総務省主催の「モバイルビジネス研究会」でのやりとりですが、これが日本のケータイビジネスの今後の行方を決める大事な会議になっているわけです。

ケータイの第3世代を導入する際、弊社も多少関わったので興味のあるところです。

しかし、日本は世界有数のIT関連機器メーカーを抱えながら、パソコンやケータイではなかなか世界をリードすることができずにここまで来ました。

「メーカーは世界市場に挑戦する気はあるのか?」という質問に対して、「もちろんあるが、リスクとのかねあい」との回答なので、今後にはあまり期待は持てそうにありません。

ただ、世界中どの国においても、「通信」の方向性はその国の国家戦略と密接に関わっているので、民間企業の技術力だけでなく、日本の政治力そのものも、実は深く関係していると思います。

GDP速報、年4.8%増 10~12月期

2007.2.15 Sankeiweb

内閣府が15日発表した平成18年10~12月期の国内総生産(GDP、季節調整値)速報は、物価変動を除く実質で前期(7~9月期)比1.2%増、年率換算で4.8%増と市場予測を上回る高い伸びとなった。プラス成長は8期連続。ただ、日銀の追加利上げ判断に影響するとして注目された個人消費は前期比1.1%増と増加に転じたものの、前期の落ち込みを取り戻したにとどまり、日銀の判断はますます難しくなっている。

物価の影響を含めた名目GDPは1.2%増(年率5.0%増)で、16年10~12月期以来8四半期ぶりに名目成長率が実質成長率を上回り「名実逆転」を解消した。

速報段階で年率0.8%増だった前期の実質成長率は0.3%増に改められた。

物価の総合的な動きを示すGDPデフレーターは前年同期比で0.5%減で、依然としてマイナスが続いているが、マイナス幅は前期の0.7%減より縮小した。

寄与度でみると、内需が1.0%、輸出から輸入を差し引いた海外需要が0.2%のプラスで、マイナス寄与は民間在庫のみだった。

・・・・(記事の転載ここまで)

本日の日経新聞、紙媒体の情報によると、「日本経済が輸出で稼ぐ傾向を強めている。2006年の日本の国内総生産(GDP)に占める輸出の比率は15%に近づき、過去最高となる見通し。

中国などの新しい市場が拡大していることや、コスト削減や円安などで企業の輸出競争力が高まったことが背景だ。

人口減時代に突入した日本の海外頼みは今後も強まる方向。世界経済の変動に揺れ動きやすい経済構造にもなる」とあります。

翻訳会社の社長としては、輸出が増えることは、実に嬉しいことですが、上記の産経新聞を含め、他のNET上の記事は、どこも「内需が1%プラス、外需が0.2%プラスなので、内需主導型の景気回復」としか書かれていません。

実は原油高により増えた輸入を上回る輸出があったのです。

一方「物価の総合的な動きを示すGDPデフレーターは前年同期比で0.5%減」ということで、物価が下がりながら、名目GDPも増えているので理想的な経済成長だとも言えます。

現在の日本人は、実はデフレ社会にどっぷりつかり、十分満足しているのです。小泉政権の支持率が高かったのも実はそこらへんにあると、私は考えています。

古いタイプの経済学者は、われわれが大学の授業で習ったように、「デフレ=不況=悪」と考えているので、なぜ民衆が小泉政権を支持したのかが理解できません。したがってデフレ社会は、まだ当分続く、と私は予想しています。

オンライン翻訳サービス、質や料金に大きなバラつき

2007.2.9 usfl.com

ウォール・ストリート・ジャーナルは、オンラインで提供されている翻訳サービスのレベルを比較するため、Shindigやcrashcourseなどのスラングを含む120文字の英文ビジネス招待状を作成し、中国語、日本語、ドイツ語、スペイン語、ロシア語、アラビア語への翻訳を5つのサービスで試してみた。

・・・・(記事の転載ここまで)

翻訳会社の社長としては大いに興味のある記事ですが、結論的には予想通り、翻訳ソフトによる翻訳は、「訳のレベルが低すぎてビジネスで使用するには不適切」でした。

人間が行った翻訳はある程度品質は良かったとのことですが、「120ワードの英文ビジネス招待状を、中国語、日本語、ドイツ語、スペイン語、ロシア語、アラビア語へ翻訳」して、550ドル(約66,000円)ということですから、これならば50年前の人間による翻訳サービスと何にも変わっていないわけです。

現在のところは人間が翻訳したデータから、翻訳メモリーを抽出し、機械翻訳へ組み込んでいく「翻訳メモリ+機械翻訳システム」がより現実的な改善方法のひとつであると言えます。

これ以外にも、翻訳前の原文をあらかじめ多言語へ翻訳しやすいように書く手法や、文書のコンテンツをカテゴリー別に区分けすることにより、翻訳しやすくする手法も考えられています。

日本でも四半世紀ほど前から、「機械翻訳システム、97%の精度達成、完成まであと2年」の新聞の見出しが何度出たことでしょうか。いずれにせよ、われわれ翻訳会社にとっては、常に目が離せない話題ではあります。

