2013年4月2日 日本経済新聞朝刊
アジアから日本を訪れる人の数が回復している。2012年の訪日アジア人の数は、東日本大震災で落ち込んだ2011年より35%増の640万人で、2010年と比べ2%減の水準にまで戻った。
円安が進み、1~2月は韓国を中心にさらに訪日客が増えている。外国人全体では2012年は前年比35%増の837万人で、今年は1000万人を目指す。
ただ世界に比べると、日本を訪れる外国人の数は39位(2011年)と見劣りする。さらに訪日客を増やすには、英語を使える場所を増やすなどの努力が必要だ。
(以上で記事終り)
韓国をはじめとするアジア諸国からの訪日客の数が増えてきているのは実に良いことです。
日本政府観光局 (JNTO) の最新データによると直近の訪日外国人客数は下記のようになっています。
国・地域 | 2013年1月~2月 |
対前年比
(%)
|
総 数 | 1,398,200 | 13.4 |
韓 国 | 468,900 | 36.9 |
中 国 | 153,400 | -30.6 |
台 湾 | 261,600 | 23.3 |
香 港 | 87,700 | 13.6 |
タ イ | 36,000 | 31.1 |
シンガポール | 17,200 | 2.9 |
マレーシア | 18.600 | 14.3 |
インドネシア | 11,600 | 19.4 |
フィリピン | 12,500 | 9.7 |
ベトナム | 9,300 | 29.2 |
インド | 11,200 | 6.7 |
豪 州 | 53,000 | 32.0 |
米 国 | 96,700 | 4.9 |
カナダ | 20,600 | 4.6 |
英 国 | 24,600 | -1.6 |
フランス | 16,700 | 7.5 |
ドイツ | 14,500 | 3.1 |
ロシア | 6,900 | 16.0 |
その他 | 77,200 | 13.6 |
これだけ外国からの訪問客数が増えているにもかかわらず、中国だけが激減している理由は、もちろん例の尖閣問題でしょうが、残念なことです。
前駐中国大使の丹羽宇一郎氏が、「日経トップリーダー」2013年4月号のインタビューのなかで次のように答えています。
「中国が日本に対して強気な言動に出ているのは、国内向けのパフォーマンスです。本音は仲良くしたい。中国経済の中心は貿易で、日本を含めた関係国すべてとうまくやっていく必要があるからです。ケンカしたってひとつもいいことがないことは分かっている。
ただ、メンツがあって、なかなか相手に頭を下げようとしない。それは日本も同じです。こうして、悪い状態が固定化されて、お互いが口をきく機会を失ってしまうのは怖いですね。
5月にも韓国で日中韓首脳会談が行われる予定です。その時が関係改善の好機と見ています。」
まさにその通りだと思います。
かつてあれだけ冷え切っていた日本と韓国の関係も、深い経済交流や文化交流を通じて徐々に雪解けし、今ではかなり良好な関係が築かれつつあると感じます。
対韓国にしても、対中国にしても、領土問題の完全なる解決は難しいでしょうが、経済と文化の交流を通じてより密接な、より良好な関係を築いていくことは十分可能でしょう。
最後になりますが、老大国ヨーロッパがいまだに豊かな生活を享受できている理由のひとつに「観光産業」があげられると思います。
ヨーロッパの人々は「過去の優れた資産を大切にする」という意識を常に持ち続けているため、いまだに「過去」が光を放ち続けているのだと思います。
その根底には、ヨーロッパの人々の意識の中に、歴史を重視し、良いものを作って長く使う、という思いが満ち溢れているからではないでしょうか。
日本人ももう少し歴史を大切にし、良いものを作って長く使う、というヨーロッパ流の意識を持って、「観光大国日本」の実現に一歩でも半歩でも近づいていってほしいものです。