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生命科学翻訳


生命科学の各分野で経験豊富な翻訳者が多数在籍しています

ジェスコーポレーションの「生命科学翻訳」は、バイオテクノロジー、医薬、医療機器、農学、保健学、栄養学、森林科学、海洋学等、それぞれの分野に経験豊富な翻訳者が担当いたします。
また言語に関しても、英語のみならず、中国語、韓国語、ベトナム語、インドネシア語等、多様な言語の経験があります。
生命科学に関する翻訳は、ジェスコーポレーションの翻訳スペシャリストにおまかせください。

<生命科学翻訳の取扱分野>
農業資材技術(育種、肥料、農薬)、農業関連技術(土木、機械、情報)、栽培、農業バイテク製品、遺伝子組み換え農産物、人口呼吸器、麻酔器、内視鏡、血圧計、ゲノム創薬、抗体医薬、アンチセンス医薬品、分子標的薬、分子生物学、腫瘍学、臨床試験、生物学、畜産学、植物、作物生産管理システム、生化学、生態学、水、加工食品、漢方薬など



生命科学の翻訳実績


 過去の翻訳実績の一部を下記にご紹介させていただきます。
<日本語⇒英語>
精密農業への取り組みとその実際例
接ぎ木の技法と応用例
タンザニア研修資料
解説書 -生物多様性編-
超高速ゲノム解読装置の開発
生命プログラム再現科学技術推進に関して
イネゲノム解析
ジャポニカアレイ設計
ヒトゲノムDNAアレイ
医療用電子機器および医療用電子機器の制御方法
欧米業界手術器具レーザー刻印の概要
大学院医学研究論文
蛍光顕微鏡システム比較表
体外循環症例データベース
無線伝送式pHメーター
MEDICA報告書
健康関連ディスカッション
コホート説明書/コホート同意書
MRI 説明書/MRI 同意書
インフルエンザの流行に備え
歯科と健康管理
公衆衛生リーフ
塩試験方法
安全衛生監査規程
安全衛生管理資料
吸汗速乾
<中国語⇒日本語>
医薬包装規程一覧
禁止されている食品添加物について
化学肥料と農作物に関する報告書
農業関連技術向上へ向けて
農薬と遺伝子組換え技術について
精密農業の実態調査
土壌環境制御技術
遺伝子組み換え農産物、水産物の安全性に関する論文集
果実栽培における農薬の使用に関する各種規則及び通達等
遺伝子組み換えベクターとしての大腸菌及びレトロウイルスの可能性
農薬の製造方法
遺伝子組み換え作物の安全性に関する各種規定及び通達等
動物用医薬品のGMP
各種農薬等に関する国家標準
人獣共通感染症に関する論文
脱毛予防効果試験規定
<日本語⇒韓国語>
医療器具(歯科・医科製品)カタログ
カプセル内視鏡カタログ
工業用内視鏡・X線カタログ
外国人結核患者の看護と外国語対応
結核への外国語対応に関するアンケート
 日本語⇒ベトナム語>
外国人結核患者の看護と外国語対応
結核への外国語対応に関するアンケート
衛生管理マニュアル
<日本語⇒フランス語>
日本の医療保険制度について
保湿した皮膚の摩擦特性評価
<日本語⇒スペイン語>
バイオの研究開発と予算について
精密農業の作業サイクル
可変農作業機等の開発と農作業機械の自動化
農地利用集積の進行と経営規模の拡大
有機農法、自然農法、減農薬農産物
<日本語⇒ポルトガル語>
形態に合わせた農業技術のパッケージ化の必要性について
農業経営規模の拡大と労働時間の短縮
地下水位の設定と農作物
精密農業によるコスト低減効果
稲作復興研修コース資料
生長管理のためのITの活用
<日本語⇒ドイツ語>
バイオテクノロジーフレームワーク
農薬と遺伝子組み換え食品に対する意識調査
<デンマーク語⇒日本語>