特許の国際出願件数、韓国と中国が急増・昨年

2007.2.8 NIKKEI NET

世界知的所有権機関(WIPO)が7日発表した2006年の特許の国際出願件数(速報値)は前年比6.4%増の14万5300件となった。国別の件数では韓国と中国が急増し、それぞれ4位と8位に浮上。日本を含めた東アジアが世界の4分の1を占めた。WIPOは「世界の発明地図が変わりつつある」と指摘した。

日本は8.3%増の2万6906件で、03年以来米国に次ぐ2位を保っている。韓国は26.6%増の5935件、中国は56.8%増の3910件と急増した。韓国や中国の企業は、進出先や輸出先でも特許権を確保するため自国内だけの出願から、複数の国に一度に申請できる国際出願に切り替える傾向を強めている。

・・・・(記事の転載ここまで)

中国の国際特許出願件数が56.8%増とのことです。もちろん、結構なことではありますが、正直なところ、中国は他国の特許をとる前に、自国の知的財産管理にもっと力を入れて欲しいという気がします。

中国は、政治、軍事、経済、文化における世界の「大国」であるわけですが、いまだ、日本を含む世界各国からODA開発援助を受けている「発展途上国」でもあります。

ある意味この「発展途上国」という位置づけが、色々な点で事を難しくしています。

環境問題では、中国は「発展途上国」だからという理由で規制の対象外となっています。

ODAにより他国から多額の援助を受けながら、一方で多額の軍備にお金を使っています。

知的財産の問題でも、「発展途上国だから」という理由で、世界各国もあまり強くは突っ込めません。

国民一人当たりの収入はまだまだ「発展途上国」の域を超えていませんが、トータルの額では、すでに先進国の仲間入りをしています。確か中国のGDPは、イタリアを抜いたと最近報道されたはずです。

また一部の報道では、中国の富裕層は約3,000万人いて、日本の富裕層の数と変わらず、消費する金額も同等レベルと聞いています。

県が通訳・翻訳員を募集

2007.2.6 **県内ニュース

県は4月1日採用の通訳・翻訳員(英語)1人を募集する。

書類の提出は14日まで。

通訳・翻訳員は県の行政事務一般の翻訳や外国からの賓客来県時の通訳業務などに当たる。

短大卒以上で、英検準一級以上か、TOEIC試験で800点以上の成績を修めていることなどが条件。

雇用期間は1年間で更新もある。

詳しい問い合わせは県国際交流グループ電話***(***)****へ。

・・・・(記事の転載ここまで)

これは実在するある地方新聞の、ある県の人材募集の記事広告です。まさに驚きの広告です。21世紀の日本に、いまだにこのような組織が残っているわけです。

「短大卒以上で、英検準一級以上か、TOEIC試験で800点以上の成績を修めている」人に、「県の行政事務一般の翻訳」や「外国からの賓客来県時の通訳業務」ができると本気で考えているのでしょうか?

いや、そう信じているからこのような広告を出しているのでしょうが、「翻訳や通訳なんか、女の子の仕事だから、安い給料でいくらでも使ってやる」という思想が、この文章から透けて見えます。

国際化とかグローバリゼーションが叫ばれてから久しいわけですが、日本の真のグローバリゼーションはまだまだ遠い、と実感させられた記事でした。

TIA、商務省の基金を得て、海外主要市場で魅力高めるサイト構築へ

2007.2.5 TRAVEL VISION

全米旅行産業協会(TIA)は海外からアメリカへの旅行促進するため、複数言語のサイトを構築する。カルロス・M・グティエレス米商務省長官が390万ドル(約4億7000万円)の基金を発表、TIAは主要マーケットにおいて新サイトの調査、開発等を進める。

サイトの目的はデスティネーションとしての認知、アメリカ・イメージの向上につなげ、実際の旅行につなげてもらう。このプロモーションの地域としてカナダ、ドイツ、日本、メキシコ、英国の5ヶ国。まず、イギリス、カナダ、日本の旅行者に対して英語、日本語のサイトを展開、その後にメキシコ、ドイツを対象としたサイトを展開していく。具体的には、州、市の観光局、アメリカン・エキスプレス、トラベロシティ、ヤフー、フォーダーズなどの協賛を得てサイトを構築していく。

・・・・(記事の転載ここまで)

まず、英語、日本語のサイトを作り、その後スペイン語やドイツ語のサイトを作る、という点が注目されます。全米旅行産業協会(TIA)にとって英語圏以外の最大の顧客はやはり日本なのでしょうか?

それにしてもこれから老大国になろうとする日本が欧米先進国と決定的に違うところは、観光客を呼べない国という点です。

すでに老大国となっているヨーロッパ各国には、観光客を呼べる資産がたくさんあります。ヨーロッパ人が歴史や過去の遺産を大事にするからです。

その点を思うと日本の未来は暗いですね。ところでこの記事を読んでいて思い出したことがあります。私が子供の頃、日曜の朝に「兼高薫、世界の旅」という長年続いた人気番組がありました。

