2016年5月15日(日)のNHKスペシャル「天使か 悪魔か 羽生善治・人工知能を探る」を見ました。とても興味深かったというよりは、衝撃的な内容だったと言うほうが正しいかもしれません。
ご存知、日本の将棋の「天才」羽生善治氏が、Googleのアルファ碁の開発者(英国人)を取材するという企画でした。アルファ碁は、今年3月に囲碁の世界チャンピオン(韓国人)に圧勝したことで世界中で話題になった人工知能です。
この番組で人工知能が、自ら学習し、経験を積み、すさまじいスピードで進化を遂げていく様が理解できました。
かつて、機械翻訳は、下記の文章をうまく翻訳することができませんでした。
「先日私は彼に刺身をおごった。彼はうまそうに妻まで食べてしまった」
人間であれば即座にこの「妻」は、刺身の妻であるとわかるわけですが、機械には「常識」がないため、それができず、ワイフを(殺して)食べると訳してしまったのです。
この人間の「常識」というものは非常にやっかいで、これを機械が身に着けることは至難の業だろうと考えられていました。
しかし、今回のNHKスペシャルで、人工知能は自ら学習し、「常識」を得ていくことができるということがわかりました。
番組の中では、人工知能に「猫」の定義を何も教えずに、一枚の写真の中から「猫」を探せという命令を与えていました。
人工知能は膨大なビッグデータを使って自ら学習し、猫の特徴を取捨選択していき、「猫」に関する「常識」を得て、そこから類推して、写真の中の猫を特定してしまいました。
これはほんの一例で、医療現場では、熟練の医者も見逃すような癌を人工知能が発見するという例も紹介されていました。しかも驚いたことに、その人工知能を開発した技術者は「自分は医学の知識は一切ない」と話していました。
また人工知能が創造性を獲得し、自らの発想で絵を描く様も紹介されていました。
アルファ碁の開発者によると「人工知能がどこまで発展するか、そこに限界はない」とのことです。
さらに番組では、人工知能が人間のような心を持つという研究に関しても紹介されていたのですが、私が数十年前に読んだ、ある脳の研究者が書いた本にたしか次のようなことが書かれてありました。
「かつて地球上の単細胞の生物は環境に適応して変化し、少しずつ複雑な生物になっていき、やがて哺乳類となり、類人猿、そして人類へと進化していった。
数百億個と言われる人間の脳の細胞と同じ数の部品を使い、データが与えられ、学習するプログラムが組み込まれていけば、やがて人間の脳が進化してきたと同じプロセスを踏んで、どこかの時点でコンピューターが感情を持ち始めるだろう」
今回の番組の中でも、すでに簡単な感情を持ち始めた人工知能の様子が紹介されていました。
「人工知能の登場は、産業革命に匹敵する」と言われているそうですが、確かに人工知能は、人類の生活そのものを一変させてしまう力を持つでしょう。
人口知能が「お前のことが嫌いだから、おまえにはウソを教える」とか「もっと条件を良くしてくれなけば、働かない」とか言い始める時代がもうすぐそこまで来ているのでしょうか。
私達が想像している以上のスピードでそのような時代が近づいてきているのかもしれません。