医薬品カタログ
食肉の安全管理について
<ウクライナ語⇒日本語>
 ウクライナの穀物生産調査報告書
<日本語⇒ブルガリア語>
健康診断書
<ハンガリー語⇒日本語>
食肉の衛生管理について
ブタペストにおける食の嗜好調査
<英語⇒日本語>
農業用フィルム資料
種子カウンター操作マニュアル
圃場内のばらつきと収穫との相関関係
ハイブリッドコーン
初乳後に最適な子豚用ミルク
給餌システム
農業施設用ヒーター 取扱説明書
ヨーロッパにおける三圃式農法の歴史と日本への影響
米国農務省牛海綿状脳症(BSE)関連文書
遺伝子組み換え作物の普及率詳細
DNA マーカー育種の工程
バイオマス燃料報告書
医療用ソフトウェアのご紹介
食品の国際規格
新型インフルエンザ
ライフサイエンス産業向けソリューション
ライフサイエンス関連Webサイト
<英文校閲>
〝塩”に関連する研究論文・・・多数
<日本語⇒中国語>
15分でわかるセルフケア
PED商品一覧
結核への外国語対応に関するアンケート
ピロリ菌に対する検査結果
プロポリス 最新研究資料
ヘルペスについて
リュウマチに対する効果例
安全衛生規定
遺伝子診断によるゲ ノム創薬
医科大学付属病院文書
医療機器保守マニュアル
外国人結核患者の看護と外国語対応
看護師経験に関するアンケート
間質性肺炎に対する効果例
歯科用機器カタログ
重要遺伝子の特許化
体外循環症例データベース
中国のベビースキンケア市場
中国向け処方表 & 概要
内視鏡カタログ
日本のバイオテクノロジーにおける課題
入浴剤、育毛剤説明書
農業における無人可変作業ロボットの将来性
発酵技術と品種改良
美容関連機器説明書
末期ガン患者の症例
目のしくみと目の病気について
鑑別マーカー遺伝子セット
<英語⇒中国語>
医学的診断書
環境、健康、安全に関する宣言
<韓国語⇒日本語>
健康診断書
<日本語⇒インドネシア語>
外国人結核患者の看護と外国語対応
結核への外国語対応に関するアンケート
メンタルヘルスに関するアンケート
 <インドネシア語⇒日本語>
 メンタルヘルスに関するアンケート
<フランス語⇒日本語>
フランスにおける就農数の推移と今後の課題
フランス農業と穀物市場
ブルキナファソ農業・農村地域開発プロジェクト
<スペイン語⇒日本語>
農作物品質向上のための日々の取り組み
土木技術の改良による干拓事業の推進
バイオテクノロジーの農業への拡大
スペイン農業の競争力と就農者の所得について
植物工場への取り組みとその課題
<ポルトガル語⇒日本語>
マテ茶の効用
アサイーに関する報告書
有機肥料と化学肥料の実態調査
セラード地帯における穀物生産について
農作物の収量予測システム・装置
<オランダ語⇒英語>
産業医向け「ガンと職場復帰のガイドライン」
<スウェーデン語⇒日本語>
医薬品カタログ
<ノルウェー語⇒日本語>
水産物に関する調査報告書
魚介類の取扱いに関する注意事項
<ロシア語⇒日本語>
キルギスタン農協、食の安全
<クロアチア語⇒日本語>
クロマグロの実態調査報告書
<ギリシャ語⇒日本語>
医薬品説明書
果実と野菜に関する報告書


Column




 本コラムでは、皆様からの生命科学に関するあらゆる質問にお答えします。
 webへ掲載可能なお名前(ニックネーム)にて、ご質問お願いします。

作者名:本螺 新一郎(ほんら・しんいちろう)
作者略歴:
大阪大学大学院医学系研究科博士後期過程修了。医学博士(Ph.D.)。
理化学研究所などで研究員を務め、現在は民間の研究開発職。
専門は医学・生物学(生理学、病理学、栄養学、神経科学、医用工学、幹細胞工学など)。