兼高薫という品のいい中年女性が毎週世界を飛び周り、そのレポートをするという番組です。

当時の日本人にとっては、海外旅行など夢のまた夢、という時代でしたから、毎週世界を旅する彼女の姿に大変な憧れを抱いた人たちも多くいました。

彼女は世界のほとんどの国を訪れたことがあるのですが、その番組の最終回に司会の芥川隆之が、

「ところで、兼高さんは世界のありとあらゆる国を訪れましたが、一番印象に残っている国はどこですか?」という質問をしました。

その答えは意外なことに「アメリカ」でした。

「美しい景色や奇景、奇岩がたくさんあり、かつ、その場所まで行きやすい」というのがその理由でした。

それ以来私の頭の中には、「世界で一番美しい国はアメリカ」とインプットされています。

WTO交渉「日本は主導権発揮を」・対日貿易政策審査

2007.2.4 NIKKEI NET
世界貿易機関(WTO)は2日、日本の貿易政策を審査する会議を開いた。参加国からは「日本は多角的通商交渉(ドーハ・ラウンド)でもっと主導権を発揮すべきだ」との意見が相次いだ。日本は「戦後最長の景気回復をテコにした積極的な市場開放で自由貿易体制に貢献すべきだ」との声も多かった。

・・・(記事の転載ここまで)

「戦後最長の景気回復をテコにした積極的な市場開放で自由貿易体制に貢献すべきだ」との声も多かった、とのこと。「景気回復」云々はともかくとして、日本市場が閉鎖的で競争を排除し続けてきたことは、事実です。

電気製品や自動車などの耐久消費財ならびに物をつくるための装置(生産財)といった工業技術分野の競争力だけが突出していて、それが大量の外貨を稼いできました。

しかし、それ以外の分野では他の先進国から大きく出遅れています。

競争のない擬似社会主義国家が長く続いたため、「いびつな物価高」と「貧しい日常生活」に日本人は慣らされ、文句も言わずに働かされ続けてきました。

ただこの10年ほどで日本もずいぶんと変わってきたと思います。いや、変わらなければ存在しえなくなってきたからです。

特に大きく世界から遅れていた金融、流通などの分野ではずいぶんと改善がされてきています。

「真実など知る必要はない」「みんなで痛みを分かち合うんだ」「黙って働け」という日本人特有の体質がそうさせてきたのでしょうが、インターネットの発達で、今までの「日本の常識」が大きく変わろうとしています。日々痛切に感じます。

2010年中国ソフトウェア市場の販売額、1兆元に

2006.12.27 中国情報局

中国情報産業省は、2010年までに、中国国内のソフトウェア市場の販売額は1兆元の大台を突破すると予測している。2006年から2010年まで、中国のソフトウェアと情報サービス業の国内市場の販売額の増加率は約30%に達するという。

2006.12.27 ブログ写真

上記の写真は1999年に私が北京出張の際、北京の秋葉原と呼ばれる中関村で買った「Windows98」と「Office2000」の違法コピーです。両方あわせて確か日本円で250円くらいだったと思います。路地裏で刺青をしたお兄さん達が売っていたものを話の種に買ってみました。もちろん恐ろしいので私は使ったことはありませんし、使う必要もないのですが、それぞれ正規版は5万円くらいで売られていました。地元の人の話によると、北京市内にある外資系大手企業くらいしか正規版は購入しないとのことでした。まさにコピー天国だったわけですが、正規版とコピーとの間にこれだけ極端に金額の開きがあると、モラルの問題をはるかに超えて、一般庶民にはとうてい手が届かないはずです。今はあの頃よりもコピーに対する取締りがきつくなったと聞いていますが、はたしてどうなんでしょうか?そんな中で1兆元(約15兆円)ものソフトウェア産業が成り立つのでしょうか?とにかく全てにおいて、日本人の想像をはるかに超える、スケールの大きな国であることは間違いないようです。

2006年流行語大賞(その2)

「よろしかったでしょうか?」

(前回からの続き)

「最近の若者の言葉使いはなっとらん」とか「わけのわからん言葉を使っているので、言葉が乱れている」などと言い出したら、間違いなくその人はお年寄りの仲間入りをしたと言えるでしょう。前回お話したとおり、本来「言葉が乱れる」などということは「あり得ない」のです。

私自身、新しい言葉やおもしろい表現に出会うことが大好きなので、いつも出会うたびに楽しんでいます。ところがです・・・・・そう自分で言っておきながら、実は最近、私自身どうしても許せない「若者言葉」があります。残念ながら、私も年をとったのでしょうか?

今から3~4年ほど前、ある大手銀行のファームバンキングの新ソフトを導入した際、ユーザーサポートへ電話をしたことがあります。そのとき電話口から聞こえてきたのは、明るくかわいい若い女性の声でした。

女性:「画面右上に見える赤いボタンをクリックしていただいてよろしかったでしょうか?」

私:「はあ?・・・・赤いボタンをクリックしても大丈夫だったか、ということですか?」

女性:「いえ、お客様、クリックしていただいてもよろしかったでしょうか?」

私:「はあ?・・・・私が赤いボタンをクリックしておかなければならなかったのですか?」

女性:「いえ、クリックしていただいてよろしかったでしょうか?」

私:「私はこれからこの赤いボタンをクリックするのですね?」

女性:「はい、さようでございます」

このような奇妙な会話が何回か続いているうちに、電話口の向こうから聞こえてくる日本人の日本語が少しずつ理解できるようになりました。彼女は奇妙な過去形の日本語を連発してきたのですが、どうやら彼女自身、過去形を使うことが敬語であると勘違いしているようでした。

