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Column


第60回 疲労感とエナジードリンクについて
<質問>
年度末から新年度、仕事がバタバタでグッタリです。
しかも最近、何だか疲れやすいというか、昔より踏ん張りのきく時間が短くなったというか……。
そんな話を友人としていたら、「そんなときには、ドーピングするしかないでしょ!」というアブない発言が飛び出しました。

もちろん、「違法なことはできないよ?」と返したのですが、よくよく話を聞くと、巷に出回るドリンク剤、いわゆるエナジードリンクのことでした。友人によると、「後少し、もうひと踏ん張り!」というときに飲むと、確かに一瞬は疲れが吹き飛んで、仕事に集中できるのだとか。

ただ、やっぱり不自然なことをしているのだから、それなりに身体には悪いんだろうな、というのが友人との結論になりましたが、実際、どうでしょうか?(東京都 S.O.)
(2024年4月)
<回答>
S.O.さん、ご質問ありがとうございます。年度も新たにお仕事を頑張っておられるとのこと。ご無理はなさらないようにお過ごしください……と書き始めるつもりだったものの、すでにお疲れが相当に溜まっているご様子ですね。

少し調べてみると、2023年時点の日本では、20~79歳の38.4%が「すごく疲れている人」、39.7%が「少し疲れている人」だそうで、なんと「元気な人」は5人に1人ということになります。


疲れの生理学とその研究
ただ、「疲れ/疲労」と言っても、実は、とても複雑に絡み合った多くの要素から成る生理現象です。実際、「疲れ」を引き起こす要因として、精神ストレス/環境ストレス/運動/睡眠・リズム障害/消耗性疾患/感染症などが挙げられます。

そもそもが、「痛み」や「発熱」に並んで「三大生体アラーム」と呼ばれる、身体が発するSOSが「疲れ」です。このことに、異議を唱える方はおられないと思うのですが、意外にも「疲れ」の生理学的な定義や指標は、永らく研究が進んでいませんでした。

「発熱」はともかく、「痛み」や「疲れ」は、主観的な「感覚」でもあるために数値化が難しいです。数字化の難しい非物質的な存在が「自然科学」として扱い辛いことは、前々回の本コラム第58回でも少し触れました。

ただ、扱いが難しいとはいえ、「痛み」については、神経生理学で「脳」と「感覚神経」の研究が進んだことから、ある程度の生命科学的な説明は可能になっています。そのおかげで、身近にあるドラッグストアでは、市販の「解熱鎮痛剤」が普通に売られていますよね。


日本における疲労研究と社会的影響
しかし、「疲れ」となると、そうはいきません。と、言いますか、「疲れ」を主観的な「疲労感」と、そのとき体内で起きている生理現象としての「疲労」に分けて研究を進めたのは、なんと日本の研究者達なのです。

実際、「疲れ」は、英語文化圏の単語では”fatigue”に相当しますが、通常、前者の「疲労感」として用いられ、後者の「疲労」を厳密に意味する単語はありません。つまり、文脈で意味を翻訳する必要があるのです。

余談ではありますが、日本で「疲労」の研究が進んだことは、世界に輸出された日本固有の言葉が原因の一つかもしれません。

それは「過労死」です。”karôshi”、あえて訳せば、”overwork death”になるのでしょうか。ザックリ言えば「働き過ぎによる過労が原因となる死亡」のことで、具体的には、重い作業負荷と長時間労働に起因する、睡眠や栄養の不足と過剰な精神ストレスが引き起こす「脳卒中」「心筋梗塞」「急性心不全」など心血管発作による死亡を意味します。

また、それに関連する作業障害も含む、社会医学(social medicine)の用語でもあり、いわゆる労働災害(Industrial accident)の一つですね。よく、日本の労働環境を悪くいう時に取り上げられる言葉でもあります。ただ、確かに、国際的な比較で労働時間が長いというデータはあるものの、必ずしも日本の労働環境が平均的に高ストレスか?というと、そうでもありません。