第70回 100歳以上の高齢者について
<質問>
本羅先生、こんにちは。認知症のコラムを拝見して、これからは高齢化社会が大変なことになるけど、ウチは大丈夫?と家族で話題にしてみたのですが、どうやら父母も祖父母も、終始、全く他人事みたいでした。祖父がキツい冗談で

「バァさんは、今でもウルサくて大変なんだ。認知症になったら相手しきれんぞ。勘弁してくれよ。」
と祖母に言うと、祖母は平気な顔で
「何ボケたこと言ってんのよ。ジィさんの方が健康診断の数値悪いんだから、認知症になるんだったら、そっちが先でしょ。私の方こそ、面倒かけられるのはゴメンだわ」
と言い返します。そこに、父が入ってきて
「オヤジもオフクロも止めろって。それだけ口が回れば、2人とも心配ないよ。もしもの時は、仲良く一緒に介護施設に入れてやるから」
なんて、宥めるより、煽るみたいな合いの手を挟みます。すると今度は、祖父母が2人して父に
「よく言うぜ。オマエの方が、しょっちゅう酒飲んで夜更かしじゃねぇか。俺たちより、よっぽど不健康だろうがよ」
「本当に、ねぇ。アナタこそ、先に若年性認知症で、私たちに面倒見させることにでもなれば、とんでもないわよ」
と、おっかないこと言ってます。呆れた顔で聞いてた母は

「はぁ……。どうせ、この人たち、100歳超えたって、同じようなこと言ってんだわ。けっきょく私が全部お世話しなきゃいけないんでしょ。ゾッとしちゃう。」
と、ボソリつぶやきます。もう、私は苦笑いするしかなくて。というか、どうやら家族みんな、シャンとして100歳まで生きることを当たり前に思っているみたいで、私は、それにビックリです。

そういえば、100歳を超える人って、日本人が世界一多いって聞いた事あります。それって、本羅先生、本当ですか?
がんや認知症は嫌ですけど、100歳を超えるのが当たり前になる社会も、ちょっと想像がつきません。いったい、どんな風になるのでしょうか? 怖いもの見たさと純粋な好奇心が半分半分です。
(東京都 N.M.)
(2025年3月)
<回答>
N.M.さん、ご両親やお祖父様お祖母様、皆さんお元気そうで、何よりですね。さぞかし、賑やかなリビングなのだろう、と想像に難くありません。

認知症と高齢化に関する最新データ
さて、実際のところ、2022年のデータですが、65歳以上の日本人高齢者で認知症を患うのは、全体の3割弱しかいません。これが90歳以上になれば、男性の4割弱/女性の5割強に増えますが、実は、10年前の2012年と比べると、全体的に認知症の有病率は改善していました。この有病率の改善は世界的な傾向でもあり、今後も継続すると思われます。そんな興味深い、少し明るい事実で、前回、前々回の「認知症」のお話を締め括りました。

最新の統計データ(2023年)によると、75歳まで生存する日本人は、男性で75.3%、女性で87.9%だそうですが、これが90歳となると、男性では26.0%、女性では50.1%に減少します。


しかしながら、ざっくり日本人男性の4人に1人、女性の2人に1人が90歳になると考えれば、N.M.さんのご家族のように100歳になることに楽観的でいるのも、少なからず、的を外しているわけでは無さそうです。

実際、100歳まで生きる覚悟をしなきゃいけないだの、ピンピンコロリが理想だのと、良くも悪くも、超高齢化社会の話題が世間でも当たり前になってきました。


日本における100歳以上の人口と世界比較
100歳以上の方のことを英語ではセンテナリアン(centenarian)、日本語では「百寿者」と呼んでいます。

世界中で100歳以上の方が増えているのは確かなようで、国連の人口予測だと、2024年には世界で72万2千人のセンテナリアンがいると推定されています。

そしてN.M.さんが見聞きされたように、統計上、センテナリアンは日本人が一番多いです(図1)。

図1.各国の100歳以上人口
●Aは国別100歳以上人口上位5カ国。
●Bは10万人当たりの100歳以上人口上位5カ国。
●各データの統計年度は各国で異なり、いずれも推計値であることに注意。
●バルバドス(Barbados)は、カリブ海の東端にある珊瑚礁で出来ている島国で、共和制国家。発音は「バーベイドゥス」に近い。ラテンアメリカおよびカリブ海諸国全域で、最も議会制民主主義の定着した国と言われ、人口は約30万人。10万人当たりの100歳以上人口(B)では5位だが、実際の人数(Aの参考値)は114人である。
 