私:「将来この件でまた電話しましたが、よろしかったのでしょうか?」

女性:「?????」

私:「ユーザーサポートだったあなたの説明が理解できたことはありがたかったのでした」

女性:「?????」

最後になって私も少々彼女のことをからかってみたのですが、なぜ私がこんなことを言うのか、彼女にはぜんぜんわかっていなかったでしょう。

それからしばらく経ち、ちまたにはこの「奇妙な過去形言葉」が氾濫するようになりました。特に最近コンビニではよく聞きます。

「お客様、ドレッシングは別売りとなっておりますが、よろしかったでしょうか?」

「おつりは細かくなりますが、よろしかったでしょうか?」

ついでにもう一つ、最近よく聞く奇妙な若者言葉「~なくない?」

「これっておいしくなくない?」

「おいしいのか?おいしくないのか?はっきりせい!」と言いたいのですが、やっぱり私も年をとったのでしょうか?

(この項、終わり)

2006年 流行語大賞(その1)

イナバウアー、E電、武士の言葉

新しい言葉がどんどん生まれてくるということは、ある意味「自由と平和の象徴」とも言えます。戦争や大恐慌や恐怖政治の時代に、新しい言葉がつぎつぎと自由に生まれてくるわけがないからです。そういう意味では私たちはとても良い時代に生まれ育ったと言えるでしょう。

言葉を売るのが仕事である翻訳会社の社長としては、毎年恒例の「流行語大賞」はバカバカしいのですが、やはり気になるところです。「イナバウアー」と「品格」の2つが大賞をとったほか、「エロカッコイイ」「格差社会」「シンジラレナ~イ」「たらこ・たらこ」「ハンカチ王子」「脳トレ」「mixi」「メタボリックシンドローム」などが受賞したそうですが、「本当に流行したの?」と思える、ただの話題づくりを狙ったとしか思えないような言葉が受賞するのが、この賞の毎年の特徴でもあります。

よく「最近の日本は言葉が乱れている」と言う人たちがいます。たいていはご老人ですが、実はそれは言葉が乱れているのではなく、「そのご老人が新しい言葉についていけなくなっただけ」のことなのです。

昔、国鉄がJRに変わるとき、「国電」という呼び方をどう変えるかを国鉄の「お偉いさん」たちが多くの文化人(老人の学者達の中に確か小林亜星や黒柳徹子なども含まれていた記憶があります)や高級官僚を集め、議論を重ね、「E電」という呼び名を考え出しました。しかし、ご存知のとおり、「E電」など誰も使わず、結局いつのまにやら消えてなくなりました。

E電
<今も残る、蒲田駅の「E電」表示>

そうなのです、新しい言葉は、文化人やお役人が決めて下々へ与えるものではなく、自然発生した言葉が、大衆の間に定着し、やがて「日本語」として認知されていくものなのです。言語学者のやるべき仕事は、その言葉がどのくらいの割合で大衆の間に定着しているのかを調べ、ある一定基準を超えたら、辞書に載せるか載せないかを判断することだけで十分なのです。主導権は常に大衆にあり、学者は統計をとるだけの人でなければなりません。

「~という言葉の意味を全国の人に聞いてみたら、75%の人がその意味を取り違えていた」という新聞記事を見たことがあります。そこである言語学者が登場し、「この言葉の意味は、歴史的にみて~のような意味があり、正しくは~という意味である。最近の日本は言葉が本当に乱れている」とコメントしていました。

わたしから言わせれば、日本列島に住む日本民族の4分の3が現在使っている言葉と、ごく少数の老人学者が持つその言葉に対するイメージのどちらが正しいのかというと、私は明らかに前者だと考えます。

「東京大学」が「東大」、「原子力発電所」が「原発」、「ゲームセンター」が「ゲーセン」ならば、「携帯電話」は「ケイデン」でなければならないし、「コンビニエンスストアー」は「コンスト」でなければなりません。しかし、誰が何と言ったって、日本語では「ケータイ」と「コンビニ」が正解なのです。

「はじめまして、わたくし、山田太郎と申します。お会いできて大変光栄です」

おなじみ、現代日本のきまり文句ですが、この言葉を聞いた明治初期生まれの元武士は、昭和初期生まれの小僧をつかまえて、「正しい日本語を使え!」と怒ったことでしょう。当時の正しい日本語は知りませんが、イメージとしてはこんなものだったかもしれません。

「それがし儀、山田太郎にござ候。ご尊顔を拝したてまつり、恐悦至極に存じたてまつる」

(この項、次回へ続く)

Google社長のセミナーに参加して(その3)

(前回からの続き)

Google八分と中国の情報統制

Googleの検索対象から除外するサイト(いわゆるGoogle八分)の判定のために、下記の4つのルールがあるそうです。

(1) 犯罪にかかわるサイト

麻薬、覚醒剤、武器輸出、児童ポルノ、架空口座、ナチス党関係等々・・・・。

(2) スパムサイト

Googleの検索ロボットをだまそうという意図のあるサイト

(3) 権利侵害を訴えられているサイト

ある人があるサイトに権利侵害(たとえば名誉毀損など)を訴えているサイト。これがGoogleにとって一番悩ましい問題だそうです。基本的には当事者間同士の問題なのですが、日本の法律体系によると、場合によっては検索結果を出したGoogleも裁判にまきこまれる可能性があるとのことです。Googleでは自己責任のもと、ぎりぎりの判断をして、かつその判断結果を公にしているそうです。