むしろ労働の過酷さについては、国際相対的には軽いというデータすらあります。もちろん、国民性(耐ストレス性/労働強度への耐性/疲労耐性)も影響するでしょうから一概には言えませんが、少なくとも、マスコミなどから聞こえる「日本の労働環境は悪い」という定型的な話題は、無根拠に視聴者や読者の不安を煽るだけのようです。

ただし、「日本の労働環境が、そこまで悪くない」というのは、あくまで国際比較をするための平均値での話であって、過労死の被害者がいる事実は、一部の労働者に負担が偏っているのではないか?という「システムとしての労働環境」の歪さを改善する視点を必要とするのかもしれません。


ストレスと疲労の関連性
閑話休題。労働環境のお話については、私の分を超えますので、さておきます。しかしながら、先の余談で触れた「マスコミが不安を煽って私たちを引き付けようとしている」のと同じ構図が、S.O.さんのご質問である、疲労感の回復を謳う市販の製品についても言えるのです。

巷には、「疲労に〇〇〇!」や「〇〇〇で疲れスッキリ!」のように、わざと「疲労感」と「疲労」を曖昧にし、その誤解を利用する商品が溢れています。また、「個人の感想です」などと、根拠を不明確にすることも典型的です。

これは安易に「疲労に効く」や「疲労感を減少させる」などと言うと、法律に違反するからです。そして、先に触れたように、研究そのものが新しく、今のところ、明確に「疲労/疲労感を改善する」と生理学的に根拠のある商品はありません。

S.O.さんのお友達には、身も蓋もない言い方になって申し訳ないのですが愛飲される商品の効果は、厳密には「気のせい」ということになります。

通常の社会生活を営んでおられる方々にとっては、先に挙げた「疲れ」を引き起こす要因の内、病的なものを除けば、大きく「精神ストレス」「環境ストレス」「身体ストレス」の3つに分けて考えられます。

それぞれは完全に独立するものではなく、相互に関係するものですが、ざっくりと以下に説明します。

〇精神ストレス: 家族や社会における人間関係、仕事や勉強の質と量など
〇環境ストレス: 寒暑や日照および照明の明暗、騒音、臭いなど
〇身体ストレス: 運動や栄養の過不足、休憩の不適切さなど

もちろん、何をもって「通常の社会生活」とするのか、どのくらいの負荷でストレスと呼ぶのか、また同じストレスへの感受性(感じ方)にも個人差があるでしょう。ですので、あくまで、このコラムにおける「ストレス」は、ざっくりとしたお話となることをご了承ください。

ストレスとその役割
ちなみにストレス(stress)という言葉も、私たちの社会で、独り歩きしてしまった言葉です。元々は、物理学の用語で「圧力のかかった物体の歪み」を意味しています。

これを生物の現象に当てはめて、生理学/心理学の用語に拝借したわけです。よく「風船を指で押して凹ませる」イラストが、比喩に用いられます。

このとき「風船を押す指」をストレッサー(stressor)といい、「風船が凹むこと/元に戻ろうと押し返すこと」をストレス反応(stress reaction)といいます。つまり、元の物理学用語に照らせば、「ストレス(歪み)」とは「ストレス反応」のことなのです。


厳密な言葉としては、先に説明した各種のストレスは「ストレッサー」、今回は「疲れ」が「ストレス(反応)」というわけです。

ただし、この本来「ストレッサー」とするべきものを「ストレス」と称する用法が、和製英語と言いたいわけではありません。これは英語圏でも同様で、特に、精神ストレスに相当する”pressure”や” tension”という、「緊張/不安」に言い換えられる場面で使われます。

ですから、以下、本コラムでも単に「ストレス」というときは「ストレッサー」の意味で用います。こちらも、ご了承ください。

ストレス反応の必要性とその限界
ご了承いただくついでに、もう一つ、誤解のないように願いたいのは、「ストレッサー/ストレス反応は無い方が良い」という訳ではない、ということです。

問題は、その程度であって、健全な生命の営みにとっての適度な「変化」や「刺激」、「それらに反応できること」、つまり「ストレッサー/ストレス反応」は必要なのです。

ただし、過ぎれば毒となることには違いありません。最近の研究では、「生理的なストレス反応は意識されにくく、疲労を感じるより早く途切れる」ことが分かってきました。そして「ストレス反応が途切れた後で、より強い疲労を感じ、ここで初めてストレス反応が私たちに意識される」ようなのです。