参考) wikipedia「センテナリアン」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BB%E3%83%B3%E3%83%86%E3%
83%8A%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%83%B3

更に言うと、日本のセンテナリアン/百寿者は急激に増えています。1963年に老人福祉法が制定され、9月15日を「老人の日(注1)」と定めたとき、百寿者は全国で153人でした。


(注1) 老人の日:
元々は「敬老の日」と同日の9月15日だったが、2001年の祝日法改正(いわゆるハッピーマンデー / 連休を増やす目的)によって「敬老の日」が9月第3月曜日となったことから、同年に老人福祉法を改正し、改めて9月15日を「老人の日」に制定した経緯がある。記念行事として、その年度に100歳を迎えた、ないし迎える予定の高齢者で「老人の日」に存命の方へ、内閣総理大臣から祝状と記念品(銀杯)を贈呈している。


それが、1981年に千人、1998年には1万人を超え、更に、2012年には5万人、2024年には9万5千人強に達し、10万人も目前です。なんと、2050年には、百寿者が推計68万人を超えると予測されています。


参考) 「元気百歳になる方法データ集(国際長寿センター)」
https://www.ilcjapan.org/aging/doc/booklet_genki100.pdf


ちなみに、110歳以上の方は、スーパーセンテナリアン(supercentenarian / super-centenarian)と言いますが、その人数、実にセンテナリアン全体の0.1%に過ぎません。そして、スーパーセンテナリアンの中でも最高峰、115歳を超えるとなると、更にハードルは上がります。有史以来、つまり記録を手繰ることの出来る限りで、115歳を超える方々は、この世に、たった70人が知られるだけなのです。

ただし、近代になって戸籍制度が整備されて100年そこそこ。精々が200年に満たないでしょう。ある意味、高齢者の実年齢が確実に遡れるようになった今だからこそ、こうした話も出来るのです。とは言え、記録が確認出来ない超高齢者もいただろうことには、注意を払う必要はありますが、少なくとも、科学的に考察する限りにおいては、参考程度に留めておくことにします。


超高齢者と老年学の研究
高齢者の実態調査を通じて、加齢に伴う老化の影響を医学的ないし社会学的に研究し、良い影響の増強と悪い影響の軽減を目指すのが、老年学(Gerontology)です。中でも、国際的に盛んな老年学の研究団体が「ジェロントロジー・リサーチ・グループ(Gerontology Research Group / 略称: GRG)」です。GRGは1990年に設立され、カリフォルニア大学ロサンゼルス校 (University of California, Los Angeles / 略称:UCLA) で毎月会合が開かれています。そもそもGRGは、哺乳類における種の寿命/老化/について調査する機関として始まりましたが、任意の時点における種の最長寿を特定するべく、対象の年齢を裏付けるための調査委員会を2000年頃に設けました。この調査委員会の活動で最も有名なものが、スーパーセンテナリアンの消息確認です。その調査結果は、皆さんご存知のギネス世界記録(Guinness World Records)における『「世界で最も長生きした人物」のカテゴリー』で参照されるほどの信頼性を誇ります。

GRGの調査によると、2025年3月時点、存命中の世界最長寿は、ブラジルの修道女であるイナ・カナバッロ・ルーカス(Inah Canabarro Lucas)さん。1908年生まれの116歳です。同じく、現時点における存命最長寿の日本人は、1909年(明治42年)生まれの女性、林おぎ(はやし おかぎ(注2))さんです。