(4) AdSenseだましのサイト

ここで前回お話したAdSenseが出てきました。AdSense広告がクリックされたかのようにごまかし、違法に広告料収入を得ようとするサイトを取り締まる、いわゆる「AdSense狩り」を行なっているそうですが、その詳細は明かさないとのことでした。

以上4つのルールがあるそうですが、ここで聴講者から次の質問がでてきました。

質問:「中国では中国政府がGoogleに圧力をかけ、中国政府に都合の悪い検索結果は表示させないようGoogleと裏取引をしたという噂が流れていますが、それは真実ですか?もし真実だとしたら一部の権力者の情報統制に加担するという姿勢はGoogleのポリシーに反するのではないですか?」

村上社長:「おっしゃるとおり、中国政府からの要請を受け入れていることは事実です。しかし、それは裏取引というようなものではありません。中国政府では“法〇功”や“天〇〇事件”などいくつかのテーマを違法と認識しているので、さきほどお話した4つのルールの第1番目、犯罪にかかわるサイトに該当すると判断せざるを得ないからです。はっきり言ってこれはGoogleにとって“苦渋の決断”でした。中国では通信の全てを管理しているのは政府なので、”Better than nothing”ということで中国での活動を開始しました。これは“世界中のあらゆる全ての情報を整理する”というGoogleのミッションに反するものであり、本来であればこのように情報を取捨選択するというような僭越な行為など一切やりたくないのですが、犯罪行為や反社会的な行為に加担するわけにはいかないので、ルールを決めてやむを得ず情報の取捨選択を行なっています。」

以上が村上社長の答弁でした。確かにGoogleにとっては“苦渋の決断”だったのはわかりますが、少々苦しい言い訳ですね。「中国政府の判断に基づく犯罪行為」ではなく「Googleの自主的な判断に基づく犯罪行為」を除外してほしいところです。そしてその基準を公表して世論に判断を仰げばよいのです。世の中の圧倒的多数の人は「覚醒剤」や「武器輸出」や「児童ポルノ」と「天〇〇事件」を同列には考えていないはずですから。一私企業であるGoogleではありますが、世界中のあらゆる情報を操作しうる力を備え、今後ますます増大していく可能性大のGoogleが、結果として民衆側よりも権力側に近いという印象を与えたのは残念でもあり、またすこし恐ろしい気もします。私たちの仕事への影響はもちろんのこと、私たちの日常生活にも影響を及ぼしかねないからです。

(この項、終わり)

Google社長のセミナーに参加して(その2)

(前回からの続き)

AdWordsとAdSense

Googleの収入のほとんどは広告料収入ですが、大きく分けて次の二つがあります。以下の内容はGoogleの村上社長の話の中で簡単に触れられただけなのですが、後の話を理解しやすくするために少し詳しく触れておきます。この広告の仕組みはGoogleの説明サイトを見ても非常に理解しにくいので困りますが、できるだけわかりやく解説したつもりです。

AdWords

Googleで何かのキーワードを入力して検索したとき、検索結果の出たページの上や右に「スポンサー」スペースが現れそこに広告が表示されます。たとえば、あなたが「家庭教師」というキーワードを検索したとします。検索結果のページ上部に数個のスポンサー広告が表示されます。同様にページの右にもいくつかのスポンサー広告が表示されます。各スポンサーはあらかじめ自分でキーワードを決め、Googleに登録しておくのですが、この例でいけば「家庭教師」というキーワードに興味を持っている人達だけが見るわけですから、広告宣伝効果が高いわけです。そしてそのスポンサーのサイトがクリックされることにより料金が発生します。また1回のクリックにいくら支払うかは、スポンサーの入札により決まります。高い値で買えば、より良い位置に表示されるわけです。また、特定の地域で検索している人々に広告を表示するよう設定することも可能です。 たとえば、あなたの会社なりお店から 40 km 以内のオンライン顧客を、掲載の対象とすることもできます。

AdSense

ウェブページ運営者が自分のウェブページを使って「広告料収入」を得ることができます。たとえば「家庭教師」と言うキーワードを検索し、「株式会社家庭教師センター」という会社のサイトが出てきたとします。そしてこのサイトがGoogleとAdSense契約をしているとすると、右はしに「Ads by Gooooogle」のスペースが現れます。そこには「家庭教師」に関連したスポンサー数社分の広告が現れます。ユーザーがそのスポンサーをクリックするといくらかの金額が広告料としてGoogleからウェブページ運営者、つまりこの場合で言えば「株式会社家庭教師センター」へ支払われるという仕組みです。これが「コンテンツ向けAdSense」というサービスです。もうひとつ「検索向けAdSense」というものがあります。まずは自分のサイトにGoogleの検索ボックスを導入し、ユーザーがより簡単に Google の検索エンジンを利用できるようにします。そしてユーザーがその検索ボックスを通じて得た検索結果のページの広告をクリックした場合、その料金が Google からウェブページ運営者、この場合は「株式会社家庭教師センター」へ支払われると言う仕組みです。つまり広告が表示されるページ数が増えるため、より多くのウェブページから収入を得ることができるようになるわけです。

さて、Googleの村上社長によると日本の広告サービス市場は6兆円で、内インターネット広告は2,400億円、AdWordsとAdSenseはわずか800億円なので、他の広告媒体の屋台骨を脅かすようなことは今もこれからもない、と仰っていました。はたしてそうなのでしょうか?