つまり、生理学的に言うと、ストレス反応は、身体かつ無意識からの「頑張れ!」という応援であり、疲労感は、通常のストレス反応では敵わない大きさのストレッサーを意識させる、「休め!」という警告というわけです。

では、大きなストレスを受けたことによる「疲労」は、どのように回復されるのでしょう。一般的には、ストレスからの解放と休息を適切な時間に享受することで回復するものです。よく言われるのが、”Rest(休憩/睡眠), Relaxation(寛ぎ/安らぎ), Recreation(気晴らし/気分転換)”の、”3R”です。

しかし、S.O.さん達のように頑張る現代人にとっては、充分に満足いく3Rを取得するための時間を確保することが難しく、そのために疲れているのかも……。と、この位は、私にも想像がつきます。


エナジードリンクの現実
だからこそ、疲労感の回復を謳う製品に大きな市場があるわけです。

ここまでの話を踏まえて、以下、「できれば3R、できないからの代替製品(ただし代替にならない)」という位置付けであることを理解しつつ、エナジードリンク(energy drink)のお話に軸足を移しましょう。

と、言いますか、カタカナ語で新しく感じますが、昭和のオジさん世代にとっては、「栄養ドリンク」と呼ぶ方が、なじみ深いかもしれません。

今でもそうですが、一部の製品は、容器の見た目(茶色いガラスビン)や味を、わざと薬っぽくしています。言葉は悪いのですが、先に述べたように「薬と誤解させて、効能の説得力を増す」ためです。

医薬部外品(注1)や保健機能食品(注2)ではない清涼飲料水(注3)では、尚更のこと、そうした「何だか分からないけど効きそう」という容器や味は、販売戦略として重要なのかもしれません。

(注1) 医薬部外品(quasi drug)
「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)」の第2条に定義される「医薬品(medication)」よりも、人体に与える作用が穏やかな、機械器具ではないものの総称。医薬品より緩和だが、人体に何らかの予防や改善をもたらすと認められたもの。「薬用~」という名称の製品は、これに相当する。ちなみに、化粧品(cosmetics)という分類には、どのような人体への改善効果も標榜できない。医薬部外品は、医薬品と化粧品の中間的な分類と考えて良い。

(注2) 保健機能食品(food with health claims, FHC)
健康の維持や増進を目的に、経口摂取される食品全般を意味する「健康食品(Functional food)」の内、安全性や有効性について国が設けた基準を満たしたもの。健康食品そのものについての法律はないが、「健康増進法」が定める「特定保健用食品(トクホ/特保)」と「食品衛生法」が定める「栄養機能食品」がある。似たようなものに「機能性表示食品」があるが、これは科学的根拠を基に『商品パッケージに機能性を表示するもの』として、事業者が消費者庁に届け出た食品のことであり、先の2つと違って国が基準を定めておらず、事業者に責任がある。

(注3) 清涼飲料水(soft drinks): 
アルコール飲料(アルコール分1%以上)や牛乳、乳酸菌飲料以外の飲み物。

ただし、エビデンスで認定された医薬品、少し緩めの基準で認定された医薬部外品や保健機能食品以外の製品が人体への効果効能を謳うことは、かなり強く法的に禁じられています。

そうした事情もあってか、最近は、直截的な「薬っぽさ」ではなく、より抽象的な「元気が出そうなイメージ」と「飲みやすさ」でヒットしているように思われます。市場に出回るエナジードリンクの容器やパッケージは、薬物とは別の意味でインパクトがありますよね。

エナジードリンクの成分とその影響
さて、法的に「効果・効能を謳うこと」が固く禁じられているものの、一応、エナジードリンクにも生理学的な効能があります。

え、先ほど「気のせい」と書いたじゃないか? 確かに(苦笑)