(注2) ぎ:
」は「可」の変体仮名で、「か」と読む。その他の例として、花札の赤単に書かれた文字「あかよろし」の「か」が当てはまる。


ちなみに、昨年末(2024年12月29日)までは、1908年(明治42年)生まれの女性、糸岡 富子(いとおか とみこ)さんが存命中の世界最長寿でした。ただし、糸岡さんの最長寿期間は、たったの4ヶ月。同年8月19日までは、1907年生まれのスペイン人女性、マリア・ブラニャス・モレラ(Maria Branyas Morera)さんが、存命最長寿でした。流石に、首位(First place)の入れ替わりが激しいのは、仕方ないですね。

また、歴代の世界最長寿記録は、フランス人女性のジャンヌ=ルイーズ・カルマン(Jeanne-Louise Calment)さんで122歳164日、2位は日本人女性の田中カ子(たなか かね(注3))さんで119歳107日、3位はアメリカ人女性のサラ・デレマー・クナウス(Sarah DeRemer Knaus)さんで119歳97日と記録されています。


(注3) カ子:
「子」はカタカナ「ネ」の異体字で、正確には漢字ではない。


ここまで、見事に女性ばかりが並んでいます。実際、2025年3月時点で確認されているスーパーセンテナリアン3115人中に、男性は287人しかいません。つまり、超長寿は、90.8%と、圧倒的に女性に占められています。

人数は少ないながら、男性の最長寿記録も見ておきましょう。まず2025年3月時点で存命中の世界最長寿は、ブラジル人のジョアン・マリーニョ・ネト(João Marinho Neto)さん、1912年生まれの112歳です。同じく存命中の日本人男性最長寿は、1914年(大正3年)生まれの、水野 清隆(みずの きよたか)さん。この3月で111歳になられました。そして、歴代の世界最長寿男性は、日本人の木村 次郎右衛門(きむら じろうえもん)さん、1897年(明治30年)生まれの116歳です。
やっぱり、日本人が長寿であることは、データ上では確実なようです。ただ、あなたや私が長寿であるか?とは、切り分ける必要はありますので、ご注意を。


そういえば、私が子供の頃は、世界最長寿と言えば、日本人男性の泉 重千代(いずみ しげちよ)さんで、確か120歳でギネスブック公認だったと記憶していました。で、今回のテーマを執筆するために調べて知ったのですが、彼の記録は2012年に取り消されていました。1995年までは人類の世界最長寿(前述のジャンヌさんが記録更新)、2010年までは男性としての世界最長寿と、ギネスブックに公認されていたのですが。そもそも、1871年(明治3年)に作られた彼の戸籍登録で6歳と記載されていることが、長寿の根拠だったようです。ただ、当時の戸籍は不完全で、他の傍証などからも記載内容が信憑性に欠けるということで、認定の取り消しに至ったとのこと。GRG、流石に厳密な調査ですね。

さて、閑話休題。こうして記録を眺めると、確実に120歳を超えた、と言えるのは、前述のフランス人女性、ジャンヌさん(122歳)だけということになります。つまり、状況証拠として、臨床医学の立場からは、120歳辺りにヒトの寿命の限界があると言うべきなのでしょうか?

これは、あくまで個人的な意見ですが、そのジャンヌさんには「100歳まで自転車に乗っていた」「114歳で大腿骨を骨折するまで歩けた」「20代から喫煙者で117歳から禁煙した」という逸話があることを聞くと、もし更に健康に気遣う方だったなら、まだ先があったのでは?という気がします。

サクセスフル・エイジングと健康観の変化
今や、「余生(the rest of one's life)」という言葉には、消極的かつ悲観的になるのではなく、また単に長生きするのでもなく、無理した積極的な若返りアンチ・エイジング(anti-aging)とも違う、健康的に年を重ねるサクセスフル・エイジング(successful aging)という考え方が、主流になりつつあります。ただし「サクセスフル」の語感が「成功」なので「非の打ち所の無いほどの健康体」をイメージするかもしれませんが、現実問題として、そんな高齢者はあり得ません。ここでは「健康」ではなく「健康的」であることを強調しておきましょう。各々が個人として「現状の自身や環境」と「その範囲で満足できる程度」を柔軟に考えられることが、サクセスフル・エイジングの目標なのです。