(この項、次回へ続く)

Google社長のセミナーに参加して(その1)

世界中のあらゆる全ての情報を整理する

先週の10月10日にグーグル株式会社代表取締役社長村上憲朗氏のセミナーを聞きに行きました。セミナーの題は「Googleの過去と現在」というもので1時間15分ほどの講演のあと、15分ほどの質疑応答の時間も設けられました。たまたまGoogleによるYouTube買収が発表された直後でもあり、非常に興味深いセミナーとなりました。

Googleのミッションは「世界中のあらゆる全ての情報を整理する」なので「コンテンツや情報を所有・専有する意志はまったくない。あくまでも検索サービスを提供するだけ」と村上社長は強調されておりましたが、それくらい世界中がGoogleを恐れているという証でもあります。

「世界中のあらゆる全ての情報を整理する」わけですから、個人のPCの中身を検索できるよう「Googleデスクトップ検索用ミニロボット」を無料配布したり、企業のファイアーウォールの内側を検索できるよう、Google Miniを販売したりしているとのこと。現在取り組み中の新サービスが、「書籍の検索」で、過去人類が産み出した膨大な量の書籍を、OCRを使ってスキャンしている最中とのこと。ただし著作権の問題があるので本の中身は3ページしか読めないようにしたり、あるいはスポンサーを探して、書籍の端に広告を載せることにより全体を読めるようにしたり、というような様々な取り組みをしているそうです。今回のYouTubeの買収によりGoogleビデオのサービスも今後加速していくでしょう。その他、ブログ、マップ、Earth、ニュース、グループ、グーグルベース等々、目を見張るような無料サービスが次から次へとわれわれに提供されて来ましが、今後Gmailは、やはり相当すごいことになるでしょう。なにせ一人2.7ギガ以上の容量が無料であたえられ、メールをフォルダに仕訳けしたり、メールを捨てたりする必要もなくなるわけですから、これからのGoogleの市場独占力には計り知れない恐ろしさを感じます。

なにせ「世界中のあらゆる全ての情報を整理する」わけですから、インターネットに載り切らない情報も全てインデックス化するのだと大望を抱いています。「もしその人が納得してくれたら、という条件付きではありますが、その人の趣味嗜好に合わせた情報を世界中から集めてその人に提供したい」と村上社長は仰っていました。この話ってどこかで聞いたような気がしますね?そうです、以前私がこのブログで触れた、”GooglezonのEPIC2014”ではないですか。Googlezon(GoogleとAmazonの合併企業)自体は架空企業ではありますが、やはりその思想は形を変え必ず実現していくものだと改めて確信しました。

(この項、次回へ続く)

第16回 JTF翻訳祭を終えて

先週の木曜日、10月12日に東京のマツダホールにて第16回JTF翻訳祭が開催されました。私は今回の翻訳祭企画実行委員会の委員長を拝命しておりましたので、大盛況のうちに無事終えることができ、ホッと胸をなでおろしております。これもひとえに実行委員の皆様とJTF事務局の努力のおかげですので、この場をお借りして改めて御礼申し上げます。

翻訳祭の内容(講演、パネルディスカッション、翻訳プラザ、交流パーティ)に関しては、今後JTFのホームページやJTF翻訳ジャーナル、あるいは、翻訳事典(アルク)、通訳・翻訳ジャーナル(イカロス出版)、その他のメディアで紹介されることと思いますのでここでは割愛いたしますが、多数の立見客が出てしまい、主催者側としては冷や汗が出るほどの盛況であり、かつ内容も非常に充実していたことをお伝えしておきます。

今回の翻訳祭は外見上、従来の翻訳祭と大きな違いはありませんでしたが、実は過去の翻訳祭とは際立った違いが一つあります。それは予算面のことでした。過去の翻訳祭では全支出額の4割から多い時は9割を理事会社の寄付金によりまかなわれていました。今回は当初より「理事会社の寄付金に頼ることはやめて、自立できる翻訳祭を目指そう」という目標を持ってスタートしました。そのためチケットの新しい販売ルートの開拓やポスターや電話を使っての営業活動、そして新しい広告料収入の道を模索し、結果として十分な黒字と十分な集客を実現できました。また従来とは異なる販売ルートの開拓により、参加者の顔ぶれもかなり違う(とくに女性客や若い方々の姿が目立ちました)という印象も受けました。今回の成功の裏には、アメリアネットワークの長田氏の企画力と実行力があり、彼なくして今回の翻訳祭はあり得なかったでしょう。この場をお借りして、改めて重ね重ね御礼申し上げます。

最後になりましたが、今回の翻訳祭にご参加、ご協力いただきました皆様へ厚く御礼を申し上げて、取り急ぎ、第16回翻訳祭のご報告とさせていただきます。

日本の翻訳市場の規模は?(その2)

(前項からの続き)