より厳密に言うなら、「『気のせい』の疲労回復を感じさせる、生理反応を引き起こす』効能です。言葉遊びに聞こえるかもしれませんが、そのような効能を発揮するエナジードリンクの主な成分は「糖分」と「カフェイン」です。

エナジードリンクの日本市場では、トップブランドの「モンスターエナジー」と、草分けの「レッドブル」が2強のようです。この2つについて、一番メジャーな商品の成分を調べると、モンスターエナジー(Monster Energy)は355mlの中に糖質39.05gとカフェイン142mgが、レッドブル(Red Bull)は250mlの中に糖質27gとカフェイン80mgが含まれていました。

ちなみに、コカ・コーラ (Coca-Cola、愛称:コーク (Coke))は350mlの中に糖質31.4gとカフェイン28mgが含まれています。標準的なコーヒーだと、カップ一杯150mlの中に90mgのカフェインが含まれています。


糖分の役割とリスク
スティックシュガーを一本入れると糖分が3gですが、これでも、かなり甘く感じます。その10倍にもなる糖分を一気に取るのですから、かなりの量だとお分かりになるでしょう。

糖分は、皆さんもご存じのように、三大栄養素の1つです(正確には「炭水化物」ですが)。神経細胞が活動するための栄養素なので、たくさん頭を使ったときには、補給したくなるのは当然です。だからといって、むやみやたらと口にするのは、問題があります。

摂取した炭水化物はブドウ糖(グルコース)に分解されて血液を流れます。ブドウ糖の血中濃度、つまり血糖値は、高すぎても低すぎても身体を害します。そのため、私たちの身体は血糖値をコントロールしています。

血糖値が上がるとブドウ糖を吸収し、下がると放出するのです。このとき、一気に大量の糖分を摂取すると、急激に上がった血糖値を下げようとして、これまた一気に体内へ吸収します。そんな血糖値の乱高下が、身体に良いわけありません。

勢い余って血糖値が下がり過ぎることもありますし、そうすると、元気が出るどころか、かえってグッタリするでしょう。そして、そのような乱高下を繰り返すと、糖尿病の発症リスクが高まります。

カフェインの効果とリスク
カフェインは本コラム第56回でも触れました。世にいう四大嗜好品に含まれている「お茶・コーヒー」の主要成分で、薬理学的には、中枢神経を刺激して興奮させる薬物です。つまり、分類としては覚醒剤に属するドラッグです。

コーヒーや紅茶を飲んで、意欲/注意力/集中力が増加し、眠気/疲労感が緩和した経験は、皆さんにもあるでしょう。私達の日常に溶け込んだ光景かと思われますが、冷静に考えれば、このカフェインの効能は不自然です。

私達の「疲れた/休みたい」という生理的な欲求に、「頑張りたい/休みたくない」と意識的に抗っているからです。カフェインの薬理作用がドラッグと聞いて驚く方も多いでしょうが、さらに言うと、純粋なカフェインは毒物と考えて差し支えありません。

個人差はありますが、カフェイン粉末1gの摂取で急性中毒(興奮、不安、振戦、頻脈、利尿、胃腸系の障害、筋れん縮)を発症し、致死量は5gとされています。

ただし、5gのカフェインを摂取するためには、モンスターエナジー(142mg/355ml)を35.2杯、12.5Lも一気飲みしなくてはなりません。水の半数致死量(注4)が、体重50kgの人で4.3~9Lだそうなので、そもそも現実的ではありませんが。

(注4) 半数致死量(median lethal dose; LD50)
ある物質を投与した動物の半数が死ぬ分量(mg/mL)を体重(kg)あたりに換算したもの。ヒトの数値は事故などからの推定。物質のLD50が小さい(つまり少量で死ぬ)ほど、毒性が強いことを意味する。

カフェインの代謝とその影響
しかし、コーヒーや茶を飲み慣れない方では、少量のカフェイン(30mg以下)でも効能を感じられますし、先に触れたように、常飲される方でも多量のカフェインを摂取すれば中毒になります。

また、カフェインは消化管から吸収されやすく、摂取から30分以内で効能が現れ、1時間ほどで血中濃度が最大になります。ところが、体内のカフェインは、なかなか減りません。カフェインの半減期(摂取量の半分が代謝/排出される時間)は5~7時間です。