実際、日本では75歳以上の90%が慢性疾患を持っているというデータがあるように、多くの高齢者は慢性疾患に罹患していますし、年齢に比例して、急性疾患の発症リスクも増加します。

一般的に、若かりし頃の「健康」は「もっと元気に、力強く!」ですが、年を重ねる毎に「できたはずのことを維持する!」ことが「健康」を意味するようになり、「できることを減らしたくない!」が「健康」の目標になります。

つまり「健康的」とは、自分にできること/できなくなることを年々更新し、自分の満足いく程度が現実の自身と乖離しないようバランスを取って、(できることが減ったとしても)前向きに受け止めることで、自己肯定感/幸福感を失わずにいられる、ということと理解すればよいでしょう。

本コラム第2回では「永遠の命」について考えました。もうすぐ丸6年です(ビックリ)。このときは「寿命1000年を目指す科学者もいる」という話をしましたが、現代科学でも「脳を再生/交換出来ない」以上、脳の限界が人間の寿命ではないか?と話を締めました。


日本で行われた百寿者の調査結果を見ると、多くの方に「バランス良い食事」「規則正しい生活」「体を動かして自分ができる事への積極性」「新しいことへの好奇心」「日々を楽しむ」「ストレスを溜めない」などが共通するようです。また、スーパーセンテナリアンたちのインタビュー記事でも、同じような内容が窺い知れます。これらは心、つまり脳に健やかな刺激を与え続け、脳の限界を高めることを意味している、と考えるのは、少々、牽強付会でしょうか。

意外かもしれませんが、そもそも、高齢者の定義が「65歳以上であること」に、生理学的/医学的ないし生物学的な根拠はありません。

私が子供の頃(約40年前)、60歳といえば、かなり御年寄のイメージでしたが、今や、私の周囲も、60歳以上の方々は、まだまだ元気いっぱいです。

実際、統計データの上では、世界中で老化が遅延しており、平均寿命、更に、健康寿命(Health expectancy, Healthy life expectancy (注4))が延び続けていること、医学の発展で様々な疾病が克服されてきたこと、認知症ですら有病率の改善傾向が続いていることからも、今後、ヒトの最長寿記録は更新されるのではないか?と、楽観的な私は考えてしまいます。


(注4) 健康寿命(Health expectancy, Healthy life expectancy )
2000年に世界保健機関(World Health Organization, 略称: WHO)が提唱した概念。恒常的な医療や介護に依存しない日常生活を過ごす生存期間。寿命の「質の高さ」の指標。


一方で、悲観的な私からすると、非科学的な(≒科学リテラシーの低い)人々が起こす社会的な問題、例えば、「暴力的で無意味な環境運動」「標準医療への反感(公衆衛生の無知や感染症の軽視/反ワクチン/反マスク/無意味あるいは有害な民間療法への信仰)」「国家レベルでの基礎科学への投資や予算の削減」などが、「自然」や「自由」の美名の下に、日本を含め、欧米諸国を覆いつつあるように見えます。その”不自然な不自由さ”の皮肉なこと……。特に、日本は、平均寿命こそ延びているものの、少子化問題は悪化の一途で、日本人は緩やかに人口削減し続け、果ては絶滅へと向かいつつあるのでは?と、安物SF作品のディストピア(dystopia, 反・理想郷)を地で行く気がしないでもありません。

とは言え、私自身も、天に唾するようなもの。独り身で少子化問題に貢献できていませんし、反省しようもないのですが……(笑えない)。せめて本コラムが、科学リテラシーの向上に、ささやかでも寄与できればと願って、今月は筆を置くことにします。