「狭義の意味での翻訳市場」も「広義の意味での翻訳市場」も別に正式な定義があるわけではありません。下記はあくまでも私の個人的見解です。

「狭義の意味での翻訳市場」
企業や公共団体等の組織が、翻訳会社や個人翻訳者に発注する”翻訳業務”。

「広義の意味での翻訳市場」
(1)企業内で正社員として翻訳業務に携わっている人たちの人件費
(2)大企業が子会社に発注する”翻訳業務”。この場合、親会社から子会社へ天下ってきた人たちの人件費も含まれるため、かなりな金額に膨らむ。
(3)”翻訳者を派遣する派遣会社”の売上高
(4)”機械翻訳”や”翻訳ソフト”関連の売上高
(5)”機械翻訳”や”翻訳ソフト”の研究開発費用総額
(6)翻訳学校、通訳学校
(7)外国へ輸出する製品ドキュメントの制作費や印刷代
(8)ソフトウエアローカライズの総額

このうち(7)と(8)は「翻訳ではないだろ!」とお考えの方も多くいらっしゃると思いますが、実際には企業側で作業の境目がはっきりしないため、「翻訳関連費用」として「翻訳料と一緒くた」にしているケースもしばしば見られます。

従って「日本の翻訳市場の規模は、1兆円だ、いや10兆円だ」とかなり威勢のよい発言をする人たちの頭のなかには、きっと「広義の意味での翻訳市場」があるのだと思います。

翻訳会社が誕生してから半世紀近くが経とうとしている現在、上場している翻訳会社が”翻訳センターさん”ただ1社で、その売上規模が35億円というわけですから、そんな巨大なマーケットであるはずがありません。ただし、たとえ1,000億円市場だったとしても、1社で寡占してしまえば、結構な巨大企業が出現することはありえるでしょう。そしてそれができるかできないかは、これからの「新しい翻訳市場」にかかっていると思います。

それでは、また日を改めて以前に少し触れた「旧来型の翻訳市場」と「新しい翻訳市場」に関して話そうと思います。

(この項終わり)

日本の翻訳市場の規模は?(その1)

実は、翻訳業界の規模につき信憑性の高いデータは今まで存在せず、今回翻訳連盟によって行われた調査が初の統計データとなりました。

前述の「翻訳業界翻訳白書」からのデータです。

第1回 調査(2004年8月実施)
調査対象  1,909社
有効回答数  157社

第2回 調査(2005年12月実施)
調査対象  1,220社
有効回答数  137社

第2回の調査の中に翻訳の市場規模に関する記述があります。
下記にその要旨をまとめます。

(以下、要旨)
売上額に関する質問の有効回答は124社だった。
その中央値の合計237億円を124社で割ると、1社あたり1.9億円となる。
従って、そこから類推すると、日本の翻訳市場規模は、
1.9億円×2,000社(NTTタウンページからの社数)=3,800億円となる。

しかし、アンケートの回答に加わっていない売上高5,000万円以下の会社が圧倒的多数のはずなので、第1回調査で算出した推定業界規模2,000億円、多くて4,000億円という推定値は下方修正する必要がある。

売上高5,000万円以下の会社が圧倒的多数を占めるという根拠は、1997年に米国で行われた調査で、年商50万ドル以下の翻訳会社が90%を占めていたからである。
(以上、要旨終わり)

有効回答数が百数十社で、加えて米国の調査データを引用しているくらいですから、正直言ってこのデータも心もとないという感じです。加えて、各翻訳会社の売上額を単純に足し算するわけにはいきません。なぜなら翻訳会社間の取引もかなり含まれているはずだからです。まあ、ざっくり言って、多くても1,000億円程度といったところではないでしょうか?

ただし、これは純粋に「翻訳を企業から請け負った業務」のみと考えています。つまり「狭義の意味での翻訳市場」であって、「広義の意味での翻訳市場」はまた当然違ってくるはずです。

(この項続く)

翻訳会社は日本に何社?(その2)

(前項からの続き)

さて、この調査でわかったことは、全国の翻訳会社数は1991年に1,401社、1993年に1,763社、そして2005年に約2,000社であったということです。バブル崩壊後の2年間で362社増えた翻訳会社数が、その後の12年間でたったの240社程度しか増えていないということになります。

私が知っている範囲内だけでも、バブル期以降に大手翻訳会社や老舗の翻訳会社が20社近く倒産、廃業に追いやられています。そして逆に新しい翻訳会社が多数誕生しています。そういう意味では、スクラップ&ビルドの激しい業界と言えるのかもしれません。1993年から2005年の間に増えた翻訳会社数は240社程度であったとしても、実はプラス740社マイナス500社だったのかもしれません(これは推察の域を出ませんが・・・・。またここでは個人営業の翻訳者が”翻訳業の看板”を掲げてタウンページに掲載していれば全て”翻訳会社”としてカウントしてあります)。

もうひとつこの調査でわかったことは、この翻訳業界は急成長の時代を終え、すでに安定成長の時代に入っている、ということです。私の経営するジェスコーポレーションは1964年の設立ですので40年以上の歴史があります。また30年以上の歴史のある翻訳会社は世の中に多数存在します。「会社の寿命30年説」の根拠のひとつに「一つの商品の寿命はせいぜい30年が限度である」があります。この説が世に出てすでに20年以上が経過しているのですが、21世紀の日本社会ではあらゆる商品の寿命がより短くなってきている、という現状を考えあわせると、旧来型の翻訳市場は、もうとっくの昔に飽和状態になっていると言っても過言ではないでしょう。