つまり、夕方6時に飲んだエナジードリンクのカフェインは、日が変わる深夜0時でも半分くらい残ることになります。不眠症かも?と思われる方は、夕食前後のカフェインが原因かもしれませんよ。

カフェインの代謝は個人差が大きく、アルコールと同じく、大きくは遺伝的に決まっており、摂取の頻度や量で、身体が慣れます。したがって、朝のコーヒーで一日中眠くならない人もいれば、夕方の風呂上りにアイスコーヒーをがぶ飲みしても、ぐっすり眠れる人もいるのです。


ただ、このような人たちにとっては、逆に、カフェインの恩恵も受けがたいことにはなりますし、だからといって、効かないからと、大量に摂取することは危険です。

さて、本コラム第56回でも触れましたが、カフェインはアデノシンの偽物です。そしてアデノシンは抑制性ニューロンを興奮させる神経伝達物質です。カフェインは、アデノシンの邪魔をして抑制性ニューロンを抑制します。

本来、興奮した抑制性ニューロンは、つながる先の興奮性ニューロンを抑制するのですが、抑制が抑制されることで、興奮性ニューロンは過剰に興奮するのです(脱抑制)。この、抑制性ニューロンは、俗に言う「心・意識・自己」の脳部位である、前頭葉(Frontal lobe)の神経回路の主役とされます。

カフェインの効能を考えると、むべなるかな、ですね。さらに、カフェインの効果が切れると、それまで邪魔されていたアデノシンが一気に作用して、神経回路の機能低下が進みます。

先に、カフェインが中枢神経に作用するドラッグであると説明しましたが、単なる眠気覚ましや疲労回復と考えている人には、少しショッキングな実験があります(図1)。

図1. 薬物を投与したクモが作る、クモの巣 
参考)https://www.miragenews.com/nasas-experiment-with-spiders-mind-altering-996703/ 
  ●NASA(アメリカ航空宇宙局)による1995年の研究報告。
 ●コガネグモ科のニワオニグモ(Araneus diadematus)の雌を使用。
 ●マリファナ(marijuana): 大麻(cannabis)。アサ(大麻草)の花冠や葉を乾燥/樹脂化/液体化させたもの。日本では大麻取締法で取り締まられるドラッグ。
 ●アンフェタミン(amphetamine, alpha-methylphenethylamine): フェニルアミノプロパンとも。中枢神経を興奮させる薬物。いわゆる覚醒剤の一つ。日本では覚醒剤取締法で取り締まられるドラッグ。
 ●抱水クロラール(Chloral hydrate): 世界初の化学合成された鎮静剤。不眠症の改善薬として開発された。依存性が高く、安全な適量の幅が狭い。現在は、より安全な薬品があるため使われない。

クモの巣は、放射状の縦糸と、それに交わる同心円状の横糸からなる網模様ですが、図1の実験では、薬物を投与することで、どのように模様が変化するかを見たものです。

鎮静剤を投与したものが最も下手くそなのですが、これは巣作りの途中でクモが寝てしまったためのようです。それ以外の3種の薬物では、私たちがイメージする、いわゆるドラッグであるマリファナ(大麻)や覚醒剤が、まだクモの巣っぽいのに対して、カフェインを投与したクモの巣が全く独創的なものになっています。

もちろん、クモとヒトを同列に並べることが適性であるかは議論の余地があるものの、意外な結果と言えるのではないでしょうか。

糖分とカフェインを短時間に大量摂取することの、健康に対する影響が良くないだろうことは、S.O.さんとお友達も、お分かりになっただろうと思います。実際に疲れを癒すものではなく、元気を前借するようなものであり、積み重なった疲れが後から襲ってくると考えてよいでしょう。

ただ、そうは言っても、カフェインは、歴史的かつ社会的に広く受け入れられてきた、比較的安全な嗜好品でもあります。エナジードリンクも、量と頻度を考慮しながら、身体に無理をさせ過ぎないように、また、その効果に頼り過ぎないように、愛飲されることをお願いしたいと思います。