世界を席巻する「MANGA」という記事を読んで、改めて考えてみました。
日本が文化輸出大国になる日は来るのだろうか・・・・と。
これはかねてよりの私の持論ですが、ある民族がいくらお金を稼いでも、外国の人たちからは決して尊敬はされません。文化を輸出できるようになって初めて尊敬される民族あるいは国になれると信じているからです。
明治時代の文豪、夏目漱石が「三四郎」の中で、次のように述べていたのを思い出します(趣旨は下記のようであったはずです)。
「日露戦争に勝ったから、もうこれで我々は一等国民だと多くの日本人は騒いでいる。しかし、今の日本人が世界に誇れるものなどいったいどこにあるのだ。あそこに見える富士山は確かに素晴らしい。日本が世界に誇れる財産だ。しかし残念ながら富士山は、太古の昔から日本にあったもので、日本人が作ったものではない」
時代は飛んで、平成の時代の話に戻りますが、日本人が外国へ行くと、「TOYOTAは素晴らしい」とか「SONYは素晴らしい」とか「CANONは素晴らしい」とか、外国の人たちから誉め言葉を頂戴することがよくあります。これらは全て日本人が作り上げた日本の製品です。夏目漱石の時代には誇れるものが富士山しかなかったのものが、現在では世界から賞賛される製品を、日本人が作れるようになった、ということであり実に喜ばしいことです。
しかし、喜んでばかりいて良いのでしょうか?私は外国へ行くといつもこのような質問をしてみます。
「あなたは誰か日本人の名前を知っていますか?」
あるいは、日本に住む外国人には、このように聞いてみます。
「日本に来る前に、誰か日本人の名前を知っていましたか?」
すると、もののみごとに、誰も日本人の名前を知りません。誰も日本の文化に興味を持っていないからです。
織田信長も坂本竜馬も聖徳太子も水戸黄門も赤穂浪士も牛若丸もピンクレディも木村拓哉も松下幸之助も本田宗一郎も夏目漱石も長島茂男も貴乃花もユーミンもサザンオールスターズも、誰も知りません。もちろん日本の総理大臣の名前や政治家の名前など誰も知るよしがありません。
経済的には日本よりもずっと貧しい国なのに、文化大国という国があります。
たとえば、中国・ロシア・ブラジル・ギリシャの一人当たりのGDPは、日本に比べてかなり低いはずですが、これらの国々からは、料理、文学、音楽、スポーツ、思想、学問、等々・・・・・、多くの文化を日本は輸入しています。
そして、欧米先進諸国から日本へ押し寄せる文化の洪水は、今さら言うまでもありません。
現在、日本が輸出している「文化」には何があるのでしょうか?
寿司、柔道、カラオケ、ゲームソフト
最近やっと、この後に続いてきたものがあります。
漫画(&アニメ)です。
未知の国の文化を理解するためには、その国の何か、つまり、文学や音楽や映画やスポーツなどを通じて、その国に強い「関心」を示すことがなによりも一番です。その「関心」はやがて「憧れ」に変わり、ついには「尊敬」へと進化していきます。
ハリウッド映画がアメリカ文化を世界へ広めたように、日本の漫画が日本の文化を世界へ広めてくれることを願ってやみません。
漫画を通じて、「小さな牛若丸が豪腕の弁慶を打ち負かし、家来にしてしまう話」や「明智光秀が織田信長を討つ本能寺の変」や「草履とりの木下藤吉郎が太閤秀吉に立身出世する話」や「赤穂浪士が主君の仇をとる話」や「水戸黄門の印籠を見たとたん、なぜか悪者が突然ひれ伏してしまう話」や「坂本竜馬が薩長連合を成し遂げる話」などを世界中の誰もが当然のように知っている、そんな時代がいつの日か来ることを夢見ています。