それでは、その「旧来型の翻訳市場」と「新しい翻訳市場」の違いは何なのか?となりますが、それを語る前に「日本の翻訳市場の規模はどのくらいなのか?」を検証してみましょう。

(この項終わり)

翻訳会社は日本に何社?(その1)

経済産業省認可の社団法人で日本翻訳連盟(略称JTF)という組織があります。今から13年前の話になりますが、そのJTFの発行する「日本翻訳ジャーナル」に私が記事を載せました。タイトルは「翻訳会社は日本に何社?」です。まずはその記事から見ていきましょう。

~以下記事~

翻訳会社は日本に何社?
<日本翻訳ジャーナル NO.114 1993年9月号>
社団法人日本翻訳連盟常務理事 丸山 均

今からちょうど2年前になりますが、電話帳を使って全国の翻訳会社を調べたところ、約1,400社あることがわかりました。あれから2年が経ち、日本の経済状況も国際情勢も大きく変わったところで、私たちのいる翻訳業界にはどのような影響があったのでしょうか?変化を知る一つのキーワードとして翻訳会社の数に再び注目してみました。結果は下記の表に示したとおり、約360社(26%)増加していることがわかりました。(中 略)

【 翻訳会社数 ~NTTタウンページより~ 】
1991年 1993年 増減
・札幌市         10    15    5
・仙台市          8     3    -5
・東京都 23区    779   922    143
上記以外  65    75    10
・神奈川県 横浜市  50    71    21
上記以外  48    68    20
・埼玉県         37    47    10
・千葉県         38    58    20
・静岡県         28    44    16
・愛知県 名古屋市  61    69     8
上記以外   6    12     6
・京都市         39    49    10
・大阪府  大阪市  144   167    23
上記以外   14   39    25
・兵庫県  神戸市   28   37     9
上記以外   15   36    21
・広島市           6   9     3
・福岡県          25   42    17
全国合計 1,401 1,763   362

* 主な県、市に限定して調べた。
* 法人化していない翻訳を本業としている個人も一部含まれる。
* 同一の会社が支店等を出している場合は、できる限り除いたが、完全には除ききれないので、ある程度の重複がある。ただし、ドキュメント関係の仕事をしていても、本業が翻訳ではないため、このリストに載っていない会社もかなりあると推測される。

以上で、過去に私が書いた「日本翻訳ジャーナル」の記事は終わりです。

さて、昨年(2005年)12月に同じく日本翻訳連盟が実施した調査報告書「翻訳業界翻訳白書」によると、翻訳会社数に関して下記のような記述があります。

「全国の翻訳会社の数は、NTTタウンページによると約2,500社です。この中には、教育・人材派遣会社および支社・支店が約500社/事業所含まれています。」

昨年実施された「翻訳業界翻訳白書」ではどのような方法で翻訳会社数をカウントしたのかは知りませんが、1991年と1993年の両調査では、私自身が全国のNTTタウンページの翻訳業のページを一枚一枚コピーし、私と私のアシスタントの二人で、目で一つ一つ確認しながら、カウントしていきました。したがってその数字に関しては信憑性が高いと思っています。

(この項次回へ続く)

はじめまして!

つれづれなるまゝに、日暮らし、硯にむかひて、心にうつりゆくよしなし事を、そこはかとなく書きつくれば、あやしうこそものぐるほしけれ。

~暇をもて余しているままに、一日中(筆を執って)硯に向かって、心に浮かんでくるとりとめのない事を、何となく書き綴ると、怪しく物狂おしい。~

ご存知『徒然草』は、鎌倉時代に吉田兼好の書いた随筆で、清少納言の『枕草子』、鴨長明の『方丈記』と合わせて日本三大随筆の一つと評価されている(Wikipediaより)そうです。暇をもて余して書いたものが、日本史上に残る文学的名作になるわけですから、それだけでもすごいことですが、もちろん私は到底それにはおよばないので、自然体で語っていくつもりです。

ただし、文学的価値のない”随筆”はただの感想文であって、通常その中身に”情報”は何もないものです。したがって私もこれから、わざわざ時間を使って書く以上、多少なりとも、なんらかの”情報”を載せられるよう努力してみるつもりです。

私が1981年(昭和56年)4月に技術翻訳会社ジェスコーポレーションに入社してから、25年以上の月日が経過しました(入社にいたる経緯はJES Historyをご参照いただければ幸いです)。ジェスコーポレーションは、コンピュータ、通信、電子機器、電子回路、機械、基準・規格類等々分野の翻訳を専門とする「技術翻訳会社」です。取り扱っている言語は、英語、中国語を中心に、韓国語をはじめとするアジア言語およびスペイン語、ドイツ語、フランス語、ロシア語を中心とするヨーロッパ言語です。

まず最初に翻訳業界全体の概要から話そうと思います。もちろん私がこの業界のすべてを知っているわけではないので、限られた情報になるとは思いますが、なんらかの参考になれば幸いです。

なにはともあれ、今後ともよろしくお願いいたします。